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『第二十四話 小惑星ノスタルギア』前編

『サイクルラヴの叫び、少年少女のセイセンネンリョ』


登場人物


神野(じんの) カナメ 16歳男子

本作の主人公。高校一年生。人に対して距離があり、どこか性格も冷めている。


相園(あいぞの) トワネ 16歳女子

本作のメインヒロイン。高校一年生。”第六の力の女王”で、カナメの契約相手。性格はわがままで愛想がなく、たびたびカナメのことを困らせることになる。無類のカルボナーラ好き。


若葉(わかば) ソウヤ 16歳男子

カナメたちと同じ高校一年生で、”第六の力の王子”。成績と容姿が優れている上に、人当たりも悪くないため、同級生たちからよくモテているが・・・信心深く、よく礼拝堂に訪れている。


浅木(あさき) チヅル 16歳女子

カナメたちと同じ高校一年生で、”第六の力の姫の一人”。カナメやトワネほどではないが、馴れ合うことが苦手な性格をしており、口調もキツい。契約相手のソウヤとは幼馴染。


九音(くおん) ヒヨリ 18歳女子

カナメたちよりも2つ歳上の先輩に当たる、”第六の力の姫の一人”。ロシアからの帰国子女で、強い正義感の持ち主。その性格の通り優秀な戦士であり、面倒見も良い。


真弓(まゆみ) マナカ 18歳女子

ヒヨリと同じくロシアからの帰国子女で、”第六の力の姫の一人”。常に顔面にカラスがデザインされた鉄仮面を付けていて、お嬢様口調で話をする。ヒヨリとは古くからの仲であり、契約相手でもある。


シィア 15歳女子モデル

長く”ANDREI”で働く美少女アンドロイド、正式名称はSI-A49。一応梢トキコの助手という役職だが、雑用も淡々とこなす。長く人間に仕えて来たからか、皮肉屋ところがある。口癖は『アホ』。


四季(しき) イズミ 16歳女子

・・・???


(こずえ) トキコ 36歳女子

“ANDREI”の科学者で、カナメたちが暮らすオンボロアパート”花色荘”の管理人。大人気なく怒りっぽい性格をしている。カナメたちに対して厳しい言い方をすることが多いが、一応彼らの保護者だったりする。


神野(じんの) タエ 78歳女子

“オソレ”の破壊を目的とした組織”ANDREI”の司令であり、カナメの祖母。カナメとは長く疎遠だったが、”オソレ”を破壊するために彼の力を借りようとする。


日向(ひなた) リュウマ 36歳男子

日本帝国軍から派遣された軍人で、階級は陸佐。ただし、軍人らしさは全くない。戦略班のリーダーだが、実質的に”ANDREI”のトップ2の立場におり、タエの側近的な役割を担っていることが多い。トキコとは過去に色々あったとか、なかったとか。


神野(じんの) アキラ 44歳男子

カナメの父親。いつも仕事で帰って来るのが遅いため、カナメとは上手くコミュニケーションが取れておらず、そのことを気にしている。

 

神野(じんの) アイラ 女子

カナメの母親。カナメが幼い頃に亡くなっている。




ゲストキャラクター




MA-RA337型のアンドロイド 18歳女子モデル

シィアよりも後に登場したアンドロイド。シィアと比較するとかなり人間的な表情が出来るのに加えて、欠陥も少ない。


トキコがバーで出会った男 30代後半男子

・・・???


イザベル・カーフェン 16歳?女子

一生懸命、真面目、純粋の三拍子が揃ったドジっ娘。良くも悪くもまっすぐな性格のため、気合いが空回りすることもしばしば。ある時カナメたちと出会い、そこから交流を深めるようになる。


アマネ・カーフェン 18歳?女子

イザベルの姉。何かとやらかすことが多いイザベルのことをいつも厳しく叱っている。一人称は『俺』だが、食器集めが趣味という可愛い一面も。


ルシファリア 年齢?女子

・・・???


ウラジーミル・アンドレイ 65歳男子

・・・???


ヒラン・アンドレイ 14歳女子

・・・???


ロベール=フォン・アンドレイ 18歳男子

・・・???


クレナ・アンドレイ 21歳女子

・・・???


九音(くおん) アリカ 40歳女子

ヒヨリの母親。


博士 17〜18歳女子

本名不明。”あるもの”を連れている。


タカヤ 30代前半男子

・・・???


ヨハリル 20代前半?男子

・・・???


C 16歳?女子

リュウマの話に登場した好奇心旺盛な少女。ある日、キファーと出会うことになる。


キファー 16歳?男子

Cと同じくリュウマに登場した少年。Cとは違い大人しく、いつも寂しげな様子をしている。


ユーリ 60歳?男子

Cの叔父。


ガラファリア 20代後半?女子

・・・???


神野(じんの) アイハ 40代前半女子

カナメの叔母。”夢路村”で、喫茶”四重奏の夢”を経営している。


イ・ジヨン 20代前半女子

韓国から来た留学生。喫茶”四重奏の夢”を経営を手伝いながらアイハの家でホームステイをしている。


リツ 27歳女子

ある過去を抱えている信仰者。


スグル 30代前半男子

・・・???

◯1回想/神野家庭(約11年前/朝)

 快晴

 自宅の庭にいる5歳頃のカナメと、カナメの母、神野アイラ

 カナメの家の庭には物干しスタンドがある

 アイラの年齢は20代後半頃

 アイラは物干しスタンドに洗濯物を干している

 アイラの横には洗濯物が入っているカゴが置いてある

 しゃがんで地面を見ている5歳頃のカナメ

 5歳頃のカナメの足元にはアリがいる

 足元にいるアリを見ている5歳頃のカナメ

 

アイラ「(洗濯物を物干しスタンドに干しながら)あなたは蝶ではないのに、いつもその壁を乗り越えようと、金色の羽を羽ばたかせる。1度目は壁にぶつかり、2度目は鷹に邪魔された。3度目にもなると、あなたの羽は引き裂かれ、とても飛べるような状態ではいられなかった。あなたが壁の中に残ると決めた時、彼女は心底悲しんだ」


 空は快晴なのにも関わらず雪が降り始める

 洗濯物を物干しスタンドに干すのをやめるアイラ


アイラ「(洗濯物を物干しスタンドに干すのをやめて)見てカナメ!雪だわ!」


 5歳頃のカナメはしゃがんだまま足元のアリを見るのをやめる

 しゃがんでいる5歳頃のカナメの頭にパラパラと雪がかかる

 アイラは口を開けて雪を食べようとする

 立ち上がる5歳頃のカナメ

 5歳頃のカナメは楽しそうに口を開けて雪を食べようとする

 アイラは口を開けて雪を食べようとするのをやめる

 楽しそうに口を開けて雪を食べようとしている5歳頃のカナメのことを見て笑うアイラ


アイラ「(楽しそうに口を開けて雪を食べようとしている5歳頃のカナメのことを見て笑って)雪は幸せの味がするのよ、いっぱい食べたら、カナメはそれだけ幸せになれるわ」


◯2回想戻り/電車内/夢路村に向かう道中(日替わり/朝)

 外は雪がパラパラ降っている

 古いローカル線の電車に乗っているカナメ、チヅル、イズミ

 カナメたちが乗っている古いローカル線の電車は向かい合わせのボックス席しか座席がない

 カナメたちが乗っている古いローカル線の電車は山に囲まれた田んぼ道を走っている

 カナメたちが乗っている古いローカル線の電車にはカナメたちの他にも数人の客がいる

 カナメ、チヅル、イズミは古いローカル線のボックス席に向かい合って座っている

 カナメは眠っている

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えている

 透明な箱に入っている肉塊になったソウヤには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている

 チヅルが抱き抱えている透明な箱の中の肉塊は”帰化”したソウヤの魂

 古いローカル線の外を見ているイズミ

 少しするとカナメが目を覚ます

 古いローカル線の外には全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像がある


イズミ「(古いローカル線の外にある全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像を見て)ねねね!!何あれ!!」


 チヅルは透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま古いローカル線の外を見る


チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま古いローカル線の外を見て)あれって?」

イズミ「(古いローカル線の外にある全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像を見たまま)ほらほらほら!あのでっかい石像みたいなやつ!」


 チヅルは透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま古いローカル線の外を見ているが、チヅルには全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像が見えていない


チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱え古いローカル線の外を見たまま)石像なんてどこにもないっしょ」

イズミ「(古いローカル線の外にある全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像を見たまま)はあ?あるじゃんかあそこに」

チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱え古いローカル線の外を見たまま)バグってんじゃないの、あんたの目」

イズミ「(古いローカル線の外にある全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像を見たまま)いや、バグってるのはそっちでしょ、あんなでっかいのに」

 

 カナメは古いローカル線の外を見る

 

カナメ「(古いローカル線の外を見て)雪だ・・・」

チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱え古いローカル線の外を見たまま)石像は?見えんの?」

カナメ「(古いローカル線の外を見たまま)ううん」


 イズミは古いローカル線の外にある全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像を見るのをやめる


イズミ「(古いローカル線の外にある全長30メートルほどの赤ちゃんを抱き抱えている巨大な妊婦の石像を見るのをやめて)へぇー、兄さんの目も節穴なんだ」


 チヅルは透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま古いローカル線の外を見るのをやめる


チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま古いローカル線の外を見るのをやめて)2体1なんだからそっちが節穴だろ」

イズミ「あ、じゃあ視力検査する?因みに私2だよ?」

チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま舌打ちをして)チッ・・・あたしも1.5はあるのに・・・」

イズミ「(自慢げに)ふふん、クローンを舐めるなってわけですよ」


 古いローカル線の外にある田んぼ道は少しずつ雪が積もり始める

 カナメは古いローカル線の外を見たままポケットから小さなスイッチを取り出す

 古いローカル線の外を見るのをやめて小さなスイッチを見るカナメ

 カナメが見ている小さなスイッチはオフになっている


カナメ「(オフになっている小さなスイッチを見たまま)そろそろ乗り換えだ」

チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま)うん」


◯3路峰駅(朝)

 雪がパラパラ降っている

 路峰駅のホームは広く、古い木造の駅舎になっている

 路峰駅のホームには誰もいない

 少しすると路峰駅のホームに古いローカル線の電車がやって来る

 路峰駅のホームに古いローカル線の電車が止まる

 古いローカル線の電車の扉が開く 

 古いローカル線の電車からカナメ、チヅル、イズミが路峰駅のホームに降りて来る

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えている

 透明な箱に入っている肉塊になったソウヤには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている

 チヅルが抱き抱えている透明な箱の中の肉塊は”帰化”したソウヤの魂


イズミ「(古いローカル線の電車から路峰駅のホームに降りて)うっわさっむ、ちょー寒い」

チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま)何とか村はもっと寒いんじゃないの?」

カナメ「夢路村ね。山奥だから寒いと思うよ」

イズミ「マジで?私死んじゃうかも」


 カナメ、チヅル、イズミは路峰駅のホームの出口に向かって歩き始める


チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま)死にはしないだろうけど、雪で明日帰れんのかな」

カナメ「トロッコが動けば帰れるよ」

イズミ「でもノスタルギアの影響も出るらしいよ?」

カナメ「そうなんだ。帰れそうになかったら、叔母さんに頼んで一泊余分に泊めてもらうよ」

チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま)あたしあの婆さんの家族と関わるのは嫌なんだけど」

カナメ「僕もお婆ちゃんの・・・」


 カナメは話途中で口を閉じる

 立ち止まるカナメ

 カナメは振り返る

 路峰駅の古い木造の駅舎の天井から、一本の麻縄がぶら下がっている

 路峰駅の古い木造の駅舎の天井からぶら下がっている一本の麻縄は、風で揺れている

 カナメは路峰駅の古い木造の駅舎の天井からぶら下がり、風で揺れている一本の麻縄を見ている

 少しの沈黙が流れる

 チヅルは透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま振り返る


チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま振り返って)どうした?」

カナメ「(路峰駅の古い木造の駅舎の天井からぶら下がり風で揺れている一本の麻縄を見たまま)何でもない」

イズミ「先行っちゃうよ?兄さん」


 カナメは路峰駅の古い木造の駅舎の天井からぶら下がり、風で揺れている一本の麻縄を見るのをやめる

 路峰駅のホームの出口に向かって歩き始めるカナメ


チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま)カナメの叔母さんってどんな人なの?」

カナメ「喫茶店をやってた」

チヅル「(透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま)何それ、想像がつかないんだけど」

カナメ「よく、覚えてないんだ。小さい頃に1、2回会ったきりだから」


◯4線路(朝)

 パラパラ雪が降っている

 山道の中にある線路にいるカナメ、チヅル、イズミ

 カナメたちがいる線路には雑草が生い茂っており、周囲は木々に囲まれている

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは透明な箱に入っている肉塊になったソウヤを抱き抱えている

 透明な箱に入っている肉塊になったソウヤには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている

 チヅルが抱き抱えている透明な箱の中の肉塊は”帰化”したソウヤの魂

 カナメたちの頭の上と、チヅルが抱き抱えている肉塊になったソウヤが入っている透明な箱の上には少し雪が積もっている

 少しするとカナメたちが立っている線路の正面から手押しトロッコが見えて来る

 手押しトロッコの上にはお爺さんが立っており、お爺さんがトロッコのハンドルを押してカナメたちがいるところに向かっている

 手押しトロッコの上にはラジオが置いてある

 チヅルは抱き抱えている肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を2回軽く叩く

 チヅルが抱き抱えている肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を2回軽く叩くと、透明な箱が真っ黒になり、中に入っている肉塊になったソウヤが見えなくなる

 手押しトロッコのお爺さんはトロッコのハンドルを押すのをやめる

 手押しトロッコは慣性でカナメたちがいるところの手前まで進み、ゆっくり止まる 


カナメ「夢路村まで」

手押しトロッコのお爺さん「あいよ」


 カナメは手押しトロッコに乗る

 カナメに続いて手押しトロッコに乗る真っ黒の箱を抱き抱えているチヅルとイズミ


手押しトロッコのお爺さん「3人ともおっこちないようにな」

イズミ「うん」


 手押しトロッコのお爺さんはラジオの電源をつける

 ラジオからはノイズ音が流れ始める

 トロッコのハンドルを押し始める手押しトロッコのお爺さん

 カナメ、チヅル、イズミが乗っている手押しトロッコは、山道の中にある線路をゆっくり進み始める

 チヅルは手押しトロッコに乗り真っ黒な箱を抱き抱えたまま、チラッとトロッコのハンドルを押しているお爺さんのことを見る

 トロッコのハンドルを押している手押しトロッコのお爺さんは、右手の人差し指が欠けている

 カナメとイズミは手押しトロッコに乗ったまま山道を見ている

 ラジオからはノイズ混じりの男の声が流れ始める


ラジオの男「(ノイズ混じりの声で)12月24日、クリスマスイブの夢路村の気温は最高5℃、最低−7℃で、曇り時々雪が予想されます」


 カナメ、チヅル、イズミが乗っている手押しトロッコの速度が少しずつ上がる

 山道には赤ちゃんを抱き抱えている妊婦の石像がある

 山道にある赤ちゃんを抱き抱えている妊婦の石像は、◯2のイズミが古いローカル線の電車から見た巨大な石像と違って、等身大の人間のサイズをしている

 イズミは手押しトロッコに乗ったまま、山道にある赤ちゃんを抱き抱えている妊婦の石像を見ている


ラジオの男「(ノイズ混じりの声で)体が冷えた際は、喫茶、四重奏の夢で暖かいココアを一杯飲んでから帰路につきましょう」


 山道にある赤ちゃんを抱き抱えている妊婦の石像の手が、イズミに向かって少しだけ動く

 イズミは手押しトロッコに乗り山道にある赤ちゃんを抱き抱えている妊婦の石像を見たまま、石像の手が自分に向かって少しだけ動いたことに驚く

 手押しトロッコに乗り山道にある赤ちゃんを抱き抱えている妊婦の石像を見て驚いたまま、石像に向かって小さく手を振り返すイズミ

 

ラジオの男「(ノイズ混じりの声で)明日、25日に地球に接近する小惑星ノスタルギアは、生憎の天候のため、目視することは難しいかと思われます」


 手押しトロッコに乗り真っ黒な箱を抱き抱えたまま、空を見上げるチヅル

 カナメたちが乗っている手押しトロッコの上では、一匹の鶴が飛んでいる

 チヅルは手押しトロッコに乗り真っ黒な箱を抱き抱えたまま、空を見上げて飛んでいる鶴を見ている


ラジオの男「(ノイズ混じりの声で)ですが、天文台の天体望遠鏡からは観測が出来るかもしれません」


 カナメ、チヅル、イズミが乗っている手押しトロッコの正面にはトンネルがある

 手押しトロッコの正面にあるトンネルのアーチの上の部分から、一本の麻縄がぶら下がっている

 

ラジオの男「(ノイズ混じりの声で)また、ノスタルギアが地球に最も接近する午前2時9分頃は、約45秒間、無重力状態となります」


 カナメは手押しトロッコに乗ったまま山道を見るのをやめる

 手押しトロッコの正面にあるトンネルのアーチの上の部分からぶら下がっている一本の麻縄は、風で揺れている

 チヅルは手押しトロッコに乗り真っ黒な箱を抱き抱えたまま、飛んでいる鶴を見るのをやめる

 手押しトロッコに乗ったまま、手押しトロッコの正面にあるトンネルのアーチの上の部分からぶら下がり風で揺れている一本の麻縄を見ているカナメ

 カナメたちが乗っている手押しトロッコはトンネルの中に入る

 カナメたちが手押しトロッコで進んでいるトンネルの中は真っ暗で、何も見えない

 カナメたちが手押しトロッコで進んでいるトンネルの中では、お爺さんがトロッコのハンドルを押す音、線路から鳴る金属音、ラジオから流れて来ているノイズ音が響き渡っている


『第二十四話 小惑星ノスタルギア』


 カナメたちが乗っている手押しトロッコはトンネルの中を進み続ける


◯5夢路村/喫茶”四重奏の夢”前(朝)

 雪がパラパラ降っている

 喫茶”四重奏の夢”の前にいるカナメ、チヅル、イズミ

 喫茶”四重奏の夢”は古い木造の喫茶店

 喫茶”四重奏の夢”の周りは山に囲まれており、正面には小さな運河がある

 小さな運河を一匹の鶴が泳いでいる

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは真っ暗な箱を抱き抱えている

 カナメたちの頭の上と、チヅルが抱き抱えている真っ黒な箱の上には少し雪が積もっている

 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたまま運河を泳いでいる一匹の鶴を見ている

 話をしているカナメとイズミ


イズミ「寒いし早く入ろ」

カナメ「うん」


 カナメは喫茶”四重奏の夢”の扉を開ける

 喫茶”四重奏の夢”の中に入るカナメとイズミ

 チヅルは慌てて真っ黒な箱を抱き抱えたまま運河を泳いでいる一匹の鶴を見るのをやめて、喫茶”四重奏の夢”の中に入る

 喫茶”四重奏の夢”の中にはカナメの叔母、神野アイハがいる

 アイハの年齢は40歳前半

 アイハの両目は失明している

 アイハの容姿は両目を失明していて歳を取っていることを除けば、カナメの母、神野アイラと完全に同じ姿をしている

 喫茶”四重奏の夢”の中には暖炉があり、火がついている

 喫茶”四重奏の夢”の中にはテーブルと椅子がたくさんある

 

アイハ「(少し笑って)いらっしゃい、カナくん」

カナメ「えっ・・・?」

アイハ「(少し笑いながら)来るのを待っていたわ」

カナメ「ぼ、僕が来るって分かっていたの?」

アイハ「(少し笑いながら)もちろん、お婆ちゃんから聞いていたのよ」

カナメ「そ、そうなんだ」

アイハ「(少し笑いながら)お友達も連れて来てくれたのね」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま小声で)何で分かったの・・・?」

アイハ「(少し笑いながら)足音が一人じゃなかったもの」


 真っ黒な箱を抱き抱えているチヅルの顔が赤くなる


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま顔を赤くして)ご、ごめんなさい」

アイハ「(少し笑いながら)良いのよ、気にしないで。(少し間を開けて)私はカナメの叔母、神野アイハです、いつも甥っ子がお世話になっていると母から聞きました。今日は寒い中、わざわざ来てくれてありがとう」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱え顔を赤くしたまま)こ、こちらこそい、、いつもカナメくんにはお世話になってます」

アイハ「(少し笑いながら)カナくんがお友達を連れて来てくれて嬉しいわ」

カナメ「お、叔母さん、僕から見て右に・・・僕の右にいるのが浅木チヅルさん、左にいるのが四季イズミさんで、二人とも・・・ANDREIの仲間なんだ」

アイハ「チヅルちゃんに、イズミちゃんね」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱え顔を赤くしたまま)は、はい」

イズミ「どうもです」

アイハ「3人とも寒かったでしょう?暖炉の近くのテーブルに座って」

カナメ「う、うん」


 カナメ、チヅル、イズミは暖炉の近くのテーブル席に行く

 テーブルに向かって椅子に座るカナメ、チヅル、イズミ

 

アイハ「何を飲む?うちのおすすめはココアになるんだけど」

カナメ「えっと、じゃあ僕はココアを・・・」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)あ、あたしもそれで」

アイハ「ココアを二つね」


 アイハはイズミのことを見る


アイハ「(イズミのことを見て)あなたは?お腹が空いてるなら何か作るけど、どうする?」

イズミ「うん、出来ればがっつりした物を食べたいな」

アイハ「(イズミのことを見たまま少し笑って)分かったわ。今作るから少し待ってて」


 アイハはイズミのことを見るのをやめる

 カナメたちのテーブルから離れて行くアイハ

 アイハは喫茶”四重奏の夢”のホールから厨房に行く

 少しの沈黙が流れる


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)カナメの叔母さん、透視能力でも持ってんの?」

カナメ「や、やめろよ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)でもあたしたちのことを見透かしてたじゃん」

イズミ「視力3はありそうだよね」

カナメ「ぼ、僕知らなかったんだよ、叔母さんの目が・・・見えないなんて」

イズミ「前に会った時は違ったの?」

カナメ「覚えてないよ、そんな昔のこと」

イズミ「そうなんだ」

カナメ「そ、それより叔母さんの見た目が・・・」


 カナメは話途中で口を閉じる

 再び沈黙が流れる


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)何?想像より若かったとか?」

カナメ「違うよ。(少し間を開けて)亡くなった母親にそっくりなんだ」

イズミ「あ、もしかして、ドッペルゲンガーってやつ?」


 少しの沈黙が流れる


イズミ「あれ、兄さん怒っちゃった感じ?」

カナメ「怒ってないよ、別に」

イズミ「またまたまた〜」

カナメ「ほ、本当にそっくりなんだ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)んなこと言うなら見せてよ」

カナメ「何を?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)お母さんの写真とかホログラムとか」

カナメ「持ってないよ、そんなの」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)それじゃ似てるか比べようがないじゃん」

カナメ「後で叔母さんに写真がないか聞いてみるよ。君たちに馬鹿にされるのが嫌だから」

イズミ「やっぱ怒ってる」

カナメ「怒ってないって」


 喫茶”四重奏の夢”のホールの扉が開く

 ココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを、カナメたちのテーブルに運んで来る喫茶”四重奏の夢”のスタッフ


イズミ「でもガチギレって感じだよ?」

カナメ「僕はこんなことじゃおこら・・・」


 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたまま、ココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを運んで来た喫茶”四重奏の夢”のスタッフを見る


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま、ココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを運んで来た喫茶”四重奏の夢”のスタッフを見てカナメの話を遮って)う、嘘・・・」

イズミ「どうしたの?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま、ココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを運んで来た喫茶”四重奏の夢”のスタッフを見て)か、カナメ・・・こ、この人・・・」


 カナメはとイズミはココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを運んで来た喫茶”四重奏の夢”のスタッフのことを見る

 ココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを運んで来た喫茶”四重奏の夢”のスタッフは、イ・ジヨン

 ジヨンの年齢は20代前半

 ジヨンは左腕が無くなっており、右手でココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを持っている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 

ジヨン「(右手でココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチを持ったまま片言の日本語で)お、お待たせしました、ココア・・・です」


 ジヨンは右手で器用に、ココアが注がれた3つのマグカップを乗せているトレンチをカナメたちのテーブルの上に置く

 右手でココアが注がれた3つのマグカップを、それぞれカナメ、チヅル、イズミの前に置くジヨン


イズミ「あの・・・私ココアは頼んでなかったはずなんだけど・・・」

ジヨン「(片言の日本語で)店長から・・・さ、サービスです」

イズミ「(嬉しそうに)ラッキー、ありがと」


 ジヨンは右手でトレンチを手に取る


ジヨン「(右手でトレンチを手に取って片言の日本語で)ココア、た、大変お熱くなっておりますので、火傷しないよう、気をつけて、お、お飲みください」

カナメ「(右手でトレンチを持っているジヨンのことを見たまま)と、トワネ・・・?い、生きてたの?」


 ジヨンは右手でトレンチを持ったまま韓国語で何かを言う


カナメ「(右手でトレンチを持っているジヨンのことを見たまま)えっ?」

ジヨン「(右手でトレンチを持ったまま片言の日本語で)私は・・・ソウルから留学来た・・・イ・ジヨンです」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱え右手でトレンチを持っているジヨンのことを見たまま)と、トワネだよね?何でこんなとこに・・・い、いやというか良かった・・・生きてたんだ・・・」


 ジヨンは右手でトレンチを持ったまま首を横に振る


ジヨン「(右手でトレンチを持ったまま首を横に振って片言の日本語で)わ、私・・・あなた知ってる人・・・じゃない。私、別の人」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱え右手でトレンチを持っているジヨンのことを見たまま)き、記憶でも無くしたの?」

ジヨン「(右手でトレンチを持ったまま片言の日本語で)ごめんなさい、ひ、人違い・・・し、してる」

 

 再び沈黙が流れる


カナメ「(右手でトレンチを持っているジヨンのことを見たまま)本当に・・・トワネじゃないの?」


 ジヨンは右手でトレンチを持ったまま頷く


ジヨン「(右手でトレンチを持ったまま頷いて片言の日本語で)私、イ・ジヨンです」


 少しの沈黙が流れる


ジヨン「(右手でトレンチを持ったまま片言の日本語で)ごゆっくり」


 ジヨンは右手でトレンチを持ったままカナメたちのテーブルから離れて行く

 右手でトレンチを持ったまま喫茶”四重奏の夢”のホールから厨房に行くジヨン

 カナメとチヅルは喫茶”四重奏の夢”のホールの扉を見ている

 再び沈黙が流れる

 ココアを一口飲むイズミ


イズミ「(ココアを一口飲んで)あつっ・・・けど美味しい」


 カナメとチヅルは喫茶”四重奏の夢”のホールの扉を見るのをやめる


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま喫茶”四重奏の夢”のホールの扉を見るのをやめて)ど、どういうこと?い、今のはトワネじゃなかったの?」

カナメ「僕は、トワネにしか見えなかった」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)あたしも・・・」

イズミ「やっぱドッペルじゃないのかねえ。歳も違ったし、腕が一本無かったし」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)新入りのイズミはトワネのことを知らないだろ」

イズミ「まあそうだけど。でも年齢くらいは分かってるよ?トワネって16でしょ?さっきの人とは歳が合わないじゃんか」

カナメ「じゃあ別人なのかな」

イズミ「それかドッペルゲンガー」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)アホくさ。あんなに似てる人間が他にいるわけないっしょ」


 再び沈黙が流れる

 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたままココアを一口飲む

 

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたままココアを一口飲んで)それよりさ、さっきトロッコで運んでくれたお爺さんの手、見た?」

カナメ「手?どうして?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)人差し指が欠けてたんだ」

カナメ「それがどうしたの?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)カナメの叔母さんは目が・・・あれだったでしょ。トワネも腕が無かったし・・・変だと思わない?」

カナメ「偶然だよ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)もし村全体で実験でもしてたらどうするの?」

カナメ「実験って?第六の力の?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)そ、なんせ司令が目をつけた村なんだから、何があるか分かんないでしょ」

カナメ「チヅル、あんまり失礼な言い方はしない方が良いと思うよ、一日お世話になるのに」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)どうせ向こうだってあたしたち都会の若者を馬鹿にしてるって」


 喫茶”四重奏の夢”のホールの扉が開き、トレンチに乗せたオムライスを持っているアイハが出て来る


イズミ「気になるなら調べてみたら?」


 アイハはトレンチに乗せたオムライスをカナメたちのところに運んで来る

 トレンチに乗せたオムライスをイズミの前に置くアイハ


アイハ「(トレンチに乗せたオムライスをイズミの前に置いて)お待たせしました、オムライスになります」

イズミ「わー!美味しそうだね」

アイハ「(少し笑って)特徴のある味ではないけれど、イズミちゃんの栄養になるわ」


 イズミはチラッとアイハのことを見る


アイハ「村について気になることでもあった?」

カナメ「いや・・・特には・・・」

アイハ「でも何か調べたいんでしょう?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)そ、外の川に鶴が泳いでたので、ちょっと気になって」

アイハ「(少し笑って)あれは川ではなくて運河よ。でもチヅルちゃんはねラッキーね、鶴を見れる人は滅多にはいないわ、それもこの時期にね」

カナメ「鶴なんていつ見たの?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)さっき。お店に入る前だよ」

イズミ「私見てない」

アイハ「鶴は姿を見せたい人の前にしか現れないのよ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)そうなんだ・・・」

アイハ「村のことが気になるなら、後でジヨンちゃんに案内させるわ」

カナメ「叔母さん」

アイハ「何?」

カナメ「ジヨンって人・・・僕の友達に似てるんだ」

アイハ「(少し笑って)カナくんには美人のお友達が多いのね」


 少しの沈黙が流れる


アイハ「ジヨンちゃん、ちょっと来てくれる?」


 喫茶”四重奏の夢”のホールの扉が開き、ジヨンが出て来る 

 ジヨンはカナメたちのテーブルにやって来る


アイハ「食事が終わったら、カナくんたちの村の案内をお願いして良いかしら」

ジヨン「(片言の日本語で)はい」

カナメ「い、今じゃダメかな」

アイハ「まだイズミちゃんがご飯を食べる前よ」

カナメ「あ・・・ごめん」

イズミ「兄さん、行って来て良いよ。私ここにいたいから」


 再び沈黙が流れる

 カナメはココアを一気に飲み干す

 

カナメ「(ココアを一気に飲み干して)じゃあチヅルたちはお店に・・・」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたままカナメの話を遮って)あ、あたしも行く」

カナメ「うん」


 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたままココアを一気に飲み干す

 真っ黒な箱を抱き抱えたままココアを一気に飲み干して立ち上がるチヅル

 カナメは立ち上がる

 

ジヨン「(片言の日本語で)行きましょう、か」

カナメ「そうだね」


 カナメ、チヅル、ジヨンは喫茶”四重奏の夢”から出て行く


イズミ「喧嘩しないようにねー」


◯6夢路村/喫茶”四重奏の夢”前(朝)

 雪がパラパラ降っている

 喫茶”四重奏の夢”の前にいるカナメ、チヅル、ジヨン

 喫茶”四重奏の夢”は古い木造の喫茶店

 喫茶”四重奏の夢”の周りは山に囲まれており、喫茶”四重奏の夢”の向かいには小さな運河がある

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは真っ暗な箱を抱き抱えている

 ジヨンの左腕は無くなっている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 真っ黒な箱を抱き抱えたまま小さな運河を見ているチヅル

 カナメとジヨンは話をしている


カナメ「積もるかな、雪」

ジヨン「(片言の日本語で)溶ける、思う。昨日、雨降ってましたから」

カナメ「そっか」

ジヨン「(片言の日本語で)村・・・案内します。つ、ついて来て」


 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたまま小さな運河を見るのをやめる

 歩き始めるジヨン 

 カナメとチヅルはジヨンについて行く

 小さな運河に沿って歩いて行くカナメ、チヅル、ジヨン


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)留学に来たって言ってたけど・・・」

ジヨン「(片言の日本語で)去年から、アイハさんのお家、ホームステイしてます」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)こんな小さな村に大学なんかあるの?」

ジヨン「(片言の日本語で)だ、大学には電車で行ってる」


 少しの沈黙が流れる


ジヨン「(片言の日本語で)夢路村、人口100人くらいいます」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)寂しいとこね・・・」

カナメ「叔母さんのお店で働いているの?」

ジヨン「(片言の日本語で)はい。アイハさんは、とっても良くしてくれます」

カナメ「叔母さんの目、何があったのか知ってる?」

ジヨン「(片言の日本語で)夢路村、住む人はみんなああなんです」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)ねえ、怪しい施設とかあったりしない?」

ジヨン「(片言の日本語で)し、施設、ですか?」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)なんかこうさ、人体実験とかしてる場所だよ」

ジヨン「(片言の日本語で)き、聞いたことない。夢路村あるの、天文台だけ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)ほんと?科学者はいないの?」

カナメ「チヅル、やめなよ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)気になるんだよ」

ジヨン「(片言の日本語で)村の人たち、みんな良い人です」


 再び沈黙が流れる


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)そっか・・・(少し間を開けて)変なこと聞いてごめん」

ジヨン「(片言の日本語で)気にしてません」

カナメ「(韓国語で)イ・ジヨンさんの左腕はどうしたの?」


 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたまま驚いてカナメのことを見る


ジヨン「(驚いて韓国語で)上手なのね、韓国語」

カナメ「コマウォ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えカナメのことを見たまま)え、何、カナメ韓国語喋れたの?」

カナメ「そうみたい」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えカナメのことを見たまま)そうみたいって何それ」

カナメ「僕も初めて韓国語を話せるなんて知ったんだ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えカナメのことを見たまま)は・・・?どゆこと・・・?」


 少しの沈黙が流れる

 真っ黒な箱を抱き抱えたままカナメのことを見るのをやめる


ジヨン「(片言の日本語で)私の左手、生まれた時からなかった。それが、私のアイデンティティです」

カナメ「そう・・・」


 少しするとカナメ、チヅル、ジヨンは古く小さな教会の前を通りかかる

 古く小さな教会の前で立ち止まるジヨン

 カナメとチヅルはジヨンに合わせて古く小さな教会の前で立ち止まる


ジヨン「(片言の日本語で)む、村の唯一、教会です」

カナメ「イ・ジヨンさんには信仰があるの?」

ジヨン「(片言の日本語で)ジヨンと呼んで」

カナメ「えっと、ジヨン」

ジヨン「(片言の日本語で少し笑って)悪くない、カナメ」


 再び沈黙が流れる


ジヨン「(片言の日本語で)韓国には、たくさん教会あります。私、信者だった」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)だった?」

ジヨン「(片言の日本語で)今も、心、信者だけど、心だけ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)あたしも同じ」

ジヨン「(片言の日本語で少し笑って)仲間、ね」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)そうだよ、あたしたちは仲間だったんだ」


 少しの沈黙が流れる

 ジヨンはカナメのことを見る


ジヨン「(片言の日本語で)カナメ、私の知り合いに似てるわ。彼は、教会にいたの」


◯7回想/韓国/教会(約1年前/夕方)

 夕日が沈みかけている

 教会にいるジヨン

 教会の中は広く、たくさんの椅子がある 

 教会のガラスはステンドグラスになっている 

 教会の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある

 教会の中には懺悔室がある

 教会の壁には絵画が描かれており、絵画の中には背中から真っ白な翼が生えているカナメによく似た少年がいる

 ジヨンの左腕は無くなっている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 ジヨンは教会の壁に描かれている背中から真っ白な翼が生えたカナメによく似た少年の絵画を見ている


◯8回想戻り/夢路村/教会前(朝)

 雪がパラパラ降っている

 古く小さな教会の前にいるカナメ、チヅル、ジヨン

 古く小さな教会の周りは山に囲まれており、教会の向かいには小さな運河がある

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは真っ暗な箱を抱き抱えている

 ジヨンの左腕は無くなっている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 カナメたちの頭の上と、チヅルが抱き抱えている真っ黒な箱の上には少し雪が積もっている

 話をしているカナメたち


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)ドッペルゲンガーじゃないの、カナメの」


 カナメは古く小さな教会を見る

 古く小さな教会の門には一本の麻縄がぶら下がっている

 古く小さな教会の門にぶら下がっている一本の麻縄は、風で揺れている


◯9夢路村/喫茶”四重奏の夢”(昼前)

 外は雪がパラパラ降っている

 喫茶”四重奏の夢”にいるイズミとアイハ

 喫茶”四重奏の夢”の中には暖炉があり、火がついている

 喫茶”四重奏の夢”の中にはテーブルと椅子がたくさんある

 アイハの両目は失明している

 アイハの容姿は両目を失明していて歳を取っていることを除けば、カナメの母、神野アイラと完全に同じ姿をしている

 暖炉の近くのテーブルに向かって椅子に座っているイズミ

 イズミはオムライスを食べ、ココアを飲んでいる

 イズミのテーブルの近くで立っているアイハ

 イズミはオムライスを一口食べる


イズミ「(オムライスを一口食べて)美味しい、美味しい、美味しい」

アイハ「(少し笑って)あら、ありがとう。(少し間を開けて)私も座って良いかしら」


 イズミは椅子を引く


イズミ「(椅子を引いて)はい」


 アイハはテーブルに向かってイズミが引いた椅子に座る


アイハ「(テーブルに向かってイズミが引いた椅子に座って)助かるわ、イズミちゃん」

イズミ「このお店はアイハさんが一人でやってるの?」

アイハ「そうよ、今はジヨンちゃんが手伝ってくれているけどね」


 イズミは再びオムライスを一口食べる


イズミ「(オムライスを一口食べて)凄いね、目が見えないのに」

アイハ「(少し笑って)私も見えないなりによくやっていると思うわ」


 少しの沈黙が流れる


アイハ「私は生まれてついて目の病気だったの、だから今となっては見えないことが一番の視力なのよ」

イズミ「そうなんだ。でもアイハさんは全部見えてそうだよね」

アイハ「全部?」

イズミ「私の体とか」


 再び沈黙が流れる


イズミ「夢路村にいる人たちは、みんなイズミちゃんと同じなの」


◯10夢路村/運河沿いの道(昼前)

 雪がパラパラ降っている

 小さな運河沿いの道にいるカナメ、チヅル、ジヨン

 小さな運河は山に囲まれている

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは真っ暗な箱を抱き抱えている

 ジヨンの左腕は無くなっている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 カナメたちの頭の上と、チヅルが抱き抱えている真っ黒な箱の上には少し雪が積もっている

 カナメたちの正面の山頂付近には古い天文台がある

 カナメたちは小さな運河沿いの道を歩いている

 話をしているカナメ、チヅル、ジヨン


カナメ「あのロープは何に使うの?」

ジヨン「(片言の日本語で)どこの、ロープですか?」

カナメ「教会とか、トンネルの前にぶら下がってたロープだよ」

ジヨン「(片言の日本語で)ああ・・・」

チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま)ロープなんかあったっけ?」

カナメ「えっ?チヅルは見てないの?」

チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま)あたし知らないよ、教会とトンネル以外でどこにあったの?」

カナメ「路峰駅のホーム。駅舎からぶら下がってた」

チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま不思議そうに)全然気が付かなかったけど・・・」


 少しの沈黙が流れる

 ジヨンは正面の山頂付近にある古い天文台を指差す


ジヨン「(正面の山頂付近にある古い天文台を指差して片言の日本語で)あれ、天文台です。ゆ、夢路村の名所」

チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま)ノスタルギアが見れるって話の?」

ジヨン「(正面の山頂付近にある古い天文台を指差したまま片言の日本語で)そう、夜中に行くのが素敵ね」

チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま)へぇー、見てみたいな」


 ジヨンは正面の山頂付近にある古い天文台を指差すのをやめる


ジヨン「(正面の山頂付近にある古い天文台を指差すのをやめて片言の日本語で)デートにもピッタリ」

チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま少し寂しそうに)相手がいないから・・・」


 ジヨンはチラッとチヅルが抱き抱えている真っ暗な箱を見る


ジヨン「(チラッとチヅルが抱き抱えている真っ暗な箱を見て片言の日本語で)そ、その箱は?」

チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま)これは・・・(少し間を開けて)ごめん、言えない」


 再び沈黙が流れる

 小さな運河の正面から屋形船がやって来る

 カナメは小さな運河の正面からやって来た屋形船を見る


カナメ「(小さな運河の正面からやって来た屋形船を見て)屋形船だ」


 チヅルとジヨンは小さな運河の正面からやって来た屋形船を見る


チヅル「(小さな運河の正面からやって来た屋形船を見て)ほんとだ」

ジヨン「(小さな運河の正面からやって来た屋形船を見たまま片言の日本語で)美味しいご飯とお酒がたくさん、私、時々行くの」

カナメ「(小さな運河の正面からやって来た屋形船を見たまま)良いね、そういうの」

ジヨン「(小さな運河の正面からやって来た屋形船を見たまま少し笑って片言の日本語で)ええ。とっても良いわ」


◯11夢路村/喫茶”四重奏の夢”(昼前)

 外は雪がパラパラ降っている

 喫茶”四重奏の夢”にいるイズミとアイハ

 喫茶”四重奏の夢”の中には暖炉があり、火がついている

 喫茶”四重奏の夢”の中にはテーブルと椅子がたくさんある

 アイハの両目は失明している

 アイハの容姿は両目を失明していて歳を取っていることを除けば、カナメの母、神野アイラと完全に同じ姿をしている

 暖炉の近くのテーブルを挟んで向かい合って椅子に座っているイズミとアイハ

 イズミの前には空になったオムライスの皿がある

 ココアを飲んでいるイズミ

 イズミはココアを一口飲む


イズミ「(ココアを一口飲んで)ここは好きだよ。居心地が良いから」

アイハ「世界はただの外枠だわ。このお店もそうよ」

イズミ「世界も好き、好き、好き。まだ知らないことだらけでちょー楽しいんだ、生きてるのが」

アイハ「(少し笑って)楽しく生きていられるなんて素晴らしいことじゃない」

イズミ「うん。だけど・・・ここは私の知ってる世界とは全然違う感じ」

アイハ「どう違うの?」

イズミ「凄く・・・変なんだよね」


 少しの沈黙が流れる


イズミ「ごめんなさい」

アイハ「良いのよ。イズミちゃんがそう感じるのも無理はないわ」

イズミ「どうして、どうして、どうして・・・ああもう、めんどくさいな・・・」

アイハ「落ち着いて」

イズミ「生まれた時からいっつもこれだよ、何故か頭に思い浮かんだことを3回繰り返すんだ、マジキモいって感じでしょ」

アイハ「あなたは素敵よ」

イズミ「(少し笑って)アイハさんには負けるけど、ありがと」


 再び沈黙が流れる


イズミ「ここに来るまでに、2回石像を見かけたんだ。(少し間を開けて)なんか・・・私に似てた気がした」

アイハ「どんな石像?」


 イズミは再びココアを一口飲む


イズミ「(ココアを一口飲んで)妊婦が赤ちゃんを抱えてるやつ。兄さんたちには見えなかったらしい、変だよね」

アイハ「確かに、イズミちゃんに似ているわ」

イズミ「分かるの?」

アイハ「もちろん」


 少しの沈黙が流れる


イズミ「よく考えたら私もめっちゃ変だ・・・出会ったばっかのアイハさんにこんな話をしてるんだから」

アイハ「イズミちゃんが変わっているのではなくて、周りがあなたと違うと思っているだけよ」

イズミ「いや、いや、いや、実際違うんだよ?だって私・・・」

アイハ「(イズミの話を遮って)クローンだから?」


 再び沈黙が流れる


イズミ「凄いな・・・そんなことまで分かっちゃうんだ」

アイハ「だって私たちは、姉妹だもの」


 イズミはアイハのことを見る

 

イズミ「(アイハのことを見て)人類は全て、兄弟なのかな」

アイハ「ええ、きっとそうよ。(少し間を開けて)お顔を、少し触って良いかしら」

イズミ「(アイハのことを見たまま)うん」


 アイハはイズミの顔にゆっくり手を伸ばす

 イズミの顔をそっと触るアイハ


アイハ「(イズミの顔をそっと触って)不安なのね」

イズミ「(アイハのことを見たままアイハに顔をそっと触られて)オソレは全員破壊したけど・・・他の仕事がさ・・・」

アイハ「(イズミの顔をそっと触りながら)夢路村はあなたを歓迎するわ・・・」


 アイハはイズミの顔をそっと触りながら、ゆっくり手を下ろす

 イズミの顔をそっと触りながらゆっくり手を下ろして、イズミのお腹を触るアイハ

 アイハはイズミのお腹をそっと触りながら、イズミのことを見る

 イズミとアイハの目が合う


アイハ「(イズミと目が合ったままイズミのお腹をそっと触って)ノスタルギアはイズミちゃんたちを待っているのよ」


 少しの沈黙が流れる

 イズミはアイハにそっとお腹を触られたままアイハの失明している目から顔を背ける

 アイハにそっとお腹を触られたままアイハの失明している目から顔を背けて、ポケットから小さなスイッチを取り出すイズミ

 イズミはアイハにそっとお腹を触られたまま小さなスイッチを見る

 アイハにそっとお腹を触られたままイズミが見ている小さなスイッチはオフになっている


◯12夢路村/運河沿いの道(昼)

 雪がパラパラ降っている

 小さな運河沿いの道にいるカナメ、チヅル、ジヨン

 小さな運河は山に囲まれている

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 チヅルは真っ暗な箱を抱き抱えている

 ジヨンの左腕は無くなっている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 カナメたちの頭の上と、チヅルが抱き抱えている真っ黒な箱の上には少し雪が積もっている

 カナメたちの正面の山頂付近には古い天文台がある

 カナメたちは小さな運河沿いの道を歩いている 

 少しするとカナメたちは屋外の小さな占い店の前を通りかかる

 屋外の小さな占い店はポリステル製の幕に覆われており、中は見えなくなっている

 屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕には”占い”と書かれている

 屋外の小さな占い店の前で立ち止まるジヨン

 カナメとチヅルはジヨンに合わせて屋外の小さな占い店の前で立ち止まる

 真っ暗な箱を抱き抱えたまま屋外の小さな占い店を見るチヅル


チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま屋外の小さな占い店を見て)占いなんかあんだ」

ジヨン「(片言の日本語で)た、ただの占いじゃないの」


 チヅルは真っ暗な箱を抱き抱えたまま屋外の小さな占い店を見るのをやめる


チヅル「(真っ暗な箱を抱き抱えたまま屋外の小さな占い店を見るのをやめて)なんか違うの?」

ジヨン「(片言の日本語で)特別、このお店」


 屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕から、占い師のお婆さんが出て来る

 占い師のお婆さんは顔にコブがある

 占い師のお婆さんは真っ暗な箱を抱き抱えているチヅルに手招きをする


占い師のお婆さん「(真っ暗な箱を抱き抱えているチヅルに手招きをして)お嬢さんお嬢さん」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)え・・・な、何・・・?」

占い師のお婆さん「(真っ暗な箱を抱き抱えているチヅルに手招きをしたまま)ちょっといらっしゃいな」


 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたままカナメとジヨンのことを見る


カナメ「行っておいでよ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えカナメとジヨンのことを見たまま)えぇ・・・あたしこういうのは信じない口なんだけど・・・」

ジヨン「(片言の日本語で)行った方が良い、溜め込んでること、は、吐き出せるから」


 少しの沈黙が流れる

 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたままカナメとジヨンのことを見るのをやめる 

 真っ暗な箱を抱き抱えているチヅルに手招きをするのをやめる占い師のお婆さん


占い師のお婆さん「(真っ暗な箱を抱き抱えているチヅルに手招きをするのをやめて)お代なら取らないよ」


 占い師のお婆さんは屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕を潜って、小さな占い店の中に戻って行く


チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)ますます胡散臭いって・・・」

カナメ「僕たち、待ってるからチヅル」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)分かったよ・・・」


 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたまま、渋々屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕を潜って小さな占い店の中に入る

 屋外の小さな占い店の中は狭い

 屋外の小さな占い店にはテーブルと2脚の椅子があり、占い師のお婆さんがテーブルに向かって椅子に座っている

 屋外の小さな占い店のテーブルには筮竹が入っている筮筒、占星術で使うホロスコープ、ルーンストーンが置いてある

 チヅルは真っ黒な箱を抱き抱えたままテーブルを挟んで占い師のお婆さんと向かい合って椅子に座る

 真っ黒な箱を抱き抱えたまま屋外の小さな占い店の中を見るチヅル


占い師のお婆さん「箱を机の上に」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま屋外の小さな占い店の中を見るのをやめて)え」


 占い師のお婆さんはテーブルを軽く叩く


占い師のお婆さん「(テーブルを軽く叩いて)ここだよ」

チヅル「(真っ黒な箱を抱き抱えたまま)だ、大事なもんなんだこれは」

占い師のお婆さん「分かっているよ。変なことはしないからここに置くんだ」

 

 チヅルは抱き抱えている真っ黒な箱を後ろに隠す

 再び沈黙が流れる


占い師のお婆さん「その中の魂はね、夢路村の人たちのように現世を彷徨っているのさ」

チヅル「(抱き抱えている真っ黒な箱を後ろに隠したまま驚いて)な、何で魂が入ってるって分かったの?」

占い師のお婆さん「直感だよ。机には置かなくても良いから、せめて中身を見せておくれ」

チヅル「(抱き抱えている真っ黒な箱を後ろに隠したまま)な、何もしないと約束して」

占い師のお婆さん「指一本触れないとも」


 少しの沈黙が流れる

 チヅルは抱き抱えている真っ黒な箱を後ろに隠したまま、真っ黒な箱を2回軽く叩く

 チヅルが抱き抱えている真っ黒な箱を後ろに隠したまま真っ黒な箱を2回軽く叩くと、真っ黒な箱が透明になる

 チヅルが抱き抱え後ろに隠している透明な箱の中には、肉塊になったソウヤが入っている

 透明な箱に入っている肉塊になったソウヤには目と口がある

 透明な箱に入っている肉塊になったソウヤは眠っている

 チヅルが抱き抱え後ろに隠している透明な箱の中の肉塊は”帰化”したソウヤの魂


チヅル「(肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱え後ろに隠したまま)ほら、見せたよ」


 再び沈黙が流れる


占い師のお婆さん「お嬢さんは鶴の恩返しという話を知っているかね」

チヅル「(肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱え後ろに隠したまま)し、知ってるけど・・・」


 占い師のお婆さんは立ち上がる

 

占い師のお婆さん「(立ち上がって)では行くかね、鶴の元へ」

チヅル「(肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱え後ろに隠したまま)う、占いは?」

占い師のお婆さん「占うなんて約束した覚えはないよ」


 占い師のお婆さんは屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕の裏から外に出ようとする


占い師のお婆さん「(屋外の小さな占い店を覆っている幕の裏から外に出ようとして)お嬢さんは、鶴の恩返しよりも当たりもしない占い方に興味があるのかい」

チヅル「(肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱え後ろに隠したまま)う、ううん。そんなことない」

占い師のお婆さん「(屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕の裏から外に出ようとしたまま)ならついておいで」


 占い師のお婆さんは屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕の裏から外に出る

 肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えたまま、透明な箱を後ろに隠すのをやめるチヅル

 チヅルは肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えたまま立ち上がる

 肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えたまま、屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕の裏から外に出るチヅル

 屋外の小さな占い店の裏は山道になっている

 占い師のお婆さんは山道を登っている

 肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えたまま、占い師のお婆さんの後をついて行くチヅル

 チヅルと占い師のお婆さんは山道を登り続ける

 山道には狐がおり、木々に隠れながらチヅルと占い師のお婆さんのことを見ている

 チヅルと占い師のお婆さんが登っている山道の上空では、一匹の鶴が飛んでいる

 チヅルと占い師のお婆さんが登っている山道は、少しずつ雪の山道になり始める

 チヅルは肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えたまま空を見上げて、上空を飛んでいる一匹の鶴を見る

 少しの沈黙が流れる

 肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えたまま、上空を飛んでいる一匹の鶴を見るのをやめるチヅル

 少しするとチヅルと占い師のお婆さんが登っている山道の先に、古い給水塔が見えて来る 

 古い給水塔の屋根には雪が積もっている

 古い給水塔の隣には大きな池がある

 チヅルと占い師のお婆さんは給水塔と大きな池の前に辿り着く

 チヅルと占い師のお婆さんの上空では変わらず一匹の鶴が飛んでいる


チヅル「(肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えたまま)ここに鶴が集まってくんの?」


 再び沈黙が流れる

 突然、占い師のお婆さんは肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を抱き抱えていたチヅルの背中を勢いよく叩く

 占い師のお婆さんに背中を勢いよく叩かれた衝撃で、チヅルは抱き抱えていた肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を大きな池の中に落とす

 

チヅル「(抱き抱えていた肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を大きな池の中に落として大きな声で)ソウヤ!!!!」


 チヅルは急いで大きな池に入る

 大きな池に落ちた肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を探すチヅル


チヅル「(大きな池に落ちた肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を探して大きな声で)ソウヤ!!!!ど、どこ!?!?どこにいるの!?!?」


 大きな池は深く、チヅルの体はあっという間に首まで池に浸かる

 チヅルは大きな池に落ちた肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を探しながら、大きな池の中に潜る

 大きな池の中は酷く濁っており、底が見えなくなっている

 大きな池の中を潜りながら、肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を探すチヅル

 チヅルは大きな池の中を潜り、肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を探しながら”ソウヤ!!!!”と叫ぶ

 チヅルは大きな池の中を潜り、肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を探しながら”ソウヤ!!!!”と叫んだチヅルの口から、大きな気泡が漏れる

 池の見えない底からは大きなボールチェーンのような物が伸びている

 大きな池の中を潜りながら、肉塊になったソウヤが入っている透明な箱を探すのをやめるチヅル

 チヅルは大きな池の中を潜りながら、見えない底から伸びている大きなボールチェーンのような物を掴む

 大きな池の中を潜りながら、見えない底から伸びている大きなボールチェーンのような物を引っ張るチヅル

 

◯13回想/花色荘ソウヤの部屋(夜)

 外は強い雨が降っている

 花色荘のソウヤの部屋にいるチヅル

 ソウヤの部屋の勉強机の上にはパソコンと聖書が置いてある

 ソウヤの部屋の壁には家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある

 ソウヤの部屋の家庭祭壇以外の壁、天井には私立東堂高校一年C組の教室で話をしたり、お弁当を食べたり、校庭で体操着を着て準備運動をしたり、花色荘のリビングでテレビゲームをしたり、ベッドで眠っていたり、お風呂でシャワーを浴びていたり、浴槽に浸かっていたり、ANDREI総本部の第一ロイヤル待機室で、制服から白の”ミラースーツ”に着替えていたりするチヅルを隠し撮りしたたくさんの写真が貼られてある

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 肉塊になったソウヤを抱き抱えているチヅル

 肉塊になったソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている

 チヅルが抱き抱えている肉塊は”帰化”したソウヤの魂

 肉塊になったソウヤを抱き抱えたままソウヤのベッドの上に立っているチヅル

 チヅルは肉塊になったソウヤを抱き抱えソウヤのベッドの上に立ったまま、天井に貼られていた私立東堂高校一年C組の教室で話をしている自分の写真を引っ張っている

 肉塊になったソウヤを抱き抱えソウヤのベッドの上に立ったまま、天井に貼られていた私立東堂高校一年C組の教室で話をしている自分の写真を引っ張って剥がすチヅル

 チヅルは肉塊になったソウヤを抱き抱えソウヤのベッドの上に立ったまま、私立東堂高校一年C組の教室で話をしている自分の写真を見る


チヅル「(肉塊になったソウヤを抱き抱えソウヤのベッドの上に立ったまま、私立東堂高校一年C組の教室で話をしている自分の写真を見て)あいつ・・・そんなに好きだったんだ・・・」


 チヅルに抱き抱えられている肉塊になったソウヤは涙を流す


◯14回想/ANDREI総本部司令の自室(深夜)

 外は強い雨が降っている

 ANDREI総本部司令の自室にいるチヅルとタエ

 ANDREI総本部司令の自室は広く、巨大な水槽がある

 ANDREI総本部司令の自室の中にある巨大な水槽には、たくさんの熱帯魚が泳いでいる

 ANDREI総本部司令の自室には机と椅子がある

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 肉塊になったソウヤを抱き抱えているチヅル

 肉塊になったソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている

 チヅルが抱き抱えている肉塊は”帰化”したソウヤの魂

 机に向かって椅子に座っているタエ

 話をしているチヅルとタエ


タエ「あなたのお兄さんの魂はANDREIの保護下にあります。(少し間を開けて)もちろん、浅木さんがここを抜けたいと言うのならその意志を尊重するけれど、安全の保証は難しいわ。軍人も政治家も、帰化した魂のサンプルを欲しがっているのよ」


◯15回想戻り/夢路村/大きな池(昼)

 大きな池の中を潜っているチヅル

 チヅルは折り鶴のネックレスをつけている

 大きな池の中は酷く濁っており、底が見えなくなっている

 池の見えない底からは大きなボールチェーンのような物が伸びている

 大きな池の中を潜りながら、見えない底から伸びている大きなボールチェーンのような物を引っ張っているチヅル

 見えない底から伸びている大きなボールチェーンのような物はチヅルに引っ張られているが、全く動いていない

 チヅルは大きな池の中を潜りながら、見えない底から伸びている大きなボールチェーンのような物を強く引っ張る

 チヅルが大きな池の中を潜りながら、見えない底から伸びている大きなボールチェーンのような物を強く引っ張ると、大きなボールチェーンのような物が少しだけ動く

 少しすると、チヅルが強く引っ張っていた大きなボールチェーンのような物が勢いよく見えない底から引き抜かれる

 大きな池の中を潜りながら、大きなボールチェーンを引っ張って先にある物を見るチヅル

 ボールチェーンの先端にはお風呂の大きな栓がついている

 少しの沈黙が流れる

 突然、大きな池の中を潜っているチヅルは見えない底に吸い込まれるように体を引っ張られる

 チヅルは泳いで大きな池の中から出ようとする

 チヅルは泳いで大きな池の中から出ようとするが、見えない底に吸い込まれるように体を引っ張られて、チヅルの体はどんどん沈んで行く

 泳いで大きな池の中から出ようとしているチヅルの口からたくさんの気泡が漏れる

 泳いで大きな池の中から出ようとしていたチヅルの体が動かなくなる

 チヅルの体は変わらずどんどん大きな池の見えない底に沈んで行っている

 大きな池の中を沈んで行っているチヅルの意識が遠のき始める

 再び沈黙が流れる

 大きな池の中に一人の少年が飛び込んで来る

 少年は大きな池の中を潜って、見えない底に沈んで行っているチヅルのところに泳いで向かう

 意識が遠のき大きな池の見えない底に沈みながら、自分のところに泳いで向かって来ている少年のことを見るチヅル

 チヅルには自分のところに泳いで向かって来ている少年の姿がぼやけて見えている

 大きな池の中を潜りながら、見えない底に沈んで行っているチヅルの手を掴む少年

 少年はチヅルの手を掴んだまま泳いで大きな池の外に向かう

 チヅルの手を掴んだまま泳いでチヅルの顔を大きな池の水面から出させる少年

 チヅルは少年に手を掴まれたまま大きな池の水面に顔を出して激しく咳き込む

 激しく咳き込んでいるチヅルの手を引っ張って大きな池から出て陸に上がる少年

 少年は激しく咳き込んでいるチヅルの手を引っ張ったままチヅルを給水塔の前まで連れて行く

 チヅルは全身池の水でずぶ濡れになっている

 少年は激しく咳き込んでいるチヅルの手を掴んだまま、もう片方の手でチヅルの背中をさする

 

ソウヤ「(激しく咳き込んでいるチヅルの手を掴んだまま、もう片方の手でチヅルの背中をさすって)大丈夫かい、チヅル」


 激しく咳き込んでいるチヅルの手を掴んだまま、もう片方の手でチヅルの背中をさすっている少年の正体はソウヤ

 チヅルは激しく咳き込み、ソウヤに手を掴まれ背中をさすってもらいながらソウヤのことを見る


チヅル「(激しく咳き込み、ソウヤに手を掴まれ背中をさすってもらいながらソウヤのことを見て)ゲホッ・・・ゲホッ・・・そ、ソウヤ・・・ゲホッ・・・」

ソウヤ「(激しく咳き込んでいるチヅルの手を掴んだまま、もう片方の手でチヅルの背中をさすって)こんな危ないことをするなんてダメじゃないか」


 チヅルはソウヤのことを見たまま、ソウヤに手を掴まれ背中をさすってもらい呼吸を整える


チヅル「(ソウヤのことを見たまま、ソウヤに手を掴まれ背中をさすってもらい呼吸を整えて)ソウヤ・・・ど、どうして・・・ここに・・・」

ソウヤ「(チヅルの手を掴んだままもう片方の手でチヅルの背中をさすって少し笑い)僕はいつもチヅルと一緒にいるよ。今までみたいにね」


 少しの沈黙が流れる


男「(チヅルの手を掴んだままもう片方の手でチヅルの背中をさすって)この時期の池に潜るなんて、君はとんでもない度胸の持ち主だな」


 チヅルは手を掴まれ背中をさすって来ている男のことを見ている

 チヅルの手を掴み、背中をさすっている男は第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男

 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男の年齢は30代後半くらい

 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男は一眼レフカメラを首から下げている

 

チヅル「(手を掴まれ背中をさすって来ている第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男のことを見たまま)そ、ソウヤは・・・ソウヤはどこ・・・」


 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男はチヅルの手を掴んだままチヅルの背中をさするのをやめる

 チヅルの手を離す第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男

 

第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男「(チヅルの手を離して)君の友達なら・・・ほら」


 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男は自分の足元を見る

 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男の足元には肉塊になったソウヤがいる

 肉塊になったソウヤには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている

 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男の足元にいる肉塊は”帰化”したソウヤの魂

 チヅルは第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男のことを見るのをやめて、急いで男の足元にいる肉塊になったソウヤを抱き抱える


チヅル「(急いで男の足元にいる肉塊になったソウヤを抱き抱えて)よ、良かったいなくならなくて・・・」


 チヅルは肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男に頭を下げる


チヅル「(肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男に頭を下げて)あ、ありがとうございます!!」

第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男「こちらこそ、君たちを助けることが出来て良かったよ」


 チヅルは肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま頭を上げる

 肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま周囲を見るチヅル


チヅル「(肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま周囲を見て)あたし、占いのお婆さんに連れて来られたんです」


 チヅルは肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま周囲を見るが、占い師のお婆さんはどこにもいない


チヅル「(肉塊になったソウヤを抱き抱え周囲を見たまま)鶴に会えるって聞いて。そしたらソウヤを・・・大事なものを池に落とされて・・・」

第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男「占いをしてる人は今この村にはいないよ、少し前に亡くなったんだ」


 チヅルは肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま周囲を見るのをやめる


第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男「池で冷えただろう?少し休んで行った方が良い」

チヅル「(肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま)あ、あたし友達を待たせてるのでもう行きます」

第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男「風邪引くよ、チヅル」

チヅル「(肉塊になったソウヤを抱き抱えたまま驚いて)え・・・な、何で名前を知ってるんですか?」

第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男「(少し笑って)君は第六の力の姫じゃないか」


 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男は古い給水塔の扉を開ける


第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男「(古い給水塔の扉を開けて)カナメには彼女がついてるから、チヅルは少しここで休んでも大丈夫だよ」


 第六話の温泉街のバー、第十六話のロボット博物館でトキコが出会った男は古い給水塔の中に入って行く


◯16夢路村/屋外占い店前(昼過ぎ)

 雪がパラパラ降っている

 屋外の小さな占い店の前にいるカナメとジヨン

 屋外の小さな占い店の周りは山に囲まれており、占い店の向かいには小さな運河がある

 ジヨンの左腕は無くなっている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 カナメとジヨンの頭の上には少し雪が積もっている

 屋外の小さな占い店はポリステル製の幕に覆われており、中は見えなくなっている

 屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕には”占い”と書かれている

 話をしているカナメとジヨン


カナメ「時間がかかるんだね」

ジヨン「(片言の日本語で)鶴、会えてるのかもしれない」


 少しの沈黙が流れる

 カナメは屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕を上げる

 屋外の小さな占い店の中にはテーブルと2脚の椅子がある

 屋外の小さな占い店の中にはテーブルには筮竹が入っている筮筒、占星術で使うホロスコープ、ルーンストーンが置いてある

 屋外の小さな占い店の中には誰もいない


カナメ「(屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕を上げたまま)そんな、誰もいないよ」

ジヨン「(片言の日本語で)だ、大丈夫、チヅルと、また会える」

カナメ「(屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕を上げたまま)でもどこに行ったの?」

ジヨン「(片言の日本語で)彼女、大事な星行ったと思う」


 カナメは屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕を下げる


カナメ「(屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕を下げて)星って?」

ジヨン「(片言の日本語で)亡くなった人は、星があるの。星には家立ってて、みんなずっと幸せで、そこにいる」


◯17神野アキラと神野アイラの惑星(夜)

 神野アキラと神野アイラの惑星にはカナメの家が建っている

 神野アキラと神野アイラの惑星の周りは宇宙で星が輝いており、遠くの方には月がある

 

◯18神野アキラとアイラの惑星/神野家庭(夜)

 神野アキラと神野アイラの惑星にはカナメの家が建っている

 神野アキラと神野アイラの惑星の周りは宇宙で星が輝いており、遠くの方には月がある

 神野アキラと神野アイラの惑星の自宅の庭にいるアキラと、カナメの母、アイラ

 アイラの年齢は20代後半頃

 カナメの家の庭には物干しスタンドがある

 アイラは物干しスタンドに洗濯物を干している

 アイラの横には洗濯物が入っているカゴが置いてある

 カナメの家の庭には雪が積もっている

 アキラとアイラは楽しそうに話をしている


◯19梢トキコの惑星/花色荘のリビング(夜)

 梢トキコの惑星には花色荘が建っている

 梢トキコの惑星の周りは宇宙で星が輝いており、遠くの方には月がある

 梢トキコの惑星に建っている花色荘は、3階建ての古くボロボロなアパート

 梢トキコの惑星の花色荘のリビングにいるソウヤ、シィア、トキコ

 梢トキコの惑星の花色荘のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビ、ゲームがある

 テーブルに向かって椅子に座っているソウヤ、シィア、トキコ

 ソウヤたちは楽しそうに話をしている


◯20イザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星/イザベルとアマネの家前(昼)

 快晴

 イザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星にはイザベルとアマネの家が建っている

 イザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星の周りは宇宙で星が輝いており、遠くの方には太陽がある

 イザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星に建っているイザベルとアマネの家は、古いレンガ造りになっている

 イザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星に建っているイザベルとアマネの家の前にいるトワネ、イザベル、アマネ

 イザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星に建っているイザベルとアマネの家の周囲には、巨大な小麦畑が広がっている

 イザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星に建っているイザベルとアマネの家の周囲に広がっている巨大な小麦畑の横には、一本道がある

 トワネ、イザベル、アマネの背中からは真っ白な翼が生えている

 剣で訓練を行っているイザベルとトワネ

 アマネはトワネとイザベルの訓練を見ている

 トワネに向かって思いっきり剣を振り下ろすイザベル

 トワネは剣でイザベルが思いっきり振り下ろして来た剣を受け止める


トワネ「(剣でイザベルが思いっきり振り下ろして来た剣を受け止めて)前より良くなってるじゃない、イザベル」

イザベル「(思いっきり振り下ろした剣をトワネの剣にぶつけたまま)ほっ、本当ですかっ!?」

アマネ「(トワネとイザベルの訓練を見ながら少し笑って)あんまり調子に乗るなよイザベル」

イザベル「(思いっきり振り下ろした剣をトワネの剣にぶつけたまま)はいっ!!」


 イザベルは剣でトワネの剣を押し返す

 イザベルに剣で剣を押し返されて倒れるトワネ


トワネ「(剣で剣を押し返されて倒れて)いたた・・・」

イザベル「だ、大丈夫?ルシファリア」


 イザベルは倒れているトワネに手を差し出す

 倒れたままイザベルが差し出して来た手を取るトワネ


トワネ「(倒れたままイザベルが差し出して来た手を取って)何とかね」


 トワネはイザベルが差し出して来た手を取って立ち上がる


トワネ「(イザベルが差し出して来た手を取って立ち上がって)やるじゃない、イザベル」


 イザベルはトワネの手を離す


イザベル「(トワネの手を離して少し嬉しそうに)アマネさんに鍛えられましたから、死んじゃったけど」

アマネ「イザベルは立派だったよ」

イザベル「あっ、アマネさんも立派でしたっ!」

アマネ「(少し寂しそうに笑って)どうかな、俺は復讐しちゃったから」


 少しの沈黙が流れる

 イザベルは何かに気付いて巨大な小麦畑の横の一本道を指差す


イザベル「(巨大な小麦畑の横の一本道を指差して)あ、アマネさん!!あれ!!」


 トワネとアマネはイザベルが指差している巨大な小麦畑の横の一本道を見る

 イザベルが指差している巨大な小麦畑の横の一本道には、カナメがいる

 カナメの背中からは真っ白な翼が生えている

 アマネは巨大な小麦畑の横の一本道にいるカナメのことを見たまま、カナメに手を振る


アマネ「(巨大な小麦畑の横の一本道にいるカナメのことを見たまま、カナメに手を振って大きな声で)お、おーい!!!!だいてん・・・カナメーっ!!!!」


 カナメはアマネに呼ばれていることに気付く

 巨大な小麦畑の横の一本道を歩いてトワネたちがいるところに向かうカナメ

 アマネは巨大な小麦畑の横の一本道にいるカナメのことを見たまま、カナメに手を振るのをやめる

 巨大な小麦畑の横の一本道にいるカナメのことを指差すのをやめるイザベル

 少しするとカナメがイザベル・カーフェンとアマネ・カーフェンの惑星に建っているイザベルとアマネの家の前にやって来る


アマネ「(カナメのことを見たまま)カナメが来るって分かってたらもてなす準備をしたのに!!」


 カナメはアマネのことを見る


カナメ「(アマネのことを見て)アマネ・・・」


 カナメのことを見ているアマネの顔が少し赤くなる


アマネ「(カナメのことを見たまま顔を少し赤くして)な、何だか改めて名前を呼ばれると照れるな・・・」


 イザベルは顔が少し赤くなっているアマネのことを見ているカナメの耳元に顔を近付ける

 

イザベル「(顔が少し赤くなっているアマネのことを見ているカナメの耳元で囁いて)じ、実はアマネさんは小っちゃい頃からカナメさんに憧れてたんです、カナメさんみたいな大天使様になるのが俺の目標だってよく言ってるんですよ」

アマネ「(カナメのことを見たまま)あっ!お前今俺の話をしてるだろ!!」


 イザベルは慌ててアマネのことを見ているカナメの耳元から顔を離す


イザベル「(慌ててアマネのことを見ているカナメの耳元から顔を離して)あっ、アマネさんの話なんて一つもしてませんっ!!」

アマネ「(カナメのことを見たまま)嘘こけ!か、カナメになんか言ったんだろ!!」

イザベル「き、気のせいですっ!」


 カナメはアマネのことを見るのをやめる

 イザベルのことを見るカナメ


カナメ「(イザベルのことを見て)イザベル・・・」

イザベル「はっ、はいイザベルです!」


 再び沈黙が流れる

 カナメはイザベルのことを見るのをやめる

 涙を流すカナメ


アマネ「(涙を流しているカナメのことを見たまま心配そうに)か、カナメ?どうしたの?」


 カナメは涙を流したままトワネのことを見る


カナメ「(涙を流したままトワネのことを見て)トワネ・・・」


 少しの沈黙が流れる 

 カナメは涙を流したままトワネ、イザベル、アマネのことを見る

 涙を流しているカナメの肩に手を置くトワネ


トワネ「(涙を流しているカナメの肩に手を置いて少し笑って)その時が来たらいつでも会えるようになるさ、カナメ。そしたらまた私が友達になってやる」


 カナメは涙を流しトワネに肩に手を置かれたまま、トワネ、イザベル、アマネのことを見るのをやめる

 涙を流しトワネに肩に手を置かれたまま俯くカナメ


◯21夢路村/屋外占い店前(昼過ぎ)

 雪がパラパラ降っている

 屋外の小さな占い店の前にいるカナメとジヨン

 屋外の小さな占い店の周りは山に囲まれており、占い店の向かいには小さな運河がある

 ジヨンの左腕は無くなっている

 ジヨンの容姿は左腕を無くしていて歳を取っていることを除けば、トワネと完全に同じ姿をしている

 カナメとジヨンの頭の上には少し雪が積もっている

 屋外の小さな占い店はポリステル製の幕に覆われており、中は見えなくなっている

 屋外の小さな占い店を覆っているポリステル製の幕には”占い”と書かれている

 俯いて涙を流しているカナメ

 少しの沈黙が流れる


ジヨン「(片言の日本語で)ご、ごめんなさい。夢路村には、カナメたちが欲しいものあるけど、与えられない」

カナメ「(俯いて涙を流しながら)僕は分からないんだ・・・僕が何を欲してるのか・・・」


 ジヨンは右手でポケットから一本の紐を取り出す


ジヨン「(右手でポケットから一本の紐を取り出して片言の日本語で)これ、カナメたちが探してるね」


 カナメは涙を流したまま顔を上げる

 涙を流しながらジヨンが右手に持っている一本の紐を見るカナメ


カナメ「(涙を流しながらジヨンが右手に持っている一本の紐を見て)僕たちが・・・」


 ジヨンは右手で一本の紐を持ったまま頷く


ジヨン「(右手で一本の紐を持ったまま頷いて片言の日本語で)夢路村の人たち、みんな持ってるもの」

カナメ「(涙を流しジヨンが右手に持っている一本の紐を見たまま)僕にもその紐・・・貰えるかな・・・」


 ジヨンは右手で一本の紐をポケットにしまう

 

ジヨン「(右手で一本の紐をポケットにしまって片言の日本語で)ごめん・・・まだその時、来てないと思う」


 再び沈黙が流れる

 カナメは手で涙を拭う



 『第二十四話 小惑星ノスタルギア』続く。

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