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盾テイマー

 ♦︎


 盾を構える。

 いつ振りだろう、僕が盾を構えるのは。

 そして今から使う”盾スキル”も最近じゃ全く使っていなかった。


「スキル発動、《挑発》」


 これはモンスターの攻撃対象を自分に集中させるスキル。

 盾系職業専用のスキルだ。盾系職業は基本的にこのスキルを使用しタンク役を担うことが多い。


 スキルの発動により、モラハに向いていたブラックアルティメットドラゴン、リトルブラックドラゴンたちの視線が僕に向く。


「ギャオオオオス!」


「「ピギャアアアス!」」



 凄まじい、恐怖とプレッシャーを感じる。


 息が詰まりそうになる。

 盾を持つ手が震える。


 みんな、こんな恐ろしい相手と戦っていたのか。

 それなのに僕は、いままで何もせず後ろから傍観しているだけだった。

 全く、自分が嫌になる。


 盾スキル《挑発》により、次々とリトルブラックドラゴンがこちらに向かってくる。

 すぐに周囲を囲まれてしまった。


「「ピャアアアア!!!」」


「ああああああああああ!」


 四方八方のリトルドラゴン達から攻撃を受ける。

 僕は盾を使いながら、なんとか辛うじて攻撃をいなしていく。


「ピガブ」


「グッ……ッ痛!!」


 しかし、それら全てを躱し切ることは出来ない。

 一匹のリトルドラゴンが肩に噛みつく。

 肉が裂ける感覚。

 傷口からドクドクと血が流れ、視界が歪む。


「カイル君、だめ!!!」


 遠くからモラハお姉ちゃんの叫ぶ声が聞こえる。

 そちらを向くとモラハお姉ちゃん含め、3人が無事にウマゾウの背や長い鼻に抱えられて、離れて行くのが見えた。

 モラハお姉ちゃんが泣きそうな顔で、僕に向かって手を伸ばしていた。


 よし、これで安心だ。

 僕が死んでも彼女達は生きて帰れる。

 愚図で無能な僕の命一つで彼女達を救えるんだったら安いものだ。


 心置きなく、やられよう。










「「ピギャア!?」」


 突如として、周囲のリトルドラゴンたちが吹き飛ぶ。

 まるで爆風でも発生したかのように、天井や壁へと叩きつけられる。

 それは、盾攻撃による打撃で引き起こされていた。


 ――つまり僕の攻撃だった。


 (あれ、なんで僕は諦めないんだ。どうせ死ぬのに。意味なんてないのに。)


「ギャオオオオオオ!!! ブハアアアア」


 ブラックアルティメットドラゴンが咆哮と共に、灼熱のブレスを吐き出す。


 (ほらどうせ、足掻いたって無駄だ。僕なんてすぐに焼き尽くされて、丸焦げだ。)


「《テイム》」


「ピ!?」


 僕は咄嗟に周囲にいたうちの弱っている1匹のリトルドラゴンをテイムする。

 そして、僕とアルティメットドラゴンに間に割って立たせ、壁にしてブレスを防いだ。


「ピャアア!?」


 リトルドラゴンの体は焼き尽くされ、そのまま絶命した。


 (頭では諦めているのに、体が勝手に動く……)


 そうか、これが生存本能ってやつか。


 盾テイマーなんて超絶不遇職で未だに冒険者を続けているくらいだ。

 僕は本当に諦めが悪いらしい。


「ああああああああああ!!!」


 叫びながら、盾を振るい、リトルドラゴンたちを殴り飛ばす。

 噛みつかれ肉を抉られようと、突進で骨を砕かれようと、僕は無我夢中で盾で殴り続けた。

 朧げながら、意識を保とうと舌を噛みながら、僕は必死に盾を振り回した。


「うおおおおおおおおおッ!」


「ピギャッ!?」


 そして、盾の先端(あの下の尖った部分)が1匹のリトルドラゴンの喉元を貫く。



 ――瞬間、周囲の時間が止まった。


 音が消え、空間が静寂に包まれる。


 (これは……レベルアップか!?)


 レベルアップするとレベルアップした本人の体感で、時間が静止したような感覚になる(実際に時間が止まるわけではない)。そして自動でステータスウィンドウが開き、ステータスの増加値や新スキルの説明が表示されるのだ。


 理を司る神々の啓示(ステータスウィンドウ)を見る。


 ステータスは……やっぱり大した増加は無い。どのステータスも+1〜2くらいの増加値だ。

 ただ……これは新スキルか……?最近は新スキルなんてめっきり習得しなくなったが、まさか256レベルになっても、新しくスキルを覚えるなんて。


 **スキル名:《理外の強制使役(アンリミテッドテイム)

 説明:あらゆる制約なく使用できるテイムスキル**


 制約のないテイムスキル……?


 テイムは通常、自分より弱いモンスターか弱らせたモンスターにしか通用しない。

 テイムできる数もテイマーの魔力量次第で限られて行く。

 テイムにはそれらの制約があるのが常識だ。


 制約というのがこれらのことを指すのであれば、つまり、このテイムのスキルは――


 ステータスウィンドウを閉じる。

 同時に止まっていた(と感じていた)時間の流れが動き出す。


 ありえない。

 そんなことができるなら、もうなんでもありだ。

 だがどちらにせよ、やってみるしかない。これに賭ける以外に僕が生き残る可能性はない。


 僕は走る。

 リトルブラックドラゴンの群れから抜け出し、ブラックアルティメットドラゴンに手をかざしながら突っ込む。


 そして叫んだ。


「うおおおおおおお!!!《理外の強制使役(アンリミテッドテイム)》!!!」


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