第四話
隣国の人々は皆笑顔で、想像していたよりも賑わっている。
まだ祭りのときの飾りなど少し残っていて、目に映る景色は色とりどり。僕の心も少し晴れやかになった気がした。
(さて、師匠が予約してくれていた宿に向かうか。)
宿には門から歩いて5分ほどで着く。
目に入るもの全てが新鮮で、なんだか夢のような感じがする。
(見たことないものがたくさんある。受験が終わればあそこのお店に行ってみようかな。あっちにも面白そうなものが……)
「おっと、ここか。」
これからの予定を立て、ワクワクしているうち宿の前まで着いたらしい。
ここの街並みが物珍しくキョロキョロしていたせいで、宿の大きな看板がなければ思わず通り過ぎるところだった。
(にしても大きな看板だな。そもそも宿が大きいのか。こんな高そうなところだとは…)
以前生活していた国でもなかなか見ない大きさで、おもわず宿をまじまじと見ていると、そこから同い年くらいの少女がでてきた。
少女は店員なのか、ほうきを持ってせっせと店先の掃除を始めた。
(っと、こんな見てたって宿には泊まれないし、明日の準備もできないな。)
「いらっしゃいませ」
ドアノブに手をかけたところ、挨拶をしてくれた少女に会釈をし、早速宿の中へ入ることにした。
宿の外見をみた印象のまま内装も豪華で、他の泊まりに来てる客もいい服を着ていて、仕草なども上品だ。
(師匠はいつも、僕にいいものをって物をたくさんくれたりしたな。ここまでしなくていいのに。弟子バカすぎるよな。)
師匠が死んでから何をしても師匠との思い出がよみがえる。
懐かしい、楽しかった、そう思えるのは一瞬で、すぐに悲しとさみしさで心がうまる。
師匠が生きていていたら、
そう叶うわけない未来の夢しか見れなくて、声もなく涙が出る。
変えられない過去やありえない未来などを考えている暇はないのに。
目的を忘れてはいけないと頭ではわかっていても、本当は今にでも師匠の後を追いたいという思いでいっぱいなってしまう。
「ーさま、お客様?お名前をお聞かせ願えますでしょうか」
「あっ、すみません。グラディウスです」
「グラディウス様ですね。こちらお部屋の鍵になります。」
「ありがとうございます。」
考え事をしていても体は受付に向かっていたらしい。受付嬢の方に迷惑をかけてしまった。
もう意味のないことを考えるのはやめよう。
それに明日の試験の準備をしないといけない。
部屋に着き入浴等を済ませ、師匠と試験勉強はして来てはいるが、念には念を、明日の試験の範囲を一通り勉強し、この日はふかふかのベッドで眠った。
ご清覧ありがとうございます。




