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鏡界の黎戦  作者: 黎月 夜凪
第一章 剣士転生編
1/3

プロローグ【絶望という名の復讐前マイナス1ページ目】

 君は俺にとっての希望だった──


『先生、大好き! 結婚して!』

「君が大人になっても、その気持ちが変わっていなければな」

『大人って何歳?』

「20歳」

『えー! そんな待てないよ!』

「じゃあ18歳か。その頃には俺も立派なおじさんだ」

『あと8年だね! 楽しみだなぁ!』

無邪気な君に出会い


『先生! 5年前の約束、覚えてますか?』

「ああ、覚えてるよ」

『あと3年ですね! 先生、浮気しちゃダメですよ? 先生は顔が良いんですから! 私は……先生の優しいところが好きですけどね』

師として君の成長を見てきた。


『先生……私、18歳になりました。ずっと私の気持ちは変わってません! 先生……好きです!』

「俺はもう28歳だ。お前からしたらおじさんだろう。それでも良いのか?」

『私は……先生が、良いんです』

「……俺も、君が弟子で良かった。君の笑顔に俺は救われていた。こんな俺で良ければ、よろしく頼むよ」

君が傍にいてくれたから、俺は俺でいられた。


それでも、本当に大切なモノは失ってから気づく。

「《帝国に仇なす者に粛清を!》」

銃声が響く。俺は目の前で倒れ込む君を、見ているだけしかできなかった。


 俺は無自覚の内に浮かれていたのかもしれない。油断していたのかもしれない。

なぜ助けられなかったんだ。俺なら助けられたはずだ。

そんな後悔が一瞬で押し寄せる。

しかし、どんなに後悔しても取り戻す事はできない。


 ある人が言っていた。『どんなに辛くても、前を向いて歩いていくしかないのだよ。君にもいつか、その意味を知る時がくる』と。


 残念だが、俺は前を向いて歩くために剣を握る事はできないみたいだ。


「すまない──咲那。俺は敵を斬るよ。君はきっと喜ばない。それでも、俺は奴らを許せない」


俺は我を忘れ、近くにいた何人もの帝国兵を斬った。

悲鳴と怨嗟の声が入り交じる血の海。

気づけばそこは地獄絵図と化していた。


 一瞬、空が光った。そして辺りは無数の爆発に包まれた。


 最期に微かに声が聞こえた。

「やれやれ……帝国最強と謳われた剣士といえど、最新の兵器には劣るか。しかしこれで、皇帝の邪魔をする者はいなくなった」


その程度の事で彼女は命を奪われたのか。俺は生まれ変わったとしても、絶対に奴らを許さない。


──薄れゆく意識の中で何かが見える。これは俺の記憶か。


『ッ来るな! 妹にその剣を向けてみろ! 俺がお前たちの喉を掻き切ってやる!』


これが……走馬灯というものか。

滑稽だな。皮肉にも俺は奴らと同じだった。


罪を犯した者に神罰が下った。ただそれだけの事だ。

ただ、もし生まれ変わりというものがあるならば──

もう一度、彼女に会いたい。

次は師弟としてではなく、友人として

いや、もっと特別で大切な何かとして──


 ここは……どこだ?

「あ、起きた! 私たちの大切な赤ちゃん!」

赤子などどこに……

「ばぁぶ」

ん? 一体今、どこから声が……

俺はその時に気づいた。俺の()()()()()事に。

「そろそろご飯の時間だねー」

嘘……だろ…… 待て! 俺はこんなの望んでない!

俺は最強の剣士だ!

こんなの……屈辱だぁぁぁぁぁ!


こうして、俺の……いや、()()()()第二の人生が幕を開けた。俺だけが最悪の形で。

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