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金色の絨毯敷きつめられる頃  作者: 弍口 いく
第8章 青狼

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その6

 黒い影が移動した人狼たちの体は全て砂になり、衣服だけが残った。

かすみぃ~~」

 それを見た真琴が呆れたような、叱るような声を上げた。


 すると黒い影は停止し、浮かび上がると共に空中で白い光となった。

 眩さに結音と乃武が目を細めた瞬間、光の中から淡いブルーの着物を着た美しい女性が現れた。


「おや、ここにも狼が残っているではないか、食っていいか?」

 霞はすまし顔で言った。

「アカン!」

 真琴が結音を庇って、目の前に立った。

「残念だ、人狼より生粋の狼の方が美味いのに」


「霞さん、お久しぶりです!」

 澄がすり寄った。

「おお、久しいのぉ、元気にしておったか」

 満腹でご機嫌な霞。


「なによ、コイツは!」

 今にも飛び掛かかりそうな勢いの結音を、一目で力関係を察した乃武が止めた。


「生意気な奴だな、食っていいか?」

「アカンって言うてるやろ」

 牙を剥いている結音に、

「お前が敵う相手じゃない」

 乃武がたしなめた。


「なにしに来たんや?」

 真琴が尋ねた。

貉婆むじなばあがご馳走にありつけると教えてくれたのでな」

 いつの間にか貉婆も現れていた。

 もぎ取って来たのか、人狼の足を手にしたまま真琴に笑顔を向けた。

「久しぶりやな、真琴」

 気味悪い光景に苦笑いするしかない真琴。


「霞様、本堂前にまだぎょうさん転がってますで」

「そうか、持ち帰るとするか」

「アンタらなぁ……」


「エエやないか、置いといても始末に困るやろ」

 重賢は目じりを下げた。

「全部お持ち帰りしてや」

「おおきに」

 貉婆はお辞儀をすると、いそいそと本堂へ引き返した。


 異様な光景に唖然と目を丸くしている未空。

「ここは化け物屋敷なの?」

「失礼な奴だな、何者だ? ん? どこかで会ったような」

 霞は未空の顔を覗き込んだ。

「会ってないわよ!」


「この寺には守り神がついているんですね」

 乃武が霞を見て言った。

 重賢は苦笑した。

「ちょっと凶暴やけどなぁ」


「来るんやったら、もうちょっとよ来てくれたらよかったのに」

 澄は馴れ馴れしく霞を肘でつついた。

「こんな雑魚、わたしが出ることもないだろ、澄も腕を上げたと聞いておるぞ」

「けど、ボスを逃がしてしもた」

「真琴もいながら情けないのぉ」

「ほっといて」


「けど、なぜ襲われたのだ? こんな古寺」

「そうや、なんでやろ?」

「もしかしたら、ここにありませんか? 結界破りの五鈷鈴ごこりん

 乃武の言葉に、真琴は思い当たることがあった。


「そう言えば、男が本堂にあった五鈷鈴を持って行ったけど、あれか?」

 真琴は夏惟が手にしたのを見ていたが、そんな力がある代物とは思っていなかった。

「五鈷鈴を盗まれたんか! えらいこっちゃ」


「そんな大事なもんやったら、ちゃんと隠しとかなアカンやん」

「油断したな、物の怪にはさわれへんもんやし、まさかと……」

 重賢はバツ悪そうに禿げ頭を掻いた。


「だから人間と手を組んだんだな」

「なんのために盗んだのかしら?」

 結音の疑問に答えるべく、乃武は腕組みして考え込んだ。

「凌生はしきりに伝説の指輪のことを知りたがっていたけど……まさかそれを奪うために、まやかしの障壁を破って大神本家を襲うつもりなんだろうか?」

「長老が持ってるあの指輪? でも、ただの伝説で力なんかないんじゃないの?」


青狼せいろうはもう、あの指輪を使いこなせんのだな」

 霞が言った。


「長老をご存じで?」

「ああ、最後に会ったのは1200年前だが」

「あなたいくつなの?」

 結音は驚きの目を向けた。


 霞は結音を横目で睨みながら、

「狼族の寿命は千年程だったな、青狼も昔のような力がないのは無理なかろう」

「指輪の伝説は」


「まことだ、それを手にしたものは、すべての狼族の妖力を集めることが出来る優れものだ」


   つづく


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