表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/103

深月織様のイラストに感謝を込めて。

美麗なイラストはあの深月織さまの手によるものです。

頂いた時はマジですかと思いました。だって深月さまですよ?

そして見てください!この麗しさ、さくらの文では髪と目の描写程度なのですが・・・絵師様って凄い。さくらの想像の中のチヒロだったりオウランだったりセイラン様にリシャール様なんです・・・!本当に感謝いたします。ありがとうございました。で、アレから時間がたってしまいましたが漸く小話で返せます。

ま、間違いなく、イラストに負けておりますがね・・・。

挿絵(By みてみん)



 土の国の中央神殿は、太陽と月の巫女姫を祭祀としている。

 土の国の王城で、王妃として立つ彼の姫は、ここ中央神殿では祭祀長と呼ばれていた。


 冬が去り、生き物全てが動き出す春から初夏にかけて、各国の神殿では、豊饒の女神に祈りを捧げ、その年の豊作を占うのが慣わし。

 そして現神と目される得難い姫が居るこの土の国、それが貴人の祈りを捧げるに値する場所と目されていた。

 この連日各国の王族、貴族、豪族を迎え入れる事になっていた。

 まあ、観光立国目指す土の国において、それは、いいことだったが・・・。


 「・・・いいか、チヒロ。攫われちゃかなわんからな。常に精霊たちと一緒にいるんだぞ。守護殿も、今度ばかりは姿を隠す必要はありません、姿を現してくださると、いい牽制になる・・・」

 「ん」

 「何かあったら、すぐに近衛を呼んで・・・」


 小さい子供に言って聞かせる親みたいだ。

 でも心配をかけてはいけないから、愁傷に頷いた。それを見て漸くほっとしたのか、オウランが微笑んでくれた。

 しみじみとした笑顔。大好きな笑顔・・・うれしい。

 「今日はこの後、神殿に行ってくるね。この前、企画した縁起物を売ってみようって思うの」

 「縁起物?」


 オウランの言葉に私はこくこくと頷いた。

 中央神殿の豊饒の式典は参列する人は決められていて、それ以外の人たちは前日や後日参拝する。

 明日行われる式典はせいぜい三十分くらいなのに、連日、神殿に溢れる人、人、人。

 宿泊施設も温泉施設も、フル稼働で、めまぐるしい忙しさ。


 ・・・で、式典からあぶれた人たちがこうやって二三日前から、神殿に祈りを捧げにくるんだけど。

 

 こっちの世界ではお守りって、神殿のご神木の枝だったり、神水と呼ばれる聖水だったりする。

 神殿で、もう、凄い勢いで伐採?されていた木を見ていた。ちょっと悲しかった。

 でも、持って帰って飾るだけのモノなんだってさ。

 お守りってないの?って聞いたら、逆になんですかそれって答え。

 ・・・だからこの前お城の侍女さんに小さい袋を作ってもらった。

 神殿の木を丸裸にされるよりはましかも。と思いながら。

 見本のその中に神木の葉っぱを乾燥させたものを入れてみたり、神水を浸して乾かした布を入れてみたんだけど、これが結構侍女サンには大うけ。

 子供のために是非一筆とか言われて「健康第一」って書いたら。

 ・・・日本文字が珍しかったらしくて・・・ちまっとした紙に、ペンで書かされました。

 えんえんと、「健康第一」「恋愛成就」「商売繁盛」「家内安全」・・・右手が・・・右手がああっ!


 ・・・えー、そんなこんなで神殿の祭祀としては、売れそうだなぁと・・・。

 ・・・へへ。うん。潤いそうだねぇと。


 だってさ!孤児院の子供たちの中には手先が器用な子がいてさ!

 でも今までは搾取される対象だったんだよ。たとえ雇っている方にとって、安くて質の好い労働者であっても。

 親が居なくて、学校に行けなくて大きくなっても仕事といえば力仕事とかさ。針仕事は女の子の最後の希望なんだけど、すぐに洋服が作れるわけではないでしょう?

 お守り袋は運針の練習にもなるし、何といっても、無垢な乙女が一針一針心を込めて縫うのだから!

 当たるんじゃないかなーっと思ってはいたよ。うん。


 【巫女姫様、直筆、祈りの言葉入りのお守り!】

 ・・・いえね。なんじゃこりゃーっと叫んではいけないのよ。チヒロ。


 噂は結構すぐ広まって、連日観光客でにぎわっていた。


 「姫様、これは?」

 「ケンコウダイイチ。健やかでありますように。レンアイジョウジュ。恋人が現れますように、もしくは恋人とうまくいきますように。ショウバイハンジョウ。仕事がうまくはかどりますように。カナイアンゼン。家族が健康で健やかでありますように・・・」


 神殿の参道で売り子の女の子達に一つ一つの意味を教えて、机に並べる。


 色とりどりのお守り袋は、年長さんが袋を縫って、レースやリボンでカラフルに飾った優れもの。


 ・・・この中に鎮座している紙切れがアレなのがちょっとね。ちょっと。


 「姫様、ここね、カチューが縫ったの!難しかったけどちゃんとできたよ!」

 「わぁ、上手に縫えたねぇ」

 「姫様、このレース、アルアが編んだの!」

 「わぁ、凄い!(・・・しかしこの乙女な袋の中に入ってるのが私の書いたアレか・・・)」

 「組みひもを編んだのは、年少の、トリーなんだ!」

 「うわああ、すごいねえええ」

 そのうち、織物までやってのけそうだ。君たち・・・。孤児院の生徒達の手先の器用さに目を輝かせた。


 準備に没頭していたので、周りで精霊たちがざわめくのに気付くのが遅かった。


 「・・・これはこれは、もしかすると土の国の王妃陛下では?」


 ねっとりとした声に顔を上げたら、鷹のような目をしたおじさんに上から下までじっくりと見つめられた。

 ・・・この人、隣国オルグスの国王だ。

 私は各国要人の顔と特徴の描かれた「必読!各国国王とその側近全集」を思い返した。

 土の国に隣するオルグスは、寂れた金鉱と農業と・・・歓楽街の特化で知れた国だ。

 舐めるように見つめられてぞっとした。

 一歩引いても、すぐに狭められ、片頬で笑いながら手を伸ばしてくる。そのぎらついた目線。

 引っ込めていた手を取られ、口づけを落とそうと迫ってくる。

 「・・・やっ!」

 「・・・おや。祝福を頂きたいだけですよ。明日の式典には参加できないものでね」


 言葉には怒りと、加護持ちに対する羨望が垣間見れた。


 明日の式典には五王国の王様と、さまざまな国の主が招かれている。

 そして国力は関係なく精霊の加護のある人たち。

 精霊の加護のないものは中央神殿には入れないのだ。過去から現在までそれは例外はない。

 でもそれは前もって知らせていたし、知られていたはずなの!

 八つ当たりされても仕方がないじゃないか!精霊君に言ってくれ!

 ・・・あ~でも、なんだか、加護を与えられない、与えたくない人なんだろうな・・・。


 「・・・精霊の加護がなければ、神殿に入ることが出来ない事は前もってお知らせしたはずですわ」


 威嚇も露なみどりちゃんが低く唸り声を上げた。

 いつの間にか、肩口にはふうちゃん。もう片方にきゅうちゃん。

 首筋にだいちゃん。腰にはりゅうちゃんが纏わりついて、彼を威嚇していた。


 「・・・稀なる巫女姫とは誠の事か・・・五大精霊を従えているなんて・・・」

 「・・・オルグスの陛下、お手を離してくださいませ。近衛を呼びますよ」

 「加護持ちの傲慢さだな!奴隷小娘にコケにされるとは・・・!私も落ちたものよ!」

 その言葉にきゅっと心臓が引きつった。

 だけど、まだこんなの序の口だ。嘲りながら、自分の品位を落としていることに気付かない人たちが何と多いことか!

 この刻印と生きるって決めたんだから、こんなの、屁でもないやい!


 瞳に力を込めて睨みつければ、怯む事もなく面白そうな顔で見下された。


 「・・・ふふ。小娘。その身のうちの甘露、味わいたいものだ。どうせ、先の巫女姫のように何人もの国王を相手にしているのだろう?衰退間際だった土の国の此度の巻き返しもそれなら、頷ける。さて金子はどれほど積み上げればいいのかな?神殿に寄贈すれば、お前の床入りを認めてもらえるのか?」


 「・・・な・・・!!!」


 瞳の影にどうやって陥れてやろう、どうやったら甚振れるのか逡巡する色が垣間見れる。

 これが土の国の王妃と知っての物言いだろうか。

 

 でも、負けない。泣いてなんかやらない。


 「・・・放しなさい。これ以上の侮辱はわが国と我が君に対する侮辱と取りますが、いかが?」

 冷めた言葉が口をついてでた。こんなやつに手を掴まれたままなのが、虫唾が走るほど嫌だ!!!

 放してくれないなら、みどりちゃんたちにお願いしようと思って身体に力を込めた。

 ・・・その時だ。


 「・・・手を離しなさい。オルグスの。貴殿が侮辱した娘は、このリシャールが認めた巫女姫ですよ?」

 水色の麗人が。


 「下種にかける言葉は持ち合わせていないのだが、目に余る。貴殿が押さえつけている娘、このセイランが妃と定めた娘だ。無礼な物言いは木の国に楯突いていると取っても良いのかな?」

 落ち着いた、静かな、けれど激情を込めた声が。


 「無礼なその腕、切り捨ててあげようか?」

 銀色の華やかな方が微笑んで。


 「・・・貴国が持ちかけた技術提携はなかったことにさせてもらう。どこの世界に自分の妻を娼婦呼ばわりされて喜ぶ男が居るかな?」

 黒さを隠そうともせずに、オウランが。


 「貴様の国とは手を切らせてもらうぞ」

 紅い華やかなお方が。


 五人揃って言い切った。


 途端に慌てる男が一人。彼らの誰より年嵩なのに、彼らの誰より肝が小さい。


 「いや!これは、その・その・・・冗談で・・・」


 冗談?それこそ冗談じゃない!

 「はなしてくださいませ」

 「は!ご・・・ご無礼をっ!」

 王様達の威圧感に途端にぺこぺこするこの男。国の代表としてここに来たはずなのに、何しに来たんだろうって思ってしまった。

 「・・・本当に無礼だ。この土の国の国王として、また中央神殿を与る国の長として、貴殿には国外退去を申し上げる。従ってくださらない場合は、強制的に排除しますが、いかがか?」


 「・・・つ・・・謹んで、お受けいたします・・・」


 逃げるように去っていく男の後姿に、ほっとして、私は彼らを振り向いた。


 こうして会うのは一年ぶりくらいかな?


 挨拶しようとしたら、さっとオウランに腰を抱き寄せられた。ぴたりと隙間なく抱きしめられた。


 みどりちゃんたちは知らん顔で纏わりついているけど、オウラン、もはや気にしない。


 セイラン様が茶色の瞳を悠然と微笑ませて私の手を取った。


 「こんにちは、チヒロ。いつになったら、国に戻ってくれるのかな?」


 ・・・爆弾落とした。

 「・・・こんにちは、セイラン様。助けてくださってありがとうございます。えー・・・。戻るところはここですので・・・」

 「おやおや。大丈夫だよ?嫉妬深いオウランに遠慮しなくても・・・」

 私はいつまでも待っているからね。と囁いて、手の甲に口づけを落とした。


 愛想笑いは禁物だ。誤解されるからね!


 そしたら今度はリシャール様が私の手を取って、そっと手の甲に唇を落とした。

 じん、と染み入るこの感覚。なれない・・・。

 そのまま顔だけ上げて、リシャール様に顔を覗きこまれた。紅くなっているのに気付かれたみたいで困ってしまった。

 美女顔に、華やかな微笑が浮かぶのを見てしまった。間近のそれは爆撃機。

 ぼんっと顔が火を吹いたのを感じた。

 しかし!

 ぐっと腕に力がこもり、オウランに抱きしめられた事で、急速冷凍。冷めた。覚めました! 

 ま・・・負けないぞ!美人に負けて堪るかぁ!

 「助けてくださって感謝いたします。リシャール様。明日の式典、楽しんで行ってくださいね?」


 「明日の式典では、珍しいものが見られると聞いてきたよ?・・・チヒロが何かしてくれるのかな?」

 色っぽい眼差しで流し見られました。こしっ腰にくるっ!

 ひいいいん。敵もさるものです。オウラン!リシャール様動じませーん!

 見かねたのか、オウランが助け舟を出してくれた。


 「ああ。初めての試みだが・・・精霊巫女姫が神木の枝に神水を浸して、参列する方の災いを祓う、そうだが・・・」

 ちらりと目で話す。うん。ふふ。

 ちょっと濡れるけど、神水だから平気だよねー?って、オウランにはお伺いを立てておいたんだ。

 ちなみに参列するすべての人にやってたら時間がいくらあっても足りないので、最前列のみ。

 ・・・で、最前列に陣取るのがこの五人・・・。

 ニコニコ顔のアレクシス様とシャラ様が無事でよかったと、頭を撫でてくれた。うれしい。

 黒いものが駄々漏れのオウランと、憂い顔のリシャール様、鷹揚としたセイラン様が目線を交わしてにらみ合っていたけれど、気のせいにしておこう・・・。


 ふふふ。衣装は内緒にしておこう!オウランすらまだ知らない。


 明日が楽しみだ!気合を入れて、すべての人、すべてのものに対して感謝を捧げよう。


 祝福を与えるなんてどうやればいいのか今だにわからないけど。


 感謝します。ここに連れてきてくれて、みんなに会わせてくれて。


 感謝します。私に出来る事を教えてくれた人たち。


 感謝、します。

深月織様に感謝を込めて!ありがとうございますー!!!

・・・ま、またお願いします・・・。爆死!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ