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金色の絨毯敷きつめられる頃  作者: 弍口 いく
第9章 傀儡
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その6

「で、こいつはどうするんや?」

 那由他なゆたは、しおらしく正座している偶仙道ぐせんどうを見下ろした。

 今にも泣き出しそうな情けない顔を晒しているが、どうも胡散臭い。


 その時、ザーザーとなにかを引き摺るような怪しい音が聞こえていた。

「なんだ?」

 見ると土小山が波のように盛り上がりながら押し寄せている。

 たちまち偶仙道の周囲に集結した。

「やっと戻ったか、我が分身たちよ」

 偶仙道はガラリと表情を変え、不敵な笑みを浮かべた。


 土の小山はあっという間に偶仙道に吸収され、餅のように白かった体が土色に変化し、同時に巨大化していった。10メートルを超す巨大な人型になった偶仙道が、大岩のような拳を振り下ろした。

 同時に飛び退く那由他と珠蓮じゅれん

 拳は地面に激突し、めり込んだ。


「コイツ! こんな隠し玉持ってたなんて!」

「これが本性なんやろ」

 偶仙道は次に大きな足を上げた。

 珠蓮は鬼の姿に変化した。眼は赤く煌めき、両手はたちまち黒い毛で覆われ、爪は刃と化した。そしてジャンプいちばん偶仙道の顔面に蹴りを入れた。


「グワッ!」

 顔面が崩れてうめき声を上げながらのけ反ったが、顔はすぐに再生した。

 一瞬、怯んだ珠蓮だが、今度は腕に鋭い爪を立てて、根元からもぎ落とした。

 地面に落ちて土に返った腕は、再び偶仙道の足元から吸収され、程なく腕は再生された。


「きりがない」

 いったん木の上に避難した珠蓮は、横で見ている那由他にぼやいた。

「心臓潰さな」

「どこにあるんだよ、そんなもの」

「見えへんなぁ、あんなに巨大化してしもたら」

 他人事のように腕組みして見ている那由他。

 偶仙道は二人がいる木をなぎ倒した。


 珠蓮は地面に転がり、那由他は消えた。

「一人で逃げるなよ!」

 偶仙道の大きな足が珠蓮に迫り、転がりながらかろうじて避ける。


 その時、二つ目の太陽が上空に出現した。

「なんだ?」

 珠蓮は強烈な輝きに目を細めたが、偶仙道の巨体に隠された。


 次の瞬間、火の弾が偶仙道の胴体を貫いて噴出した。

 爆発!

 偶仙道の巨体が木っ端微塵に砕け散った。


 破片がバラバラと珠蓮の上に降り注いだ。

 不快感に顔を歪めながら、珠蓮はなにが起きたのか見極めようとした。

 砕けた偶仙道が再生する気配はなく、土に返っていた。


 そして、そこには炎々と燃え盛る炎を翼いっぱいに湛えた火の鳥がいた。

「火の鳥って、ほんとにいるんだ」


 あんぐりと口を開けたままの珠蓮に気付いた琥珀こはくは、人間の姿に変化した。

「琥珀ぅ~、エエとこに来てくれたやん」

「琥珀?」

 馴れ馴れしい那由他を見て珠蓮は眉をひそめた。

「蓮は初めて会うんやったっけ?」


 琥珀は人懐こい笑みを向けた。

「あなたが鬼の珠蓮? 聞いてたより弱いやん」

 小バカにしたような琥珀の言葉に珠蓮はカチンときた。

「なんだよコイツは!」

「セリーナの涙って魔石の力で生きているインコや」

「インコって……?」


「それより、なんでこんなとこにいんの?」

 まだ聞き足りない珠蓮をサラリとかわして琥珀に向き直った。

理煌りおと一緒にノッコちゃんのお墓参りについて来たんやけど、自然に誘われてつい散歩」

「ノッコも来てるんか?」


 那由他は不安そうに琥珀が飛んできた方向に心を馳せた。


   つづく


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