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金色の絨毯敷きつめられる頃  作者: 弍口 いく
番外編 鱗粉が煌めくとき

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中編 なにも感じないのは楽なこと

 翌朝、教室で綾小路と顔を合わせたが、彼女は見向きもせずに完全に無視された。俺の正体を知り、関わり合わないほうがいいと思っているのだろう。でも、あからさまにシカトされるのも気分がいいものではない。


「お前、昨日はどこ行ったんや、午後からいーひんかったやろ」

 そして、待ち構えていたように例の三人組に絡まれた。

 勘弁してくれよな、昨日は初めての掃除で疲れ果ててるんだから。うっ……思い出したら気分が悪くなる。


 以前、父さんを手伝ったことはあるが、俺にはまだ刺激が強すぎると気遣ったのか、遺体が融けていくさまは見せられなかった。しかし、昨日は俺一人で処理した。茶和さんには見せらせないから頑張ったんだ。何度戻しそうになったか。でも、ちゃんとやり遂げたんだ。


「生意気やで、俺らに断りもなくサボりやがって」

 なんでお前らにお伺い立てなきゃならないんだよ。騒ぎにならないように茶和さんが担任に連絡してくれたし、サボりじゃない

 俺がいないとそんなに寂しいか?


「あんたら、エエかげんにしときや、また望月くんに絡んで」

 今朝は日野が割って入ってきた。彼女だけはその他大勢とは違いいつも見て見ぬふりはしない、クラス委員である使命感を振りかざしていじめっ子に立ち向かう。


「ただのコミュニケーションやん」

「嫌がってるやん、このクラスでイジメは許さへんで」

 でも、女に庇われても嬉しくないんだけど……。

 こんな奴らのイジメなんかなんとも思っちゃいないさ、そんなヤワじゃない。だって俺は特別な人間なんだ、こいつらとは次元が違うんだから。


「イジメちゃうやんな」

 持田がいつものように俺の頭を小突いた。

「仲良うしてるやんな」

 田内と加山が馴れ馴れしく左右から俺の肩に腕を回す。だからぁ、暑苦しいんだよ!

 うんざりした俺はいつもより強く経絡を突いた。後で腰砕けになるといい。


「やめときってうてるやろ」

 日野が語気厳しく睨みを効かせた。

「ちぇっ」

 三人は渋々俺から離れた。

「望月も、ちゃんと嫌やって言わなアカンで」

 大きなお世話だ。


「ほら、席に戻り、もう授業が始まるで」

 奴らにとって、正義感溢れるクラス委員は面倒臭い奴なんだろう。逆らったら厄介なことになるのはわかっているようだ。

 三人は渋々自分の席に戻ろうとした。


 その時、


 ガタン!

 派手に机を倒して、持田が倒れ込んだ。経絡を突いた効果が意外と早く現れたようだ。何も知らない田内が床に転がった持田を呆れたように見下ろした。お前もすぐに腰砕けになるぞ。


「なにしてんにゃ……」

 言いかけて、飛びのくように身を引いた。

 その表情は驚きというより恐怖が浮かんでいた。


 床に転がった持田は……。

 前身が痙攣して手足は不自然に曲がっている。白目をむき、酸欠の金魚のようにパクパク開けた口からは言葉は出ずに不気味なうめき声が漏れた。

 その顔は拷問でも受けたような恐怖と苦痛に歪んでいった。


 これは、当て身の効果じゃない、別の問題が発生している。まさか……。


 持田はさらにもがき苦しんで転がり、周囲の机や椅子にぶつかった。

「ちょっとぉ、ふざけすぎやで」

 加山も苦笑しながら見下ろしたが、次の瞬間。


 加山も倒れ込んだ。

 続いて田内も。


「なにやってんの、三人とも、ほんまエエかげんにしいや!」

 日野も倒れた三人を見下ろしたが、

「え……」

 これほど変形するのかと思うほどいびつな顔は、見た者を恐怖に陥れた。尋常ではない。

 日野は凍り付いた。


 最初に倒れた持田は痙攣が止み、醜く変形した表情のまま硬直していた。

「も、持田?」

 日野は持田に手を伸ばしたが、その時、

「ダメ!」

 綾小路がその手を掴んで止めた。


「動かさないほうがいいと思う」

「そ、そうね、先生を呼んでくるわ」

 日野は青ざめながら慌ただしく教室を出て行った。


 クラスメートたちが倒れた三人を取り囲んで集まったが、異様な姿に、抱き起そうとする者はなかった。俺は遠目にもすでに息絶えていると確信した。

 そして、彼らの体にキラキラ光る粉のようなモノが付着していた。


 不気味な光が綾小路にも見えたのだろうか? だから日野が触れるのを止めたのだろうか?

 その輝きはすぐに失われ、消え去った。


 教室内はパニック、三人の生徒が倒れ――おそらく死んでいるだろう――それだけではなく、体調不良を訴える生徒が数人、原因は3人の異様な死にざまを目の当たりにしたせいか、それとももう消えてしまったが、光る粉の影響を受けたか。


 その後は学校中が大騒ぎになった。

 三人の死亡はすぐに確認されたようで、原因を調査するため、警察や消防が雪崩れ込んだ。


 学校は臨時休校となった。



   *   *   *



 俺は真っ直ぐ望月本家へ向かった。

 茶和さんが行っているはずなので、心配になったからだ。


「また派手にやらかしたわね」

 気配もなく俺に並びかけた綾小路が言った。

 真っ直ぐ前を向き、視線は合わせないが、その横顔は美しかった。


 おっとぉ、見とれてる場合じゃない。

「俺がやったと思ってんのか?」

「違う?」

「俺がやるんなら人知れず始末する、公衆の面前でやるわけないやろ、俺が本気出したら、あんな奴ら相手にもならへん、けど、忍びたるもの決して目立ったらアカンしな」

「違う意味で目立ってるわよ、変に浮いてるし」

「やんやて!」

 そんなふうに見えてたなんて……。


「ま、しゃーないか、俺は一般人とはちゃうしな、どうやったってオーラは隠しきれへん」

「忍びに生まれたから?」

「ただの忍びで終わるとは思ってへん、俺はこの国を闇から支配するフィクサーになる器なんやから」

 そうさ、俺は特別な人間なんだ。


「さっきの騒ぎ、あなたの仕業じゃないとしたら、あなたが狙われたんじゃないの?」

 綾小路は俺の話をスルーして、冷ややかに話題を戻した。バカにしてるのか? そんなの夢物語、まともに聞く気にもなれないってのか? まあいい、今に見てるといい。


「お前にも見えたか」

「毒の粉のこと?」

「昨日ここで襲った奴かな? 忍びも地に落ちたもんやな、なりふり構わず一般人を巻き込むなんて」


「あれは忍びの仕業じゃないわよ」

「えっ?」

「あの毒の粉、人間が作り出したものじゃないもの」

「人間(ちご)たら、なんやて言うんや、お前、なんか知ってるんか」

 綾小路は答えず、俺の瞳の中を探るように覗き込んだ。

 なんなんだよ、コイツは!


「なんで俺につきまとうんや?」

「行こうとしてる場所が同じなだけよ」

「同じって、俺は望月本家へ行くんだぞ」

「あたしもよ」

「まさか、屋上で言ってた忍者の知り合いって、望月本家にいるんか?」

「望月悟志氏に会うのよ」

 悟志はかしらの息子で望月家の重鎮だ、父さんの又従兄弟にあたる。父さんと年が近く懇意にしていたので、俺も可愛がってもらっている。


「悟志さんになんの用や」

「用があるのは先方よ」

 綾小路はスタスタと先を行った。


 悟志の用事ってなんだろう? 外部の者を屋敷に招くなんて聞いたことがない。

 なんか嫌な予感がする。

 俺が知らないところでなにかが起きているのか?

 不安が広がり、膝が震えた。





 望月本家に到着した俺は、大きな門を見上げて心を落ち着けるため深呼吸した。

 年季が入った屋根付きの和風門はその奥にある豪邸を隠している、いつ来てもここに立つと妙に緊張してしまう。


 綾小路は脇戸を開けた。

「ちょっとぉ」

 インターフォン押すだろ、普通は! でも、鍵がかかってなかった?


 俺が止める間もなく、綾小路はさっさと脇戸をくぐった。

 とたん、いつもとは違う空気が俺を包んだ。そびえたつ母屋は威圧感満載だが、それとは異なる圧迫感。


 その時、門から母屋へと続く石畳を、ヨロヨロと歩いて来る女性の姿に気付いた。知っている顔だ。

 長い髪を振り乱し、顔は土色で血の気はなく苦痛に歪んでいた。

 ガクリと膝が崩れて歩みが止まった。

 乱れた長い髪が顔にかかって不気味さを増幅させる、なにか言いたげに口をパクパクさせるが声は出ない。救いを求めて伸ばした手は、虚しく力を失って地面に落ちた。


 とたん、たちまち全身が干からびて、水分を失った体が脆く崩れ、形を保てなくなり砕け散った。

 洋服だけを残して砂のようになり、地面と同化した。


 人間の体が砂のようになって崩れるなんて……。

 俺が茫然とその光景を見ている間に、綾小路はさっさと奥へ進んだ。


 どういう神経してるんだ?

 たった今、目の前で人間が砂になって消えたんだぞ? この異常事態に動じないなんて!


 綾小路に続いて開けっ放しになっていた玄関を入ると、そこにも倒れている人がいた。

 長い廊下の先にも男性が倒れていた。

 男性と思ったのは残された服装からだ、身体の方は跡形もなく崩れていたから、誰だかわからなかった。しかし、この中にいるってことは望月の人間、元は俺が知っている人だろう。


 簡単に賊の侵入を許すなんて、厳重なはずの防御システムも案外脆いものだ。


 綾小路は止める間もなく靴のまま玄関をあがった。

 しかし、この屋敷は!

 綾小路は気配を敏感に感じて身を引いた。


 シュッ!

 壁から槍が飛び出し、反対側の壁に突き刺さった。

 一瞬遅れていれば、串刺しになっていただろう。


「からくり屋敷か?」

 綾小路は眉をひそめた。

「当たり前や、忍者屋敷なんやしな、いたるところに侵入者防止の仕掛けが施してあるんや」

「けど、簡単に侵入されたみたいね、それに」


 彼女は宙を見た。室内には光る粉が浮遊していた。俺には影響がないので、気にも留めなかったが。

「毒で全滅させられたかも」

「けど、この家にいるのはみんな忍びや、修行で毒に耐性をつけてるんやで」

 そうさ、一般人の持田たちとは違う。現に俺には効いていないし、綾小路だって平気じゃないか。

「だから、ふつうの毒じゃないって言ってるでしょ」

「さっきも言うてな、人間が作り出したものじゃないって、人間違ちごたらなにが作ったんや」


 その時、いきなり綾小路に突き飛ばされた。

「いてっ!」

 床に思い切り顔をぶつけた俺は、すぐ頭を上げようとしたが、隣で伏せている綾小路に押さえつけられた。

 なんなんだよ!

 と訳がわからず怒りさえ覚えていた俺だったが、目の端に入った光景を見て、そのわけがわかった。


 無数の太い針のようなものが壁に突き刺さっていた。

 こんな仕掛けあったっけ?


 どこから発射されているのかわからなかったが、それは機関銃のように、続けざま綾小路に襲いかかった。

 この狭い廊下、今度は逃げる場所などない。


 どうするんだ?

 と思っていると、綾小路は素早く立ち上がり、右手をかざした。

 すると、まるでバリアでも張ったように太い針の束が弾き飛んだ。

 屋上で男を吹っ飛ばしたように……、どんな術なんだ?


 弾かれた太い針は勢いそのままに廊下の壁をぶち抜いた。


 唖然と見ていた俺の手を引っ張って、綾小路はポッカリ空いた壁の穴から室内に逃れた。

 あれぇ~~っと思ってる間に、俺は綾小路と共に奥へと逃れた。


 俺たちはさらに奥へと進んだ。


 広い屋敷、どの部屋にも人影はなく不気味な静寂に包まれていた。

 部屋中に鱗粉が煌めき、脱ぎ捨てられたように洋服だけが畳の上に残されている。小さな子供の服も……。


 俺は前を行く綾小路の背中を見た。

 彼女の表情は窺えなかったが、洋服の残骸がなにを意味しているのかわかっているはず、なのに、そんなもの見えないかのように無視して進んだ。


 この屋敷には数世帯が同居していた。女性や子供もいたんだ。

 みんな砂になったのか? 誰も残っていないのか?


 しかし、不思議となにも感じなかった。

 俺が知っている人たちのなれの果てを見て、驚きはあっても、悲しみとか痛みはといった感情はこみ上げない。

 俺ってこんなにドライだったったけ? それとも驚きのあまり感覚が麻痺してしまっているのか?


 でも、なにも感じないって、こんなに楽なことだったんだ。

 いつも学校で三バカ野郎に付きまとわれて嫌な思いをしていたけど、なにも感じなければ嫌だという感情も湧いてこなかっただろう。クラス委員の日野に庇われても、惨めな思いなんてしなかったかも知れない。そうさ、物事に一喜一憂しなければ、こんなに楽なんだ。


 実の母に捨てられたときの痛みも感じずに済んだかも知れなかったんだ。

 いつの頃からか、両親は喧嘩が絶えなくなった。酷い罵りあい、母のヒステリックなキンキン声、耳をふさいでも眠れない日々……、あの頃に気付いていたら、苦しまずにすんでいたのに。


 原因の一端は俺にあったのは気付いていた。

 俺は勉強もそこそこ、運動神経も常人並み、取り立てて特技と言えるものはなかった。将来忍びとしてやっていけるか母は不安に思っていて、将来は望月から離れて普通の人間として生きた方がいいと思っていたようだ。

 しかし、父は聞く耳を持たなかった。


 優秀な忍びである父は、息子にも同じ才能を求めた。そんなものどこにもないとわかっていながら……。

 俺は父の期待に応えようと、一生懸命頑張ってきたんだ。父さんの血を引いているんだ、いつか眠っている才能が開花するはずだと信じて。


 でもそれは儚い夢だと気付いていた、自分のことだもの、いくら頑張っても報われない努力ってあるものだと思い知らされていた。

 そんな俺の苦悩を見るのが、母は耐えられなかったのかも知れない。俺に厳しすぎる父を許せなかったのかも知れない。


 それならなぜ一人で出て行ったんだ?

 なぜ俺を連れて行ってくれなかったんだ?


 そんなことを考えてる間に、俺たちはいちばん奥の間まで進んだ。

 俺はそこでさらに異様な光景を目にした。


 そこはかしらが配下を集めて会議を開く広間だった。30畳以上はある大広間だ、そこが繭のようなもので埋めつくされている。豪華な襖絵も屏風も覆われ、まるで巣のようになっている。


 そして、その中に、頭の顔を見つけた。

 顔だけ出して体は繭に囚われている。まだ生きているようで、額には大粒の汗、顔は苦痛に歪んでいた。


「これは、いったい……」

 どうなってるんだ?


「妖怪の仕業だ」

 そう言いながら唐突に現れたのは……悟志さん?

 すぐに確認できなかったのは、彼がたいそうな防護服に身を包んでいたからだ。顔もハッキリ見えなかったが、声には覚えがある。


「なんでそんな恰好を?」

「決まってるだろ、毒の鱗粉から身を守るためだ、蛾の妖怪の」

「なんだ、正体はわかってたのね」

 綾小路が言った。

「君が綾小路流風さんか、よく来てくれた、俺が望月悟志だ」

「来るのが少し遅かったようね」

「こんなに早く襲撃されるとは思わなかった、俺たちが油断したんだ」


 悟志は短刀で頭を拘束している繭の糸を切ろうとしたが、糸はネバネバしてるしゴムみたいに伸びるし、簡単に切れそうにない。

 綾小路が悟志を押し退けて手をかざした。

 すると繭の糸がほどけて、頭は床に落ちた。


「酷い……」

 頭の皮膚はただれ、瀕死の状態だ。

 繭からは解放されたものの、他に手の施しようもなく悟志は辛そうに頭を見下ろすだけしかできなかった。


「お前の父親、霧矢が妖怪に取り込まれていると知った時、いずれ本家にも来ると危惧していた。しかし、こんなに早く、堂々と乗り込んでくるとは思わなかった、知之の奴が先走って一人で行って刺激したせいだろうな」

 悟志は俺に厳しい目を向けた。

「どういう意味だ?」

「お前の父親は、茶和の妖気に当てられて正気を失っていったんだ、」

「なにを言ってるんだ……」


「茶和は妖怪だ」

「バカなことを!」

「最近の霧矢は忍びの技を忘れての惨殺、まるで殺しそのものを楽しんでいるようだった。暗殺とは誰にも知られず秘かに遂行するもの、事故死か病死に見せかけなければならないのは知ってるだろ、そんなことでは信用を失う。かしらがいくら諫めても、蛮行はエスカレートするばかりだった。損傷の激しい遺体を放置するわけにもいかず、後始末するのに我らは幾度骨を折ったか」


「父さんがそんなことをするはずない! 忍びとしても暗殺者としても一流の腕を持っていたんだ」

「霧矢はもう霧矢ではなかったんだ、妖怪に心まで支配されて人の心を失くしていた。だから仕方なく排除を決めたんだ」

「そんな!」


「残念だよ、彼に罪はないのはわかっていたが」

「仲間なのに、殺したのか!」

「もう霧矢ではなくなっていたからだ!」

 語気を強めた悟志の手には短刀が握られていた。


「俺も殺すんか? 父さんみたいに」

 殺気に満ちた眼は本気だ。

 幼い頃から可愛がっていた俺を、殺せるのか? そうなんだ、それが忍びなんだ。

 俺はまた恐怖に足が竦んだ。

「お前もすでに妖怪に取り込まれているだろ」

「俺は!」


「待って」

 綾小路が悟志の手を止めた。

 これ幸いと、俺は綾小路の背中に隠れた。

「俺は正気を失ってなんかいない、俺はなにも知らんかったんや」

 ここまで一緒にいたんだ、疑っていないと思っていたのだが……。


「もういいわ、いつまで惚けるつもりなの?」

 綾小路は冷ややかな目で振り返った。


「教室でこの毒を撒いたのはあなたでしょ、いつもイジメてる鬱陶しい奴らを始末したんでしょ」

「な、なんやて……」

 なにもかも見透かしたような瞳には軽蔑の色が浮かんでいた。


 そうか……、バレてたのか。


「そう思ってたんやったら、なんでさっき追及しいひんかったんや」

「責め立てて逃げられたら困るから、あなたはその妖怪に気に入られてるようだから、きっと取り返しにくる」

「俺は人質か?」

 なめられもんだ。


「いつから気付いてたんや?」

「転校してきてすぐに、あなたのそばに妖怪がいるって」

「お前、いったい何者なんや?」


 俺自身、長い間気付かなかったのに……。

 そう、俺は妖怪と一緒に生活していた。

 それを知ったのは昨日のことだ。


 昨日、茶和さんを殺しに来た知之を返り討ちにした彼女に教えてもらった。


   つづく


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