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挑戦 ~ルドン「笑う蜘蛛」より~

【心を打つ絵に出会った時、言葉が溢れて詩になります】

名画を詩にしてお届けします。著作権フリーの場合は、絵画の画像も掲載します。

素敵な絵も、どうぞお楽しみ下さい。

挿絵(By みてみん)

Odilon Redon  L'araignée souriante  1887 



蜘蛛(くも)にされても

笑っているのは なぜ?


アラクネ

女神さまと機織(はたお)り勝負した娘

傲慢(ごうまん)の報いだと 人は(そし)るけれど

違う あなたは負けてなかった


AI(エーアイ)と複数人による公正な判定は

ギリシャ神話の時代では 無理だっただけ


女神さま相手だって勝ちたい

一歩も退()かない

真っすぐで野蛮な闘志


みんな 欲しいでしょ?

勝負のコートに立つ時

へにゃへにゃになりそうな心が

喉から手が出るほど求めてる


そう 今


アラクネ

神頼みを口にする前に

自分の努力を信じよう


あなたみたいに

全てを叩き出せたなら

負けって人に言われても

きっと笑えるね 誇らしげに


アラクネ

自分を育てたのは自分だと

啖呵(たんか)を切って

勝負の女神さまと ガチンコ勝負しよう



★   ★   ★   ★


読んで下さって、有難うございます。

前回に引き続きギリシャ神話から、「蜘蛛になったアラクネ」のお話です。


「アテナ様がここに来て私と勝負すればいい」

アラクネが放ったセリフが引き金となり、二人の対決が始まります。


女神アテナは、技芸ぎげいつかさどる神。機織はたおりは、もちろん自分の管轄フィールドです。

対するアラクネは、ただの人間の娘。でも、並外れた技量を持っていました。人間だけでなく、妖精までが彼女の機織りを見物しに来るほど。


「素晴らしい。あなたの腕前は、女神アテナ様から直に授かったのですな」

誉め言葉で言われているのに、アラクネはムキになって否定しました。

「いいえ。私の腕は、私が自分で身につけたものです。神様なんて関係ないわ」


彼女の態度を見かねた女神アテナが、たしなめてやろうと腰を上げました。

老婆の姿に身をやつした相手に、アラクネが素のままで挑発し、バトルスタートです。


そして、機織り勝負が完了。

興味深いのは、どこにも「アラクネの作品が女神アテナの物より劣っていた」という記述が無いこと。

どちらも素晴らしい。甲乙つけがたい。

女神アテナの織物は、神々を描いたもの。「神様あたしって素晴らしい!」がテーマ。

対して、アラクネが織り上げたのは、ゼウス神が人間相手に繰り広げた、複数の恋愛模様。

正妻がいますから、要は不倫総集編なわけです。そして、ゼウスはアテナの父親。

あっぱれなケンカの売り方です。


だけど、その出来栄えときたら。技芸の神であるアテナには、他の誰よりもアラクネの実力が分かりました。

それがかえって怒りを増幅させます。リミッターが外れた女神アテナは、アラクネの布をズタズタに切り裂き、彼女の頭をさんざんに叩きました。さすがギリシャ神話、神様容赦ねえ。


耐えられなかったアラクネは、自殺。

さすがにそれを哀れんだ女神アテナが、魔法の草の汁を振りかけて、アラクネを蜘蛛に変えた。だから今でも、糸にぶら下がっているのですよ、というお話。


でも、後半、なんか納得いかない。

どうしてアラクネは自殺したのか。


彼女は神様を信じていません。その相手から自分の作品を否定され、あげく破壊されたとしても、しおしおと嘆いて死ぬような玉ではないでしょう。

なにせ、自分から女神に勝負を仕掛けた娘です。怒り狂って、相手の織物も切り裂き返すんじゃないかな。


だから。きっとアラクネは、人に絶望したのではないかと思う。

それまでは、自分を誉めそやしてくれていた人、人、人……。

それが、女神がやって来て、自分を否定した途端。一人残らず、ころっと態度を変えて、口汚く罵ってくる。

身の程知らずな。神をないがしろにした娘よ。バチがあたって当たり前だ。


アラクネは、生まれつき才能があった娘。でも、女神に比肩するほどのレベルに達するためには、血の滲むような努力を重ねた筈です。一人きりで、若い日々を犠牲にして、ただ己の技量を磨き続ける……。

それが大勢の人に認められて、嬉しくて誇らしくて、「神様なんて、なんぼのもんじゃい!」状態になってしまった。


一瞬で、自分を支えていた城が崩れ落ちた時、彼女は死を選ぶしかなかったのだと思う。

なにやら現代にも通じるような気がします。


ルドンが描いた「笑う蜘蛛」L'araignée souriante 

どこにも、ギリシャ神話のアラクネだとは書いてありません。

でも、私には、不敵に笑う娘に見えました。

「なんだ、冷静になったら、私ぜんぜん負けてなかったじゃない」


★   ★   ★   ★


ブログサイトには、こちらの絵画の詩を公開しています。

挿絵(By みてみん)

アンリ・ルソー「戦争」1894年


今回、ブログサイトを作成する手順に不具合が生じ、対応で二週間ほど吹っ飛んだのですが、無事解決して公開することができました。よかった~。

顛末は「小説ブログを作ったら、めちゃくちゃ大変だった話③~ブロックだらけの逆襲~」で投稿しています。よかったら、そっちも見てね!


では、また次回! どうぞ再び不具合が生じませんように!

※「講談社NOVELDAYS」にも同作品を投稿しています


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