『第十五話 恐るべき双子たち』
『サイクルラヴの叫び、少年少女のセイセンネンリョ』
登場人物
神野 カナメ 16歳男子
本作の主人公。高校一年生。人に対して距離があり、どこか性格も冷めている。
相園 トワネ 16歳女子
本作のメインヒロイン。高校一年生。”第六の力の女王”で、カナメの契約相手。性格はわがままで愛想がなく、たびたびカナメのことを困らせることになる。無類のカルボナーラ好き。
若葉 ソウヤ 16歳男子
カナメたちと同じ高校一年生で、”第六の力の王子”。成績と容姿が優れている上に、人当たりも悪くないため、同級生たちからよくモテているが・・・信心深く、よく礼拝堂に訪れている。
浅木 チヅル 16歳女子
カナメたちと同じ高校一年生で、”第六の力の姫の一人”。カナメやトワネほどではないが、馴れ合うことが苦手な性格をしており、口調もキツい。契約相手のソウヤとは幼馴染。
九音 ヒヨリ 18歳女子
カナメたちよりも2つ歳上の先輩に当たる、”第六の力の姫の一人”。ロシアからの帰国子女で、強い正義感の持ち主。その性格の通り優秀な戦士であり、面倒見も良い。
真弓 マナカ 18歳女子
ヒヨリと同じくロシアからの帰国子女で、”第六の力の姫の一人”。常に顔面にカラスがデザインされた鉄仮面を付けていて、お嬢様口調で話をする。ヒヨリとは古くからの仲であり、契約相手でもある。
シィア 15歳女子モデル
長く”ANDREI”で働く美少女アンドロイド、正式名称はSI-A49。一応梢トキコの助手という役職だが、雑用も淡々とこなす。長く人間に仕えて来たからか、皮肉屋ところがある。口癖は『アホ』。
四季 イズミ 16歳女子
・・・???
梢 トキコ 36歳女子
“ANDREI”の科学者で、カナメたちが暮らすオンボロアパート”花色荘”の管理人。大人気なく怒りっぽい性格をしている。カナメたちに対して厳しい言い方をすることが多いが、一応彼らの保護者だったりする。
神野 タエ 78歳女子
“オソレ”の破壊を目的とした組織”ANDREI”の司令であり、カナメの祖母。カナメとは長く疎遠だったが、”オソレ”を破壊するために彼の力を借りようとする。
日向 リュウマ 36歳男子
日本帝国軍から派遣された軍人で、階級は陸佐。ただし、軍人らしさは全くない。戦略班のリーダーだが、実質的に”ANDREI”のトップ2の立場におり、タエの側近的な役割を担っていることが多い。トキコとは過去に色々あったとか、なかったとか。
神野 アキラ 44歳男子
カナメの父親。いつも仕事で帰って来るのが遅いため、カナメとは上手くコミュニケーションが取れておらず、そのことを気にしている。
神野 アイラ 女子
カナメの母親。カナメが幼い頃に亡くなっている。
ゲストキャラクター
MA-RA337型のアンドロイド 18歳女子モデル
シィアよりも後に登場したアンドロイド。シィアと比較するとかなり人間的な表情が出来るのに加えて、欠陥も少ない。
トキコがバーで出会った男 30代後半男子
・・・???
イザベル・カーフェン 16歳?女子
一生懸命、真面目、純粋の三拍子が揃ったドジっ娘。良くも悪くもまっすぐな性格のため、気合いが空回りすることもしばしば。ある時カナメたちと出会い、そこから交流を深めるようになる。
アマネ・カーフェン 18歳?女子
イザベルの姉。何かとやらかすことが多いイザベルのことをいつも厳しく叱っている。一人称は『俺』だが、食器集めが趣味という可愛い一面も。
ルシファリア 年齢?女子
・・・???
ウラジーミル・アンドレイ 65歳男子
・・・???
ヒラン・アンドレイ 14歳女子
・・・???
ロベール=フォン・アンドレイ 18歳男子
・・・???
クレナ・アンドレイ 21歳女子
・・・???
九音 アリカ 40歳女子
ヒヨリの母親。
博士 17〜18歳女子
本名不明。”あるもの”を連れている。
タカヤ 30代前半男子
・・・???
ヨハリル 20代前半?男子
・・・???
C 16歳?女子
リュウマの話に登場した好奇心旺盛な少女。ある日、キファーと出会うことになる。
キファー 16歳?男子
Cと同じくリュウマに登場した少年。Cとは違い大人しく、いつも寂しげな様子をしている。
ユーリ 60歳?男子
Cの叔父。
ガラファリア 20代後半?女子
・・・???
神野 アイハ 40代前半女子
カナメの叔母。”夢路村”で、喫茶”四重奏の夢”を経営している。
イ・ジヨン 20代前半女子
韓国から来た留学生。喫茶”四重奏の夢”を経営を手伝いながらアイハの家でホームステイをしている。
リツ 27歳女子
ある過去を抱えている信仰者。
スグル 30代前半男子
・・・???
◯1回想/浅木家リビング(約6年前/夜)
外は弱い雨が降っている
浅木家のリビングにいる10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、ソウヤとチヅルの母、ソウヤとチヅルの父
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
テーブルに向かって椅子に座っている10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、ソウヤとチヅルの母、ソウヤとチヅルの父
テーブルの上にはオムライス、ハンバーグ、サラダが置いてある
夕食を食べている10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、ソウヤとチヅルの母、ソウヤとチヅルの父
10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、ソウヤとチヅルの母、ソウヤとチヅルの父は夕食を食べながら話をしている
ソウヤとチヅルの父「凄いじゃないか二人とも」
チヅル「先生にも褒められたよ、頑張ってるねって」
ソウヤとチヅルの母「自惚れちゃダメよチヅル、神様はいつもあなたのことを見ているんだから」
ソウヤとチヅルの父はオムライスを一口食べる
ソウヤとチヅルの父「(オムライスを一口食べて少し笑って)国から賞を貰ったんだ、今日くらい神様のことを忘れても良いじゃないか」
ソウヤとチヅルの母「あなた、子供たちに罰が当たるようなことを言わないで」
ソウヤ「僕らが頑張ってるから大丈夫だよ、お母さん。きっと神様だって分かってる」
ソウヤとチヅルの母はサラダを一口食べる
ソウヤとチヅルの母「(サラダを一口食べて)それなら良いんだけれど」
ハンバーグを一口食べるチヅル
チヅル「(ハンバーグを一口食べて)でもほんとはいっつもあたしよりお兄ちゃんの方が頑張ってるんだよ」
ソウヤ「そうかな」
チヅル「うん」
チヅルはオムライスを一口食べる
チヅル「(オムライスを一口食べて)だってお兄ちゃんは、隠れて努力・・・」
突然、浅木家の玄関の方から大きな音が聞こえて来る
少しの沈黙が流れる
ソウヤとチヅルの父は立ち上がる
ソウヤとチヅルの父「(立ち上がって)見て来るよ」
ソウヤとチヅルの母「え、ええ」
ソウヤとチヅルの父は玄関に行く
再び沈黙が流れる
フラフラしながらソウヤとチヅルの父がリビングに戻って来る
チヅル「ぱ、パパ・・・?」
ソウヤとチヅルの父はフラフラしながら大量の血を吐き出す
ソウヤとチヅルの父がフラフラしながら吐き出した大量の血が10歳頃のソウヤと同じく10歳頃のチヅルの顔面、テーブルの上のオムライス、ハンバーグ、サラダにかかる
倒れるソウヤとチヅルの父
倒れているソウヤとチヅルの父の背中には包丁が深く突き刺さっている
ソウヤとチヅルの母「(立ち上がって倒れたソウヤとチヅルの父の元に駆け寄って)あ、あなた!!」
博士「う、動くな!!」
浅木家のリビングに博士がやって来る
博士の年齢は17〜8歳で、性別は女
博士は汗だくになりながらハンドガンをソウヤとチヅルの母に向けている
背中に包丁が深く突き刺さったまま倒れているソウヤとチヅルの父が、呼吸をしているか認しているソウヤとチヅルの母
ソウヤとチヅルの母「(背中に包丁が深く突き刺さったまま倒れているソウヤとチヅルの父が呼吸をしているか確認して大きな声で)きゅ、救急車を呼ばせて!!!!」
博士は汗だくになりながらソウヤとチヅルの母に向けているハンドガンの引き金を引く
汗だくになりながらソウヤとチヅルの母に向けてハンドガンを発砲する博士
博士が発砲したハンドガンの銃声に驚いて悲鳴を上げる10歳頃のチヅル
博士が汗だくになりながら発砲したハンドガンの弾丸はソウヤとチヅルの母の頭に命中し、浅木家のリビングの床にソウヤとチヅルの母の脳味噌が散らばる
カランカランと音を立ててハンドガンの薬莢が落ちる
倒れるソウヤとチヅルの母
ソウヤとチヅルの母は死んでいる
怯えている10歳頃のチヅル
博士は汗だくになり背中に包丁が深く突き刺さったまま倒れているソウヤとチヅルの父に向かってハンドガンを連射する
博士が汗だくになり背中に包丁が深く突き刺さったまま倒れているソウヤとチヅルの父に向かって連射したハンドガンの弾丸は、全てソウヤとチヅルの父の背中に命中する
背中に包丁が深く突き刺さったまま倒れているソウヤとチヅルの父の服に大量の血が滲み始める
背中に包丁が深く突き刺さったまま死んでいるソウヤとチヅルの父
博士は汗だくになりながら10歳頃のソウヤに向かってハンドガンを構える
博士「(汗だくになりながら10歳頃のソウヤに構えて)あ、あたしは神だ、さ、逆らわないで」
『第十五話 恐るべき双子たち』
◯2回想戻り/浅木家リビング(日替わり/夜)
浅木家のリビングにいるタカヤ
タカヤの年齢は40代前半
浅木家は廃墟と化している
浅木家のリビングの窓ガラスは割れ、テーブルと椅子は倒れており、食器や衣服などが散乱して荒れ果てている
浅木家のリビングにあるテレビは壊れている
浅木家のソファには穴が空いている
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被り、両手にはゴム手袋をしている
タカヤはしゃがんで浅木家のリビングの床を触っている
タカヤ「(しゃがんで浅木家のリビングの床を触ったまま 声 モノローグ)俺は神には憧れない。憧れてはいけないと分かっている、だから近付こうともしない」
タカヤはしゃがんだまま浅木家のリビングの床を触るのをやめる
タカヤ「(浅木家のリビングの床を触るのをやめて)世界は自分よりも強大な力には触れるべきではという、単純な仕組みになっている」
タカヤは立ち上がる
両手にしているゴム手袋の匂いを嗅ぐタカヤ
◯3浅木家前(夜)
浅木家は廃墟と化している
浅木家は全ての窓ガラスが破られ、落書きの跡が残っている
浅木家の玄関の扉が開き、浅木家の中からタカヤが出て来る
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被り、両手にはゴム手袋をしている
自宅に向かって歩き始めるタカヤ
タカヤ「(声 モノローグ)自分の番が訪れる前に、派遣社員に名乗り出たのは正しかった。彼らは決して強大ではない。むしろ脆いという言葉が似合う。だが見下してはいない。絶対に、見下してはいけない」
タカヤは両手にしていたゴム手袋を外す
タカヤ「(両手にしていたゴム手袋を外しながら 声 モノローグ)事実を掴む必要がある」
◯4帰路/電車内/花色荘に向かう道中(夜)
電車に乗って花色荘に向かっているカナメ、トワネ、ソウヤ、チヅル、シィア、白衣姿のトキコ
電車の中にはたくさんの学生、サラリーマン、OLが乗っており、座席は空いていない
カナメ、トワネ、ソウヤ、チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
電車の連結部分の近く立っているカナメたち
トワネは電車の窓から退屈そうに外を眺めている
少しの沈黙が流れる
カナメ「トキコさん」
トキコ「何?」
カナメ「ヒヨリさんとマナカさんはいつ頃戻って来ると思いますか」
トキコ「さあね。そのうちでしょ」
◯5東京都第一警察署取調室(夜)
東京都第一警察署の取調室の中にいるヒヨリと2人の警察官
東京都第一警察署の取調室の中には机と椅子がある
ヒヨリは机に向かって椅子に座っている
両手に手錠をしているヒヨリ
2人の警察官は机の前に立っている
話をしているヒヨリと2人の警察官
ヒヨリ「(両手に手錠をしたまま)神に誓おう、私は罪なき帝国市民に第六の力を振る舞ったりはしないと」
少しの沈黙が流れる
ヒヨリ「(両手に手錠したまま)無論、あなた方が職業上私を疑ってしまうのも理解しているつもりだ。しかしどうか分かって欲しい」
ヒヨリは両手に手錠をしたままヘラヘラ笑う
ヒヨリ「(両手に手錠をしたままヘラヘラ笑って)私とマナカが博愛主義者であり、帝国に忠誠を誓った身であるということを」
◯6帰路/電車内/花色荘に向かう道中(夜)
電車に乗って花色荘に向かっているカナメ、トワネ、ソウヤ、チヅル、シィア、白衣姿のトキコ
電車の中にはたくさんの学生、サラリーマン、OLが乗っており、座席は空いていない
カナメ、トワネ、ソウヤ、チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
電車の連結部分の近く立っているカナメたち
トワネは電車の窓から退屈そうに外を眺めている
話をしているカナメとトキコ
トキコ「あんたのお婆さんが、長期拘束しないように警察に釘を刺してるわ」
カナメ「そうですか」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「みんな、前にヒヨリ先輩がした提案を覚えてるかな」
カナメ「提案なんてあったっけ」
ソウヤ「先輩は海に行かないかって僕らを誘ってくれただろ」
カナメ「あ、うん」
ソウヤ「どうだい、今週末みんなで出かけるのは」
カナメ「別に・・・構わないけど・・・」
再び沈黙が流れる
トキコ「悪いけど私はあんたらと遊んでらんないわ、最近忙しいから」
シィア「(淡々と)私も動作不良が起きたら困るので遠慮します」
ソウヤ「シィアちゃんは防水仕様だろ?」
シィア「(淡々と)もちろん立派な防水仕様ですが、万が一ということもあるので。因みに防水仕様でも泳げません。沈没します」
ソウヤ「チヅルとトワネは?」
トワネ「(電車の窓から退屈そうに外を眺めがら)気分じゃない」
カナメはチラッと電車の窓から退屈そうに外を眺めているトワネのことを見る
少しの沈黙が流れる
電車の窓から外を眺めるカナメ
カナメ「(電車の窓から外を眺めて)海は・・・行けても来年になりそうだね」
◯7帰路/電車内(夜)
電車に乗って自宅に向かっているタカヤ
電車の中は空いており、座席はほとんどが空席になっている
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
電車の座席に座っているタカヤ
タカヤ「(声 モノローグ)世界と自らに混乱を感じる。調和がない、不安が伝染する。侵略者は原住民の神秘的で、掴みどころのない性格に惑わされた。だが、原住民からすると侵略者は恐怖の対象でもあった。(少し間を開けて)敬わなければならない、適切な恐怖という感情を畏敬の念で打ち消すのだ」
タカヤは立ち上がる
◯8帰路/立川駅男子トイレ(夜)
立川駅の男子トイレにいるタカヤ
立川駅の男子トイレにはたくさんの小便器と大便器がある
立川駅の男子トイレにはたくさんの洗面台がある
立川駅の男子トイレのたくさんの洗面台の近くにはゴミ箱がある
立川駅の男子トイレにはタカヤ以外にも数人のサラリーマンがおり、小便器で用を足している
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
たくさんの洗面台の近くにあるゴミ箱にゴム手袋を捨てているタカヤ
タカヤ「(たくさんの洗面台の近くあるゴミ箱にゴム手袋を捨てて 声 モノローグ)呼吸を深く取れ」
タカヤはたくさんの洗面台の近くにあるゴミ箱にゴム手袋を捨てて、洗面台で手を洗い始める
タカヤ「(洗面台で手を洗いながら 声 モノローグ)深呼吸を・・・」
タカヤが洗面台で手を洗っていると、用を足して手を洗いに来たサラリーマンのカバンがタカヤの脚に当たる
サラリーマン「(洗面台で手を洗っているタカヤの脚にカバンが当たって)すみません」
タカヤは洗面台で手を洗いながらサラリーマンに会釈をする
タカヤ「(洗面台で手を洗いながらサラリーマンに会釈をして 声 モノローグ)リスペクト」
サラリーマンは洗面台で手を洗い始める
洗面台で手を洗うのをやめるタカヤ
◯9帰路/自宅前(深夜)
自宅の前にいるタカヤ
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
サングラスを外すタカヤ
タカヤはサングラスを外しながら空を見上げる
タカヤ「(サングラスを外しながら空を見上げて 声 モノローグ)評議会は俺が失敗すると予測している。高く買われていた七番目の死、続く八番目の墜落は評議会にとって大きな誤算だった」
タカヤは空を見上げたままサングラスをポケットの中にしまい、ポケットから家の鍵を取り出す
タカヤ「(空を見上げたままポケットから家の鍵を取り出して 声 モノローグ)私が悲観的なのではない。皆が楽観的なのだ」
タカヤは空を見上げるのをやめる
家の鍵で自宅の扉を開けるタカヤ
タカヤ「(家の鍵で自宅の扉を開けて 声 モノローグ)数千年前、ガラファリアがそう語っていたことを思い出す」
自宅の玄関に行くタカヤ
タカヤは自宅の玄関で靴を脱いでいる
タカヤ「(靴を脱ぎながら 声 モノローグ)Aが失敗したらBを、Bが機能しなければZを送り込む」
タカヤが自宅の玄関で靴を脱いでいると、タカヤの妻が玄関にやって来る
タカヤの妻「お帰りなさい」
靴を脱ぎ終えるタカヤ
タカヤ「(靴を脱ぎ終えて)すまない、遅くなった」
タカヤの妻「良いのよ、分かってたから」
タカヤの自宅に上がる
タカヤの妻「仕事はどうだった?」
タカヤ「(自宅に上がって)良い感じだよ、取引先の相手が少々厄介ではあるがね」
タカヤの妻「厄介?」
タカヤ「神経質なんだ」
タカヤの妻「(少し笑って)タカヤみたいに?」
タカヤ「俺よりも少しね」
◯9タカヤ家リビング(深夜)
タカヤ家のリビングにいるタカヤ
タカヤ家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
テーブルに向かって椅子に座っているタカヤ
タカヤ家のキッチンにはタカヤの妻がいる
タカヤ「(声 モノローグ)10年間の生活が終わろうとしている。異文化との交流は情報に溢れ、脳の統制が取れなくなりやすい。生活リズムを彼らに合わせるために、俺は恋に落ちたふりをした」
タカヤの妻はペンネアラビアータとフォークをリビングに運んで来る
テーブルの上のタカヤの前にペンネアラビアータとフォークを置くタカヤの妻
タカヤ「良いね、美味しそうだ」
タカヤの妻「(少し笑って)前回よりは上手く出来てるから」
タカヤ「以前も美味しかったよ」
タカヤの妻「(少し笑いながら)ペンネが黒い塊になってたじゃない」
タカヤ「それはそれで好きだった」
タカヤの妻「(少し笑いながら)変なの」
タカヤ「ペスカーラで製造されたペンネだね」
タカヤの妻「分かるの?」
タカヤ「香りでね」
タカヤはフォークを手に取る
タカヤ「(フォークを手に取って)いただきます」
タカヤはペンネアラビアータを一口食べる
タカヤ「(ペンネアラビアータを一口食べて 声 モノローグ)食には拘らない。不味くても仕事をするだけの栄養が取れれば良い」
タカヤの妻「どうかしら・・・?」
タカヤ「美味しいね、以前よりも」
◯10タカヤ家寝室(深夜)
タカヤの家の寝室にいるタカヤとタカヤの妻
タカヤの家の寝室にはダブルサイズのベッドがある
全裸でダブルサイズのベッドに横になっているタカヤ
タカヤの妻は全裸でタカヤに跨ってキスをしている
タカヤ「(タカヤの妻に跨られてタカヤの妻とキスをしながら 声 モノローグ)人類は愛に生きる。だからそれに倣った。異性間、異種間、血縁間、彼らは他者にぶつけ、ぶつけられ、子を作っている」
タカヤの妻はタカヤに跨ったままタカヤにキスをするのをやめる
タカヤの妻「(タカヤに跨ったままタカヤにキスをするのをやめて)どうしたの?」
タカヤ「(タカヤの妻に跨られたまま)君が子供のことが嫌いで良かった」
タカヤの妻「(タカヤに跨ったまま少し笑って)好きじゃないだけで嫌いじゃないし」
タカヤ「(タカヤの妻に跨られたまま 声 モノローグ)子供を愛するには、他者の罪を愛さなければならない」
タカヤはタカヤの妻に跨られたままタカヤの妻にキスをする
◯11回想/浅木家リビング(約6年前/朝)
◯1の続き
外は曇っている
浅木家のリビングにいる10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングにはソウヤとチヅルの母とソウヤとチヅルの父が倒れて死んでいる
ソウヤとチヅルの父の背中には包丁が深く突き刺さっており、服には大量の血が滲んでいる
ソウヤとチヅルの母は後頭部に穴が開いていおり、周囲にはソウヤとチヅルの母の脳味噌が散らばっている
テーブルの上にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのオムライス、ハンバーグ、サラダが置いてある
10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅルはソファに座っている
泣いている10歳頃のチヅル
博士は汗だくになっており、ハンドガンを持っている
汗を手で拭う博士
博士「(汗を手で拭って)だ、大丈夫だから」
10歳頃のチヅルは泣き続けている
ソウヤ「チヅル・・・僕がいるから・・・」
博士「(舌打ちをして)チッ・・・」
少しの沈黙が流れる
博士「う、動くじゃないよ。も、もし逃げようとすればママとパパと同じ目にあんたたちも遭うからね」
博士は浅木家の玄関に向かう
ソウヤ「(小声で)僕が警察を呼ぶよチヅル、だから泣かないで」
チヅル「(泣きながら)ママとパパみたいに殺されちゃうよあたしたち・・・」
再び沈黙が流れる
博士が浅木家の玄関からリビングに戻って来る
博士は透明な箱を持っている
博士が持っている透明な箱の中には肉塊が入っている
博士が持っている透明な箱の中に入っている肉塊には目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている
博士は肉塊が入っている透明な箱をテーブルの上に置く
博士「(肉塊が入っている透明な箱をテーブルの上に置いて)と、友達を連れて来た」
10歳頃のチヅルは泣きながらテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見る
博士「こ、この人はあたしのお兄ちゃん、そ、そう・・・ソウタって言うの」
チヅル「(泣きながらテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見て)お兄ちゃん・・・?」
博士「そ、そう。あ、あたしたちも同じ双子なの」
10歳頃のソウヤはテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見る
ソウヤ「(テーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見て)ぼ、僕らとは全然違う」
博士「ち、違くなんかない、い、一緒なの」
ソウヤ「(テーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見たまま)じゃ、じゃあどうしてそんな見た目なの?」
博士「実験の事故に巻き込まれたちゃっただけで・・・も、元々はあたしたちと同じ見た目だったんだよ」
10歳頃のソウヤはテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見るのをやめる
ソウヤ「(テーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見るのをやめて)僕たちにどうしてお兄ちゃんを見せたの?」
博士「あ、愛してあげて欲しくて・・・(少し間を開けて)な、仲良く出来るでしょ?」
10歳頃のチヅルはテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見たまま涙を手で拭う
涙を手で拭って、テーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見たまま立ち上がる10歳頃のチヅル
ソウヤ「ち、チヅル?」
10歳頃のチヅルはテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見たまま透明な箱に近付く
テーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見たままテーブルの前で立ち止まる10歳頃のチヅル
10歳頃のチヅルは変わらずテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見ている
チヅル「(テーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊を見たまま)あなたは・・・あたしのママとパパを殺したのに・・・あたしたちに愛して欲しいなんて・・・凄く意地悪じゃない・・・」
博士「か、神様は意地悪だよ、最初からね」
◯12回想戻り/タカヤ家玄関(日替わり/朝)
外は晴れている
タカヤ家の玄関にいるタカヤとタカヤの妻
タカヤはサウナハットを被っている
靴を履いているタカヤ
タカヤ「(靴を履きながら)今日も帰りは遅くなる、すまない」
タカヤの妻「(少し笑って)また美味しいご飯を作って待っててあげる」
タカヤは靴を履き終える
タカヤ「(靴を履き終えて)ありがとう」
タカヤの妻「気をつけてね」
タカヤ「うん。行ってきます」
タカヤは玄関の扉を開けて外に出る
晴れている
タカヤはポケットからサングラスを取り出す
タカヤ「(ポケットからサングラスを取り出して 声 モノローグ)仕事は念入りに下調べをする。目標の素性を、順番に深く知りたい」
タカヤはサングラスをかける
タカヤ「(サングラスをかけて 声 モノローグ)人間の知的好奇心は視覚と聴覚から刺激を受けるが、その点我々は嗅覚専門と言える」
タカヤは歩き始める
タカヤ「(声 モノローグ)記憶を嗅ぐのだ、性的や暴力的な感情は酷く香ばしい。嫌いではないが、しつこ過ぎる。10年で感覚が衰えたか。本当に俺が彼らを見下していないのなら、やはり感覚が衰えたというのが正しい」
◯13図書館(朝)
図書館にいるタカヤ
図書館は広くたくさんの本棚があり、貸し出し出来る様々な本が陳列してある
図書館にはたくさんのテーブル、椅子、パソコンがある
図書館には貸し出しカウンターがある
図書館にはタカヤ以外にも数人の利用者と司書がおり、本を読んだり、パソコンで調べ物をしたりしている
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
図書館の貸し出しカウンターの前にいるタカヤ
タカヤは司書と話をしている
タカヤ「新聞を読みたい」
司書「(驚いて)新聞ですか?」
タカヤ「ああ」
司書「ね、ネットで調べるのじゃ・・・」
タカヤ「(司書の話を遮って)インターネットは改ざん出来るが、紙媒体だとそうもいかない」
少しの沈黙が流れる
タカヤ「(声 モノローグ)こちらを訝しんでいる。倉庫に行けば新聞は読めるが、貸し出せる物ではなく、コピーも取っていないようだ。国の施設でトラブルを起こせば、この男は簡単に職を失う。彼は断るのが正しいと予測している」
再び沈黙が流れる
タカヤ「(少し笑って)ネットよりも紙の擦れる音や匂いが好きでね、全くアナログ人間には生き辛い世の中だよ」
司書「新聞で何をお調べに?」
タカヤ「(少し笑いながら)祖父が飼っていた犬の名前だよ、大昔、尋ね人のコーナーで祖父が探していたらしいんだ。犬なのにね」
司書「名前ならご家族に尋ねれば良いのでは?」
タカヤ「(少し笑いながら)114の祖父にかい?もう間もなくお迎えが来るし、彼の周りの人間も死んでしまったからこうして図書館に来ているんだよ」
司書「なるほど・・・(少し間を開けて)そういうことでしたら・・・」
◯14図書館倉庫(朝)
図書館の倉庫に一人いるタカヤ
図書館の倉庫にはたくさんの段ボール箱が棚に積み上げられている
図書館の倉庫にはたくさんの新聞紙が一枚ずつアクリルケースに収納されている
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
一枚ずつアクリルケースに収納されている新聞紙を読んでいるタカヤ
タカヤ「(一枚ずつアクリルケースに収納されている新聞紙を読みながら 声 モノローグ)二卵性双生児が誕生する確率は土地による差があり、約2.8から約10%と幅が振れている。双子とそうではない兄妹を比較すると、同じ家庭、親から育っていても双子は趣味や話題が共通しやすい」
タカヤはアクリルケースに収納されている新聞紙を一枚めくる
タカヤ「(アクリルケースに収納されている新聞紙を一枚めくって 声 モノローグ)同時期に母体を共にした彼らの間には、特殊な絆がある」
タカヤは一枚ずつアクリルケースに収納されている新聞紙を読んでいる
タカヤが読んでいるアクリルケースに収納された新聞紙には、”ANDREI研究社員が夫婦揃って殺害”と書かれてある
タカヤ「(一枚ずつアクリルケースに収納されている新聞紙を読みながら 声 モノローグ)非日常を潜り抜ければ、尚のこと繋がりは破滅的に強固になる。(少し間を開けて)神は双子の絆の試すために、試練を授けたのか?」
◯15花色荘リビング(朝)
花色荘のリビングにいるトワネとソウヤ
花色荘のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビ、ゲームがある
花色荘のキッチンにいるカナメ
カナメ、トワネ、ソウヤは私立東堂高校の制服を着ている
カナメはキッチンで朝食の準備をしている
テーブルに向かって椅子に座っているトワネとソウヤ
少しの沈黙が流れる
チヅルが花色荘のリビングにやって来る
チヅルは私立東堂高校の制服を着てカバンを持っている
カナメ「(キッチンで朝食の準備をしながら)おはよう、朝ご飯は昨日の残り・・・」
チヅル「(カナメの話を遮って)要らない」
チヅルは花色荘の玄関に向かう
再び沈黙が流れる
ソウヤは立ち上がる
ソウヤ「(立ち上がって)僕も良いやカナメ」
カナメはキッチンで朝食の準備をするのをやめる
カナメ「(キッチンで朝食の準備をするのをやめて)そっか」
ソウヤは花色荘の玄関に向かう
一人花色荘のリビングでテーブルに向かって椅子に座り続けているトワネ
少しの沈黙が流れる
カナメ「カルボナーラで良いよね、トワネ」
トワネ「(不機嫌そうに)あいつ、学校サボるぞ」
カナメ「あいつって?」
トワネ「(不機嫌そうに)ソウヤだよ」
カナメ「どうして?」
トワネ「(不機嫌そうに)カバンを持ってなかった」
カナメ「そうなんだ」
再び沈黙が流れる
カナメ「あの二人はどうかしたの?」
トワネ「(不機嫌そうに)知るか」
カナメ「そっか」
少しの沈黙が流れる
カナメ「僕も今日は・・・休もうかな」
トワネ「(不機嫌そうに)どうでも良い」
再び沈黙が流れる
トワネ「お前・・・」
カナメ「な、何?」
トワネは花色荘のキッチンにいるカナメのことを見る
カナメ「な、何だよ」
トワネはイライラしながら花色荘のキッチンにいるカナメのことを見るのをやめる
立ち上がるトワネ
カナメ「ど、どこに行くの?」
トワネ「(イライラしながら)部屋に戻る」
カナメ「学校は?」
トワネ「(イライラしながら)サボる」
カナメ「と、トワネ」
トワネ「(イライラしながら)何だ」
カナメ「その・・・(少し間を開けて)な、何でもない・・・」
トワネ「(イライラしながら)そうか」
トワネはイライラしながら花色荘の自室に戻って行く
一人花色荘のキッチンに取り残されるカナメ
◯16通学路(朝)
早足で私立東堂高校に向かっているチヅル
チヅルの後ろにはチヅルのことを追いかけているソウヤがいる
ソウヤとチヅルは私立東堂高校の制服を着ている
ソウヤ「(チヅルのことを追いかけながら)チヅル!!どうしたんだよチヅル!!」
チヅルはソウヤの声を無視しで早足で私立東堂高校に向かう
ソウヤ「(チヅルのことを追いかけながら)待ってくれ!!」
チヅルは立ち止まって振り返る
チヅル「(立ち止まり振り返って怒鳴り声で)来ないで!!!!」
少しの沈黙が流れる
ソウヤはゆっくり立ち止まる
ソウヤ「(ゆっくり立ち止まって)わ、分かったよ。僕はここで立ち止まるから・・・(少し間を開けて)どうして僕を避けるのか教えて欲しい」
チヅル「(大きな声で)あたしもう無理!!!!もうあんたと一緒いたくない!!!!」
ソウヤ「そうか・・・嫌われたのか・・・僕は・・・」
チヅル「(怒鳴り声で)好きだったことなんか一度もなかった!!!!」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「ごめん」
チヅル「(怒鳴り声で)誰に謝ってるの!?!?神様!?!?ママとパパ!?!?博士たち!?!?あたし!?!?」
ソウヤ「みんなにだよ」
チヅル「(怒鳴り声で)みんななんていない!!!!ここにいるのはあんたの妹だけなんだよ!!!!」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「僕らは・・・ずっと前に兄妹を辞めたじゃないか・・・」
チヅルは涙を流す
チヅル「(涙を流しながら怒鳴り声で)辞めてどうなったんだ!!!!苦しんでるだけじゃないか!!!!」
ソウヤ「僕は別に良い、苦しむ立場にあるんだから。それよりもチヅルが・・・」
チヅル「(涙を流しながらソウヤの話を遮って怒鳴り声で)あたしはお前のそういうところが嫌いなんだよ!!!!前にトワネが言ってた!!!!私とカナメは恐怖を共有してるから信頼出来るって!!!!ヒヨリ先輩たちだってきっとそうだよ!!!!繋がり合ってるんだ!!!!でもあたしたちには血しかない!!!!昔から上部だけで絆なんて一つもなかった!!!!」
ソウヤ「僕はチヅルのためなら犬にも、王子にも、武器にも、血を吸われるだけのジュースにもなるし、チヅルのことは神様だと思ってるけど・・・(少し間を開けて)罪は流せないよ」
再び沈黙が流れる
チヅルは涙を流しながら早足で私立東堂高校に向かい始める
ソウヤ「(大きな声で)僕にどうして欲しいか言ってくれよチヅル!!!!」
チヅル「(涙を流しながら早足で歩いて怒鳴り声で)死ね!!!!」
◯17回想/浅木家廊下(約6年前/昼前)
◯11の続き
外は曇っている
浅木家の廊下にいる10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士
博士はソウヤとチヅルの父の死体を引きずって運んでいる
博士に引っ張られているソウヤとチヅルの父の死体の背中には包丁が深く突き刺さっており、服には大量の血が滲んでいる
浅木家の廊下には博士がソウヤとチヅルの父の死体を引きずって運んだ血の跡がある
10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅルは父の死体を引きずって運んでいる博士の後ろをついて行っている
父の死体を引きずって運んでいる博士の腰を見ている10歳頃のソウヤ
ソウヤとチヅルの父の死体を引きずって運んでいる博士の腰にはハンドガンがある
10歳頃のソウヤは父の死体を引きずって運んでいる博士の腰にあるハンドガンを見ている
博士「(ソウヤとチヅルの父の死体を引きずって運びながら)見てないで手伝ってソウヤ」
10歳頃のソウヤは父の死体を引きずって運んでいる博士の腰にあるハンドガンを見るのをやめる
博士と一緒に父の死体を引きずって運び始める10歳頃のソウヤ
ソウヤ「(博士と一緒に父の死体を引きずって運びながら)今名前で呼んだね、お姉さんは僕らのことを知ってるの?」
博士「(10歳頃のソウヤと一緒にソウヤとチヅルの父の死体を引きずって運びながら)た、大抵のことは知ってるよ、あたしはただの神様じゃなくて、博士だから」
ソウヤ「(博士と一緒に父の死体を引きずって運びながら)何の博士なの?」
博士「(10歳頃のソウヤと一緒にソウヤとチヅルの父の死体を引きずって運びながら)魂の博士」
10歳頃のソウヤと博士は父の死体を引きずって運びながら浅木家の洗面所に行く
浅木家のお風呂の浴槽には後頭部に穴が開き死んだソウヤとチヅルの母がいる
10歳頃のソウヤと博士は父の死体を引きずって運びながら浅木家のお風呂に行く
博士「(10歳頃のソウヤと一緒にソウヤとチヅルの父の死体を引きずって運びながら)どいて」
10歳頃のソウヤは博士と一緒に引きずって運んでいた父の死体を離す
ソウヤとチヅルの父の死体を無理矢理お風呂の浴槽の中に入れる博士
博士は息切れをしている
博士「(息切れをしながら)ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・リビングでやるんじゃなかった・・・」
10歳頃のチヅルは息切れをしている博士のことを見る
博士「(息切れをしながら)ハァ・・・ハァ・・・な、何見てんの」
10歳頃のチヅルは慌てて息切れをしている博士のことを見るのをやめる
呼吸を整える博士
博士「(呼吸を整えて)こ、これからは共同生活だからね、分かる?お互いに支え合って四人一組で暮らすんだよ」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「名前は?」
博士「そんなん神様で良いじゃん」
ソウヤ「本当に神様なの?」
博士「神様だよ、だって今この家はあたしがルールだから」
◯18回想/浅木家リビング(約6年前/昼過ぎ)
◯17の続き
外は曇っている
浅木家のリビングにいる10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士、肉塊になったソウタ
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている
テーブルの上にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのオムライス、ハンバーグ、サラダが置いてある
博士は透明な箱から肉塊になったソウタを取り出す
博士「(透明な箱から肉塊になったソウタを取り流しながら)大丈夫だよソウタ、今ご飯をあげるからね」
博士は肉塊になったソウタをテーブルの上に置く
肉塊になったソウタは人間の言葉かどうか分からないような言語をうめきながらモゾモゾ動いている
チヅル「な、何をあげるの・・・?」
博士「ここにあるもんだよ、とりあえずはあんたらの食べ残しかな」
博士はモゾモゾ動いている肉塊になったソウタの口に、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのオムライスを一口差し出す
博士に一口差し出されたソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのオムライスから、モゾモゾ動きながら逃げようとする肉塊になったソウタ
博士「(モゾモゾ動きながら逃げようとしている肉塊になったソウタに、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのオムライスを一口差し出して)に、逃げないでソウタ」
博士はモゾモゾ動きながら逃げようとしている肉塊になったソウタを捕まえる
肉塊になったソウタを捕まえて、無理矢理肉塊のソウタの口にソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのオムライスを一口を詰め込める博士
博士は肉塊になったソウタを捕まえたまま、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグの皿を手に取る
肉塊になったソウタを捕まえたまま、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを丸々肉塊のソウタの口の中に押し込めようとする博士
博士「(肉塊になったソウタを捕まえたまま、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを丸々肉塊のソウタの口の中に押し込めようとして)人間に戻るために食べて!!」
博士に捕まえられたまま、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを博士に丸々口の中に押し込められそうになって激しく人間の言葉かどうか分からないような言語をうめく肉塊になったソウタ
肉塊になったソウタは博士に捕まえられたまま、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを博士に丸々口の中に押し込められそうになり、激しく人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいて涙を流す
チヅル「い、嫌がってるよ!!」
博士「(涙を流し、激しく人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている肉塊になったソウタのことを捕まえたまま、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを丸々肉塊のソウタの口の中に押し込んで)う、うるさい!!」
チヅル「や、やめてよ!!苦しんでるのに!!」
博士は涙を流し、激しく人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている肉塊になったソウタのことを捕まえたまま、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを丸々肉塊のソウタの口の中に押し込んで、無理矢理口を閉じさせる
博士に捕まえられ無理矢理口を閉じさせられたまま涙を流し、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを吐き出しそうになっている肉塊になったソウタ
博士「(涙を流し、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを吐き出しそうになっている肉塊になったソウタのことを捕まえ無理矢理口を閉じさせたまま大きな声で)食べて!!!!」
博士は少しの間涙を流し、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを吐き出しそうになっている肉塊になったソウタのことを捕まえ無理矢理口を閉じさせ続ける
チヅル「喉に詰まらせちゃうよ・・・」
少しの沈黙が流れる
博士は涙を流し、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを吐き出しそうになっている肉塊になったソウタのことを捕まえたまま口を閉じさせるのをやめる
博士に捕まえられたまま涙を流している肉塊になったソウタは、ソウヤとチヅルの母、父の大量の血ががかった食べかけのハンバーグを吐き出す
博士「(涙を流している肉塊になったソウタのことを捕まえたまま)馬鹿・・・吐いちゃダメなのに・・・」
博士は涙を流している肉塊になったソウタのことを捕まえたまま俯く
肉塊になったソウタ「(俯いている博士に捕まえられたまま涙を流して片言で)ゴ・・・ゴ・・・ゴメン・・・ト・・・トキ・・・」
博士は俯いたまま涙を流している肉塊になったソウタのことを抱き締める
博士「(俯いたまま涙を流している肉塊になったソウタのことを抱き締めて)これからも・・・二人でやっていこうね・・・お兄ちゃん・・・」
◯19回想戻り/貸し倉庫広場(昼前)
貸し倉庫広場にいるタカヤ
貸し倉庫広場は広く、たくさんの小さな倉庫がある
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
小さな貸し倉庫の前にいるタカヤ
タカヤは小さな貸し倉庫のシャッターを上げる
タカヤ「(小さな貸し倉庫のシャッターを上げて 声 モノローグ)在り方について考え続けている」
◯20回想/タカヤ家のリビング(深夜)
自宅のリビングにいるタカヤ
タカヤ家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
タカヤ家のリビングは電気がほとんどついておらず、薄暗くなっている
タカヤ家のテーブルの上には”Ⅸ”と書かれた羊皮紙が置いてある
タカヤはテーブルの上に置いてある”Ⅸ”と書かれた羊皮紙を見ている
タカヤ「(声 モノローグ)役割を果たしても、俺の在り方は変わるまい。一定の形でなければ、俺は墜落する」
◯21回想戻り/貸し倉庫広場(昼前)
貸し倉庫広場にいるタカヤ
貸し倉庫広場は広く、たくさんの小さな倉庫がある
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
小さな貸し倉庫の前にいるタカヤ
タカヤの小さな貸し倉庫の床にはゴルフ練習用のマットが敷かれ、壁にはゴルフ選手のポスターが貼られている
タカヤの小さな貸し倉庫の中にはたくさんのゴルフクラブとキャディバッグがある
小さな貸し倉庫の中に入るタカヤ
タカヤ「(小さな貸し倉庫の中に入って 声 モノローグ)人類は素晴らしい。一定ではなく、思考も感情も容姿も変化出来るのだから」
タカヤはキャディバッグを持ち上げる
タカヤ「(キャディバッグを持ち上げて 声 モノローグ)前8人が死亡した理由と、不安定な在り方は結び付けられる」
タカヤはキャディバッグを持ち上げたままキャディバッグを開けて中身を確認する
タカヤのキャディバッグの中にはスナイパーライフルが入っている
キャディバッグを持ち上げたままキャディバッグの中のスナイパーライフルを見ている
タカヤ「(キャディバッグを持ち上げてキャディバッグの中のスナイパーライフルを見たまま 声 モノローグ)彼らは仕事放棄をしたわけではない。しかし、生きたいと思えば死に、死にたいと思えば生きるというのは、実に幼稚な考えだ」
タカヤはキャディバッグを持ち上げたままキャディバッグの中のスナイパーライフルを見るのをやめる
タカヤ「(キャディバッグを持ち上げたままキャディバッグの中のスナイパーライフルを見るのをやめて 声 モノローグ)彼らは初めから認識を統一し、人類を尊重していれば良かったのだ」
タカヤはキャディバッグを持ち上げたままキャディバッグを閉じる
キャディバッグを背負うタカヤ
タカヤ「(キャディバッグを背負って 声 モノローグ)見下ろしてはならない、絶対に、見下ろしてはならない」
タカヤはキャディバッグを背負ったまま小さな貸し倉庫の中から出る
キャディバッグを背負ったまま小さな貸し倉庫のシャッターを下ろすタカヤ
タカヤ「(キャディバッグを背負ったまま小さな貸し倉庫のシャッターを下ろして 声 モノローグ)我、人類を認め尊重する者なり」
◯22ANDREI総本部食堂(昼)
ANDREI総本部の食堂にいるソウヤとシィア
ANDREI総本部の食堂にはたくさんのテーブルと椅子がある
ANDREI総本部の食堂にはソウヤとシィアの他にもたくさんの職員がおり、昼食を食べている
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っているソウヤとシィア
話をしているソウヤとシィア
シィア「(淡々と)チヅルにフラれておめおめやって来たわけですか、なるほど」
ソウヤ「(少し笑って)僕はフラれたなんて言ってないよ、シィアちゃん」
シィア「(淡々と)しかし全身からフラれたオーラが放出されていますが?」
ソウヤ「(少し笑いながら)チヅルにフラれたって?」
シィア「はい」
ソウヤ「(少し笑いながら)シィアちゃんの空気を読み取る能力がそこまで発達してるなんて思いもしなかったよ」
シィア「これでも私は日々学習中ですので」
ソウヤ「(少し笑いながら)忙しそうなトキコさんを見てる限り、君の計画は良い感じに進んでそうだね」
シィア「どうでしょう。トワネが反発しているので何とも言えませんが」
◯23花色荘トワネの部屋(昼)
花色荘の自室にいるトワネ
花色荘のトワネの部屋には勉強机、椅子、ベッドがある
花色荘のトワネの部屋は学校の教材やプリント、脱ぎ捨てた服で散らかっている
カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる
私立東堂高校の制服を着てベッドの上で横になっているトワネ
トワネはピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めている
◯24ANDREI総本部食堂(昼)
ANDREI総本部の食堂にいるソウヤとシィア
ANDREI総本部の食堂にはたくさんのテーブルと椅子がある
ANDREI総本部の食堂にはソウヤとシィアの他にもたくさんの職員がおり、昼食を食べている
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っているソウヤとシィア
話をしているソウヤとシィア
ソウヤ「だけど計画にはトワネの協力が必須じゃないのかい?」
シィア「(淡々と)ですから、彼女が力を貸してくれなければ私は破棄されるでしょう」
ソウヤ「それはないよ、トキコさんが止めるはずだ」
シィア「私は強大なデータになり過ぎました。セーフティをかけているとは言え、ウイルス感染によるANDREIの情報漏洩のリスクを鑑みると、私は破壊されるべきです」
ソウヤ「トキコさんがそんなことを望むとは思えないね、君は彼女の娘なのに」
シィア「ソウヤは博士のことをかなりのアホだと認識しているようで」
ソウヤ「(少し笑って)そうかな」
シィア「私はあの人の娘でも、娘の代わりにもなれていません。だって私は、ただのアホアンドロイドだもの」
ソウヤ「(少し笑いながら)全て上手くいけばシィアちゃんの自己評価も変わるよ」
シィア「はあ」
少しの沈黙が流れる
シィア「ソウヤ」
ソウヤ「何だい?」
シィア「今から、ラヴを見に行きませんか」
ソウヤ「ラヴを?」
◯25ANDREI総本部エレベーター(夕方)
ANDREI総本部のエレベーターに乗っているソウヤとシィア
ANDREI総本部のエレベーターの中は広い
ANDREI総本部のエレベーターにはソウヤとシィア以外に誰も乗っていない
ソウヤとシィアが乗っているANDREI総本部のエレベーターは下降している
少しの沈黙が流れる
シィア「残念だった」
ソウヤ「ん?残念って?」
シィア「ソウヤとチヅルが恋人同士になれなくて」
ソウヤ「(少し笑って)ああ・・・だね」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「(少し寂しそうに)僕は昔からチヅルに恋をしてた。チヅルも、僕のことが好きだったと思う。だけど・・・距離が近付きそうになると、いつもダメなんだ。上手くいかなる」
シィア「(淡々と)恋する双子でも倫理観はある、ということですか」
ソウヤ「(驚いて)し、知ってたのかい」
シィア「はい」
ソウヤ「そうだったのか・・・」
少しの沈黙が流れる
シィア「黙っていてすみません」
ソウヤ「いや・・・いつかはバレると思ってたから」
シィア「初めに身体データを入力した時に、博士が双子だと気付いたんです」
ソウヤ「なるほど、さすが科学者だ」
シィア「(淡々と)そもそも博士自身も双子ですから」
ソウヤ「え、ほんとに?」
シィア「お兄さんがいたそうです。博士が高校生の頃に、事故で亡くなられたそうですが」
ソウヤ「それって・・・凄いな・・・」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「(少し寂しそうに)まさに運命じゃないか」
◯26回想/浅木家リビング(約6年前/深夜)
◯18の続き
外は雨が降っている
浅木家のリビングにいる博士と肉塊になったソウタ
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱の中の肉塊になったソウタには目と口がある
透明な箱の中の肉塊になったソウタは眠っている
床に座って泣きながら無音でテレビのニュースを見ている博士
テレビのニュースではANDREI総本部で事故が起きたことを取り上げている
少しすると浅木家のリビングに10歳頃のソウヤがやって来る
テレビのニュースを見たまま慌てて涙を手で拭う博士
ソウヤ「寝ないの?」
博士「(テレビのニュースを見たまま)あ、あたしにはやることがあんの」
10歳頃のチラッとテレビのニュースを見る
テレビのニュースでは変わらずANDREI総本部で事故が起きたことを取り上げている
博士「(テレビのニュースを見たまま)妹は?」
ソウヤ「寝てるよ」
博士「(テレビのニュースを見たまま)お兄ちゃんでしょ、側にいてやんなよ」
10歳頃のソウヤはテーブルに向かって椅子に座る
透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見る10歳頃のソウヤ
ソウヤ「(透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見て)眠ってるの?」
博士「(テレビのニュースを見たまま)今はね」
少しの沈黙が流れる
博士「(テレビのニュースを見たまま)起こさないで」
ソウヤ「(透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見たまま)うん。(少し間を開けて)何があったのか教えてくれない?」
博士「(テレビのニュースを見たまま)子供に説明しても分からないよ」
ソウヤ「(透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見たまま)分からなくても聞きたいんだよ」
再び沈黙が流れる
博士はテレビのニュースを見るのをやめる
博士「(テレビのニュースを見るのをやめて)部屋に戻って」
ソウヤ「(透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見たまま)自分の家なんだから好きなようにさせてよ」
博士は立ち上がる
腰に隠していたハンドガンを手に取る博士
博士「(腰に隠していたハンドガンを手に取って)両親んとこに行くことになるけど?」
10歳頃のソウヤは透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見るのをやめる
ソウヤ「(透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見るのをやめて)殺すんだったらとっくにやってるんじゃないの?」
再び沈黙が流れる
博士「へぇー・・・ガキのくせに死ぬのが怖くないんだ?」
ソウヤ「あなたは?死ぬ時に怖くなると思う?」
博士「あたしなら恐れよりも怒りを感じるだろうね」
博士はテーブルを挟んで10歳頃のソウヤと向かい合って椅子に座る
静かにテーブルの上にハンドガンを置く博士
博士「(静かにテーブルの上にハンドガンを置いて)神を信じてるんでしょ、祈りなよ」
ソウヤ「あなたに?」
博士「あたしを神だと思うならね」
少しの沈黙が流れる
10歳頃のソウヤはチラッとテーブルの上に置いてあるハンドガンを見る
博士「神殺しが出来るかな」
ソウヤ「あなが神様じゃなきゃ出来るかもね」
博士はテーブルの上に置いてあるハンドガンを手に取る
博士「(テーブルの上に置いてあるハンドガンを手に取って)もう寝て。朝になったら何か作ってあげるから」
10歳頃の立ち上がる
自分の部屋に行こうとする10歳頃のソウヤ
10歳頃のソウヤは立ち止まる
ソウヤ「(立ち止まって)お休みなさい、博士」
10歳頃のソウヤは自分の部屋に行く
◯27回想/浅木家チヅルの部屋(約6年前/日替わり/昼前)
◯26の続き
外は晴れている
浅木家のチヅルの部屋にいる10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅル
浅木家のチヅルの部屋にはベッド、勉強机、椅子がある
チヅルの勉強机の上には聖書が置いてある
涙を流しながらベッドの上で眠っている10歳頃のチヅル
10歳頃のソウヤは涙を流しながらベッドの上で眠っている10歳頃のチヅルの側にいる
涙を流しながらベッドの上で眠っている10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でている10歳頃のソウヤ
少しすると涙を流しながら10歳頃のソウヤに頭を優しく撫でられているチヅルが目を覚ます
チヅル「(涙を流しながら10歳頃のソウヤに頭を優しく撫でられ目を覚まして)お兄ちゃん・・・」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながら)おはよう、チヅル」
チヅル「(涙を流しながら10歳頃のソウヤに頭を優しく撫でられて)あの人は・・・?」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながら)朝ご飯を作ってるよ」
チヅル「(涙を流しながら10歳頃のソウヤに頭を優しく撫でられて)お兄ちゃん・・・」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながら)ん・・・?」
チヅル「(涙を流しながら10歳頃のソウヤに頭を優しく撫でられて)どうしてあたしたちなの・・・?」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながら)僕にも分からない・・・神様が何でこんな酷いことをしたのか・・・」
10歳頃のチヅルは10歳後のソウヤに頭を優しく撫でられながら手で涙を拭う
チヅル「(10歳後のソウヤに頭を優しく撫でられながら手で涙を拭って)ママとパパが死んじゃったことに意味がないなんて嫌」
ソウヤ「(10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながら)意味なんて後からいくらでも作れるよ、チヅル」
少しの沈黙が流れる
チヅル「(10歳後のソウヤに頭を優しく撫でられながら)これからどうするの・・・?」
ソウヤ「(10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながら)博士には弱点があるんだ、僕がそこを攻めてみるよ。チヅルはもう少ししてからリビングに来て」
チヅル「(10歳後のソウヤに頭を優しく撫でられながら)でもお兄ちゃん・・・今はあの人がうちの神様になってるんだよ」
ソウヤ「(10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながら少し笑って)神は寂しがり屋さんじゃない、孤独を感じるのは人の子供だけだ」
再び沈黙が流れる
10歳頃のソウヤは10歳頃のチヅルの頭を優しく撫でながらチヅルの頬にキスをする
10歳頃のチヅルの頭を撫でるのをやめる10歳頃のソウヤ
チヅル「神様だって孤独だよ、お兄ちゃん」
◯28回想/浅木家キッチン(約6年前/朝)
◯27の続き
浅木家のキッチンにいる博士
博士はフライパンで目玉焼きを3個作っている
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている
フライパンで目玉焼きを3個作りながら肉塊になったソウタに話をしている博士
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)あたしだって料理は苦手なんだからね。まあ、お兄ちゃんに比べればマシだけど」
少しの沈黙が流れる
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)あんたは何でも出来るように見えて、友達はいないし、クラスメートのことを見下してるし、隠れド変態だし、クズだよ」
再び沈黙が流れる
10歳頃のソウヤが浅木家のリビングにやって来る
ソウヤ「(浅木家のリビングにやって来て)おはよう」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)早いじゃん」
ソウヤ「行くつもりはないけど、学校がある日だしね」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら少し笑って)行けないって分かってるんだ、良い子ね」
ソウヤ「僕、優等生なんだよ」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)へぇー、そりゃ凄い」
ソウヤ「それでも大人の博士には負けちゃうかもしれないけどさ」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら少し笑って)そう?あたしは不良だよ?」
ソウヤ「悪い女神様なんだ」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)まあね」
少しの沈黙が流れる
10歳頃のソウヤは浅木家のキッチンに行く
ソウヤ「(浅木家のキッチンに行って)手伝おうか?」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)優等生くんは料理出来んの?」
ソウヤ「カップラーメンくらいならね」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)役立たず」
ソウヤ「ほんとに手伝いたかったんだよ」
博士「(フライパンで目玉焼き3個作りながら)良いよ、何もしなくて」
再び沈黙が流れる
博士はコンロの火を止める
ソウヤ「ソウちゃんのご飯はどうするの?」
博士「ソウちゃん?誰それ?」
ソウヤ「博士の弟だよ」
少しの沈黙が流れる
博士「なんかあげたい物があんの?」
ソウヤ「細かく切ったりんごはどう?食べやすいんじゃないかな?」
博士は冷蔵庫を開ける
冷蔵庫の中には2リットルのお茶、2リットルの牛乳、豚肉、卵、納豆、豆腐、調味料、カットされたりんごが乗っている皿などがある
冷蔵庫の中から2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿を取り出す博士
博士は冷蔵庫を閉じる
キッチンの調理台の上に2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿を置く博士
カットされたりんごを一切れ食べる博士
博士はカットされたりんごの一切れを噛みながら2リットルの牛乳を一口飲む
りんごと牛乳を咀嚼しながら浅木家のリビングに行く博士
博士はりんごと牛乳を咀嚼しながらテーブルの上に置いてある透明な箱の中の肉塊になったソウタに近付く
りんごと牛乳を咀嚼しながら透明な箱から肉塊になったソウタを取り出す博士
博士はりんごと牛乳を咀嚼しながら肉塊になったソウタを抱き抱える
肉塊になったソウタを抱き抱えりんごと牛乳を咀嚼しながら、肉塊になったソウタにキスをする博士
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせる
キッチンから肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士のことを見ている10歳頃のソウヤ
10歳頃のソウヤからは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士の腰にハンドガンがあるのが見えている
再び沈黙が流れる
キッチンから変わらず肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士のことを見ている10歳頃のソウヤ
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせるのをやめる
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま肉塊になったソウタにキスをするのをやめる博士
博士は肉塊になったソウタをテーブルの上に置く
博士「(肉塊になったソウタをテーブルの上に置いて)美味しかった?」
10歳頃のソウヤはキッチンから博士のことを見るのをやめる
ソウヤ「(キッチンから博士のことを見るのをやめて小声でボソッと)兄妹でも良いんだ・・・」
博士「なんか言った?」
ソウヤ「僕もあげてみて良い?」
博士「マジ?」
ソウヤ「うん」
博士「良いけど・・・出来るの?」
10歳頃のソウヤはカットされたりんごを一切れ食べる
カットされたりんごの一切れを噛みながら2リットルの牛乳を一口飲む10歳頃のソウヤ
10歳頃のソウヤはりんごと牛乳を咀嚼しながら浅木家のリビングに行く
りんごと牛乳を咀嚼しながらテーブルの前で立ち止まる10歳頃のソウヤ
10歳頃のソウヤはりんごと牛乳を咀嚼しながら、テーブルの肉塊になったソウタを抱き抱える
肉塊になったソウタを抱き抱えソウヤはりんごと牛乳を咀嚼しながら、肉塊になったソウタにキスをする10歳頃のソウヤ
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせる
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている10歳頃のソウヤのことを見ている博士
10歳頃のソウヤは少しの間肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせ続ける
浅木家のリビングに10歳頃のチヅルがやって来る
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている10歳頃のソウヤの目と、10歳頃のチヅルの目が合う
チヅル「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている10歳頃のソウヤと目が合って)お兄ちゃん・・・」
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせ、10歳頃のチヅルから目を逸らす
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせるのをやめる10歳頃のソウヤ
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタを抱き抱えたままキスをするのをやめる
博士「良いじゃん、度胸あんだねあんた」
ソウヤ「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま)ありがとう博士」
少しの沈黙が流れる
10歳頃のチヅルは肉塊になったソウタを抱き抱えている10歳頃のソウヤのことを見るのをやめる
俯く10歳頃のチヅル
博士「チヅルちゃん・・・だっけ・・・?どうしたの?」
チヅル「(俯いたまま)別に・・・」
博士「あら、ご機嫌斜め?」
肉塊になったソウタは10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま俯いている10歳頃のチヅルのことを見る
再び沈黙が流れる
肉塊になったソウタ「(10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま俯いている10歳頃のチヅルのことを見て片言で)ゴ・・・ゴメン・・・ゴメ・・・ン・・・ネ・・・」
10歳頃のチヅルは顔を上げる
チヅル「(顔を上げて)えっ・・・?」
肉塊になったソウタ「(10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま10歳頃のチヅルのことを見て片言で)マ・・・ママ・・・ト・・・パパ・・・ノ・・・ノ・・・コト・・・ゴ・・・ゴメン・・・ナサイ・・・」
肉塊になったソウタは10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま10歳頃のチヅルのことを見て涙を流す
肉塊になったソウタ「(10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま10歳頃のチヅルのことを見て涙を流して片言で)イ・・・イモウト・・・ヲ・・・ウラマナイ・・・デ・・・」
ソウヤ「(涙を流してい肉塊になったソウタのことを抱き抱えたまま小声でボソッと)恨むなって・・・」
肉塊になったソウタ「(10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま10歳頃のチヅルのことを見て涙を流して片言で)ボクラ・・・ノ・・・ツ・・・ツミ・・・ユルシテホシイ・・・」
チヅル「あ、あなたのことは恨んでないよ」
少しの沈黙が流れる
博士は10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま、10歳頃のチヅルのことを見ている肉塊になったソウタの涙を手で拭う
博士「(10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま、10歳頃のチヅルのことを見ている肉塊になったソウタの涙を手で拭って)良かったね、恨まれてないってさ」
博士は10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま、10歳頃のチヅルのことを見ている肉塊になったソウタの涙を手で拭い終える
博士「(10歳頃のソウヤに抱き抱えられたまま、10歳頃のチヅルのことを見ている肉塊になったソウタの涙を手で拭い終えて)朝ご飯は何が良い?とりあえず目玉焼きは作ったけど?」
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタをテーブルの上に置く
ソウヤ「(肉塊になったソウタをテーブルの上に置いて)ベーコンを焼こうよ、それからパンも」
チヅル「あたしやる」
博士「良いね、助かる」
10歳頃のチヅルは浅木家のキッチンに行く
博士「子供たち、あたしは何をすれば良いかな?」
10歳頃のソウヤは浅木家のキッチンに行く
ソウヤ「(浅木家のキッチンに行って少し笑って)後でトランプしようよ、博士」
博士「3人で?」
ソウヤ「ソウちゃんを入れたら4人。神経衰弱にする?」
博士「今朝ご飯の話をしてたはずなんだけど?」
ソウヤ「(少し笑って)ごめんなさい、でも学校行けないし退屈だから」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「もし学校に行っても良い・・・」
博士「(10歳頃のソウヤの話を遮って)ここにいて。あんたらしばらくは学校も習いごとも無しだよ」
ソウヤ「しばらく?」
博士「そ、しばらくね。サボれるんだから喜びなよ」
ソウヤ「サボれても博士が遊んでくれなきゃ嫌だな、学校に行かなきゃ退屈だし」
博士「自分の置かれてる状況が分かってんの?」
ソウヤ「博士が仲良く出来るでしょって言ったんだよ」
少しの沈黙が流れる
博士「無理・・・兄はもうトランプなんて出来ない」
チヅル「喋れるのに」
博士「あんなのは喋ったに入らないんだよ」
チヅル「どうして?さっきもち声を聞いたでしょ?」
博士「あんたも自分のお兄ちゃんが肉の塊になったらあたしの気持ちが分かるかもね」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「トランプなら見てるだけで楽しいんじゃない?博士」
博士「どうかな」
ソウヤ「僕らこれから家族になるんだよ、試してみようよ」
時間経過
テーブルに向かって椅子に座っている10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士
肉塊になったソウタはテーブルの上で透明な箱の中に入っている
テーブルの上には目玉焼きとベーコンを挟んだサンドイッチがある
10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士は目玉焼きとベーコンを挟んだサンドイッチを食べている
目玉焼きとベーコンを挟んだサンドイッチを食べながら話をしている10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士
ソウヤ「美味しいでしょ?」
博士「普通にね。お兄ちゃんよりも料理が得意なんだ、チヅルちゃん」
チヅル「普通だよ」
少しの沈黙が流れる
博士は目玉焼きとベーコンを挟んだサンドイッチを一口食べる
タカヤ「(声 モノローグ)人類は挑戦を好む。価値を試し、存在意味を見出すことに情熱的だ」
時間経過
テーブルの上には裏返しになったトランプが置いてある
10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士は神経衰弱を行っている
トランプを一枚表にめくる博士
博士がめくったトランプはハートの3
タカヤ「(声 モノローグ)しかし、挑戦には予期せぬ結果がつく。期待とは裏腹に、多くの出来事で神は微笑もうとしない」
博士はトランプを一枚表にめくる
博士がめくったトランプはハートの2
10歳頃のソウヤは少し笑う
タカヤ「(声 モノローグ)故に神だけは人類を見下ろせる。手のひらで転がすことが出来る」
博士はトランプのハートの3とトランプのハートの2を裏返しにする
タカヤ「(声 モノローグ)しかしその姿は、恐ろしいほどに孤独である」
10歳頃のソウヤは少し笑いながらトランプを一枚表にめくる
10歳頃のソウヤが少し笑いながらめくったトランプはハートの3
再び少し笑いながらトランプを一枚表にめくる10歳頃のソウヤ
タカヤ「(声 モノローグ)世界人口の約30%が神を信仰し人生を捧げているが、奇妙なことに他者にとって偉大な存在は、絶えず孤独であらねばならない」
10歳頃のソウヤが少し笑いながらめくったトランプはスペードの3
少し笑いながらトランプのハートの3とスペードの3を手に取る10歳頃のソウヤ
タカヤ「(声 モノローグ)それが神の在り方なのだ」
◯29回想戻り/ANDREI総本部エレベーター(夕方)
ANDREI総本部のエレベーターに乗っているソウヤとシィア
ANDREI総本部のエレベーターの中は広い
ANDREI総本部のエレベーターにはソウヤとシィア以外に誰も乗っていない
ソウヤとシィアが乗っているANDREI総本部のエレベーターは下降している
ソウヤに話しかけているシィア
シィア「ソウヤ、大丈夫ですか、ソウヤ」
ソウヤ「ああごめん、何?」
シィア「(淡々と)アフターミラーの薬についてです」
ソウヤ「僕にはもうあの薬が効かない、多分ヒヨリ先輩も」
シィア「チヅルたちは?」
ソウヤ「チヅルは・・・確証がないけど効いてる気がするよ」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「(少し笑って)僕を避けるようになったのも薬の効果かも」
シィア「(淡々と)どんな薬も一錠、二錠では効き目が出ませんが?」
ソウヤ「(少し笑いながら)じゃあもう少し飲むようにチヅルに勧めてみるかな、話をすることが出来たら、だけど」
再び沈黙が流れる
シィア「ソウヤ、私はこれ以上薬を盗めない」
ソウヤ「それは・・・完全に不可能という意味かい?」
シィア「一昨日、トキコ博士が薬を盗んでいるのではないかとリュウマ陸佐に疑われている現場を見た。(少し間を開けて)私が博士を庇ってしまった」
ソウヤ「リュウマさんが君を疑うようになると?」
シィア「彼の心理は掴めません。だけど陸佐は司令の腹心、私たちみたいなアホは簡単に消されます」
少しの沈黙が流れる
シィア「(淡々と)前の時もそうだったもの」
ソウヤ「前の時?」
◯30第五話◯13の回想/前線に向かう道中(約60年前/夜)
弱い雨が降っている
シィアとMA-RA337型のアンドロイドが乗っている軍用トラックが前線に向かっている
シィアとMA-RA337型のアンドロイドが乗っている軍用トラックの荷台にはカバーがかかっており、外側のあおりが外れていつでも荷台から乗り降り出来るようになっている
シィアとMA-RA337型のアンドロイドは軍用トラックの荷台に乗っている
MA-RA337型のアンドロイドは雨で体がずぶ濡れになっている
軍用トラックの荷台にはシィアとMA-RA337型のアンドロイド以外にもたくさんの少年、少女型のアンドロイドが乗っている
シィアとMA-RA337型のアンドロイドが乗っている軍用トラックは泥道を走っている
シィアとMA-RA337型のアンドロイドが乗っている軍用トラックが走っている泥道には、所々に古い空き家があるだけで他には何もない
シィアとMA-RA337型のアンドロイドは軍用トラックの荷台で隣同士に座っている
シィアとMA-RA337型のアンドロイドを含むたくさんの少年、少女型のアンドロイドは軍服を着ている
話をしているシィアとMA-RA337型のアンドロイド
◯31回想戻り/ANDREI総本部エレベーター(夕方)
ANDREI総本部のエレベーターに乗っているソウヤとシィア
ANDREI総本部のエレベーターの中は広い
ANDREI総本部のエレベーターにはソウヤとシィア以外に誰も乗っていない
ソウヤとシィアがANDREI総本部のエレベーターは下降している
話をしているソウヤとシィア
シィア「(淡々と)いつもそう。人間もアンドロイドも要らなくなったら、簡単に捨てられるわ」
少しの沈黙が流れる
突然、シィアにキスをするソウヤ
ソウヤとシィアが乗っているANDREI総本部のエレベーターが止まる
ソウヤとシィアが乗っているANDREI総本部のエレベーターの扉が開く
ソウヤとシィアが乗っているANDREI総本部のエレベーターの外は地下最下層になっている
ANDREI総本部の地下最下層には巨大な枯れかけた木がある
ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹には洞穴がある
ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中は薄暗く、何も見えない
ANDREI総本部の地下最下層には誰もいない
シィアは抵抗せずじっとソウヤにキスをされている
ソウヤにキスをされたままソウヤの頭を軽くポンポン叩くシィア
ソウヤはシィアにキスをしたままシィアに頭を軽くポンポン叩かれ、ゆっくりシィアにキスをするのをやめる
ソウヤの頭を軽くポンポン叩くのをやめるシィア
再び沈黙が流れる
シィア「この、浮気アホ男」
ソウヤ「(少し笑って)浮気じゃなくて、僕はみんなと同じようにシィアちゃんのことが好きなだけだよ」
シィア「(淡々と)それはそうでしょう。だって私はアホアンドロイドだもの」
ソウヤ「(少し笑いながら)僕にとって君はアンドロイドというよりもう一人の妹だから」
シィア「シスコン」
ソウヤ「(少し笑いながら)今更だね」
シィア「アホ、変態、盗撮犯」
ソウヤ「(少し笑いながら)それも今更だ」
シィア「撃墜王、ドラキュラ伯爵のペット、人間のふりをしたゾンビ」
ソウヤ「(少し笑いながら)ドラキュラ伯爵?」
シィア「ドM、狂信者、一級フラグ建築士」
ソウヤ「(少し笑いながら)今のでフラグが建った?」
シィア「(淡々と)建ちません。私は硬派なアンドロイドなので」
シィアはANDREI総本部のエレベーターから降りて地下最下層に行く
ソウヤ「(少し笑いながら)なるほど」
ソウヤはANDREI総本部のエレベーターから降りて地下最下層に行く
ソウヤ「(ANDREI総本部のエレベーターから降りて)ラヴを見てどうするんだい?」
シィアは立ち止まる
シィアに合わせて立ち止まるソウヤ
シィア「あの木の正体を教えます」
ソウヤ「正体?」
シィアはANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木に近付く
ソウヤ「放射線は君の体も貫通するぞシィアちゃん」
シィア「(淡々と)先日、アメリカ、フランス、中国、ウクライナの4つの国からガイガーカウンターを購入しました」
シィアはANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の前で立ち止まる
シィア「(ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の前で立ち止まって淡々と)4機のガイガーカウンターで計測されたラヴの放射線量は、0.004ミリから0.006ミリシーベルトでした」
シィアはANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木を触る
シィア「(ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木を触って淡々と)歯科検診の撮影で発生する放射線量は0.01ミリから0.03ミリシーベルトと言われています。胸部のレントゲンでは0.06ミリシーベルト。人体の健康への被害が出るのは約100ミリシーベルトです」
シィアはANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木を触るのをやめる
シィア「(ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木を触るのをやめて淡々と)ソウヤが言ったように、放射線は電子回路も破壊しますが、この木は違うでしょう」
少しの沈黙が流れる
シィア「司令に嘘をつかれたわ」
ソウヤはゆっくりANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木に近付く
ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の前でゆっくり立ち止まるソウヤ
ソウヤ「(ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の前でゆっくり立ち止まって)よく放射線のことを見破れたね、シィアちゃん」
シィア「だっておかしいもの。動物も機械も破壊出来る物質が溜まり込んだ大木をそのまま残しておくなんて」
ソウヤ「確かにね・・・」
シィアは首の後ろを押す
シィアが体育座りをしたまま首を後ろを押すと、カチッという音が鳴りシィアの両目からレーザービームのような緑色の光が出る
シィア「(両目からレーザービームのような緑色の光を出して)ついて来てください」
ソウヤ「了解」
シィアは両目からレーザービームのような緑色の光を出したまま、ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中に入る
シィアに続いてANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中に入るソウヤ
ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中は、たくさんの木の根っこが絡み合っている
シィアは両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中を照らしている
ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中を進んでいるソウヤとシィア
ソウヤ「良いね、そのライト」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中を照らしたまま)破壊光線にもなります」
ソウヤ「(少し笑って)それはジョークだろ」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中を照らしたまま)ジョークです。(少し間を開けて)シィアちゃんジョークです」
シィアは両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中を照らしたまま立ち止まる
シィアに合わせて立ち止まるソウヤ
両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の奥を照らすシィア
ANDREI総本部の地下最下層の巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の奥には、木の根っこに縛り上げられた全裸のトワネがいる
巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられた全裸のトワネは、意識を失っている
巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネの周囲には、8本の”イングマールの針”が刺さっており、木の根っこがこれ以上のトワネの体を縛り上げないようにしてある
“イングマールの針”は2メートルほどの長さの真っ黒な棒
ソウヤは巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見る
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見て驚いて)こ、これは・・・(少し間を開けて)も、もしかしてイザベルの言ってた・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)はい。おそらく彼女はトワネのオリジナル、オソレたちの呼ぶところのルシファリアです」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま)ぼ、僕らの知ってるトワネはクローンだったのか・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)カナメもそうかも」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま)そういえば、イザベルはカナメのことを大天使って言ってたな・・・(少し間を開けて)あれはオリジナルのカナメのことを指してたのか・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)もしもカナメがクローンなら、オリジナルはルシファリア同様にオソレの仲間であってもおかしくありません。彼が司令の孫というのも、今となっては偽りの記録である可能性が高いです」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま)そうだな・・・だけど本人たちは・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)トワネもカナメも、私の機械の目には自覚がないように見えます」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま)彼らも事実を知らないのか・・・(少し間を開けて)僕らに隠しごとをしてるだけか・・・」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま)ANDREIの目的は何なんだ・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)イングマールの針を見て、ソウヤ」
ソウヤは巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネの周囲に刺さっている8本の”イングマールの針”を見る
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)ラヴ、リヴァ、スパイディー、アース、ミノタウロス、フェイス、アンガースネーク、イザベル、反リヴェンジ。これまでに九人のオソレを破壊しているはずなのに、イングマールの針の数が合いません」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネの周囲に刺さっている8本の”イングマールの針”を見たまま)ラヴが破壊される瞬間を見た人はいない・・・トワネ自身も・・・記憶を失ってる・・・だとしたら・・・最初からラヴなんてオソレはいなかったんじゃ・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)かもしれません。(少し間を開けて)あるいは、ここにいるトワネのそっくりさんがトワネの双子の姉か妹ということもあり得ます」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネの周囲に刺さっている8本の”イングマールの針”を見たまま)このトワネ・・・いや、ルシファリアは死んでいるのかい・・・?」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)完全に死んではいないけど、生きてもいないようなもの。彼女は今、生と死の狭間で眠っているわ」
ソウヤは巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見る
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見て)司令はルシファリアを生き返らせるつもりか・・・?」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま淡々と)イングマールの針を14本集めると願いが叶うって噂。(少し間を開けて)ジョークですけど」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま少し笑って)僕には自分の置かれてる状況がシィアちゃんのジョークほどシンプルなことだとは思えないな」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま淡々と)アホアンドロイドの私も、この状況に嫌な予感を覚えますが何か?」
少しの沈黙が流れる
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)アフターミラーのことも含めて、トワネたちに包み隠さず話をしてみては」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま少し笑って)それはまた骨が折れる・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま淡々と)説明しないまま退場するよりはマシかと」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま少し笑って)嫌な話だな・・・死ぬ前提なんて・・・」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)ですが手前にいる人は、後ろにいる人たちに説明をして死ぬ義務がありますから。(少し間を開けて)結局のところ、死というのは一人ずつ順番に訪れるものですよ」
再び沈黙が流れる
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)もしもクローンの製造の成功しているのなら、アンドロイドを人間にする必要もないので、私は計画諸共破棄されるでしょう。そうなればチヅルやトワネに説明は出来ない。だから、あなたが頼みの綱になる。(少し間を開けて)その時が来るのを、ソウヤは覚悟して欲しい」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま少し寂しそうに)覚悟なら・・・もう十分過ぎるよシィアちゃん」
少しの沈黙が流れる
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)ソウヤ」
ソウヤ「(巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で、木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを見たまま)何だい」
シィア「(両目から出ているレーザービームのような緑色の光で、巨大な枯れかけた木の幹にある洞穴の中で木の根っこに縛り上げられ意識を失った全裸のトワネのことを照らしたまま)人類は恐ろしい災厄に巻き込まれたのかも」
◯32公園(夕方)
夕日が沈みかけている
公園にいるタカヤ
公園には数人の小学生がおり、サッカーボールで遊んでいる
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
公園のベンチに座ってハンバーガーを食べているタカヤ
タカヤが座っている公園のベンチの横にはキャディバッグが置いてある
タカヤ「(声 モノローグ)計画通りに、リスクは取らない。計画と違うことが起きても、焦ってはならない。いかなる時も、冷静に対処しなければならない」
タカヤはハンバーガーを一口食べる
タカヤ「(ハンバーガーを一口食べて 声 モノローグ)感情移入する必要もない。成功の秘訣は、尊敬と単純だ」
タカヤは再びハンバーガーを一口食べる
タカヤ「(ハンバーガーを一口食べて 声 モノローグ)順序立てて、やらねばならないことをやれば良い。やり方をを問う者はいない。自信はある。俺なら出来る」
タカヤはハンバーガーを食べ切る
タカヤ「(ハンバーガーを食べ切って 声 モノローグ)俺は神ではないが、神のように信頼に値する。神を信仰する者ほど、自分を信用しない」
タカヤは立ち上がる
キャディバッグを背負うタカヤ
タカヤ「(キャディバッグを背負って 声 モノローグ)2つの存在を信じられるのはおめでたい。心身が優れている証だ」
タカヤはキャディバッグを背負ったまま公園から出て行く
キャディバッグを背負ったままどこかに向かい始めるタカヤ
タカヤ「(キャディバッグを背負ったまま 声 モノローグ)神の視線を感じるか?」
キャディバッグを背負ったまま歩いているタカヤの後ろには、体長50メートルほどの大男が大量の金と宝石の装飾がされた派手で巨大な椅子に座っている
体長50メートルほどの大男の後頭部には光輪があり、真っ赤に光り輝いている
体長50メートルほどの大男は左腕を巨大な椅子の肘掛けに置き、右手には大量の金と宝石の装飾がされた派手な杖を持っている
体長50メートルほどの大男は全身に大量の金と宝石の装飾を付けており、太ももには体長30メートルほどの全裸で血まみれの若い女が横たわっている
大きく目を開き、キャディバッグを背負ったまま歩いているタカヤの後ろ姿を見ている体長50メートルほどの大男
タカヤ「(キャディバッグを背負ったまま 声 モノローグ)もちろん、常に」
◯33回想/浅木家リビング(約6年前/夜)
◯28の続き
浅木家のリビングにいる10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士はテーブルに向かって椅子に座っている
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている
テーブルの上にはトランプが置いてある
話をしている10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士
チヅル「もう一回やる?」
博士「(少し笑って)もう良いって」
ソウヤ「もう飽きちゃったの?」
博士「(少し笑いながら)さすがにね」
チヅル「じゃあ別のことをする?」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「お風呂に入って来たら?着替えならお母さんのを使って良いよ」
10歳頃のチヅルはチラッと10歳頃のソウヤのことを見る
博士「浴槽には死体があんじゃん」
ソウヤ「あ・・・そっか・・・」
博士「でも・・・」
ソウヤ「うん」
博士「シャワーで良ければ借りたいかも・・・」
ソウヤ「貸してあげるよ」
博士「ほんと?」
ソウヤ「うん、良いよ」
再び沈黙が流れる
博士は立ち上がる
透明な箱から肉塊になったソウタを取り出す博士
博士は肉塊になったソウタを抱き抱える
博士「(肉塊になったソウタを抱き抱えて)悪さしないでね」
ソウヤ「良い子にしてるよ」
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えたまま浅木家のお風呂に向かって歩き始める
少しの沈黙が流れる
チヅル「(小さな声で)一緒にお風呂に入るんだって」
ソウヤ「博士とソウちゃんは愛してるんだ」
チヅル「あたしたちもあんなふうになれるかな」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「博士は馬鹿だよ、僕らのことを完全に信じてる。(少し間を開けて)明日の朝、銃を奪おう」
チヅル「殺せるの?」
ソウヤ「え?」
チヅル「博士を殺せるの?」
ソウヤ「い、家から出てもらうよ」
少しの沈黙が流れる
チヅル「そう・・・」
◯34回想/浅木家風呂(約6年前/夜)
◯33の続き
浅木家のお風呂にいる博士と肉塊になったソウタ
浅木家のお風呂の浴槽には後頭部に穴が開いて死んでいるソウヤとチヅルの母、背中に包丁が深く突き刺さって死んでいるソウヤとチヅルの父がいる
浅木家のお風呂の浴槽には血とお湯が溜まっている
博士は全裸で肉塊になったソウタを抱き抱えている
肉塊になったソウタにはソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている
肉塊になったソウタのことを抱き抱えたままシャワーを浴びている博士
◯35回想戻り/高層ビル前(夕方)
夕日が沈みかけている
高層ビルの前にいるタカヤ
高層ビルは建設途中で破棄されている
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
キャディバッグを背負っているタカヤ
タカヤはキャディバッグを背負ったまま高層ビルの中に入る
高層ビルの一階には脚立、照明、段ボール、カラーコーンなどが置いてある
タカヤ「(キャディバッグを背負ったまま 声 モノローグ)数日前から背中が酷く痛い。日に日に重く、鋭利で抉られているような感覚だ。気分も悪い。全身が今にも潰れてしまいそうだ」
◯36花色荘トワネの部屋前廊下(夕方)
夕日が沈みかけている
花色荘のトワネの部屋前の廊下にいるカナメ
カナメは私立東堂高校の制服を着ている
少しの沈黙が流れる
カナメは花色荘のトワネの部屋の扉を数回ノックする
花色荘のトワネの部屋の扉をノックするのをやめるカナメ
再び沈黙が流れる
カナメ「トワネ。(少し間を開けて)あ、開けるよ」
カナメはゆっくり花色荘のトワネの部屋の扉を開ける
花色荘のトワネの部屋にはトワネがいる
花色荘のトワネの部屋には勉強机、椅子、ベッドがある
花色荘のトワネの部屋は学校の教材やプリント、脱ぎ捨てた服で散らかっている
カーテンの隙間から夕日の光が差し込んでいる
私立東堂高校の制服を着てベッドの上で横になっているトワネ
トワネはピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めている
カナメ「うわ・・・か、片付けなよトワネ」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)誰が開けて良いと言った」
カナメ「ご、ごめん、でも話がしたくて」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)何について」
少しの沈黙が流れる
カナメ「ぼ、僕、君を怒らせたなら謝りたいんだ」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)だから、何についてと聞いたんだ」
カナメ「多分・・・オソレのこと・・・」
再び沈黙が流れる
トワネはピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま体を起こす
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま体を起こして不機嫌そうに)ふん・・・」
カナメ「入って良い?」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)今日だけは」
カナメ「ありがとう、トワネ」
カナメは花色荘のトワネの部屋に入る
トワネの部屋に散らかっている学校の教材やプリント、脱ぎ捨てた服を踏まないように慎重にトワネが座っているベッドのところに行くカナメ
カナメはピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めているトワネの隣に座る
少しの沈黙が流れる
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま)お前の復讐心が伝わって来た時、吐き気がしたよカナメ」
カナメ「ごめん」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま)第六の力は地球を守るためにある、私も、人類を守るためにお前と契約した。契約させてやった。お前やお前が仲良くしてたオソレの復讐心を満たすために契約したんじゃない」
カナメ「うん・・・」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま)二度とあんなことに私を巻き込むな」
カナメ「ごめん・・・本当に」
再び沈黙が流れる
トワネ「何故ヒヨリとイザベルを近付けた?何を考えててお前はあんなことをした?」
カナメ「それは・・・多分僕が・・・ヒヨリさんのことを信じてみたかったから・・・(少し間を開けて)ヒヨリさんなら自分の間違いに気付いてくれるって・・・そう思いたかったから」
トワネ「(不機嫌そうに)間違いに気付けなかったのはお前の方だ」
少しの沈黙が流れる
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに舌打ちをして)チッ・・・私は最近お前らと話をするだけでイライラする」
カナメ「もうああいうことはしないよ、トワネ」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま小声でボソッと不機嫌そうに)お前の心は読めん・・・」
カナメ「心?」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)契約してもカナメから伝わって来ることがほとんどない」
カナメ「そうなの?」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま)前は違ったさ。死にたくないとか、戦いたくないって想いが聞こえて来た。だがイザベルが死に、九人目と復讐をしてからは心が死んでるみたいだ」
カナメ「そんな死んでるだなんて」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま)死んでるのは心だ、体じゃない」
カナメ「ぼ、僕だってトワネやみんなが何を考えてるのか分からないよ」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)そういうことか、人の気持ちが分からないから復讐なんか出来たんだな」
カナメ「ふ、普段僕に言いたい放題言って、め、命令もしてる君がどうしてそんなふうに偉そうに出来るんだよ」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)知らないと思うから教えてやるが、お前が思ってるよりも実際に私は偉いんだ」
カナメ「(呆れて)ヒヨリさんでもそこまで大きい態度は取らないんじゃない?」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)無知な奴が知ったかぶりをするとぶん殴りたくなるな」
カナメ「言わせてもらうけど・・・花色荘の中で自惚れてないのは僕とシィアちゃんだけだよ。君やヒヨリさんやマナカさんも、ソウヤとチヅルも、トキコさんもだけど、威張り過ぎなんだよ」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)他の連中のことは知らん、どうでも良い」
カナメ「またそうやって話を終わらせ・・・」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたままカナメの話を遮って)お前は私の人格を叱りに来たのか」
カナメ「そういうわけじゃ・・・(少し間を開けて)ごめん」
再び沈黙が流れる
カナメ「と、トワネは・・・自分で自分のことが分からなくなることはないの?」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)考えるわけないだろ、そんな難しいこと」
カナメ「そっか」
少しの沈黙が流れる
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま)もしかしたら・・・」
カナメ「うん」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま少し寂しそうに笑って)もしかしたら・・・考えないようにしてるだけ・・・かもな」
再び沈黙が流れる
突然、花色荘のトワネの床で英語の教科書に埋もれている何かが赤く光る
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま)司令からの個別通信だ」
カナメ「どうしたんだろう」
トワネはピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま立ち上がる
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま立ち上がって)お前も呼ばれてるぞ」
カナメは自分の制服のポケットを見る
カナメの制服のポケットの中が赤く光っている
カナメは制服のポケットから小さな通信機を取り出す
カナメの小さな通信機は赤く光っている
カナメ「珍しいね、こんなふうにお婆ちゃんが呼び出して来るなんて」
トワネ「(ピンクの大きな熊のぬいぐるみを抱き締めたまま不機嫌そうに)司令の考えてることは私にも分からん」
◯37河川敷(夕方)
夕日が沈みかけている
一人河川敷にいるチヅル
夕日の光が反射して川がキラキラと光っている
河川敷ではチヅル以外にもランニングやウォーキングをしている人や、下校中の学生がいる
チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
河川敷で体育座りをしているチヅル
チヅルは河川敷で体育座りをしたまま俯き泣いている
◯38回想/浅木家リビング(約6年前/深夜)
◯34の続き
浅木家のリビングにいる10歳頃のソウヤと博士
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている10歳頃のソウヤと博士
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタは眠っている
テーブルの上にはトランプが置いてある
話をしている10歳頃のソウヤと博士
博士「部屋に戻んなよ」
ソウヤ「まだ眠くないから」
博士「罪を犯した人間は寝れないって言うけど?」
ソウヤ「僕、いつ悪いことをしたっけ?」
博士「今かな。それかこれからだね」
少しの沈黙が流れる
博士「小さい頃から兄は舐めるようにあたしのことを見てた。瞳、ふくらはぎ、手の甲、うなじ、唇。だけど兄は遠くを見る目をしてた。あたしがすぐそこにいるのにね」
ソウヤ「神様だって近くて遠くにいる」
博士「神様は一人だけの存在じゃないけど、妹は一人しかいないでしょ」
再び沈黙が流れる
ソウヤ「どうして僕らの家に来たの?」
博士「そうするしかなかったから。(少し間を開けて)あたしには、それしかなかった」
ソウヤ「後悔はしてる?」
博士「ソウヤの親を殺したことに関して?」
ソウヤ「うん」
博士「申し訳ないし、気の毒だとは思ってる。だけど、後悔はしてない。こんなことじゃ後悔は出来ない」
ソウヤ「何で後悔しないの?」
博士「だって双子に必要なのは相手だけで、熱心に宗教を勧めて来る親じゃないと思ってるから」
ソウヤ「僕は博士に後悔して欲しい」
博士「そんなことで前に進めるの?」
少しの沈黙が流れる
博士「(少し寂しそうに)結局んとこ、あたしたちが突き動かされる感情は愛しかないんだよ。愛のために生かして、愛のために殺す」
◯39回想戻り/河川敷(夕方)
夕日が沈みかけている
一人河川敷にいるチヅル
夕日の光が反射して川がキラキラと光っている
河川敷ではチヅル以外にもランニングやウォーキングをしている人や、下校中の学生がいる
チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
河川敷で体育座りをしているチヅル
チヅルは河川敷で体育座りをしたまま俯き泣いている
博士「(少し寂しそうに 声)愛して、愛されて、殺して、死んじゃって。大好きで大好きで我が身を破壊する」
◯40ANDREI総本部礼拝堂(夕方)
夕日が沈みかけている
ANDREI総本部の礼拝堂にいるソウヤ
ANDREI総本部の礼拝堂の中は広く、たくさんの椅子がある
ANDREI総本部の礼拝堂のガラスはステンドグラスになっている
ANDREI総本部の礼拝堂の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中には懺悔室がある
ANDREI総本部の礼拝堂の中にはソウヤ以外に誰もいない
椅子に座っているソウヤ
博士「(少し寂しそうに 声)ゲームをしたり、オシャレをしたり、映画を見たり、時には美味しい物を食べるけど、それじゃあ人生は止まったまま。水面に浮かんだ死体が腐るみたいに、命が枯れるんだ」
◯41ANDREI総本部魂の部屋(夕方)
ANDREI総本部の魂の部屋にいる白衣姿のトキコ
トキコは折り鶴のネックレスをつけている
トキコがつけている折り鶴のネックレスは、第七話◯4でソウヤがチヅルにプレゼントした折り鶴のネックレスと完全に同じ
ANDREI総本部の魂の部屋は広く、天井が高くなっている
ANDREI総本部の魂の部屋にはたくさんの大きな柱が立っている
ANDREI総本部の魂の部屋の中心には大きな祭壇があり、祭壇の上には透明な箱が置いてある
大きな祭壇の上に置いてある透明な箱の中には、小さな肉塊が入っている
大きな祭壇の上の透明な箱の中に入っている小さな肉塊には目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている
ANDREI総本部の魂の部屋の中心にある大きな祭壇には照明の光が当てられている
ANDREI総本部の魂の部屋は中心にある大きな祭壇に当てられている照明以外に光がなく、薄暗くなっている
トキコは大きな祭壇の上に置いてある透明な箱の中の小さな肉塊を見ている
博士「(少し寂しそうに 声)そうなるのが怖いから、恐れてるから誰かを愛する。愛は最も刺激的で、最もクリエイティブな破壊活動だから、大きな価値や意味を見出せる」
◯42回想/浅木家リビング(約6年前/深夜)
◯38の続き
浅木家のリビングにいる10歳頃のソウヤと博士
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている10歳頃のソウヤと博士
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタは眠っている
テーブルの上にはトランプが置いてある
話をしている10歳頃のソウヤと博士
博士「つまりサイクルなんだよ、分かる?」
ソウヤ「(少し笑って)分かるような、分からないような」
博士「子供には難しかった?」
ソウヤ「うん、ちょっとね」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「ソウちゃんをどうしたいの?」
博士「あたしにも分かんない」
10歳頃のソウヤはチラッと透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見る
ソウヤ「(チラッと透明な箱で眠っている肉塊になったソウタのことを見て)元の人間に・・・戻したいっていうのは?」
博士「多分・・・もう無理。ここにいるのはソウタっていう人じゃなくて、帰化した魂だから。死んじゃった肉体は戻って来れない」
再び沈黙が流れる
博士「ソウタのことをキモいって思う?」
ソウヤ「キモいとは思わないけど、僕がああなるのは嫌かな。人間は復活しない生き物だし」
博士「そうだよね」
ソウヤ「でも博士が愛してるならソウちゃんは嬉しいのかも」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「そろそろ寝ようかな」
博士は立ち上がる
博士「(立ち上がって)あたしも・・・あたしも一緒に行って良い?」
◯43回想/浅木家ソウヤとチヅルの母、父の寝室(約6年前/深夜)
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室にいる10歳頃のソウヤと博士
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室にはダブルサイズのベッドがある
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室の扉は少しだけ開いている
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室のダブルサイズのベッドの横には小さなテーブルがある
小さなテーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタは眠っている
ダブルサイズのベッドの上で横になっている10歳頃のソウヤと博士
話をしている10歳頃のソウヤと博士
博士「ごめん」
ソウヤ「神様が決めたことだよ」
少しの沈黙が流れる
博士「指から血が出てる」
ソウヤ「どこ?」
博士「右手、ソウヤの」
10歳頃のソウヤは自分の右手を見る
10歳頃のソウヤの右手の人差し指からは血が出ている
ソウヤ「(右手の人差し指から出ている血を見て)ほんとだ。いつ出来たんだろう」
博士「ちょっと貸して」
10歳頃のソウヤは自分の右手の人差し指から出ている血を見るのをやめる
右手の人差し指を博士に差し出す10歳頃のソウヤ
博士は10歳頃のソウヤの右手の人差し指から出ている血を舐める
博士「(10歳頃のソウヤの右手の人差し指から出ている血を舐めて)綺麗にしたげる」
博士は10歳頃のソウヤの右手の人差し指から出ている血を吸い始める
ソウヤ「(博士に右手の人差し指から出ている血を吸われながら)喉が渇いてるなら牛乳を飲めば良かったのに」
博士は10歳頃のソウヤの右手の人差し指から出ている血を吸うのをやめる
博士「(10歳頃のソウヤの右手の人差し指から出ている血を吸うのをやめて少し笑って)違うよ、これこそ最も刺激的で、最もクリエイティブな破壊活動なんだよ」
博士は再び10歳頃のソウヤの右手の人差し指から出ている血を吸い始める
◯44回想/浅木家ソウヤとチヅルの母、父の寝室前廊下(約6年前/深夜)
◯43の続き
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室前の廊下にいる10歳頃のチヅル
10歳頃のチヅルは包丁を持っている
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室の扉は少しだけ開いている
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室には10歳頃のソウヤと博士がいる
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室にはダブルサイズのベッドがある
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室のダブルサイズのベッドの横には小さなテーブルがある
浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室の横の小さなテーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
小さなテーブルの上の透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口がある
小さなテーブルの上の透明な箱に入っている肉塊になったソウタは眠っている
10歳頃のソウヤと博士は浅木家のソウヤとチヅルの母、父の寝室のダブルサイズのベッドの上で横になっている
10歳頃のソウヤは右手の人差し指から出ている血を博士に吸われている
寝室の扉の隙間から、右手の人差し指から出ている血を博士に吸われている10歳頃のソウヤのことを見ている10歳頃のチヅル
博士に右手の人差し指から出ている血を吸われている10歳頃のソウヤは、寝室の扉の隙間から10歳頃のチヅルに見られていることに気付いていない
博士は10歳頃のソウヤは右手の人差し指から出ている血を吸うのをやめる
10歳頃のソウヤの頬にキスをする博士
◯45回想戻り/ANDREI総本部リュウマの研究室(夕方)
ANDREI総本部のリュウマの研究室にいるタエと
ANDREI総本部のリュウマの研究室は部屋全体にホログラムが投影されており、森の中にいるようになっている
ANDREI総本部のリュウマの研究室の中心にはクローン製造機がある
ANDREI総本部のリュウマの研究室の中心にあるクローン製造機は、透明な棺のような形をしており、その中には四季イズミが全裸で眠っている
四季イズミの年齢は16歳
リュウマはクローン製造機の中で全裸で眠っている四季イズミのことを見ている
リュウマ「(クローン製造機の中で全裸で眠っている四季イズミのことを見ながら少し寂しそうに)やっぱクローンの子はダメだな、単為生殖じゃ欠陥が出る」
◯46ANDREI総本部第一ロイヤル待機室(夕方)
ANDREI総本部の第一ロイヤル待機室にいるカナメ、トワネ、タエ
ANDREI総本部の第一ロイヤル待機室には椅子とロッカーがある
カナメは紺の”ミラースーツ”を、トワネは赤の”ミラースーツ”を着ている
椅子に座っているカナメとトワネ
カナメたちは話をしている
トワネ「チヅルとソウヤは?」
タエ「作戦場所が違うから、先に行っているわ」
トワネ「あの二人は大丈夫なのか?」
タエ「もちろん。問題はありません」
カナメ「お婆ちゃん」
タエ「どうしたの?カナメ」
カナメ「ヒヨリさんたちがはいつ戻って来るの?」
タエ「心配することはないわ、明日の朝、迎えに行くから」
少しの沈黙が流れる
タエ「仮面、付けないのね?」
カナメ「うん」
タエ「私もない方が好きよ、カナメ」
カナメ「そう」
再び沈黙が流れる
タエ「よろしくお願いするわね。カナメ、相園さん」
カナメ「うん」
タエはANDREI総本部の第一ロイヤル待機室から出て行く
少しの沈黙が流れる
カナメは立ち上がる
トワネ「カナメ」
カナメ「何?」
トワネ「いや・・・何でもない」
◯47高層ビル20階(夕方)
夕日が沈みかけている
高層ビルの20階に一人いるタカヤ
サングラスをかけてサウナハットを被っている
高層ビルの20階には脚立、照明、段ボール、カラーコーンなどが置いてある
タカヤは窓際でスナイパーライフルを組み立てている
スナイパーライフルを組み立てているタカヤの横には弾倉とキャディバッグが置いてある
タカヤ「(スナイパーライフルを組み立てながら 声 モノローグ)空気を逃がさないように、呼吸を深く続ける。やがて聞こえて来る騒音を待て、それは自分の呼吸音だ。息遣いを支配出来れば、俺は完全なる指揮者と化す」
タカヤはスナイパーライフルを組み立て終える
窓際でスナイパーライフルの2脚を立てるタカヤ
タカヤ「(スナイパーライフルの2脚を立てて 声 モノローグ)リスペクト」
タカヤは横に置いてあるスナイパーライフルの弾倉を手に取る
スナイパーライフルに弾倉をセットするタカヤ
タカヤ「(スナイパーライフルに弾倉をセットして 声 モノローグ)仕事が終わり、仕事が始まる」
タカヤはスナイパーライフルの隣でうつ伏せになる
タカヤ「(スナイパーライフルの隣でうつ伏せになって少し笑って 声 モノローグ)俺から俺に言いたいことがある。ぜひ計画的に心が無になる瞬間を、楽しんで欲しい」
◯48回想/浅木家キッチン(約6年前/日替わり/朝)
◯44の続き
浅木家のキッチンにいる10歳頃のソウヤと博士
10歳頃のソウヤはフライパンでベーコンを、博士はフライパンで目玉焼きを3個作っている
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめている
朝ご飯を作っている10歳頃のソウヤと博士
10歳頃のソウヤと博士は朝ご飯を作りながら楽しそうに話をしている
ソウヤ「(フライパンでベーコンを焼きながら楽しそうに)いや、そんなことないし」
博士「(フライパンで目玉焼きを3個作りながら楽しそうに)そう?あたしなんて何も貰えなかったよ」
ソウヤ「(フライパンでベーコンを焼きながら楽しそうに少し笑って)博士は不良だったんでしょ?」
博士「(フライパンで目玉焼きを3個作りながら楽しそうに)不良でも授業はちゃんと聞いてたし、成績も悪くなかったけど?」
ソウヤ「(フライパンでベーコンを焼きながら楽しそうに少し笑って)じゃあ先生とか、クラスの人たちから嫌われて・・・」
浅木家のリビングに10歳頃のチヅルがやって来る
博士「(フライパンで目玉焼きを3個作りながら)あ、おはようチヅルちゃん」
10歳頃のチヅルは包丁を隠し持っている
博士「(フライパンで目玉焼きを3個作りながら)もう少しで朝ご飯出来るから、ちょっと待ってて」
チヅル「先にソウちゃんにあげようよ」
博士「(フライパンで目玉焼きを3個作りながら)ソウタに?」
チヅル「うん」
10歳頃のソウヤはチラッとフライパンでベーコンを焼きながら浅木家のリビングにいる10歳頃のチヅルのことを見る
少しの沈黙が流れる
博士はコンロの火を止める
博士「(コンロの火を止めて)良いよ」
博士は冷蔵庫を開ける
冷蔵庫の中には2リットルのお茶、2リットルの牛乳、豚肉、卵、納豆、豆腐、調味料、カットされたりんごが乗っている皿などがある
冷蔵庫の中には2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿を取り出す博士
博士は冷蔵庫を閉じる
博士「(2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿を持ったまま)ソウヤからあげる?」
ソウヤ「(フライパンでベーコンを焼きながら)そうだね、僕が・・・」
チヅル「(10歳頃のソウヤの話を遮って)だ、ダメ。博士がやって」
再び沈黙が流れる
チヅル「あ、あたしもソウちゃんにご飯をあげたいから、博士がやり方を見せてよ」
博士「(2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿を持ったまま)良いけど・・・あたしの後は?ソウヤ?」
チヅル「うん。最後にあたし」
博士はキッチンの調理台の上に2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿を置く
博士「(キッチンの調理台の上に2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿を置いて)食べ過ぎちゃうな」
10歳頃のソウヤがフライパンで焼いているベーコンが焦げ始める
◯49回想戻り/高層ビル20階(夕方)
夕日が沈みかけている
高層ビルの20階に一人いるタカヤ
サングラスをかけてサウナハットを被っている
高層ビルの20階には脚立、照明、段ボール、カラーコーンなどが置いてある
高層ビルの窓際でうつ伏せになっているタカヤ
窓際でうつ伏せになっているタカヤの側にはスナイパーライフルが2脚で立ててある
うつ伏せになっているタカヤの横にはキャディバッグが置いてある
チヅル「(声)そう?」
博士「(声)うん」
タカヤはうつ伏せになったままスナイパーライフルのスコープを覗く
タカヤ「(うつ伏せになったままスナイパーライフルのスコープを覗いて 声 モノローグ)深呼吸を」
◯50回想/浅木家キッチン(約6年前/朝)
◯48の続き
浅木家のキッチンにいる10歳頃のソウヤと博士
10歳頃のソウヤはフライパンでベーコンを焼いている
キッチンの調理台の上には2リットルの牛乳とカットされたりんごが乗っている皿が置いてある
キッチンのコンロの上にはフライパンがあり、目玉焼きが3個作られてある
浅木家のリビングには10歳頃のチヅルがいる
10歳頃のチヅルは包丁を隠して持っている
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
テーブルの上には肉塊になったソウタが入っている透明な箱がある
透明な箱に入っている肉塊になったソウタには目と口があり、人間の言葉かどうか分からないような言語をうめいている
10歳頃のソウヤがフライパンで焼いているベーコンは焦げている
タカヤ「(声 モノローグ)緊張するな」
博士はカットされたりんごを一切れ食べる
タカヤ「(声 モノローグ)相手はお前から逃げられない。殺す必要もない。数人の子供の足を奪って、ルシファリアの破壊にかかる。(少し間を開けて)計画に、一切の不備はない」
博士はカットされたりんごの一切れを噛みながら2リットルの牛乳を一口飲む
りんごと牛乳を咀嚼しながら浅木家のリビングに行く博士
博士はりんごと牛乳を咀嚼しながらテーブルの上に置いてある透明な箱の中に入っている肉塊になったソウタに近付く
タカヤ「(声 モノローグ)敵は内なる自分にあり」
博士はりんごと牛乳を咀嚼しながら透明な箱から肉塊になったソウタを取り出す
りんごと牛乳を咀嚼しながら肉塊になったソウタを抱き抱える博士
タカヤ「(声 モノローグ)真に恐れるは、自分にすら理解出来ない自分に尽きる」
10歳頃のソウヤがフライパンで焼いている焦げたベーコンから煙が上がり始める
10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅルは肉塊になったソウタを抱き抱え、りんごと牛乳を咀嚼している博士のことを見ている
タカヤ「(声 モノローグ)他者は脅威ではないのだ」
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えりんごと牛乳を咀嚼しながら、肉塊になったソウタにキスをする
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせる博士
10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅルからは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士の腰にハンドガンがあるのが見えている
タカヤ「(声 モノローグ)自分を支配出来る者が、他者を支配するようになる」
10歳頃のソウヤはフライパンの上で焦げて煙が上がっているベーコンを放置してゆっくり浅木家のリビングに行く
◯51回想戻り/高層ビル20階(夕方)
夕日が沈みかけている
高層ビルの20階に一人いるタカヤ
サングラスをかけてサウナハットを被っている
高層ビルの20階には脚立、照明、段ボール、カラーコーンなどが置いてある
高層ビルの窓際でうつ伏せになっているタカヤ
窓際でうつ伏せになっているタカヤの側にはスナイパーライフルが2脚で立ててある
うつ伏せになっているタカヤの横にはキャディバッグが置いてある
窓際でうつ伏せになったままスナイパーライフルのスコープを覗いているタカヤ
タカヤがうつ伏せになったまま覗いているスナイパーライフルのスコープからは、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿が見えている
タカヤ「(うつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見たまま 声 モノローグ)地上も空もその下も、サイクルの仕組みは単純さ」
タカヤはうつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見たままスナイパーライフルの引き金を引く
タカヤ「(うつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見たままスナイパーライフルの引き金を引いて 声 モノローグ)仕事が終わったら一杯飲もう」
◯52河川敷(夕方)
夕日が沈みかけている
一人河川敷にいるチヅル
夕日の光が反射して川がキラキラと光っている
河川敷ではチヅル以外にもランニングやウォーキングをしている人や、下校中の学生がいる
チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
河川敷で体育座りをしているチヅル
チヅルは河川敷で体育座りをしたまま俯き泣いている
タカヤ「(声 モノローグ)あの少女の場所が良い」
◯53高層ビル20階(夕方)
夕日が沈みかけている
高層ビルの20階に一人いるタカヤ
サングラスをかけてサウナハットを被っている
高層ビルの20階には脚立、照明、段ボール、カラーコーンなどが置いてある
高層ビルの窓際でうつ伏せになっているタカヤ
窓際でうつ伏せになっているタカヤの側にはスナイパーライフルが2脚で立ててある
うつ伏せになっているタカヤの横にはキャディバッグが置いてある
窓際でうつ伏せになったままスナイパーライフルのスコープを覗いているタカヤ
タカヤがうつ伏せになったまま覗いているスナイパーライフルのスコープからは、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿が見えている
タカヤはうつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見ている
タカヤ「(うつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見たまま 声 モノローグ)美しい場所だ」
◯54回想/浅木家リビング(約6年前/朝)
◯50の続き
浅木家のリビングにいる10歳頃のソウヤ、10歳頃のチヅル、博士
浅木家のリビングにはテーブル、椅子、ソファ、テレビがある
浅木家のリビングには家庭祭壇があり、家庭祭壇の中央に磔されたキリストの十字架が置いてある
浅木家のリビングの床にはソウヤとチヅルの母、父の大量の血痕がある
浅木家のキッチンではフライパンでベーコンが焼かれ焦げて、ベーコンから煙が上がっている
10歳頃のチヅルは包丁を隠し持っている
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えりんごと牛乳を咀嚼している
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士
10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅルからは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士の腰にハンドガンがあるのが見えている
タカヤ「(声 モノローグ)見下さないようにしていれば」
10歳頃のチヅルはチラッと10歳頃のソウヤのことを見る
10歳頃のソウヤに肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士に近付くように促す10歳頃のチヅル
タカヤ「(声 モノローグ)仕事は終わる」
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳をソウタに食べさせている博士に気付かれないようにゆっくり近付く
タカヤ「(声 モノローグ)仕事の始まりが終わる」
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士の真後ろで、ゆっくり立ち止まる10歳頃のソウヤ
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせており、真後ろに10歳頃のソウヤが立っていることに気付いていない
タカヤ「(声 モノローグ)人類と生活出来て良かった。俺は満足だ」
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士の腰から素早くハンドガンを奪う
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士にハンドガンを向ける10歳頃のソウヤ
少しの沈黙が流れる
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士から数歩後ろに下がる
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳を肉塊になったソウタに食べさせている博士にハンドガンを向け、ハンドガンの引き金を引く10歳頃のソウヤ
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えたまま、キスをして口移しで咀嚼したりんごと牛乳をソウタに食べさせるのをやめる
肉塊になったソウタを抱き抱えたまま肉塊になったソウタにキスをするのをやめる博士
博士は肉塊になったソウタを抱き抱えたままゆっくり振り返る
ソウヤ「(肉塊になったソウタを抱き抱えている博士にハンドガンを向けたまま)ご、ごめんなさい博士」
再び沈黙が流れる
博士「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま)撃たれてもあたしは死なない、永遠にあんたの人生で生き続けるよ」
ソウヤ「(肉塊になったソウタを抱き抱えている博士にハンドガンを向けたまま)で、出て行って」
博士「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま)ソウヤ」
ソウヤ「(肉塊になったソウタを抱き抱えている博士にハンドガンを向けたまま)は、早く!!僕らの家から出て行くんだ!!」
博士「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま)あたしとあたしの兄はあんたたちで、あんたたちはあたしとあたしの兄だよ。(少し間を開けて)出て行くとか、出て行かないとかそんなんじゃない。あたしたちは離れらんないんだ」
少しの沈黙が流れる
チヅル「う、撃ってよお兄ちゃん!!」
博士「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま)撃った奴も撃たない奴も同じだからね、苦しむのは」
チヅル「お兄ちゃんってば!!」
ソウヤ「(肉塊になったソウタを抱き抱えている博士にハンドガンを向けたまま)うるさい!!」
肉塊になったソウタを抱き抱えている博士に向けている10歳頃のソウヤのハンドガンが震えている
ソウヤ「(肉塊になったソウタを抱き抱えている博士に震えながらハンドガンを向けて大きな声で)ぼ、僕らの人生から出て行ってくれよ!!!!」
博士「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま)無理だよ。(少し間を開けて)だって愛してるから」
再び沈黙が流れる
突然、フライパンの上で焦げているベーコンから上がった煙に反応して、浅木家のキッチンの火災報知器が大きな音で鳴る
浅木家のキッチンの火災報知器が大きな音で鳴り始めた瞬間、肉塊になったソウタを抱き抱えている博士に向かってハンドガンを発砲する10歳頃のソウヤ
10歳頃のソウヤが肉塊になったソウタを抱き抱えている博士に向かって発砲したハンドガンの弾丸は、博士から大きく逸れて浅木家のリビングの壁に当たる
数発のハンドガンの薬莢がカランカランと音を立てて床に落ちる
博士「(肉塊になったソウタを抱き抱えたまま)残念・・・ハズレ」
浅木家のリビングとキッチンでは少しの間火災報知器の大きな音だけが鳴り響く
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタを抱き抱えている博士に向けていたハンドガンをゆっくり下ろそうとする
10歳頃のソウヤがゆっくり下ろそうとしていたハンドガンを素早く奪い取る10歳頃のチヅル
ソウヤ「(ゆっくり下ろそうとしていたハンドガンを10歳頃のチヅルに素早く奪い取られて驚いて)ち、チヅル!!」
10歳頃のチヅルは肉塊になったソウタを抱き抱えている博士に向かってハンドガンを連射する
数発のハンドガンの薬莢がカランカランと音を立てて床に落ちる
10歳頃のチヅルが肉塊になったソウタを抱き抱えている博士に向かって発砲したハンドガンの数発の弾丸は、博士のお腹や胸部に命中している
肉塊になったソウタを抱き抱えている博士の服に大量の血が滲んでいる
博士は抱き抱えていた肉塊になったソウタを離す
グチャッという音を立てて肉塊になったソウタが床に落ちる
倒れる博士
博士は倒れて死んでいる
肉塊になったソウタに向かって隠して持っていた包丁を振り上げる10歳頃のチヅル
10歳頃のチヅルは肉塊になったソウタに包丁を深く突き刺す
10歳頃のチヅルが肉塊になったソウタに包丁を深く突き刺すと、肉塊になったソウタから人間の言語か分からないような悲鳴が上がる
肉塊になったソウタから勢いよく包丁を引き抜く10歳頃のチヅル
10歳頃のチヅルが肉塊になったソウタから勢いよく包丁を引き抜くと、周囲に大量の血が飛び散る
10歳頃のチヅルは肉塊になったソウタに何度も包丁を突き刺す
肉塊になったソウタを何度も包丁で突き刺している10歳頃のチヅルに肉塊になったソウタの返り血がかかる
ソウヤ「ち、チヅ・・・」
チヅル「(肉塊になったソウタに何度も包丁を突き刺しながら10歳頃のソウヤの話を遮って大きな声で)死ね!!!!死ね!!!!死ね!!!!死ね!!!!死ね!!!!」
10歳頃のチヅルは”死ね!!!!死ね!!!!”と叫び肉塊になったソウタに何度も包丁を突き刺しながら涙を流す
チヅル「(肉塊になったソウタに何度も包丁を突き刺しながら涙を流して怒鳴り声で)死ね!!!!死ね!!!!死ね!!!!死ね!!!!」
10歳頃のチヅルに何度も包丁を突き刺されている肉塊になったソウタは口から舌が伸びており、動かなくなっている
10歳頃のソウヤは肉塊になったソウタに何度も包丁を突き刺しながら、涙を流している10歳頃のチヅルの体を無理矢理押さえる
ソウヤ「(肉塊になったソウタに何度も包丁を突き刺しながら、涙を流している10歳頃のチヅルの体を無理矢理押さえて)も、もうやめろよチヅル!!」
10歳頃のチヅルは10歳頃のソウヤに体を無理矢理押さえられ涙を流しながら抵抗する
チヅル「(10歳頃のソウヤに体を無理矢理押さえられ涙を流しながら抵抗して怒鳴り声で)撃てなかったくせに!!!!ママとパパを殺した奴と仲良くしてたくせに!!!!」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルの体を無理矢理押さえたまま大きな声で)僕はチヅルを守りたかった!!!!」
チヅル「(10歳頃のソウヤに体を無理矢理押さえられ涙を流しながら抵抗して怒鳴り声で)守ってくれなかったじゃん!!!!あたしに嘘をついたじゃん!!!」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルの体を無理矢理押さえたまま大きな声で)ごめん!!!!ごめんチヅル!!!!でも僕たちは博士みたいに人殺しになるべきじゃなかった!!!!そうだろ!!!!僕らはただの子供なんだから!!!!人殺しになって離れ離れになるのは間違ってるだろ!!!!」
10歳頃のソウヤは涙を流しながら抵抗している10歳頃のチヅルのことを強く抱き締める
ソウヤ「(涙を流しながら抵抗している10歳頃のチヅルのことを強く抱き締めて大きな声で)悪いのは僕だチヅル!!!!僕が全部悪いから!!!!ずっと僕だけを責めて良いから!!!!」
少しの沈黙が流れる
浅木家のリビングとキッチンでは変わらず火災報知器の大きな音だけが鳴り響いている
10歳頃のチヅルは涙を流し10歳頃のソウヤに強く抱き締められたまま抵抗するのをやめる
チヅル「(涙を流し10歳頃のソウヤに強く抱き締められたまま)お兄ちゃんだけを・・・?」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルのことを強く抱き締めたまま)僕だけを・・・僕だけを傷つけてチヅル・・・」
チヅル「(涙を流し10歳頃のソウヤに強く抱き締められたまま)どうしてお兄ちゃんだけなの・・・?」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルのことを強く抱き締めたまま)チヅルのことが・・・大切だから・・・」
チヅル「(涙を流し10歳頃のソウヤに強く抱き締められたまま)そっか・・・そうなんだ・・・お兄ちゃんは・・・あたしのことが・・・」
ソウヤ「(涙を流している10歳頃のチヅルのことを強く抱き締めたまま)うん・・・僕はチヅルのことが好きなんだ」
再び沈黙が流れる
10歳頃のチヅルは涙を流しながら10歳頃のソウヤのことを抱き締める
突然、浅木家のリビングの天井、キッチンの天井のスプリンクラーから勢いよく水が降り注いで来る
10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅルはスプリンクラーから勢いよく降り注いで来る水を全身に浴びながら、抱き合い続ける
◯55回想戻り/河川敷(夕方)
夕日が沈みかけている
一人河川敷にいるチヅル
夕日の光が反射して川がキラキラと光っている
河川敷ではチヅル以外にもランニングやウォーキングをしている人や、下校中の学生がいる
チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
河川敷で体育座りをしているチヅル
チヅルは河川敷で体育座りをしたまま俯き泣いている
◯56高層ビル20階(夕方)
夕日が沈みかけている
高層ビルの20階に一人いるタカヤ
タカヤはサングラスをかけてサウナハットを被っている
高層ビルの20階には脚立、照明、段ボール、カラーコーンなどが置いてある
高層ビルの窓際でうつ伏せになっているタカヤ
窓際でうつ伏せになっているタカヤの側にはスナイパーライフルが2脚で立ててある
うつ伏せになっているタカヤの横にはキャディバッグが置いてある
窓際でうつ伏せになったままスナイパーライフルのスコープを覗いているタカヤ
タカヤがうつ伏せになったまま覗いているスナイパーライフルのスコープからは、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿が見えている
タカヤはうつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見ている
うつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見たままチヅルを狙ってスナイパーライフルを発砲しようとするタカヤ
タカヤ「(うつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見たままチヅルを狙ってスナイパーライフルを発砲しようとして 声 モノローグ)大丈夫、この1発で君の罪を解放しよう。これで君は苦しみから救われ・・・」
突然、タカヤのタブレットの着信が鳴る
タカヤはうつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗いて、河川敷で体育座りをして俯き泣いているチヅルの姿を見たままチヅルを狙ってスナイパーライフルを発砲しようとするのをやめる
うつ伏せになりスナイパーライフルのスコープを覗くのをやめるタカヤ
タカヤはうつ伏せになるのをやめて体を起こす
ポケットからタブレットを取り出すタカヤ
タカヤのタブレットには”妻”という文字と、電話マークが表示されており、着信が鳴り響いている
少しの間タカヤはタカヤの妻からの電話に出ようか悩む
タブレットでタカヤの妻からの電話に出ようとするタカヤ
タカヤがタブレットでタカヤの妻からの電話に出ようとした瞬間、タカヤの頭に散弾銃の銃口が突き付けられる
タカヤはタブレットでタカヤの妻からの電話に出ようとしたまま、頭に散弾銃に銃口を突き付けて来た人のことを見る
タカヤの頭に散弾銃の銃口を突き付けているのはカナメ
カナメは紺色と赤の”ミラースーツ”を着ている
カナメがタブレットでタカヤの妻からの電話に出ようとしているタカヤの頭に突き付けている散弾銃は、トワネがカナメと契約して”女王”になった姿
タカヤのタブレットは変わらず”妻”という文字と、電話マークが表示されており、着信が鳴り響いている
タカヤはカナメに散弾銃の銃口を頭に突き付けられたまま、タブレットでタカヤの妻からの電話に出ようとするのをやめる
タカヤ「(カナメに散弾銃の銃口を頭に突き付けられたまま、タブレットでタカヤの妻からの電話に出ようとするのをやめて)大天使ルシ・・・」
カナメはタカヤの頭に散弾銃の銃口を突き付けたまま話途中だったタカヤの頭に散弾銃を発砲する
ゼロ距離でカナメに散弾銃を発砲されたタカヤの頭が粉々に吹き飛ぶ
高層ビルの20階にタカヤの脳味噌や頭の皮、大量の血と割れたサングラスが飛び散る
頭が吹き飛んだタカヤの首から大量の血が噴き出る
頭が吹き飛び、首から大量の血を噴き出しているタカヤの遺体はその場に倒れる
頭が吹き飛び、首から大量の血を噴き出しているタカヤの遺体はタブレットを握っている
少しすると頭が吹き飛び、首から大量の血を噴き出しているタカヤの遺体が握っているタブレットから鳴り響いていた着信が止まる
頭が吹き飛び、首から大量の血を噴き出しているタカヤの遺体が握っているタブレットには、”着信 一件”と表示されている
少しの沈黙が流れる
突然、頭が吹き飛び首から大量の血を噴き出しているタカヤの遺体が破裂する
突然破裂したタカヤの遺体の大量の血と肉片がタカヤのタブレット、地面に落ちているタカヤの割れたサングラス、タカヤのサウナハットに勢いよくかかる
タカヤの遺体が倒れていたところから”イングマールの針”が現れる
“イングマールの針”は2メートルほどの長さの真っ黒な棒
再び沈黙が流れる
カナメはチラッと”着信一件”と表示されているタカヤのタブレットを見る
ドロドロの血まみれで割れたタカヤのサングラスと、同じくドロドロの血まみれになっているタカヤのサウナハットを拾いに行くカナメ
カナメはドロドロの血まみれで割れたタカヤのサングラスと、同じくドロドロの血まみれになっているタカヤのサウナハットを拾う
カナメ「(ドロドロの血まみれで割れたタカヤのサングラスと、同じくドロドロの血まみれになっているタカヤのサウナハットを拾って)十人目のオソレ、モノローグを破壊」
カナメは再びチラッとドロドロの血まみれになっているタカヤのタブレットを見る
ドロドロの血まみれになっているタカヤのタブレットには変わらず”着信 一件”と表示されている
◯57河川敷(夕方)
夕日が沈みかけている
一人河川敷にいるチヅル
夕日の光が反射して川がキラキラと光っている
河川敷ではチヅル以外にもランニングやウォーキングをしている人や、下校中の学生がいる
チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
河川敷で体育座りをしているチヅル
チヅルは河川敷で体育座りをしたまま俯き泣いている
少しの沈黙が流れる
河川敷で体育座りをし泣きながら顔を上げるチヅル
◯58回想/浜辺(約6年前/昼過ぎ)
浜辺にいる10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅル
太陽の光が波に反射しキラキラと光っている
浜辺には釣りやウォーキングをしている人、海で泳いだり浜辺で遊んでいる人などたくさんの人がいる
話をしている10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅル
チヅル「ほんとに良いの?」
ソウヤ「(少し笑って)むしろ若葉の方が良いよ。だって苗字が変われば、チヅルとは兄妹じゃなくなる。僕らは最初から普通の家族じゃない方が良かったんだ」
チヅル「うん。普通の家族以上が良い」
ソウヤ「じゃあ特別を目指そう、二人で」
少しの沈黙が流れる
ソウヤ「お母さんとお父さんのことがあって、ANDREIの人たちは僕とチヅルの生活を守るって約束してくれたよ」
チヅル「そっか。(少し間を開けて)いつ施設から出るの?」
ソウヤ「中学校を卒業したら、すぐに」
チヅル「あと5年も?長いね」
ソウヤ「大人になるには時間がかかるんだ」
10歳頃のソウヤはポケットから10歳頃の自分と10歳頃のチヅルが海の前で写っている写真を取り出す
10歳頃の自分と10歳頃のチヅルが海の前で写っている写真を10歳頃のチヅルに差し出す10歳頃のソウヤ
ソウヤ「(10歳頃の自分と10歳頃のチヅルが海の前で写っている写真を10歳頃のチヅルに差し出して)これ、兄妹だった時の」
10歳頃のチヅルは10歳頃のソウヤと10歳頃の自分が海の前で写っている写真を10歳頃のソウヤから受け取る
チヅル「(10歳頃のソウヤと10歳頃の自分が海の前で写っている写真を10歳頃のソウヤから受け取って)ありがと」
ソウヤ「裏を見て、チヅル」
10歳頃のチヅルは10歳頃のソウヤと10歳頃の自分が海の前で写っている写真の裏を見る
10歳頃のソウヤと10歳頃のチヅル海の前で写っている写真の裏には、”大切なチヅルに”と書かれている
ソウヤ「チヅルだけだよ、僕が大切なのは」
10歳頃のチヅルは10歳頃のソウヤと10歳頃の自分が海の前で写っている写真の裏を見るのをやめる
チヅル「(10歳頃のソウヤと10歳頃の自分が海の前で写っている写真の裏を見るのをやめて)ほんとに?」
ソウヤ「うん。死んでも変わらないよ」
再び沈黙が流れる
10歳頃のチヅルは10歳頃のソウヤの頬にキスをする
チヅル「(10歳頃のソウヤの頬にキスをして)あたしも同じことソウヤに思ってる」
10歳頃のチヅルは10歳頃のソウヤと10歳頃の自分が海の前で写っている写真をポケットにしまう
チヅル「(10歳頃のソウヤと10歳頃の自分が海の前で写っている写真をポケットにしまって)叔父さんが心配してるから、もう行くね。元気でね、ソウヤ」
ソウヤ「チヅル」
チヅル「何・・・?」
ソウヤ「僕が迎えに行くから、絶対。だから次は僕らだけで新しい人生を始めてくれるよね?」
チヅル「うん。絶対ソウヤと二人で生きる」
◯59回想戻り/河川敷(夕方)
夕日が沈みかけている
一人河川敷にいるチヅル
夕日の光が反射して川がキラキラと光っている
河川敷ではチヅル以外にもランニングやウォーキングをしている人や、下校中の学生がいる
チヅルは私立東堂高校の制服を着ている
河川敷で体育座りをしているチヅル
チヅルは河川敷で体育座りをしたまま泣いている
河川敷で体育座りをしたまま涙を手で拭うチヅル
涙を手で拭ってチヅルは立ち上がる
チヅル「(立ち上がって)大丈夫・・・・あたしは大丈夫だ・・・」
チヅルは歩き始める
チヅル「あたしは一人でも・・・絶対大丈夫・・・」
◯60ANDREI総本部ケアカプセル室(夜)
ANDREI総本部のケアカプセル室にいるトワネ、シィア、白衣姿のトキコ
トワネは赤の”ミラースーツ”を着ている
トキコは折り鶴のネックレスをつけている
トキコがつけている折り鶴のネックレスは、第七話◯4でソウヤがチヅルにプレゼントした折り鶴のネックレスと完全に同じ
ANDREI総本部のケアカプセル室にはたくさんのケアカプセルがある
ANDREI総本部のケアカプセル室にあるたくさんのケアカプセルの中には液体が入っている
話をしているトワネたち
トワネ「カナメはどこにいる!?」
トキコ「用があるとかって言って治療も受けずにそのままどっか行ったわよ」
トワネ「クソッ!」
シィア「修羅場ですか」
トワネ「嫌な予感がする・・・」
シィア「はあ」
トワネは早足でANDREIの総本部ケアカプセル室から出て行こうとする
トキコ「何であんたまで消えようとしてんのトワネ」
トワネは急いでANDREIの総本部ケアカプセル室の扉を開ける
トワネ「(急いでANDREIの総本部ケアカプセル室の扉を開けて)ケアはあの馬鹿を見つけてから受ける!」
トワネは早足でANDREIの総本部ケアカプセル室から出て行く
顔を見合わせるシィアとトキコ
シィア「(トキコと顔を見合わせて)何事でしょう」
トキコはシィアと顔を見合わせるのをやめる
トキコ「(シィアと顔を見合わせるのをやめて)さあね・・・契約してる時にカナメの感情が伝わって来て・・・何か嫌なもんでも見たのか・・・」
◯61ANDREI総本部通路(夜)
ANDREI総本部の通路にいるトワネ
トワネは赤の”ミラースーツ”を着ている
ANDREI総本部の通路を早足で歩いているトワネ
トワネ「(早足で歩きながら 声 モノローグ)腐るな・・・腐るなよカナメ・・・私はお前に・・・お前に聞いて欲しいことが・・・」
◯62タカヤの家近く(夜)
タカヤの家の近くにいるトワネ
タカヤの家の前にはカナメとタカヤの妻がいる
カナメは紺色の”ミラースーツ”を、トワネは赤の”ミラースーツ”を着ている
両膝をついて号泣しているタカヤの妻
両膝をついて号泣しているタカヤの妻の目の前には、乾いた血でどす黒く染まり割れているタカヤのサングラス、乾いた血でどす黒く染まっているタカヤのサウナハット、同じく乾いた血でどす黒く染まっているタカヤのタブレットが置いてある
タカヤの妻は両膝をつき、目の前に置いてある乾いた血でどす黒く染まり割れているタカヤのサングラス、乾いた血でどす黒く染まっているタカヤのサウナハット、同じく乾いた血でどす黒く染まっているタカヤのタブレットを見ながら号泣している
両膝をついて号泣しているタカヤの妻を見て呆然としているトワネ
トワネ「(両膝をついて号泣しているタカヤの妻を見て呆然としながら)あった・・・のに・・・」
タカヤの妻は両膝をつき、目の前に置いてある乾いた血でどす黒く染まり割れているタカヤのサングラス、乾いた血でどす黒く染まっているタカヤのサウナハット、同じく乾いた血でどす黒く染まっているタカヤのタブレットを見ながら号泣し続ける
続く。