二章 魔法学院編〈一年生〉第三話
隣国
「やっと着いた。」
(身分証出さないとだから、準備しとくか)
魔法で収納していた身分証を取り出そうとしたが…
「うっわぁ、予想以上に人が並んでるな。」
(身分証を取り出すのはまだいいかな。でも、なんでこんなに混んでいるのだろうか。)
ジャリッ
(…っと、僕の後ろからもまだ人が。)
僕の後ろに並んだ人と目が合った。
「お、にいちゃんこの国は初めて来るのかい?」
話しかけられた。
あらためてその人を見ると冒険者らしい恰好をしたおじさんだ。
「はい、そうですが。」
「そうなのか!それだったらなぜ関所がこんなに混んでいるのか不思議に思ってるんじゃないかい?」
「もしかして独り言が聞こえてしまっていましたか、すみません。」
「いや、俺も勝手に聞いちまって悪かったな。で、お前さん知らないんだろ?」
…悪い人じゃなさそうだし、この人から少し情報を得るとしよう。
「そうなんです。なにか知っていますか?」
「もちろん知っているぞ!じつはこの国では毎年この時期に祭りがあるんだ。」
「そうなんですね。あなたもその祭りが目的でいらしたんですか?」
「いや、祭り自体はもう二日前に終わっていてな。今は帰るために関所にいる人が多いんだ。」
「そうなんですね。それなら、あなたはなぜここにいるんですか?」
「あぁ、俺は冒険者なんだが、魔物を狩ってきた帰りなんだ。それこそ今は人の行き来が多いから依頼も増えるんだよ。」
「そういうことでしたか。色々教えてくださってありがとうございます。」
「お前さんは見てくれからして魔法学園を受験するのか?でも試験は明日だ。ちょっと来るにはのんびりな気がするが。」
「おっしゃる通り、僕は魔法学院を受験します。到着が遅くなってしまったのは最近知人が亡くなってしまって、その対応があったからなんです。」
(まぁまぁ長話をしてしまっているが、まだ門までは人がいる。十分くらいは暇になりそうだし、この人はなんだか話しやすいし、中に入るまで世間話くらいしていようかな。)
「そうか、それは大変だったな。俺も最近知り合いが依頼中に死んじまってな。冒険者なら仕方ないことだし、慣れてはいるがな。」
「そうだったんですね。あなたも気を付けてくださいね。」
「おうよ、心配してくれてありがとうな。さ、暗い話は終わりにして、楽しくいこうぜ!」
「そうですね。そういえばお互いにまだ名乗っていませんでしたね。今更ですが自己紹介しませんか。」
「そういえばそうだったな。じゃあ俺から。俺の名前はガイズ、38歳だ。冒険者を始めたのは15歳からで、今のランクはC級だ。基本的に殴ったり蹴ったりだが、火魔法も少し使えるといったかんじだ」
「僕の名前はグラディウス、12歳です。試験を合格すれば今年度から魔法学院に入学する予定です。剣や弓、体術も少し出来ますが、一番得意なのは魔法です。属性は内緒で。これからもお会いすることがあったらその時はよろしくお願いします。」
「お、おう、よろしくな。ていうかお前さん…いや、グラディウスはまだ12歳だったのか?俺はまじでびっくりしたぞ。その年の割にずいぶん大人っぽい話し方をするんだな。俺の息子も12歳だが、最近は反抗期気味でまぁ大変なんだよ。」
「息子さんがいらっしゃるんですね。」
「おう、俺の息子もお前さんと同じとこの受験するから、もしかしたら会うかもな。もしそうなったらよろしくたのむぜ!」
「もちろんです。ちなみに息子さんのお名前は?」
「ウィズだ。見た目は俺に似てるから見たらすぐわかるかもな!」
「覚えておきますね。あ、僕の順番が来たようなのでお先に失礼しますね。それではまた。今日はありがとうございました。」
「こちらこそありがとうな、応援してるぞ!」
こうして僕はガイズさんと別れて、隣国にも問題なく入国できた。
次の目的地は宿だ。
ご清覧ありがとうございました。