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超絶美少女幼馴染達をテイムする

 ダンジョンの出口から外へと出る。

 ウマゾウと、パーティの3人が見えた。


「いやだ……お願い……お願いだから……!」


 モラハお姉ちゃんが、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら泣いていた。

 泣きながら、震えながら、血まみれのパワラとロジリーに治癒魔法を必死にかけている。

 だけどその魔法の光は弱々しく、今にも消えそうだった。


「目を開けて……! お願い、死なないで……! お願い……!」


 声が震えている。

 涙が、ぼたぼたと零れ落ちる。


「もういや……! みんな死んじゃうの、いやだよぉ……っ!!!」


 その姿は、普段の『優しいお姉ちゃん』ではなかった。

 今にも崩れ落ちそうな、ただの『泣き虫な女の子』に見えた。


「モラハお姉ちゃん! ウマゾウ!」


 僕が叫ぶと、モラハお姉ちゃんが顔を上げた。


「…………え?……カイル……君……?」


 僕を見る。まるで、幽霊でも見たような顔だった。

 

 僕はみんなの元へと駆け寄った。


「パオンッ……!」


 隣にいたウマゾウが鼻を鳴らす。

 そしてゆっくりと近づき、そっと鼻先で僕の肩を撫でた。


「本当に……!? 本当にカイル君なの……!?」


 僕の姿を確かめるように、モラハお姉ちゃんは僕の腕に手を伸ばし、ぎゅっと掴んだ。


「カイル君っ……カイル君……! うぁああああああん!!!」


 そして泣き崩れた。

 僕は胸元で泣くモラハお姉ちゃんの頭をよしよしと撫でる。


 すごい心配、かけちゃったな……。

 どうしようもなかったとは言え、僕が死ぬとモラハお姉ちゃんはとても悲しむ事になる。

 改めてそう実感する。


「モラハお姉ちゃん、二人は……?」


 モラハお姉ちゃんは泣きながらも、目をこすりながらなんとか顔を上げる。


「が、頑張ってるんだけど……っ、だめ……! 二人とも……目を覚まさないの……! MPが……足りなくて……っ、ひっく……完全な治癒魔術が……できない……!」


 モラハお姉ちゃんは必死に、絞り出すように言う。


「「…………」」


 そして、パワラ、ロジリーはモラハの言う通り目を覚ます気配がない。


 まずいな……。MP薬はボス前でとっくに切れてしまっているし、積んであるHP回復薬程度ではこれほど重症のパワラ、ロジリーを回復することはできない(もっとも、それで解決するのであればとっくにモラハお姉ちゃんがウマゾウから回復薬を取り出して、二人を治しているだろう)。


 二人の息は浅いし、急いで”ハラハラ村”に戻ったとして持つかどうか。いや、そもそも”ハラハラ村”に戻ったとして、二人を治せる手段はあるのか……?


 ……くそ! 僕に回復スキルが使えれば……! 僕にはまだMPが残っているのに! 


 いや、厳密にいえば僕も、回復スキルが使えないわけじゃない。テイム対象限定であるが、テイマー回復スキルの《使役対象専用(テイマル):治癒(ヒール)》は習得している。だが、二人はそもそもモンスターでなく人間なので、テイムすることはできず、そのスキルの対象とすることはできない。


 ……いや、待てよ。

 僕がさっき習得した、あの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()スキル、《理外の強制使役(アンリミテッドテイム)》であれば、もしかしたら人間でもテイムできるんじゃないか?


 『あらゆる制約が無い』


 スキル説明には、確かそう書かれていた。


 ……躊躇している場合はないな。可能性は低いけど試してみよう。

 僕は僕にできることをやるしかない。

 それがさっきできたから、僕たちはこうして帰ることが出来たんだ。


 僕は横たわっているパワラ、ロジリーに手をかざす。


「うおおおおおお!!! 《理外の強制使役(アンリミテッドテイム)》!!!」


 僕は二人にスキルを使った。

 その瞬間、脳内にテイム成功時の神の御言葉(ログ)が流れる。


『テイム成功! 種族:人 パワラ、ロジリー、モラハをテイムしました』


 やった! テイムに成功した! ……ってモラハお姉ちゃんまでテイムしてる!?

 覚えたてでこのスキルを制御できなかったか……まあ細かいことはいい、早く二人を回復しないと!


 先ほどと同様に二人に手をかざし僕はスキルを放つ。


「《使役対象専用(テイマル):治癒(ヒール)》!!!」


 暖かな緑色光が発生し、パワラ、ロジリーの傷をみるみると回復していく。出血は止まり、二人の呼吸が安定する。

 このスキルは普通の回復魔術・スキルと違い、使役対象にしか使えないため、その分効果が強力だ。僕程度の魔力でも二人を完全回復する事ができるだろう。


「ん……っ……。……あれ? ここどこ……?」


「ふあぁ……痛っ、いてて。なんだか、体の節々が痛いです」


 良かった! ふたりとも目を覚ました!


 二人が目を覚ますと、モラハお姉ちゃんがすぐに二人を抱き寄せた。


「パワラちゃん……ロジリーちゃん……っ……!!」


「ちょっ、モラハ姉!? どうしたのよ、急に抱きついて来て」


「モ、モラハさん、少し苦しいです……」


「よ……よかったぁ……っ……本当に……本当に良かった……!! 二人とも……っ!!」


 モラハお姉ちゃんは泣きじゃくったまま、二人をぎゅっと抱きしめる。

 肩を震わせながら、何度も何度も「良かった」と繰り返していた。


 命を張った甲斐があった。

 一時はどうなるかと思った。

 ともあれ、これでひと段落だ。


「……段々思い出してきたわ。私、最終層でやられちゃったのね……。ここにいるって事は、モラハ姉が私たちを庇いながら撤退したって感じかしら。本当にごめんなさい、迂闊だったわ……」

 

 パワラはモラハの背中を撫でた後、ゆっくりと腕を離れる。

 服に付いた土を払い、立ち上がる。

 そしてふとその目についたであろう、僕を見て言った。


「そこにいる無能はなんの役にも立たないし、私たちがやられちゃったら、モラハ姉は一人になっちゃうものね。ごめんなさい、反省するわ。でも、流石モラハ姉ね! あの状況から私たちをここまで逃がしてくれるなんて」


 パワラはモラハお姉ちゃんを笑顔で称えるが、モラハお姉ちゃんは首を振り否定する。


「違うのパワラちゃん……ここまで逃げられたのは……カイル君のおかげなの……っ……」


「……え? カイルのおかげなわけないでしょ? この無能に何ができるって言うのよ。足手纏いでしかないじゃない」


 パワラは続けて視線をウマゾウに向ける。


「このウマゾウとか言う馬鹿っぽいへんてこモンスターも、カイルに似て愚図でノロマな上図体だけ妙に大きいし、こいつまで庇いながらここまで逃げ切るのは大変だったでしょう? こんなの捨ててくれば良かったのに」


 そう言ってパワラはウマゾウの尻を蹴飛ばした。


「パ、パオッ!?」


 ウマゾウはびっくりして飛び跳ねた。





 その瞬間、僕の中で何かが切れた。


「パワラちゃん。僕の事はどう言ってくれてもいいけどさ、その後の文言は撤回してほしいな。パワラちゃんが今ここで生きているのはウマゾウが頑張ってくれたからだよ。ダンジョン内のモンスターからパワラちゃんたちを守って必死に上まで駆け上がってくれたんだ。今、蹴ったのを、侮辱したのを、ウマゾウに謝ってくれ」


「はあ? カイル如きが何言ってくれちゃってるの? 何もしてない癖に何偉そうに私に意見しちゃってるの?」


 パワラは僕の方にズカズカと歩いてくる。

 そして僕の胸ぐらを掴み、ガンを飛ばしながら僕を見上げる形で言った。(僕は身長が185cmなので、パワラより20cmほど背が高い)


「確かに私は今回ヘマをした。だからってあんたに何か言われる筋合いは無いわ。戦わない、貢献しない、パーティの足を引っ張る、あんたに何も言う権利は無いの。分かる? 対話っていうのは、お互いが対等に役割を果たして尊重し合える関係になって初めてできるの。どんなに正しい主張や意見を持っていようが、あんたが対等に役割を果たせていなければ、それを言う資格はあんたには無いのよ」


 パワラはガチギレだ。自分自身の失態に苛ついているところに、更に僕がそれにつけ込んだことで爆発したのだろう。彼女は怒りが臨界点を超えると、いつも以上に舌が回り、ガチ詰めモードとなる。感情が昂ると頭の回転が速くなる、珍しいタイプなのだ。だからこそ、【剣聖】としてここまで上り詰められたのだろう。


 いつもの僕だったらそんな彼女を前にビビり、泣き喚き散らしていただろうが、今の僕は違う。さっき死戦を超えて、なんだか目が覚めた。()()()()()()()()。パワラちゃんは全く怖くないし、ロジリーちゃんもモラハお姉ちゃんも庇護すべき、か弱い存在に思える。


「僕としてはその理屈には賛同しかねるね。それだと、弱者は一生強者に何も言えないし、逆らえないって事じゃないか。まあでも、パワラちゃんがそういう考えなら、僕もそれに乗っかるのはやぶさかじゃないよ。だって今回役立たずだったパワラちゃんは、今回最大の功労者である僕に、意見を言うことはできないし、逆らえないって事だよね?」


「は? 何言ってんの? あんたが最大の功労者? そんなわけ――」


「倒したんだ最終層ボスを。僕一人で」


 そう言うと、3人は呆気に取られ固まった。

 僕は気にせずに続ける。


「正確には『倒した』って言うより『従えた』だけどね。囮になってみんなをウマゾウで逃した後、僕は新しいスキルを獲得したんだ。『理外の強制使役(アンリミテッドテイム)』って言って、文字通り無制限にテイムを行えるスキル。それを使って、ブラックアルティメットドラゴンをテイムしてこのSSランクダンジョンをクリアしたんだ」


「……あんた大丈夫? 頭でも打ったの? 妄想も大概にしなさいよ」


 まあ、信じないだろうな。

 百聞は一見にしかず。

 僕はお披露目することにした。


「《召喚(サモン):漆黒(ブラック)究極(アルティメット)(ドラゴン)》」


 スキルを発動すると、僕の前に巨大な召喚魔法陣が浮かび上がる。

 魔法陣上の虚空に漆黒の亀裂が走る。

 そしてそこから次元の狭間が大きく引き裂かれ、ブラックアルティメットドラゴンが降臨した。


「ギャオオオオオオオス!」


 咆哮が大気を裂く。

 衝撃波が吹き荒れ、周囲の木々がなぎ倒される。

 森の生き物たちの鳴き声が消え――静寂が訪れる。


「う、うそ……。そんな……」


「あ、ありえないです……」


 パワラとロジリーが呆然と口を開ける。

 彼女たちの視線はその絶対的な存在に釘付けだった。


 おっと、怖がらせるつもりは無かったんだが。

 まあ、さっきこっ酷くやられてたからなあ。無理もないか。


「ブティ! みんなが怖がってる! 撫でてあげるからこっちおいで!」

 ※ブラックの『ブ』、アルティメットの『ティ』で『ブティ』


 呼びかけに応じブティはゆっくりと顔を寄せ、僕の身長よりも余裕で大きい頭を差し出してくる。

 僕はわしゃわしゃと頭を撫でた。


「ギャオス♪ギャオス♪」


「おー、良い子だ。よーしよーし」


 あの『伝説の三龍』も手懐けてしまえば可愛いものだ。

 やっぱりモンスターはかわいいなあ。


「さて、パワラちゃん。ついでにロジリーちゃんもだけど、ブティの半分にも満たない強さの君たちに、戦闘における役割は無くなった。これからはブティに戦って貰えば良いわけだからね」


 僕は少し屈み、尻餅をつく二人の頭に手を乗せる。


「だから二人には、戦闘において役割持てない二人には、これからはパーティの雑用(サポート)をお願いするね!」


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