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金色の絨毯敷きつめられる頃  作者: 弍口 いく
第11章 沫雪

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その5

「先週は一週間丸々休んでたらしいで、体調不良って届けやったけど、ほんまの理由はペットロスらしいわ、愛犬が交通事故で死んだんやて」

 情報通の本間咲子は、華埜子のリクエストに応えて、さっそく聞きこんできた。


 一年の時は片鱗すら見せなかった美絢が、突然、妙な能力ちからに目覚めたのには訳があるはずだ。当然、元々秘めていたのだろうが、覚醒の仕方が悪い。自覚のないまま人を傷つけるなんて……。

 華埜子はまた鬼に噛まれていた宮田千幸のことを思い出していた。

 彼女は助けられなかったが、今度は……。


「今日から登校してるけど、ゲッソリしてて声もかけられへんって……、確かにペットは家族やけどなぁ、ちょっと大袈裟過ぎひんかなって、クラスの子も引いてたわ」

 愛犬の死が引き金か。


「けど、なんで戸部のことが気になんの?」

「昨日、見かけたんやけど、様子が変やったし」

「ノッコが気にすることないわ、ただ、時間が必要なんやで」

「そうやな」


 咲子が去った後、入れ替わりに真琴が近づいた。

「ペットロスがきっかけやったんか」

「あの距離からちゃんと聞こえたんや、さすが……」

 猫は聴力も優れている。

「交通事故って、もしかしたら加害者に復讐したんかな」

「昨日襲われた二人が、犯人やったんかなぁ」

「今朝、ニュースで見たけど、二人とも亡くなったって」

「そしたら、復讐は終わり?」

「なら、エエけど」

 真琴は昨日のことを思い出していた。制服警官を見た時、美絢の目はあきらかに変わった。


「霞が止めへんかったら、続きがあったんちゃうかな」

「まだターゲットはいるってこと?」

 華埜子は不安そうに眉を寄せた。

「わからんけど……、で、れんはちゃんと見張ってるんやろな」

「抜かりないと思うで、羅刹姫に狙われてるってうたら、目の色変えてたもん」

 華埜子は珠蓮じゅれんが羅刹姫を追っていることを思い出し、美絢が羅刹姫に狙われていると告げた。


「けど、いつも逃げられてるしなぁ」

 真琴は不信感をあらわにしたが、華埜子は呑気に、

「逃げられてもエエんや、戸部さんに近付けへんかったら」

「ま、鬼がうろついていたら躊躇するやろうけど……、学校にも来てるんやろか」

「たぶん、どっかに潜んでるやろ」

「蓮の奴、見つかって変質者と間違えられへんかったらエエけど」



   *   *   *



 その頃、珠蓮は学校にいなかった。


 もちろん、昨夜からずっと美絢を見張っており、朝、登校した彼女を追って学校へ来た。姿を見られないよう最新の注意を払いながら、校内に潜んでいた。

 が、そこで羅刹姫を見つけた。やはり、美絢を狙っている。


 羅刹姫の方もほぼ同時に鬼の妖気を察知して、珠蓮が牙を剥く前に、その場を離れた。

 当然、珠蓮は彼女を追った。逃げ足が速いのは承知、見失わないよう全力で追跡した。学校を出て住宅街に入る。細い路地に逃げ込む人影を見て後に続いた。


「えっ?」

 路地に入った途端、足元の地面が消えた。


 落とし穴にはまったように落下する珠蓮、手を伸ばすが宙を探るばかりでなにも掴めない、それに長い……。どこまで落ちるんだ? と思っているとようやく底に到達したようで、背中がネットのようなモノに引っ掛かった感覚で、落下は終わった。

 落下の長さから強い衝撃を覚悟していた珠蓮は、少し拍子抜けしたが、

「なんだ?」

 痛みはないのに起き上がれない。


 そこは深い霧に包まれていた。

 そして、張り巡らされた大きな蜘蛛の巣に珠蓮は引っ掛かっていた。

 糸の粘着が珠蓮の身体を拘束していたのだ。


   つづく


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