第五章 言葉の墓標
本作はフィクションです。
実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。
大正時代を舞台に、「言葉」と「呪い」をめぐる不思議な噂を追う若き新聞記者の物語。
わずかな時間で読み終えられる短編ですが、読後には“言葉の重み”が静かに残るはずです。
誠一は支局の机に向かっていた。
井戸の底で見たもの、聞いた声、感じた恐怖__それらすべてを胸にしまい込み、彼はペンを握っている。
記事のタイトルはこう記した。
「黒羽町に伝わる言霊信仰_言葉が持つ力について」
本文には、井戸の存在も、過去の言い伝えも、老婆の語った話も記した。
だが、肝心の”呪い”については触れなかった。
誠一は、あと井戸に向かって自分が何を言ったかも、支局長の事故との関連も、一切書かなかった。
代わりにこう締めくくった。
>「言葉は、時に人を救い、時に人を傷つける。
>我々記者は、その力を知り、慎重に扱うべきだ。
>沈黙は逃避ではなく、選択である。
>語らぬ事で守れるものもある__それを、私はこの町で学んだ。」
彼は原稿を封筒に入れ、そっと机の引き出しにしまった。
語るべきことは書いた。だが、語るべきかどうかは、まだ決めていない__。
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