『第二十一話 C Meets A』
『サイクルラヴの叫び、少年少女のセイセンネンリョ』
登場人物
神野 カナメ 16歳男子
本作の主人公。高校一年生。人に対して距離があり、どこか性格も冷めている。
相園 トワネ 16歳女子
本作のメインヒロイン。高校一年生。”第六の力の女王”で、カナメの契約相手。性格はわがままで愛想がなく、たびたびカナメのことを困らせることになる。無類のカルボナーラ好き。
若葉 ソウヤ 16歳男子
カナメたちと同じ高校一年生で、”第六の力の王子”。成績と容姿が優れている上に、人当たりも悪くないため、同級生たちからよくモテているが・・・信心深く、よく礼拝堂に訪れている。
浅木 チヅル 16歳女子
カナメたちと同じ高校一年生で、”第六の力の姫の一人”。カナメやトワネほどではないが、馴れ合うことが苦手な性格をしており、口調もキツい。契約相手のソウヤとは幼馴染。
九音 ヒヨリ 18歳女子
カナメたちよりも2つ歳上の先輩に当たる、”第六の力の姫の一人”。ロシアからの帰国子女で、強い正義感の持ち主。その性格の通り優秀な戦士であり、面倒見も良い。
真弓 マナカ 18歳女子
ヒヨリと同じくロシアからの帰国子女で、”第六の力の姫の一人”。常に顔面にカラスがデザインされた鉄仮面を付けていて、お嬢様口調で話をする。ヒヨリとは古くからの仲であり、契約相手でもある。
シィア 15歳女子モデル
長く”ANDREI”で働く美少女アンドロイド、正式名称はSI-A49。一応梢トキコの助手という役職だが、雑用も淡々とこなす。長く人間に仕えて来たからか、皮肉屋ところがある。口癖は『アホ』。
四季 イズミ 16歳女子
・・・???
梢 トキコ 36歳女子
“ANDREI”の科学者で、カナメたちが暮らすオンボロアパート”花色荘”の管理人。大人気なく怒りっぽい性格をしている。カナメたちに対して厳しい言い方をすることが多いが、一応彼らの保護者だったりする。
神野 タエ 78歳女子
“オソレ”の破壊を目的とした組織”ANDREI”の司令であり、カナメの祖母。カナメとは長く疎遠だったが、”オソレ”を破壊するために彼の力を借りようとする。
日向 リュウマ 36歳男子
日本帝国軍から派遣された軍人で、階級は陸佐。ただし、軍人らしさは全くない。戦略班のリーダーだが、実質的に”ANDREI”のトップ2の立場におり、タエの側近的な役割を担っていることが多い。トキコとは過去に色々あったとか、なかったとか。
神野 アキラ 44歳男子
カナメの父親。いつも仕事で帰って来るのが遅いため、カナメとは上手くコミュニケーションが取れておらず、そのことを気にしている。
神野 アイラ 女子
カナメの母親。カナメが幼い頃に亡くなっている。
ゲストキャラクター
MA-RA337型のアンドロイド 18歳女子モデル
シィアよりも後に登場したアンドロイド。シィアと比較するとかなり人間的な表情が出来るのに加えて、欠陥も少ない。
トキコがバーで出会った男 30代後半男子
・・・???
イザベル・カーフェン 16歳?女子
一生懸命、真面目、純粋の三拍子が揃ったドジっ娘。良くも悪くもまっすぐな性格のため、気合いが空回りすることもしばしば。ある時カナメたちと出会い、そこから交流を深めるようになる。
アマネ・カーフェン 18歳?女子
イザベルの姉。何かとやらかすことが多いイザベルのことをいつも厳しく叱っている。一人称は『俺』だが、食器集めが趣味という可愛い一面も。
ルシファリア 年齢?女子
・・・???
ウラジーミル・アンドレイ 65歳男子
・・・???
ヒラン・アンドレイ 14歳女子
・・・???
ロベール=フォン・アンドレイ 18歳男子
・・・???
クレナ・アンドレイ 21歳女子
・・・???
九音 アリカ 40歳女子
ヒヨリの母親。
博士 17〜18歳女子
本名不明。”あるもの”を連れている。
タカヤ 30代前半男子
・・・???
ヨハリル 20代前半?男子
・・・???
C 16歳?女子
リュウマの話に登場した好奇心旺盛な少女。ある日、キファーと出会うことになる。
キファー 16歳?男子
Cと同じくリュウマに登場した少年。Cとは違い大人しく、いつも寂しげな様子をしている。
ユーリ 60歳?男子
Cの叔父。
ガラファリア 20代後半?女子
・・・???
神野 アイハ 40代前半女子
カナメの叔母。”夢路村”で、喫茶”四重奏の夢”を経営している。
イ・ジヨン 20代前半女子
韓国から来た留学生。喫茶”四重奏の夢”を経営を手伝いながらアイハの家でホームステイをしている。
リツ 27歳女子
ある過去を抱えている信仰者。
スグル 30代前半男子
・・・???
◯1ANDREI総本部診察室(日替わり/夕方)
ANDREI総本部の診察室にいるイズミとリュウマ
ANDREI総本部の診察室には診察台、机、2脚の椅子がある
診察台の上に横になっているイズミ
リュウマは診察台に横の椅子に座っている
話をしているイズミとリュウマ
イズミ「(診察台の上に横になったまま)何でよ何でよ何でよ」
リュウマ「医者不足でね・・・十三人目のオソレ、ゲストとの戦いで怪我を負ったヒヨリちゃんの面倒を見るので手一杯なんだ」
イズミ「(診察台の上に横になったまま)姉さん、良くなりそう?」
リュウマ「面会に行ってたんだから、状態は分かってるんだろ?」
イズミ「(診察台の上に横になったまま)うん。でも一応ね、あれだけの重傷だったから」
リュウマ「心配しなくても、ヒヨリちゃんは順調に回復してるよ」
◯2回想/ANDREI総本部病室(朝)
外は晴れている
ANDREI総本部の病室にいるヒヨリとイズミ
ヒヨリはベッドの上で体を起こしている
ヒヨリは右目に眼帯を付けている
ベッドの横には椅子が置いてある
ベッドの隣には棚があり、小さなテレビと眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみが置いてある
ベッドの隣の棚の上に置いてある眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみは、第九話でカナメが購入してヒヨリにプレゼントした物
ANDREI総本部の病室の壁にもたれているイズミ
少しの沈黙が流れる
イズミはベッドの隣の棚の上に置いてある眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみを手に取る
眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみを自分の顔の前に出すイズミ
イズミ「(眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみを自分の顔の前に出して低い声で)姉さん、俺と契約して第六の力の姫になりなよ」
少しの沈黙が流れる
ヒヨリは眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみを自分の顔の前に出しているイズミのことを見る
ヒヨリ「(眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみを自分の顔の前に出しているイズミのことを見て)お前の・・・お前の望みを聞こう」
再び沈黙が流れる
イズミは眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみを自分の顔の前に出すのをやめる
眼帯を付けた紫色の大きな熊のぬいぐるみをベッドの隣の棚の上に置くイズミ
イズミは再びANDREI総本部の病室の壁にもたれる
◯3回想戻り/ANDREI総本部診察室(夕方)
ANDREI総本部の診察室にいるイズミとリュウマ
ANDREI総本部の診察室には診察台、机、2脚の椅子がある
診察台の上に横になっているイズミ
リュウマは診察台に横の椅子に座っている
話をしているイズミとリュウマ
リュウマ「どうだった?」
イズミ「(診察台の上に横になったまま)何が?」
リュウマ「オリジナルとの対面だよ」
イズミ「(診察台の上に横になったまま)まあまあまあって感じ」
少しの沈黙が流れる
イズミ「Pの時は?」
リュウマ「(診察台の上に横になったまま)イズミと変わらないよ」
ANDREI総本部の診察室の扉を誰かが数回ノックして来る
ANDREI総本部の診察室の扉が開き、医者1が診察室の中に入って来る
医者1「陸佐」
リュウマは立ち上がる
リュウマ「(立ち上がって)ああ。(少し間を開けて)じゃあ、後でなイズミ」
イズミ「(診察台の上に横になったまま)バイバイ」
リュウマはANDREI総本部の診察室から出て行く
診察台に横の椅子に座る医者1
医者1「(椅子に座って)四季さん、司令とも話をしたんだけど、やはり君はハードな戦いを控えるべきだと思う」
イズミ「(診察台の上に横になったまま)ハードねえ・・・」
医者1「神野くんと組む分なら構わない、彼の能力は高いからね」
イズミ「(診察台の上に横になったまま)相園トワネが残した予言によれば、オソレは全部で十四人。この間兄さんが倒した奴が十三人目だったから、残すはあと一人じゃんか。それなのに私の戦い方について口を出して来るんだ?」
医者1「知っての通りだが、四季さんは戦闘型のクローンではないんだ。そして最後のオソレは、今まで以上の強敵が予想される。だから君にはオソレを破壊することよりも、その特別な体で、別の役割を果たしてもらうことになるだろう」
医者1はチラッとイズミのお腹を見る
◯4花色荘前(夕方)
夕日が沈みかけている
花色荘の前にいるカナメ
花色荘は3階建ての古くボロボロなアパート
少しの沈黙が流れる
カナメはポケットから花色荘の鍵を取り出す
花色荘の鍵で花色荘の扉を開けようとするカナメ
チヅル「何で帰って来た」
カナメは花色荘の鍵で花色荘の扉を開けようとするのをやめる
振り返るカナメ
カナメの少し後ろにはチヅルが立っている
カナメ「チヅル」
チヅル「何で逃げた奴が今更帰って来たのか聞いてんだよ」
カナメ「僕・・・僕は・・・出来ることをするべきだと・・・」
チヅル「(カナメの話を遮って)分かってるなら何で逃げたんだよ!!お前も!!トワネも!!(大きな声で)ソウヤも!!!!」
チヅルは涙を流す
カナメ「ち、チヅル?」
チヅル「(涙を流しながら大きな声で)何で帰って来たのがカナメだけなんだよ!!!!どうせ帰って来るなら他の奴らも連れて来てよ!!!!」
再び沈黙が流れる
チヅル「(涙を流しながら)だからあたしはあんたらのことが嫌いなんだ・・・好き放題して・・・何もかも投げ出して・・・人のことなんか全然考えてなくて・・・」
カナメは俯く
カナメ「(俯いて)ごめん、チヅル」
チヅルは手で涙を拭う
俯いているカナメが持っている花色荘の鍵を奪い取るチヅル
チヅルはカナメの花色荘の鍵で花色荘の扉を開ける
花色荘の扉を開けてカナメの花色荘の鍵をそこら辺に投げ捨てるチヅル
チヅルは花色荘の中に入る
少しの沈黙が流れる
顔を上げるカナメ
チヅルが投げ捨てた花色荘の鍵を拾うカナメ
カナメは花色荘の鍵を拾って花色荘から離れて行く
◯5ANDREI総本部礼拝堂(夜)
ANDREI総本部の礼拝堂にいるカナメ
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはカナメ以外に誰もいない
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
椅子に座っているカナメ
◯6第十八話◯26の回想/仮説墓地場(昼過ぎ)
空は曇っている
仮説墓地場にいるカナメとソウヤ
仮説墓地場にはたくさんの仮設の墓標がある
仮説墓地場にあるたくさんの仮設の墓標には十字架が刻まれている
カナメとソウヤは喪服を着ている
カナメとソウヤは十字架と”Tokiko Kozue”という名前が刻まれた仮設の墓標の前にいる
十字架と”Tokiko Kozue”という名前が刻まれた仮設の墓標の前には白いカーネーションの花束が置いてある
カナメは十字架と”Tokiko Kozue”という名前が刻まれた仮設の墓標から離れて行こうとする
ソウヤ「(十字架と”Tokiko Kozue”という名前が刻まれた仮設の墓標を見たまま)カナメ」
カナメは立ち止まる
カナメ「(立ち止まって)何?」
ソウヤ「(十字架と”Tokiko Kozue”という名前が刻まれた仮設の墓標を見たまま)本当の戦いが始まった時、また君が必要になる」
◯7回想戻り/ANDREI総本部礼拝堂(夜)
ANDREI総本部の礼拝堂にいるカナメ
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはカナメ以外に誰もいない
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
椅子に座っているカナメ
少しの沈黙が流れる
ANDREI総本部の礼拝堂の中にリュウマがやって来る
リュウマはカナメの隣に座る
チラッと隣に座ったリュウマのことを見るカナメ
リュウマ「カナメくん、飯は?もう食ったか?」
カナメ「まだですけど・・・」
リュウマ「俺のイチオシは食堂のボロネーゼかな、あれは結構いけるんだ」
カナメ「そうですか」
リュウマ「(少し笑って)まあトワネちゃんは、ボロネーゼよりもカルボナーラ派だったけどね」
再び沈黙が流れる
リュウマ「カナメくんが礼拝堂にいるなんて珍しいね。やっぱり人は、神を信じ神を嫌うようになっているのかな」
カナメ「ソウヤがいなくなったって聞いたんです」
リュウマ「ああ・・・(少し間を開けて)そういえば彼らはよくここに来てたね」
カナメ「彼ら?」
リュウマ「ソウヤくんもだし、トキコとかシィアちゃんだよ」
少しの沈黙が流れる
カナメ「リュウマさんは、トキコとさんと親しかったんですよね」
リュウマ「まあね、なんせ幼馴染だったから」
カナメ「辛くないんですか」
リュウマ「(少し笑って)なかなかにストレートな聞き方をするんだな」
カナメ「ごめんなさい」
リュウマ「(少し笑いながら)いや、良いんだよ。人の気持ちが分からない時は、素直に聞いた方が良い。いない人たちのことを避けて会話を続けるのも変だしね」
再び沈黙が流れる
リュウマ「カナメくん」
カナメ「はい」
リュウマ「少し物語を聞いてくれないかな」
カナメ「物語、ですか?」
リュウマ「君に伝えておくべき話だと思ってさ」
カナメ「なら、聞いてみます」
リュウマ「(少し笑って)そう来なくっちゃ」
少しの沈黙が流れる
リュウマ「舞台は何千億年と続いた、ある空っぽな世界」
◯8回想/空っぽな世界:神殿(何千億年前/夕方)
夕日が沈みかけている
神殿に一人いるC
Cの年齢は16歳くらいに見える
Cは女性
神殿は広く、天井が高くなっている
神殿にはたくさんの大きな柱が立っている
神殿には全長50メートルほどの大きさの浅い凹みがあり、透き通った水が溜まっている
神殿の大きな柱にもたれているC
『第二十一話 C Meets A』
神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に、神殿の大きな柱にもたれているCの姿が反射して映っている
◯9回想/空っぽな世界:生命樹前(何千億年前/日替わり/朝)
快晴
世界樹の周りにいる数人の農家たち
生命樹は巨大な木で、たくさんの葉とりんごが育っている
生命樹の周りには柵がある
数人の農家たちはカゴを背負っている
生命樹の周りにある柵の中にいる数人の農家たち
数人の農家たちは生命樹に実ったりんごを手に取り、背負っているカゴの中に入れている
少しするとCが生命樹にやって来る
リュウマ「(声)空っぽな世界では、Cという名の少女が暮らしていた」
Cはチラッと生命樹に実ったりんごを手に取り、背負っているカゴの中に入れている農家たちのことを見る
リュウマ「(声)Cは空っぽな世界のことを知り尽くしていた。空っぽの世界と、そこで暮らす人たちのことを守る生命樹、海のように澄んだ水が溜まっている神殿、夜、虫の声を聞きながら星が見れるニェーバの丘、空っぽな世界を束ねながらある人を待っている叔父のユーリ。(少し間を開けて)全てが彼女にとって馴染み深くて、新鮮さに欠けた」
農家1は生命樹に実ったりんごを1つ手に取り、Cに差し出す
農家1「(りんごをCに差し出して)ほら、C」
Cはりんごを農家1から受け取る
C「(りんごを農家1から受け取って)ありがと、おじさん」
Cはりんごを一口から齧る
農家1「どうだい?」
C「うん。いつも通りの味」
農家1「いつも通りじゃいけないのかい?」
C「別に、ちょっと言ってみただけ」
◯10回想/空っぽな世界:ニェーバの丘(何千億年前/夜)
空ではたくさんの星が光っている
ニェーバの丘に一人いるC
どこかで虫が鳴いている
Cはニェーバの丘に横になっている
リュウマ「(声)その世界は不気味なほど美しく、多くの自然に溢れていたんだ。俺たちのいるところとは全然違うと思う。ただ好奇心の強いCには、それが逆に退屈に感じられたんだろうね。空っぽの世界が生に溢れていても、死という概念が存在しておらず、故に彼女の生活が変化することもなかったんだ」
◯11回想戻り/ANDREI総本部礼拝堂(夜)
ANDREI総本部の礼拝堂にいるカナメとリュウマ
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはカナメとリュウマ以外誰もいない
椅子に座っているカナメとリュウマ
カナメとリュウマは話をしている
カナメ「死という概念が存在していないって、どういう意味ですか?」
リュウマ「その世界ではみんな、永遠に生きていたんだ。人々はそれぞれある一定の年齢に差し掛かると、成長や老化が止まったのさ」
◯12回想/空っぽな世界:生命樹前(何千億年前/深夜)
生命樹は巨大な木で、たくさんの葉が育っている
生命樹のりんごは全て狩られている
生命樹の周りには柵がある
生命樹ではいつの間にか狩られていたはずのりんごが、全く同じところで実っている
リュウマ「(声)生命樹と名付けられた巨大な御神木が、その世界を自然のサイクルから切り離し、永遠を作り上げていた」
時間経過
日替わり
朝になっている
快晴
生命樹の周りにいるCとユーリ
ユーリの年齢は60歳くらいの年齢に見える
生命樹の周りにはCとユーリ以外にもたくさんの人が集まっている
Cとユーリを含む生命樹の周りに集まっているたくさんの人たちは、生命樹に両手を合わせて参拝している
リュウマ「(声)Cの叔父のユーリは、人々に生命樹を敬うように説いた。生命樹様のおかげで我々は幸せに生きていられるってね」
◯13回想/空っぽな世界:宿舎/ユーリの部屋(何千億年前/昼)
宿舎のユーリの部屋にいるCとユーリ
ユーリの部屋にはベッド、机、椅子がある
ユーリの机の上には2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみが置いてある
ユーリは机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見ている
話をしているCとユーリ
C「探しに行こうよ叔父さん」
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま)ダメだ」
C「何でよ?」
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま)彼女は別の世界から来るんだ、だから私たちが探しに行く意味もない」
C「(退屈そうに)叔父さんはいっつもそればっかりだ」
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま)C、ここには彼女以外の全てが揃ってると言うのに、手放してまで彼女を探しに行く必要があるかね?」
C「(退屈そうに)そういうことを決めてるのは叔父さんだろ」
少しの沈黙が流れる
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま)生命樹様を置いてどこかに行くなど、あり得ないことだよC」
再び沈黙が流れる
◯14回想/空っぽな世界:生命樹前(何千億年前/日替わり/夕方)
夕日が沈みかけている
どこかでひぐらしが鳴いている
世界樹の前にいるキファー
生命樹は巨大な木で、たくさんの葉とりんごが育っている
生命樹の周りには柵がある
キファーの年齢は16歳くらいに見える
キファーは男性
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
生命樹の周りにある柵の中にいるキファー
リュウマ「(声)Cが生まれから1000年が経った頃、Cは翼の生えている少年と出会った」
キファーは生命樹にそっと触る
生命樹に触れたまま涙を流すキファー
キファー「(生命樹に触れたまま涙を流して)ルシファリア・・・」
涙を流したまま生命樹に触れていた手を離すキファー
キファーは涙を流したまま自分の胸元に手を置く
涙を流したまま自分の胸元に手を置いているキファーの胸部に穴が開く
涙を流したまま自分の胸元に手を置いているキファーの胸部に開いた穴は、真っ暗な異界に繋がっている
涙を流したまま自分の胸元に手を置いているキファーの胸部に開いた穴から、剣が出て来る
キファーは涙を流したまま自分の胸元に手を置くのをやめる
涙を流したまま胸部に開いた穴から出て来た剣を手に取るキファー
キファーが涙を流したまま胸部に開いた穴から出て来た剣を手に取ると、キファーの胸部に開いていた穴が閉じて消える
キファーが涙を流したまま持っている剣は、キファーの体の一部が”王”になった姿
涙を流したまま剣を生命樹に向けるキファー
少しの沈黙が流れる
キファーは涙を流したまま生命樹に向けていた剣をゆっくり下ろす
再び沈黙が流れる
◯15回想/空っぽな世界:神殿(何千億年前/夕方)
夕日が沈みかけている
神殿にいるCとキファー
神殿は広く、天井が高くなっている
神殿にはたくさんの大きな柱が立っている
神殿には全長50メートルほどの大きさの浅い凹みがあり、透き通った水が溜まっている
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水の上で、横になっているキファー
Cは神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水の上で、横になっているキファーのことを見ている
リュウマ「(声)少年の表情はいつも儚げで、空っぽな世界を知り尽くしているCが一度も見たことのないものだった。まるで大事な何かが欠け落ちてしまったような少年の姿が、Cには美しく見え、心を揺さぶられた」
少しの沈黙が流れる
キファーは神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水の上で、体を起こす
神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かったまま、立ち上がるキファー
キファーの体と真っ白な翼は、神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水で濡れている
C「(神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かっているキファーのことを見たまま)えっと・・・やあ」
キファーは神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かったまま、Cのことを見る
キファー「(神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かったまま、Cのことを見て)やあ・・・」
C「(神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かっているキファーのことを見たまま)見ない顔だね・・・?も、もしかしてユーリ叔父さんが探してる人・・・ってわけじゃないか・・・」
キファー「(神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かり、Cのことを見たまま)私はキファー・・・」
C「(神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かっているキファーのことを見たまま)キファー?変わった名前だな・・・」
再び沈黙が流れる
キファーは神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かったまま、Cのことを見るのをやめる
C「(神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水に足が浸かっているキファーのことを見たまま)あ、ごめん・・・気を悪くしたなら謝るよ」
キファーは真っ白な翼を大きく羽ばたかせて、神殿の全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水から出る
真っ白な翼を大きく羽ばたかせてCの前に着地するキファー
キファー「(真っ白な翼を大きく羽ばたかせてCの前に着地して)少し・・・休める場所を探したいんだ」
C「(キファーのことを見たまま)ぼ、僕の家に来る?狭いところだけど・・・ベッドなら貸してあげられるよ」
◯16回想/空っぽな世界:宿舎/Cの部屋(何千億年前/夜)
宿舎のCの部屋にいるCとキファー
Cの部屋にはベッド、机、椅子、本棚がある
Cの本棚にはたくさんの本が並べられてある
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
Cの部屋を見ているキファー
C「ご、ごめんよ、狭くて」
少しの沈黙が流れる
Cはキファーの背中から生えている真っ白な翼を見る
変わらずCの部屋を見ているキファー
Cはキファーの背中から生えている真っ白な翼を見たまま、ゆっくりキファーの真っ白な翼に向かって手を伸ばす
キファーの背中から生えている真っ白な翼を見たまま、ゆっくりキファーの真っ白な翼に触れようとするC
キファーはCの部屋を見るのをやめる
Cの部屋の隅に行くキファー
Cは慌ててキファーの背中から生えている真っ白な翼を見たまま、キファーの真っ白な翼に触れようとしていた手を引っ込める
キファーの背中から生えている真っ白な翼を見るのをやめるC
キファーはCの部屋の隅で立ち止まる
キファー「(Cの部屋の隅で立ち止まって)ありがとう」
キファーはCの部屋の隅で体育座りをする
Cの部屋の隅で体育座りをしたまま、真っ白な翼で全身を包み込むキファー
キファーはCの部屋の隅で体育座りをし全身を真っ白な翼で包み込んだまま、動かなくなる
再び沈黙が流れる
C「えっ・・・?つ、疲れてるんだろ?僕のベッドを使いなよ」
少しの沈黙が流れる
キファーはCの部屋の隅で体育座りをし全身を真っ白な翼で包み込んだまま、眠っている
キファーが体育座りをし全身を真っ白な翼で包み込んで眠っている場所とは反対側の部屋の隅に行くC
Cはキファーがいる部屋の隅とは反対側の隅で体育座りをする
部屋の隅で体育座りをしたまま、反対側の隅で育座りをし全身を真っ白な翼で包み込んで眠っているキファーのことを見るC
◯17回想/空っぽな世界:生命樹前(何千億年前/日替わり/朝)
快晴
世界樹の周りにいる数人の農家たち
生命樹は巨大な木で、たくさんの葉とりんごが育っている
生命樹の周りには柵がある
数人の農家たちはカゴを背負っている
生命樹の周りにある柵の中にいる数人の農家たち
数人の農家たち生命樹に実ったりんごを手に取り、背負っているカゴの中に入れている
りんごを狩りながら話をしている数人の農家たち
農家1「(生命樹に実ったりんごを1つ手に取って)今日はCが来るのが遅いな」
農家2は背負っているカゴの中にりんごを入れる
農家2「(背負っているカゴの中にりんごを入れて)まだ寝てるんでしょうよ」
農家3「いやしかし、この1000年であの子が遅れた日は天候が悪かった時だけじゃなかったか?」
農家3は生命樹に実ったりんごを1つ手に取る
農家2「1000年に一度くらい違う日だってあるわよ」
農家3は背負っているカゴの中にりんごを入れる
農家3「(背負っているカゴの中にりんごを入れて)俺は毎日のサイクルが乱されてるようでなんだか違和感があるんだけどなぁ」
キファーが生命樹に向かって来る
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
キファーが生命樹に向かって来ていることに気付く農家1
農家1「(キファーが生命樹に向かって来ていることに気付いて)お、おい何だあれは・・・」
数人の農家たちは生命樹に実ったりんごを狩るのをやめる
生命樹に向かって来ているキファーのことを見る数人の農家たち
キファーは生命樹の周りの柵の前で立ち止まる
キファー「(生命樹の周りの柵の前で立ち止まって)おはようございます」
農家1「(キファーのことを見たまま)お、おはよう」
キファー「よろしければ、私にりんごを1つ頂けませんか」
農家1「(キファーのことを見たまま)あ、ああ・・・」
農家1はキファーのことを見るのをやめる
生命樹に実ったりんごを1つ手に取る農家1
農家1は恐る恐るりんごをキファーに差し出す
りんごを農家1から受け取るキファー
キファー「(りんごを農家1から受け取って)ありがとう」
キファーは生命樹から離れて行く
少しの沈黙が流れる
農家1「な、何だったんだ・・・今の・・・羽の生えた男なんて・・・は、初めてじゃないか・・・?」
◯18回想/空っぽな世界:宿舎/Cの部屋(何千億年前/朝)
宿舎のCの部屋にいるCとキファー
Cの部屋にはベッド、机、椅子、本棚がある
Cの本棚にはたくさんの本が並べられてある
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
りんごを持っているキファー
部屋の隅で体育座りをして眠っているC
キファーは部屋の隅で体育座りをして眠っているCの肩をトントン叩く
部屋の隅で体育座りをしたまま目を開けるC
C「(部屋の隅で体育座りをしたまま目を開けて)ん・・・」
キファー「おはよう」
Cは驚き慌てて立ち上がる
C「(驚き慌てて立ち上がって)お、おはよ」
キファーはりんごをCに差し出す
キファー「(りんごをCに差し出して)部屋を貸してくれてありがとう、C」
C「(りんごをキファーに差し出されたまま)ど、どうして僕の名前を・・・?」
キファー「(りんごをCに差し出したまま)聞いたんだ」
Cはりんごをキファーから受け取る
C「(りんごをキファーから受け取って)ありがとう。でも誰から聞いたの?」
キファー「ラヴだよ」
C「ラヴ?」
キファー「この世界の人たちが生命樹と呼んでいる木だよ」
少しの沈黙が流れる
C「あなたはどこから来たの?」
キファー「私は・・・とても遠い場所から旅をして来たんだ」
C「その羽で?」
再び沈黙が流れる
C「僕、羽の生えている人なんて初めて見たな」
◯19回想/空っぽな世界:ニェーバの丘(何千億年前/朝)
ニェーバの丘にいるCとキファー
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
りんごを持っているC
Cとキファーはニェーバの丘に座っている
りんごを食べているC
Cはりんごを食べながらキファーと話をしている
C「良いところだろ?ここは僕のお気に入りの場所の一つなんだ」
少しの沈黙が流れる
Cはりんごを一口かじる
C「(りんごを一口かじって)キファーは今まで、どんなことをして来たの?」
キファー「Cが求めているような面白いことは、何もないよ」
C「ならどうやってここに来たのか教えて。僕、キファーみたいな人を見るのは初めてだから、凄く気になるんだ」
再び沈黙が流れる
◯20回想/針山(何千億年前/夜)
空は曇っている
針山の前にいるキファー
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
針山には1メートルほどの高さの鋭い針がたくさん伸びている
針山には草木が全く生えていない
キファー「(声)針山を越えたんだ」
◯21回想/死者の川(何千億年前/日替わり/深夜)
空は曇っている
小舟に乗っているキファー
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
キファーが乗っている小舟は死者の川をゆっくり下っている
キファーが乗っている小舟にはランタンが設置してある
死者の川は薄暗く、キファーが乗っている小舟に設置してあるランタンしか明かりがない
死者の川の中にはたくさんの水死体が浮かんでいる
キファー「(声)それから死者の川を下った」
◯22回想戻り/回想/空っぽな世界:ニェーバの丘(何千億年前/朝)
ニェーバの丘にいるCとキファー
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
りんごを持っているC
Cとキファーはニェーバの丘に座っている
りんごを食べているC
Cはりんごを食べながらキファーと話をしている
C「死者の川?」
キファー「そう、死者の川」
C「よく分からないけど、そんなところからやって来るなんて凄いんだね、キファーは」
キファーはチラッとCのことを見る
再びりんごを一口かじるC
C「(りんごの一口かじって)僕の叔父さんも、旅を続けてこの世界に辿り着いたんだ。(少し間を開けて)ここは美しい場所だよ、針みたいな物騒なものとは無縁だからね」
少しの沈黙が流れる
キファー「私の瞳は・・・酷く濁っているようだ」
C「えっ?そうなの?」
Cはキファーの瞳を覗き込む
Cとキファーの目が合う
再び沈黙が流れる
キファーの瞳を覗き込むのをやめるC
C「(キファーの瞳を覗き込むのをやめて少し笑って)うん、大丈夫、君の目はとっても綺麗だ。キラキラしてるよ」
キファー「Cは・・・美しい魂の持ち主だね」
C「僕・・・そうかな」
キファー「うん」
Cはりんごを一口かじる
C「(りんごを一口かじって)なんだか・・・少し暑くなって来たな・・・」
キファーは軽く口笛を吹く
キファーが軽く口笛を吹くと、ニェーバの丘に弱い風が流れる
キファー「このくらいで、良いかな」
C「今の風、君が吹かせたの?」
キファーは頷く
C「(驚いて)す、凄いね・・・まるで魔法だよ」
キファー「魔法なんて・・・」
C「ねえねえねえ!他にも何か出来る?」
キファー「何かって?」
C「何かだよ!僕が見たことないやつを何でも良いからやって見せてよ!」
◯23回想/空っぽな世界:神殿(何千億年前/昼前)
神殿にいるCとキファー
神殿は広く、天井が高くなっている
神殿にはたくさんの大きな柱が立っている
神殿には全長50メートルほどの大きさの浅い凹みがあり、透き通った水が溜まっている
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
両手を強く合わせるキファー
キファーが両手を強く合わせると、全長50メートルほどの大きさの浅い凹みの中に溜まっている透き通った水から、いないはずの大きなクジラが勢いよく跳ねる
全長50メートルほどの大きさの浅い凹みの中に溜まっている透き通った水からいないはずの大きなクジラが跳ねた勢いで、Cと両手を強く合わせているキファーの全身に透き通った水がかかる
全長50メートルほどの大きさの浅い凹みの中に溜まっている透き通った水から跳ねたいないはずの大きなクジラは、水しぶきを上げながら透き通った水の中に潜って行く
Cは全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水の中を覗き込む
全長50メートルほどの大きさの浅い凹みの中に溜まっている透き通った水には波紋が出来ている
全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水の中に大きなクジラはいない
Cは全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水の中を覗き込むのをやめる
C「(全長50メートルほどの大きさの浅い凹みに溜まっている透き通った水の中を覗き込むのをやめて)やっぱ魔法だよキファー!!」
キファーは両手を合わせるのをやめる
キファー「(両手を合わせるのをやめて少し寂しそうに)Cが言うほど凄いものでは・・・ないんだ」
◯24回想戻り/ANDREI総本部礼拝堂(夜)
ANDREI総本部の礼拝堂にいるカナメとリュウマ
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはカナメとリュウマ以外誰もいない
椅子に座っているカナメとリュウマ
カナメとリュウマは話をしている
カナメ「第六の力だ」
リュウマは頷く
リュウマ「(頷き)キファーは博識であると同時に、世界を変えることが出来る、第六の力を持っていた」
カナメ「僕の・・・友達に似てる」
リュウマ「トワネちゃんかい?」
カナメ「いえ・・・アマネっていう子です」
リュウマ「(少し笑って)ガールフレンドだな」
カナメ「そういうのじゃ・・・ないと思いますけど・・・」
リュウマ「自信のない返事だな・・・その子とはどこで?」
少しの沈黙が流れる
カナメ「学校です。もう、転校しちゃいましたけど」
リュウマ「そっか。それは残念だね」
再び沈黙が流れる
カナメ「話を遮ってごめんなさい。続けてください、リュウマさん」
◯25回想/空っぽな世界:ネモフィラ畑(何千億年前/日替わり/昼過ぎ)
快晴
ネモフィラ畑にいるCとキファー
ネモフィラ畑は広く、辺り一面にネモフィラが咲いている
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
リュウマ「(声)キファーの力はとても強力だった。Cには、彼の第六の力にかかればどんなことも可能だと思えた」
突然、強い風が吹く
ネモフィラ畑に咲いているたくさんのネモフィラが強い風に煽られ、辺り一面にネモフィラの花びらが舞い飛ぶ
◯26回想/空っぽな世界:植物園(何千億年前/夜)
植物園の中にいるCとキファー
植物園は窓ガラスで出来た巨大な城の形をしている
植物園の中にはたくさんの熱帯植物が育っている
植物園の中に育っている熱帯植物は大きいものから小さいものまで様々
植物園の中には小さな滝がある
植物園の中の中心には古いグランドピアノと椅子がある
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
植物園の中を見て回っているCとキファー
Cとキファーは植物園の中を見て回りながら話をしている
C「(植物園の中を見て回りながら)ここには世界中の植物が揃っているんだ。凄いだろ?」
キファー「(植物園の中を見て回りながら)ラヴがいない」
C「(植物園の中を見て回りながら)えっ?」
キファー「(植物園の中を見て回りながら)この中で育っているのは、ラヴ以外の全ての植物だ」
C「(植物園の中を見て回りながら)うん。そうだね、確かにここに生命樹様はいないよ」
少しの沈黙が流れる
C「(植物園の中を見て回りながら)君は生命樹様が好きなんだな」
キファー「(植物園の中を見て回りながら)Cは違うのか?」
C「(植物園の中を見て回りながら)僕も好きだよ、僕らにとって神様みたいな存在だからね」
再び沈黙が流れる
Cとキファーは植物園の中を見て回りながら植物園の中の中心にある古いグランドピアノのところに行く
植物園の中を見て回るのをやめるキファー
キファーは古いグランドピアノの前で立ち止まる
植物園の中を見て回るのをやめるC
C「(植物園の中を見て回るのをやめて)キファーはピアノも弾けるのかい?」
キファー「少しだけね」
C「一曲、聞かせてよ」
キファーは古いグランドピアノに向かって椅子に座る
古いグランドピアノに向かってキファーと同じ椅子に座る
少しの沈黙が流れる
キファーは古いグランドピアノでJ・S・バッハの”古き年は過ぎ去りぬ”を弾き始める
リュウマ「(声)その一方で、キファーは自己嫌悪に駆られていた。彼は自分に才能がないと信じるどころか、持ち合わせた第六の力を酷く憎んですらいたと思う。(少し間を開けて)今となっては、彼の心境を確かめようがないけどね」
少しするとキファーは古いグランドピアノで”古き年は過ぎ去りぬ”を弾くのをやめる
拍手をするC
C「(拍手をして)凄いよキファー、僕にはない才能だ」
キファー「こんなこと・・・練習さえすれば・・・誰にだって出来るさ」
C「(拍手をしながら少し笑って)素直に喜べば良いじゃないか、褒めてるのに」
キファーは俯く
拍手をするのをやめるC
キファー「(俯いたまま)そろそろ帰ろう、C」
C「えっ?もう?」
キファー「(俯いたまま)私は・・・疲れてしまった」
C「そっか・・・じゃあまた明日、遊ぼうよ」
キファー「(俯いたまま)約束は出来ないよ、C」
C「何か予定でもあるの?」
キファー「(俯いたまま)約束をすれば、裏切りが起きるかもしれないだろう?」
C「それはキファーが約束を破った時の話でしょ?」
再び沈黙が流れる
C「明日は・・・会いたくない?」
キファー「(俯いたまま)また少し・・・休みを取りたいんだ」
◯27回想/空っぽな世界:宿舎/調理場(何千億年前/日替わり/昼前)
外は強い雨が降っている
宿舎の調理場に一人いるC
宿舎の調理場にはカセットコンロ、シンク、調理台がある
調理台の上には皿に乗ったアップルパイとたくさんのりんごが置いてある
リュウマ「(声)Cにも、キファーの心を読み取ることは出来なかった。彼にはどこか壁があったんだ」
Cは調理台の上に置いてある皿に乗ったアップルパイを手に取る
リュウマ「(声)それでもCは、キファーとの交流をやめようとしなかった」
◯28回想/空っぽな世界:神殿(何千億年前/昼過ぎ)
外は強い雨が降っている
神殿に一人いるキファー
神殿は広く、天井が高くなっている
神殿にはたくさんの大きな柱が立っている
神殿には全長50メートルほどの大きさの浅い凹みがあり、透き通った水が溜まっている
キファーの背中からは真っ白な翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
大きな柱の前で体育座りをして俯いているキファー
少しの沈黙が流れる
C「おはよ、キファー。そんなところで寝てたら風邪を引くよ」
キファーは体育座りをしたまま顔を上げる
体育座りをしているキファーの前にはCがいる
Cは全身が雨でずぶ濡れになっている
皿に乗せたアップルパイを持っているC
Cが持っている皿に乗せたアップルパイは雨に濡れて形が少し崩れている
C「(皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを持ったまま)お腹、空いただろ?キファーはここに来てから何も口にしてなかったから、僕が作って来たんだ」
再び沈黙が流れる
C「(皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを持ったまま)す、少し雨で濡れちゃったけど・・・あ、味は悪くないと思う」
Cは皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを体育座りをしているキファーに差し出す
C「(皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを体育座りをしているキファーに差し出して)良かったら食べてみてよ」
キファー「(体育座りをしたまま、皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイをCに差し出されて)C、私は食べなくても生きていけるんだよ」
C「(皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを体育座りをしているキファーに差し出したまま)僕だってそうさ。だけど、食べるという行為自体は生きる実感になるだろ?(少し間を開けて)僕はキファーに感じて欲しいんだ、生きていることを」
少しの沈黙が流れる
キファーは体育座りをしたまま、皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイをCから受け取る
体育座りをしたままた、雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを一口食べようとするキファー
キファー「(体育座りをしたまま、雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを一口食べようとして)いただきます・・・」
C「ど、どうぞ」
キファーは体育座りをしたまま、雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを一口食べる
再び沈黙が流れる
キファーは体育座りをし食べていた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイの一口を飲み込む
C「じ、自信あったんだけど・・・口に合わなかったからごめんよ」
キファー「(体育座りをし皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを持ったまま)ラヴの味がした・・・」
C「えっと、生命樹様のりんごを使ったんだ」
キファー「(体育座りをし皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを持ったまま)これは・・・あの木の味じゃないよ、C」
C「そうなの?ならどんな味だった?」
キファー「(体育座りをし皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを持ったまま)生きている人の・・・心の味だったと思う」
C「よく分からないけど・・・褒められてるってことで良い・・・?」
キファー「(体育座りをし皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを持ったまま)こんなに美味しい物を食べたのは何兆年ぶりだろう。(少し間を開けて)ありがとう、C」
C「(嬉しそうに)そ、そうか・・・それは作った甲斐があったな」
キファーは体育座りをしたまま、再び雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを一口食べる
リュウマ「(声)結局、Cによってキファーの壁は少しずつ剥がれて行った。キファーは多くを語ろうとはしなかったが、Cはそれでもいつか・・・キファーが世界を変えてくれると信じていた・・・(少し間を開けて)信じていたんだ・・・」
体育座りをしたまま、皿に乗せた雨に濡れて形が少し崩れているアップルパイを持っているキファーの白い翼に、2、3枚黒い羽が混ざっている
◯29回想/空っぽな世界:宿舎/評議会室(何千億年前/日替わり/朝)
外は晴れている
宿舎の評議会室にいるユーリと数人の村人たち
宿舎の評議会室には円の形で椅子が並べられてある
ユーリを含む数人の村人たちは円の形に並べられた椅子に座っている
話をしているユーリたち
ユーリ「翼の生えた男か・・・噂には聞いているが・・・」
村人1「確かに存在してるんです、ユーリさん」
村人2「ええ、でっかい羽を背中から生やしている若者です」
村人3「若者かどうかは分かりませんよ、何せ口ぶりが穏やかですからね」
ユーリ「うーむ・・・どう手を打ったもんか・・・」
村人4「男はCと仲良くしてるみたいですよ、毎日一緒にいるって話です」
ユーリ「Cと・・・?」
村人4「はい。それから生命樹様の柵の中に忍び込んでるところを見たって奴もいるんです」
村人1「なんて罰当たりな!!」
ユーリ「生命樹様を犯そうとしたのであれば、こちらからも何かしなくてはな・・・」
◯30回想/空っぽな世界:ニェーバの丘(何千億年前/朝)
晴れている
ニェーバの丘にいるCとキファー
キファーの背中からは白と黒の翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
Cとキファーはニェーバの丘に座っている
話をしているCとキファー
C「この世界には慣れた?」
キファー「うん、少しね」
少しの沈黙が流れる
Cは深く息を吐き出す
深く息を吐き出してニェーバの丘に横になるC
C「(深く息を吐き出してニェーバの丘に横になって)今日は何しよっか、キファー」
再び沈黙が流れる
Cはニェーバの丘に横になったままキファーの背中から生えている白と黒の翼を見る
C「(ニェーバの丘に横になったままキファーの背中から生えている白と黒の翼を見て)キファーの翼、白くないのも格好良いな」
キファー「黒翼は・・・墜落者の印なんだ」
Cはニェーバの丘に横になったままキファーの背中から生えている白と黒の翼を見るのをやめる
C「(ニェーバの丘に横になったままキファーの背中から生えている白と黒の翼を見るのをやめて)墜落者って?」
少しの沈黙が流れる
キファー「Cは、この世界についてどう思う?」
C「(ニェーバの丘に横になったまま)好きだよ」
キファー「それは・・・本当に?」
C「(ニェーバの丘に横になったまま)うん。君が来てからは、世界が少しだけ変わった気がするんだ」
再び沈黙が流れる
キファー「私は・・・役割を担おうとしていない。翼が黒く染まり始めたのは、そのせいなんだ」
C「(ニェーバの丘に横になったまま)キファーにどんな役割があるのか分からないけど、これから果たせば良いじゃないか」
キファー「私は臆病者だから、そういう勇気もないんだよ」
Cはニェーバの丘で体を起こす
C「(ニェーバの丘で体を起こして)僕にも・・・この世界の好きじゃないところがある。(少し間を開けて)それは前に進めないこと、僕らに選ぶ権利がないこと、ただ立ち止まるしか、出来ないこと・・・でもキファーは選べるだろ?キファーには真っ白じゃなくても翼が生えているんだから」
少しの沈黙が流れる
キファー「私は・・・こんな世界でもCなら進めると信じてる」
C「いっつも同じことの繰り返しじゃ無理だよ、僕が進みたくても世界は止まっているんだ」
再び沈黙が流れる
C「ねね、手伝ってあげようか。キファーの役割とかいうやつをさ」
キファー「(少し笑って)考えておくよ」
C「(不機嫌そうに)えぇー、せっかく僕が手を貸してあげるのに何だよその言い方」
キファー「(少し笑いながら)私には汚れた翼があるから」
◯31回想/空っぽな世界:宿舎/調理場(何千億年前/日替わり/昼前)
外は快晴
宿舎の調理場に一人いるC
宿舎の調理場にはカセットコンロ、シンク、調理台がある
調理台の上には皿に乗ったアップルパイとたくさんのりんごが置いてある
Cは調理台の上に置いてある皿に乗ったアップルパイを手に取る
宿舎の調理場の扉が開き、調理場の中にユーリが入って来る
ユーリは後ろで両手を組んでいる
C「(皿に乗せたアップルパイを持ったまま)叔父さん」
ユーリ「(後ろで両手を組んだまま)例の羽の生えた男に持って行くのかい?C」
C「(皿に乗せたアップルパイを持ったまま)うん、前に作ったら気に入ってくれたんだ」
ユーリ「(後ろで両手を組んだまま少し笑って)それは素晴らしいことだな」
C「(皿に乗せたアップルパイを持ったまま)叔父さんもキファーに会ってみる?」
ユーリ「(後ろで両手を組んだまま少し笑って)いや、私は遠慮しておこう。二人の時間を邪魔したくないしね」
C「(皿に乗せたアップルパイを持ったまま)別に邪魔なんかじゃないけどな」
ユーリ「(後ろで両手を組んだまま少し笑って)二人だけの方が良い時もあるだろう?」
C「(皿に乗せたアップルパイを持ったまま)ま、それもそっか」
Cは皿に乗せたアップルパイを持ったまま宿舎の調理場から出て行こうとする
C「(皿に乗せたアップルパイを持ったまま宿舎の調理場から出て行こうとして)じゃあね叔父さん」
ユーリ「(後ろで両手を組んだまま少し笑って)ああ、気をつけて行くんだよC」
C「(お皿に乗せたアップルパイを持ったまま宿舎の調理場から出て行こうとして少し笑って)ここで気をつけなきゃいけないことなんかないけどね」
ユーリ「(後ろで両手を組んだまま少し笑って)そういえばそうだったな」
Cは皿に乗せたアップルパイを持ったまま宿舎の調理場から出て行く
少しの沈黙が流れる
ユーリは後ろで両手を組むのをやめる
ユーリの手には真っ黒な液体が入っている小瓶が握られている
◯32回想戻り/ANDREI総本部礼拝堂(夜)
ANDREI総本部の礼拝堂にいるカナメとリュウマ
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはカナメとリュウマ以外誰もいない
椅子に座っているカナメとリュウマ
カナメとリュウマは話をしている
カナメ「そんな、第六の力で毒を作るなんて」
リュウマ「ユーリは実質、空っぽな世界の独裁者だった。誰もそのことには気付いていないほど、平和ボケしていたがね」
少しの沈黙が流れる
カナメ「お婆ちゃんと僕たちみたいに、ですか?」
リュウマ「(少し笑って)さあ、それはどうかな。カナメくんはどう思ってるの?」
カナメ「僕は・・・(少し間を開けて)時々、お婆ちゃんに支配されてると感じる時があるので・・・」
リュウマ「(少し笑いながら)残念だけど、それは君が望んでいることじゃないかな」
再び沈黙が流れる
リュウマ「(少し笑いながら)彼女は君の保護者だよ?支配して当然さ、大人だからね」
カナメ「お婆ちゃんのやり方は、正しくないと思います」
リュウマ「(少し笑いながら)俺も窮屈に感じることは否定しないよ、だけどこれも世界のあり方なんだ」
少しの沈黙が流れる
リュウマ「カナメくんのお婆ちゃんのことは分からないけど、ユーリは自分の庭で好き勝手されて喜ぶタイプじゃなかったらしい。中でも生命樹は・・・彼にとって待ち人と同じくらい大事な存在だったんだ」
◯33回想/空っぽな世界:神殿(何千億年前/日替わり/夕方)
夕日が沈みかけている
神殿にいるCとキファー
神殿は広く、天井が高くなっている
神殿にはたくさんの大きな柱が立っている
神殿には全長50メートルほどの大きさの浅い凹みがあり、透き通った水が溜まっている
神殿にはアップルパイが乗っていた皿が落ちている
キファーの背中からは真っ黒な翼が生えており、顔面、頭、腕、脚の所々にも真っ黒な羽が生えている
キファーの右目は真っ黒に染まっている
キファーは真っ白な装束を着ている
地面に座り神殿の大きな柱にもたれているキファー
神殿の大きな柱にもたれているキファーの側でしゃがんでいるC
話をしているキファーとC
C「(しゃがんだまま)僕のせいだ・・・僕のせいだ僕のせいだ・・・」
キファー「(大きな柱にもたれたまま少し笑って)そうじゃないよC・・・」
C「(しゃがんだまま)僕が作ったパイのせいで・・・」
キファー「(大きな柱にもたれたまま少し笑って)あのパイなら美味しかったよ・・・(少し間を開けて)私がこうなったのは・・・罰が当たったからさ・・・私は墜落しただけではなく・・・のうのうと生きていたから・・・」
キファーは大きな柱にもたれたまま激しく咳き込む
大きな柱にもたれたまま激しく咳き込んで血と共に真っ黒な羽を数枚吐き出すキファー
Cはしゃがんだまま、キファーが大きな柱にもたれ激しく咳き込んで血と共に吐き出した数枚の真っ黒な羽を見る
C「(しゃがんだまま、キファーが大きな柱にもたれ激しく咳き込んで血と共に吐き出した数枚の真っ黒な羽を見て)どうして羽が・・・」
キファー「(大きな柱にもたれたまま激しく咳き込んで)ゲホッ・・・ゲホッ・・・C・・・君に謝らなくては・・・ゲホッ・・・いけないことがある・・・」
Cはしゃがんだまま、キファーが大きな柱にもたれ激しく咳き込んで血と共に吐き出したな数枚の真っ黒な羽を見るのをやめる
大きな柱にもたれたまま激しく咳き込んでいるキファーの頭には、真っ黒な羽が数枚生えて来る
キファー「(大きな柱にもたれたまま激しく咳き込んで)私は・・・ゲホッ・・・私は・・・ラヴを破壊するために・・・この世界に来たんだ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
C「(しゃがんだまま)せ、生命樹様を・・・?」
キファー「(大きな柱にもたれたまま激しく咳き込んで)ゲホッ・・・ゲホッ・・・そう・・・生命樹を破壊して・・・ゲホッ・・・この空っぽな世界を・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・滅ぼすことが目的だったんだ・・・ごめん・・・今まで黙っていて・・・ゲホッ・・・Cを騙してごめん・・・」
キファーは再び大きな柱にもたれたまま激しく咳き込んで血と共に真っ黒な羽を数枚吐き出す
しゃがんだまま大きな柱にもたれ激しく咳き込んで、血と共に真っ黒な羽を数枚吐き出したキファーの背中をさするC
キファー「(大きな柱にもたれ激しく咳き込んだままCに背中をさすってもらって)ゲホッ・・・ゲホッ・・・本当にごめん・・・ゲホッ・・・」
C「(しゃがんだまま大きな柱にもたれ激しく咳き込んでいるキファーの背中をさすって)な、何でそんなに謝るの?」
キファー「(大きな柱にもたれ激しく咳き込んだままCに背中をさすってもらって)この世界の人たちは・・・ゲホッ・・・ラヴがいなければ・・・死んでしまうんだ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
少しの沈黙が流れる
少しすると大きな柱にもたれCに背中をさすってもらっているキファーの咳が落ち着く
C「(しゃがんで大きな柱にもたれているキファーの背中をさすったまま)それが?そんなの謝るようなことなの?」
キファー「(大きな柱にもたれCに背中をさすってもらいながら)君は死ぬんだよ・・・C・・・」
C「(しゃがんで大きな柱にもたれているキファーの背中をさすったまま少し笑って)僕たちが前に進めるんだから、死ぬのは最高なことじゃないか」
キファー「(大きな柱にもたれCに背中をさすってもらいながら)私はそんなふうに思わない・・・たとえ生命の掟に反しているとしても・・・ラヴを破壊することも・・・君たちを殺すことも・・・私には出来ない・・・命を奪う天使など・・・大きく誤った存在だよ・・・」
再び沈黙が流れる
C「(しゃがんで大きな柱にもたれているキファーの背中をさすったまま)立てるかい・・・?君を叔父さんのところに見せに行かないと・・・」
キファー「(大きな柱にもたれCに背中をさすってもらいながら)C・・・」
C「(しゃがんで大きな柱にもたれているキファーの背中をさすったまま)な、何?」
キファー「(大きな柱にもたれCに背中をさすってもらいながら)この世界に・・・医者はいないよ、誰も死なないんだから」
少しの沈黙が流れる
Cは大きな柱にもたれているキファーの背中をさすったまま座り込む
◯34回想/空っぽな世界:宿舎/ユーリの部屋(何千億年前/昼)
宿舎のユーリの部屋にいるCとユーリ
ユーリの部屋にはベッド、机、椅子がある
ユーリの机の上には2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみが置いてある
ユーリに怒鳴っているC
C「(怒鳴りながら)叔父さんがやったの!?!?」
少しの沈黙が流れる
C「(怒鳴りながら)答えてよ!!!!」
ユーリ「そうだ。あの男が無闇に生命樹様に触れたという話を聞いて、彼を裁いたんだ」
C「(怒鳴りながら)キファーを助けて!!!!病気を治してよ!!!!」
ユーリ「死が存在していないこの世界に彼が相応しいのであれば、病は自然に治るだろう。もっとも、死のない地で病にかかった以上、あの男の運命は決まったようなものだが」
◯35回想/空っぽな世界:宿舎/Cの部屋(何千億年前/夜)
宿舎のCの部屋にいるCとキファー
Cの部屋にはベッド、机、椅子、本棚がある
Cの本棚にはたくさんの本が並べられてある
キファーの背中からは真っ黒な翼が生えており、全身のほとんどの部位に真っ黒な羽が生えている
キファーの右目は真っ黒に染まっている
キファーは真っ白な装束を着ている
机に向かって椅子に座っているC
キファーはCのベッドに座っている
話をしているCとキファー
C「叔父さんが仕組んだんだ・・・だからキファーがこんな目に・・・」
キファー「違うんだよC・・・全て私の自業自得なんだ・・・」
少しの沈黙が流れる
C「キファー・・・これからどうするの・・・?」
キファー「死を受け入れて・・・地獄に堕ちる・・・心の支度をするよ・・・」
C「キファーは本当に地獄に堕ちなきゃいけないの・・・?」
キファーは頷く
C「せ、生命樹様を破壊したらキファーが・・・」
キファー「(Cの話を遮って)私は永遠を選ぶ」
再び沈黙が流れる
C「キファーは・・・キファーが考えているほど・・・正しい選択は出来ていないと思う・・・」
少しの沈黙が流れる
キファーは俯く
リュウマ「(声)あの時・・・Cはキファーを助けるべきだった・・・責めるのではなく・・・彼に手を差し伸べ・・・永遠のサイクルという選択肢を、彼から取り上げるべきだった・・・」
キファーは俯いたまま激しく咳き込む
立ち上がり俯いたまま激しく咳き込んでいるキファーの元に駆け寄るC
リュウマ「(声)だけどそれは出来なかった・・・キファーが役割を果たせなかったように・・・Cにはキファーに役割を果たすよう勧めることが出来なかったんだ・・・」
Cは俯いたまま激しく咳き込んでいるキファーの背中をさする
◯36回想戻り/ANDREI総本部礼拝堂(夜)
ANDREI総本部の礼拝堂にいるカナメとリュウマ
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはカナメとリュウマ以外誰もいない
椅子に座っているカナメとリュウマ
カナメとリュウマは話をしている
リュウマ「Cの心のどこかには・・・キファーの病気が良くなって・・・キファーが空っぽな世界を変えてくれるかもしれないという・・・淡い期待があった・・・(少し間を開けて)何よりも・・・Cはキファーのことを・・・信じていたかった・・・」
カナメはチラッとリュウマのことを見る
リュウマ「いくら空っぽのように見えて、大事な何かが欠けていたとしても、あの世界には確かに罪がある」
◯37回想/空っぽな世界:ネモフィラ畑(何千億年前/日替わり/昼過ぎ)
快晴
ネモフィラ畑にいるCとキファー
ネモフィラ畑は広く、辺り一面にネモフィラが咲いている
キファーの背中からは真っ黒な翼が生えており、全身のほとんどの部位に真っ黒な羽が生えている
キファーの右目は真っ黒に染まっている
キファーは真っ白な装束を着ている
杖をつきながらゆっくりネモフィラ畑を歩いているキファー
Cは杖をゆっくりつきながら歩いているキファーのことを支えている
話をしているCとキファー
キファー「(Cに支えられながら杖をつきゆっくり歩いて)私が・・・私が間違えていたかもしれない・・・」
C「(杖をつきゆっくり歩いているキファーのことを支えながら)キファー・・・今そんなことを言うなんて・・・」
キファー「(Cに支えられながら杖をつきゆっくり歩いて)Cが言ったように・・・ここは美しい・・・私の瞳が濁っていても・・・そう感じるようになったんだ・・・」
C「(杖をつきゆっくり歩いているキファーのことを支えながら)に、濁ってなんかないよキファー」
Cは杖をつきゆっくり歩いているキファーのことを支えながら涙を流す
C「(杖をつきゆっくり歩いているキファーのことを支えながら涙を流して)き、君の目はとっても綺麗だ。いつもキラキラしてるよ」
キファー「(Cに支えられながら杖をつきゆっくり歩いて)C・・・」
C「(杖をつきゆっくり歩いているキファーのことを支え涙を流しながら)ん・・・?」
キファー「(Cに支えられながら杖をつきゆっくり歩いて)もし・・・もし私が間違えた選択をしていたら・・・Cが正して欲しい・・・この世界は・・・永遠のサイクルになっている・・・だからC・・・次の・・・次のチャンスが・・・」
突然、強い風が吹く
ネモフィラ畑に咲いているたくさんのネモフィラが強い風に煽られ、たくさんのネモフィラの花びらと大きな真っ黒な羽が一枚舞い飛んで行く
ネモフィラ畑にはキファーが着ていた真っ白な装束と使っていた杖が落ちている
涙を流したまま両膝をつくC
Cに支えられながら杖をついてゆっくり歩いていたキファーの姿はどこにもいない
Cは両膝をついたまま大きな声を上げて涙を流す
リュウマ「(声)Cはその時初めて知った、死の恐ろしさ、悲しさ、冷たさを・・・(少し間を開けて)彼女は空っぽな世界で生命の尊さを学び、キファーが言っていたように、少しだけ前に進むことが出来た」
◯38回想戻り/ANDREI総本部礼拝堂(夜)
ANDREI総本部の礼拝堂にいるカナメとリュウマ
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはカナメとリュウマ以外誰もいない
椅子に座っているカナメとリュウマ
カナメとリュウマは話をしている
リュウマ「キファーは一人で進むことよりも、Cに進んでもらうことを選んだんだ」
カナメ「ならCは、その期待に応えたんですね」
リュウマ「それはどうかな・・・Cがいた世界は変わらなかったかもしれないが、少なくともCの世界は変わった、キファーが変えたんだ」
少しの沈黙が流れる
リュウマ「(少し笑って)オチのないストーリーで悪いね、カナメくん」
カナメはリュウマのことを見る
カナメ「(リュウマのことを見て)今の話、本当にあったんですか」
リュウマ「(少し笑いながら)いやいやいや、これはただの例え話に過ぎないよ」
再び沈黙が流れる
リュウマは少し笑いながら立ち上がる
リュウマ「(立ち上がって少し笑いながら)さて、と・・・俺はそろそろ仕事に戻らなきゃ。それじゃあ、カナメくん」
リュウマはANDREI総本部の礼拝堂から出て行く
リュウマがいたところを見ているカナメ
◯39ANDREI総本部食堂(夜)
ANDREI総本部の食堂にいるカナメ
ANDREI総本部の食堂にはたくさんのテーブルと椅子がある
ANDREI総本部の食堂にはカナメ以外にも数人のANDREIの職員がおり、夕食を食べたりコーヒーを飲んだりしている
テーブルに向かって椅子に座っているカナメ
カナメはボロネーゼを食べている
ボロネーゼを一口食べようとするカナメ
ボロネーゼを一口食べようとしているカナメの前にアップルパイが乗った皿が置かれる
カナメはボロネーゼを一口食べようとするのをやめる
目の前を見るカナメ
カナメの前にはイズミが立っている
テーブルを挟んでカナメと向かい合って椅子に座るイズミ
イズミ「(テーブルを挟んでカナメと向かい合って椅子に座って)お疲れ、兄さん」
カナメ「お疲れ」
カナメはボロネーゼを一口食べる
イズミ「おやおやおや、ボロネーゼとはなかなか趣味が良いね」
カナメは皿に乗っているアップルパイを見る
カナメ「(皿に乗っているアップルパイを見て)イズミのは何?」
イズミ「アップルパイってやつだよ、食べたことある?」
カナメ「(皿に乗っているアップルパイを見たまま)ううん」
カナメは皿に乗っているアップルパイを見るのをやめる
イズミ「私今日初めて挑戦してみるんだよねえ・・・つかりんご味を食べるのも初体験って感じ」
カナメはイズミのことを見る
カナメ「(イズミのことを見て)C・・・?」
イズミ「えっ?なになになに?」
少しの沈黙が流れる
カナメはイズミのことを見るのをやめる
イズミ「あ、もしかして兄さんも食べてみたいの?」
イズミは皿に乗っているアップルパイを手に取る
皿に乗っているアップルパイをカナメに差し出すイズミ
イズミ「(皿に乗っているアップルパイをカナメに差し出して)一口どうぞ?」
カナメは皿に乗っているアップルパイをイズミから受け取る
カナメ「(皿に乗っているアップルパイをイズミから受け取って)ありがとう、イズミ」
カナメはアップルパイを一口食べる
再び沈黙が流れる
イズミ「どうよ?お味のほどは」
カナメは食べていたアップルパイの一口を飲み込む
カナメ「(食べていたアップルパイの一口を飲み込んで)うん、凄く美味しいよ」
イズミ「マジかマジかマジか、私にもちょうだい兄さん」
カナメは皿に乗っているアップルパイをイズミの前に置く
アップルパイを一口食べるイズミ
イズミ「(アップルパイを一口食べて)ほんとだ、りんご味ってのも悪くないね」
カナメ「飲み込んでから喋りなよ」
イズミ「良いじゃんか、今日は体をいじくり回されて疲れてるんだから」
カナメ「イズミ、例の3回繰り返す癖は治らなかったの?」
イズミは再びアップルパイを一口食べる
イズミ「(アップルパイを一口食べて)うん、今は治す余裕がないんだってさ」
カナメ「そうなんだ」
カナメはボロネーゼを一口食べる
イズミ「兄さんは?何してたの?」
カナメ「僕は・・・一度花色荘に帰ろうとして、それからリュウマさんから話を聞いたんだ」
イズミ「どんな話を聞いたの?」
カナメ「悲しくて・・・ー共感出来る話」
少しの沈黙が流れる
イズミはアップルパイを一口食べる
カナメ「これから僕は、トワネとソウヤを探しに行こうと思う」
イズミ「へぇー・・・」
カナメ「何?」
イズミ「兄さんがそういうことをするのは珍しいなぁと思って」
カナメ「僕たちには・・・これしかない気がしたんだ」
イズミ「少しずつ前に進んで行くしかないってこと?」
カナメ「うん」
イズミ「私も・・・そんな気がする」
◯40ANDREI総本部リュウマの研究室(夜)
ANDREI総本部のリュウマの研究室にいるリュウマ
ANDREI総本部のリュウマの研究室は部屋全体にホログラムが投影されており、森の中にいるようになっている
ANDREI総本部のリュウマの研究室の中心にはクローン製造機がある
ANDREI総本部のリュウマの研究室の中心にあるクローン製造機は、透明な棺のような形をしている
クローン製造機の中には誰も入っていない
リュウマはクローン製造機に手を置いている
◯41回想/空っぽな世界:宿舎/ユーリの部屋(何千億年前/日替わり/夜)
宿舎のユーリの部屋にいるCとユーリ
ユーリの部屋にはベッド、机、椅子がある
ユーリの机の上には2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみが置いてある
ユーリは机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見ている
話をしているCとユーリ
C「キファーは死んでしまった・・・この空っぽな世界には死が存在していないはずなのに・・・」
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま)キファーは・・・ただのオソレだよ、C」
C「オソレ?」
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま)そうさ、彼は私たちの不安を煽る象徴だよ」
C「キファーはそんな人じゃない」
少しの沈黙が流れる
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま)叔父さんの待っている人がそろそろ来ると思うんだ。(少し間を開けて)Cは私と一緒にこの世界を生み出してくれたから、彼女が来た時に何かお礼をしないとな」
C「良いよ・・・お礼なんか・・・」
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま少し笑ってタエの声で)ならプレゼントをあげよう」
机に上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見て少し笑っているユーリの声がタエに変わる
ユーリ「(机の上に置いてある2頭身にデフォルメされたトワネのぬいぐるみを見たまま少し笑ってタエの声で)Cが昔から持っていなくて・・・今はほんの少しだけ身近に感じるようになったあれを・・・」
◯42回想/空っぽな世界:神殿(何千億年前/日替わり/夕方)
夕日が沈みかけている
神殿にいるCとキファー
神殿は広く、天井が高くなっている
神殿にはたくさんの大きな柱が立っている
神殿には全長50メートルほどの大きさの浅い凹みがあり、透き通った水が溜まっている
キファーの背中からは白と黒の翼が生えている
キファーは真っ白な装束を着ている
大きな柱にもたれているCとキファー
Cとキファーは大きな柱にもたれたまま話をしている
C「(大きな柱にもたれたまま)あのさ、キファー」
キファー「(大きな柱にもたれたまま)うん」
C「(大きな柱にもたれたまま)死ぬのって・・・どんな感じだろうね?」
キファー「(大きな柱にもたれたまま)死は・・・苦しみからの解放であり・・・新たな苦しみの始まりだよ」
C「(大きな柱にもたれたまま)本当に、、キファーはそう思ってるの?」
◯43回想戻り/ANDREI総本部リュウマの研究室(夜)
ANDREI総本部のリュウマの研究室にいるリュウマ
ANDREI総本部のリュウマの研究室は部屋全体にホログラムが投影されており、森の中にいるようになっている
ANDREI総本部のリュウマの研究室の中心にはクローン製造機がある
ANDREI総本部のリュウマの研究室の中心にあるクローン製造機は、透明な棺のような形をしている
クローン製造機の中には誰も入っていない
リュウマはクローン製造機に手を置いている
クローン製造機に手を置いたまま深く息を吐き出すリュウマ
◯44花色荘前(深夜)
花色荘の前にいるカナメとイズミ
花色荘は3階建ての古くボロボロなアパート
花色荘を見ているイズミ
イズミ「(花色荘を見たまま)オンボロ」
カナメはポケットから花色荘の鍵を取り出す
カナメ「(ポケットから花色荘の鍵を取り出して)中はそうでもないよ」
イズミ「(花色荘を見たまま)へぇー、そうなんだ」
カナメは花色荘の鍵で花色荘の扉を開ける
花色荘を見るのをやめるイズミ
カナメは花色荘の玄関に行く
カナメに続いて花色荘の玄関に行くイズミ
カナメは花色荘の玄関の扉の鍵をかけるカナメ
少しの沈黙が流れる
イズミ「なんか・・・めっちゃ静か・・・」
カナメは靴を脱ぐ
花色荘の玄関に上がるカナメ
カナメ「(花色荘の玄関に上がって)ただいま」
イズミは靴を脱ぐ
花色荘の玄関に上がるイズミ
イズミ「(花色荘の玄関に上がって)お邪魔しまーす」
◯45花色荘リビング(深夜)
花色荘のリビングにいるチヅル
花色荘のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビ、ゲームがある
花色荘のリビングはテーブルの上の電気だけが付いていて、薄暗くなっている
テーブルに向かって椅子に座っているチヅル
テーブルの上には小さなリモコンのようなスティックが置いてある
小さなリモコンのようなスティックにはボタンがある
チヅルはテーブルに突っ伏して眠っている
花色荘のリビングにやって来るカナメとイズミ
イズミは花色荘のリビングを見る
イズミ「(花色荘のリビングを見て)ほんとだ、見た目の割に中はボロくない」
カナメはテーブルに突っ伏して眠っているチヅルのところに行く
花色荘のリビングを見るのをやめるイズミ
イズミはテーブルに突っ伏して眠っているチヅルのところに行く
テーブルに突っ伏して眠っているチヅルの肩をトントン叩くカナメ
カナメ「(テーブルに突っ伏して眠っているチヅルの肩をトントン叩いて)チヅル、風邪引くよ」
イズミはテーブルの上に置いてある小さなリモコンのようなスティックを手に取る
小さなリモコンのようなスティックのボタンを押すイズミ
イズミが小さなリモコンのようなスティックのボタンを押すと、ホログラム姿のシィアが投影される
イズミ「お・・・」
シィア「1つは前述した冷静さ、クールダウンをするためのエンジンです」
イズミが持っている小さなリモコンのようなスティックから投影されているホログラム姿のシィアは話をし始める
テーブルに突っ伏して眠っているチヅルの肩をトントン叩くのをやめるカナメ
カナメはイズミが持っている小さなリモコンのようなスティックから投影されているホログラム姿のシィアのことを見る
シィア「そしてもう1つは、人類全員が認知していながら、敢えてあまり口にしないあの単語、ラヴです。(少し間を開けて)これは憎悪や第六の力の戦いではなく、ラヴの戦いなのです。そのことに気付いているのは司令、私、ソウヤだけ」
イズミ「この子って確か十一人目の・・・」
カナメ「(イズミが持っている小さなリモコンのようなスティックから投影されているホログラム姿のシィアのことを見たまま)シィアちゃんだよ」
シィア「今はまだ、トワネやチヅル、カナメたちのエンジンが本調子とは言えません。でもソウヤなら、エンジンを動かす方法を、真っ赤なハートで戦う方法を彼らに教えることが出来るはずです」
テーブルに突っ伏して眠っていたチヅルが目を覚ます
チヅル「(テーブルに突っ伏したまま目を覚まして小さな声で)お兄ちゃん・・・」
カナメはイズミが持っている小さなリモコンのようなスティックから投影されているホログラム姿のシィアのことを見るのをやめる
カナメ「(イズミが持っている小さなリモコンのようなスティックから投影されているホログラム姿のシィアのことを見るのをやめて)チヅル、僕たちもソウヤを探すよ」
チヅル「(テーブルに突っ伏したまま)もう遅いよ・・・手遅れだもん・・・」
シィア「そのためにも、まずはソウヤ自身が2つのエンジンに火を入れて欲しい。エンジンが燃え上がった瞬間、あなたの犯した罪は償われます。嘘ではありません」
カナメ「まだ分からないよ、チヅル」
チヅル「(テーブルに突っ伏したまま)あたしには分かるんだよ・・・(少し間を開けて)双子だから・・・」
シィア「あなたは善人だもの。(少し間を開けて)償う道を選ぶと信じています」
少しの沈黙が流れる
カナメ「双子って・・・君たちは・・・幼馴染じゃなかったの・・・?」
チヅル「(テーブルに突っ伏したまま)ANDREIに入る時・・・あんたのお婆さんに言われたんだ・・・うちに来れば血縁関係を消すことが出来るって・・・」
再び沈黙が流れる
シィア「それでは兄弟、アホアホな皆さんによろしく。(少し間を開けて)価値のある犠牲を迎えたアホアンドロイドSI-A49、または晴れて、人間の女の子になれた元アホアンドロイドSI-A49より」
イズミが持っている小さなリモコンのようなスティックから投影されていたホログラム姿のシィアが消える
イズミは再び小さなリモコンのようなスティックのボタンを押す
イズミが再び小さなリモコンのようなスティックのボタンを押すと、ホログラム姿のソウヤが投影される
ソウヤ「すまない、チヅル・・・みんなにも僕が謝ってたことを伝えて欲しい・・・すまない、チヅル・・・みんなにも僕が謝ってたことを伝えて欲しい・・・すまない、チヅル・・・」
イズミが持っている小さなリモコンのようなスティックから投影されているホログラム姿のソウヤは、”すまない、チヅル・・・みんなにも僕が謝ってたことを伝えて欲しい・・・”と繰り返し言い続けている
イズミ「そっか・・・彼も前に進むことを選んだんだ・・・」
チヅル「(テーブルに突っ伏したまま)前に・・・?」
イズミ「うん。あなたはどうする?」
チヅル「(テーブルに突っ伏したまま)あたし・・・あたしは・・・どうしようかな・・・」
続く。