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第28話 頑張るぽよちゃん!

 ピンポーン。


「ん?」


 あれ、家のチャイムが鳴った。

 目銅佐(めどうさ)オーナーはさっき帰ったところだし、一体誰だろう。


「こんにちは~」

「あれ、どうしたの!」


 玄関を開けると、そこには美月ちゃんが。

 メッセージが返ってこないからまだ学校だと思っていたけど、今日は早く終わったみたいだ。


「あ、メッセージはわざわざ返してないんです!」

「そうなの?」

「はい! 『今から行く』って言ったら、やすひろさんすぐに『家の人が~』とか言うじゃないですかあ」

「ま、まあ」


 否定はできないけど。

 家の人もだし、彼女の炎上の心配もしている。


 幸い、ここは人目に付きにくい立地だし、彼女は帽子も被ってきているので、一応その辺の配慮はしているみたいだ。


「それで話ってなんだったんですか?」

「ああ、それはね──」


 お茶を出しながら、彼女への頼み事を話した。

 

 俺は目銅佐オーナーと話した結果、畑に植えた『ダンジョン(だね)』の水や肥料まで、全てをダンジョン産で固めたいと思った。

 その際、イチイチ運ぶのでは途方もないので、美月ちゃんの「ぽよちゃん」にお願いして、水や肥料を()いてもらえたらなーと思っている。


「ふむふむ、分かりました。良いですよ!」

「ありがとう! 助かるよ!」


 やったー!

 これで畑計画がまた一歩進む!


「でも条件があります」

「ん?」

「やすひろさん、何でも言う事を聞くって言いましたよね?」

「……あ~」


 そういえばさっき、テンションが上がってそんな旨のメッセージを送ったな。


「何してもらおうかなあ」

「え、ちょ、美月ちゃん?」


 美月ちゃんはニヤっとした顔を浮かべる。


 な、なに?

 おじさんちょっと怖い!


「じゃあ、今度のうちの文化祭に来てください!」

「……へ? 文化祭?」

 

 身構えていたものとは大きく異なった。

 所詮(しょせん)、男の妄想に過ぎなかったみたいだ。


「そうです! 今度開かれるんですよ! そこでわたしのクラスが一位になるために、どうか出し物に参加してくれませんか!」

「なるほど~」


 文化祭かあ。

 良い響きだなあ。


 俺の高校の時は……。

 陰キャだったので、そこで思い出すのをやめた。


「わかったよ。じゃあそういう約束で」

「やった!」

 

 こうして、俺たちは約束を結んだ。 







「で、早速ですね!」

「ごめんね。大丈夫だった?」

「大丈夫です! むしろ配信をつけてた方が、親も安心かと!」


 軽く話しながらやってきたのは『まあまあの密林』。

 図鑑で色々調べた結果、望みの魔物はここにいると見た。


「悪いなー、ぽよちゃん」

「ぽよよっ!」


 ううん、とぽよちゃんは首(?)を横に振る。

 本人も納得してくれたみたいだ。


 というか意外だったのが……


「ココア、そこ(・・)が気に入ったのか?」

「キュルルッ!」


 ココアとぽよちゃんがめっちゃ仲良しになった。

 ココアは今、ぽよちゃんの()に乗りながら、隠し持ってきた焼き栗をハムハムしている。


 でもそこに乗ってると……あ、ほら。

 ココアは焼き栗の食べかすをこぼした。


「こら、こぼしちゃいけないぞ」

「キュルゥ……」

「ぽよっ!」

「お?」


 だけど、ぽよちゃんはそれを生やした腕で吸収。


 ついでに、ふっくらと(ふく)らんだココアのお腹の上に食べかすを、ぽよちゃんが吸収してあげている。


「おお、これは……!」

「はわわわ……!」


 可愛すぎるだろ!

 なんだこの二匹!


 スライムの上にリスが乗ってる?

 こんなの、普通見れるものじゃないぞ!


「やすひろさん。わたしすでに満足です」

「俺も」


 ふぅと一息ついて、同時にはっと思い出した。

 お互い、本能がうずいたのだろう。


「「配信!」」


 これを共有してあげなければ。

 視聴者さんにもぜひ見せてほしい瞬間だ。


「こんばんは! 桜井美月だよっ!」


 後ろで美月ちゃんの配信が始まった。


 前は彼女の配信に二人とも映る形だったけど、俺のチャンネルも大きくなってきた。

 結果、両方の視点がほしいと要望が多数だったので、今日はどちらも配信をつける。


「こんばんは。『やすひろとモフモフ達』です!」


 新チャンネル名は『やすひろとモフモフ達』。

 いくつか考えたけど、結局これに収まった。

 

 だって、また増えるかもしれないじゃん?

 新たなモフが。

 

 その度に変えていたらキリがないので、今後はこのチャンネル名でいこうと思う。


「「今日はコラボです! ……はっ!」


 そして、次に美月ちゃんを紹介しようと思ったらまさかのセリフ被り。

 これはかなり恥ずかしい。


《お前らもう付き合え》

《お似合いじゃんww》

《カップルチャンネル作ろうぜ》

《やすひろー? そこ代わりなー?》

《美月ちゃんは渡さん!》

《やすひろさん……嘘だよね……》

《普段は某オーナーです。断じて許しません》


 コメントにはニヤニヤしたような人達から、ガチファンっぽい人達まで。

 最後のコメントは……いや、まさかな?


 そして、予想通り視聴者さんは後ろの二匹へ。


《え、見て見て!》

《ココアちゃんとぽよちゃんが!》

《かわいいー!》

《仲良しなの!?》

《はぁ‥…しんだ》

《癒しすぎるよお!》


「キュル?」

「ぽよ?」


 ココアとぽよちゃんが大好評みたいで良かった。

 ココアも最近家族になったのに、ちゃんと受け入れられて人気があるのは、素直に凄いなあと思う。


「では、進んで行きます!」


 その後、配信の概要(がいよう)を簡単に説明して奥へと進んだ。  

  




「ワフッ!」

「お、そっちなのか!」

「ワフー!」


 先導するのはフクマロ。

 四匹の中で最も鼻が良いからだ。

 今日狩る魔物はどれも“超レア魔物”だからな。


「あ、あれだ!」


 俺は図鑑を通して魔物を見る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

キレイフィッシュ

希少度:S

戦闘力:E


清涼な川にのみ住み着く、とことん綺麗好きな魚型魔物。

超レアな魔物である。


戦闘力はほとんど皆無で、攻撃しようと必死に繰り出した水の放射はとても美味しい。

その水はあらゆる植物・食物を健やかに育てる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 希少な魔物らしいが、すまない!


「ぽよちゃん!」

「ぽよー!」


 美月ちゃんの指示でぽよちゃんが動く。

 ぽよちゃんは張り切って飛び出すが……


「フィッシュー!」

「ぽよっ!?」


 華麗に逃げられてしまう。


「ムニャ」

「フィッシュゥ……」


 代わりに捕まえたのはモンブランだ。


 小猫のモンブランが見事に魚を(くわ)えて、ぽよちゃんの元へ。

 魚を咥えた姿はとてもよく似合っていた。


 ぽよちゃんがパクっと食べて能力をコピー。


 次!





「キュルー!」

「ココア! そっちか!」

「キュルッ!」


 普段から土に食べ物を隠しているココア。

 隠れるものに詳しいのか、ココアが活躍した。


「ドジョー!」

「お、本当にいた!」


 俺は確認の為、図鑑を開く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドジョジョ

希少度:S

戦闘力:D


土壌(どじょう)に潜って進むドジョウの魔物。

超レアな魔物である。


最高品質の土壌を好み、隠れて生きる不思議な魔物。

一説には、この魔物がその土壌を作るとも。

吐き出すのは体内で再構築された土壌であり、作物をとてもよく育てる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ぽよー!」


 今度は指示する間もなく、ぽよちゃんが飛び出していった。

 しかし、


「ドジョッ!」

「ぽよっ!?」


 土壌に再び潜ったドジョジョを捕まえられず。

 すぐに見失ってしまった。


「ワフ」

「ぽよぉ……」


 元気出せよ、と言わんばかりにドジョジョを捕まえて来たフクマロに、(なぐさ)められるぽよちゃんであった。

 能力は無事にコピー。


《ぽよちゃん元気出してー!》

《惜しかったよ!》

《可哀想だけどちょっと可愛い》

《分かるw》

《ぽよちゃんも成長してるよ》

《小さい子が頑張るの見てるみたい》


 視聴者は温かく見守ってくれた。


「こんなところでしょうか」

「そうだね」


 うちの最強種族三匹により、希少度がSのはずの魔物達は思ったより早く捕まえられた。


《チートすぎるww》

《なんだこれ》

《どっちも探索者人生で一回見るかどうかやろ》

《希少度の感覚バグるってw》

《強すぎて草》

《やっぱ犬猫よ》

《ココアも活躍して嬉しい!》


 正直、俺も驚いた。

 今日はさらに最強種族の片鱗を見せてもらった。


「「お疲れさまでした!」」


 今日の配信も大成功で終了!





 俺の家に帰り、最後の一仕事。


「ぽよちゃん。お願いね」

「君にかかってるぞ~」

「ぽよー!」


 美月ちゃんと俺が()でると、ぽよちゃんは期待されるのが嬉しそうに声を上げた。

 いくら三匹が強くても、ぽよちゃんがいなければ今回の件は成立しない。


「ワフ」

「ムニャ」

「キュル」


 それは三匹も理解しているだろう。

 満を辞して、ぽよちゃんはコピーした能力を発揮する。


「ぽよぉぉぉ、ぽよー!」


 まずはドジョジョの土壌。

 作物を育たせる最高品質の土壌を吐き出した。


「すげえ。もう色から違うな!」

「ぽよちゃんすごいよ!」

「ぽよっ!」


 次に、キレイフィッシュの清涼水。

 爽やかなのに栄養素がふんだんに含まれており、植物・食物を育てるのにとても役に立つという。

 ちなみに、さっき飲んだらまじで美味しかった。


「ぽよー!」

「おお……!」

「すごーい!」


 ぽよちゃんが()(じょう)に放出した水は、夕日に照らされて綺麗な虹を作る。


 家ではまず見られない幻想的な風景だ。

 ダンジョンがあるファンタジーな世界でこそだ。


「ぽよっ!」

「ぽよちゃん! えらいよー!」

「本当に助かった!」

「ぽよよぉ……!」


 美月ちゃんがぽよちゃんを抱き上げ、俺も一緒に()でてあげる。

 これまでで一番といっていいほど活躍したぽよちゃんは、すごく笑顔だ。


「美月ちゃんも本当にありがとう」

「いえ! では、文化祭の件もよろしくお願いしますね!」

「もちろん!」


 こうして、ダンジョン産の水と肥料を得た畑。

 土に潜む『ダンジョン(だね)』も大きく成長してくれるだろう。







 翌朝。


「んー?」


 何やら外が騒がしい。


「ワフ! ワフ!」

「ニャニャニャー!」

「キュルゥ!」


 なんだ、珍しいな。

 普段はおとなしい三匹が元気に鳴いている。


「一体何が……って、えええ!?」


 俺の部屋は二階。

 ガラっと畑側の窓を開けた先。


「嘘……だろ!?」


 俺は思わず見上げた(・・・・)

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