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金色の絨毯敷きつめられる頃  作者: 弍口 いく
第4章 反魂香

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その8

「真琴ちゃん!」

 そこへ新と珠蓮が駆け込んだ。


「無事やったんや、良かったぁ」

 新は真琴に抱きついた。

「まあ、今は女の姿やし許すけど……」

 真琴は冷ややかに見下ろした。


「この人があのエクトプラズムを出した霊媒師?」

 新は倒れている女性に気付いた。

「ただのおばさんや、たまたま霊感が強かったし、反魂香はんごんこうで呼び出した娘の魂を幽物質に出来たんやろう」

 真琴はそう言いながら母親の遺体に目をやった。彼女を捕らえていた蜘蛛の糸は消えていた。


「真琴がったんか?」

「まさか、この人はただの人間やで、殺せるわけないやん、死んだ娘に会いたい一心で拝み続けて衰弱死したんやろ」

「初華って子もなんで自殺なんかしたんや、こんなに愛されてたのに」


「アンタらが娘の魂をこの人の体に押し戻したん?」

「あたしがな」

 突然、真琴の横に現れた那由他が言った。

「近いっ」


「なに言ってんだ、重賢の灰のおかげだろ」

「持ってきたのはあたしや」

 珠蓮はフォトフレームに気付いた。

「これが初華?」 

 幸せそうに笑っている写真の初華は、美人ではないもののブスと言われるほど醜い容姿ではなかった。


「どんなに醜いのかと思ったら、そうでもないじゃん」

「えっ?」

「その子、ブスって毎日言われて、イジメられてたらしい」

 珠蓮は寂しそうに目を伏せた。

「酷い話だ、自殺するまで追い詰めるなんて……」

「人間は残酷な生き物ってことや」

 那由他は腕組みしながら偉そうに写真を見下ろした。


「帰ろか」

 真琴は乱れた髪を櫛でとかしながら言った。

「この人は? このまま置いて行くの?」

 新は言ったが、

「しゃんーないやん、あとで匿名通報しとくわ」

「ちゃんと供養してもらえるかな」


「誰もこの人が今回の事件に関わってたなんて思わへん、娘を亡くした悲しみのあまり衰弱死した可哀そうなお母さんや」

「そうやな」

「羅刹姫に魂を食べられへんかっただけでも良かったわ、ちゃんと成仏できるやろ」

 真琴の言葉に、

「羅刹姫!」

 新が食いついた。


「ここにいたんか!」

 必死の形相で真琴に迫った。

「もうちょっとで退治できたんやけどな、逃がしてしもた」

「そんなぁ」


「糸を引いていたのはアイツだったのか」

 珠蓮が目を吊り上げた。

「相変わらず手の込んだゲームが好きやな」

 と那由他は呆れ顔。

「ゲーム?」

「羅刹姫にとって、こんなことは退屈しのぎのゲームやねん、長く生き過ぎて暇を持て余してるんやろ」

「許せん奴やな」

「ああ、いつか始末してやる」


「頼むで珠蓮~」

 新は涙目で珠蓮の腕にすがりついた。


   つづく

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