第二話
隣国に行くためには山を越えなくてはならない。
(転移魔法は一度は行った場所じゃないと行けないし、お金がないわけじゃないけれど、馬だと試験の時間に間に合わない。)
残る選択肢は一つ。
「よし、飛ぶか。」
距離的に魔力も足りるし、鳥系の魔物も避けて飛べばぶつかったりする心配もない。
空気も、足りなければ下から持ってきて火魔法で寒さをしのぐ。
対策はしたし、そろそろここを出なくてはならない。
師匠が亡くなり、その対応で受験日に時間が迫っており、なんと明日がその日だ。
学院付近の宿はすでに予約済みであり、そこまで直線で飛んでいくとすれば、6時間ほどで着くだろう。
今は午前10時だ。昼食を食べながら向かい、あちらに着いたら夕食を食べ明日に備えるとしよう。
予定も決まり、グラディウスは重力魔法と風魔法を組み合わせ飛び立った。
〜〜〜〜~二時間経過〜〜〜〜〜
(…山頂の辺りまで来たな。そろそろ昼食にするか。)
今日は雲一つない晴天で、夏に向けてポカポカと温かい。辺りはワイバーンなどが飛んでいる。
(美味しそうな鳥いないかなぁ……あ、あいつ美味しそう。)
グラディウスが目をつけたのは、他と比べて体が大きく筋肉もしっかりついているオスのワイバーンだ。
(飛びながら食べたいし、捕まえてから丸焼きにして食べるとするか。)
気配を消しているため、まだワイバーンには気づかれていない。
昼飯まで1km。
(それじゃあ、いただきますか)
拘束魔法、対象をその場に固定。
「ハグ」
「ギャッ?!」
動きを封じられた昼飯が、驚いて悲鳴を上げる。
そうしたら、追い打ちをかけるようにワイバーンを燃やす。
火魔法、あの身を焦がせ。
「ファイア」
「グギャアアアッッ!!」
ワイバーンは鳥類なので、中までしっかり火を通す。
ワイバーンが死んだ。
(ここまで焼けられたら食べても大丈夫だな)
「女神と空に感謝して、いただきます。」
~~~~~ワイバーン完食~~~~~
「ふぅ…まぁまぁ量が多かったけど美味しかったな。また食べようかな、ワイバーン。」
昼食を食べ終わり、のこり四時間かけて目的の宿まで一直線に向かうグラディウスであった。
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「ふふっ、あの子ったらまぁ自由ねぇ…。」
グラディウスのまた食べよう発言で、世界中のワイバーンはなぜか嫌な予感がしていた。
彼らをずっと見守っている女神様は、この状況が少しおかしくて空の上で笑っていたのだった。
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ご清覧ありがとうございました。