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第四話:香りよーし。味は・・・

・・・かくして、ようやくの朝食である。

やれこちらの色がいいだの、この形がいいだの、こちらのほうがどことなく神秘的だの・・・。

・・・誰が着るんだそんな薄物。

 「だだ漏れv」

 カーシャさんにやさしくメッてされました。へこむ。

やれ髪はあげたほうがいいだの、おろしたほうがいいだの、編みこみましょうとことん!と危うくレゲエな巫女になりかかり必死のお願いを受け入れていただいたころには。・・・ころには。心身ともに疲れ果てておりました・・・。

 

・・・ハヤクゴハンタベタイ。


 そして、そして・・・。

 魅惑のご飯タイム!

 色よく焼けてるパン(のようなもの)!

 とりどりのカラフルな野菜に彩られた、サラダ(のようなもの)!

 原型は解らないけど、おそらくこんがり焼けてるソーセージ(のよなもの)!

 湯気も美しい琥珀色のスープ(のようなもの)!

 おそらく果物ジュース(推定)に、ミルク(推定)、紅茶(推定)!


「わあい。いただきまーす!」

「どうぞお口にあうとよろしいのですが。」

 カーシャがやさしく微笑んでいった。そして私は猛然とダッシュをかけた。

 

 切実に、腹がすいていたからだ。マナーは後でゆっくり、じっくり教えてもらうので、今はどうぞ目をつぶってて!と思っていた。

 並べられた料理はどれもいい香りで、美しい彩で、わたしの食欲を刺激する。

 それが私の胃袋に入るのが待ち遠しいとばかりに誘うのだ。

 量といい、質といい、さすが職人、と唸らせられる出来映えだった。

 いざ、カトラリーを握り締め、彩り豊かなサラダへ手を伸ばした。

 ぱくり。もーぐもーぐも・・・・・ぐううううう

「・・・うぐ」

 気合で飲み込んだ。が、とたんに食道を刺激しまくる辛味。

なんだろうこれは。たとえるならば、生の掘りたて山葵に、青唐辛子を摩り下ろしたソースをかけたかのごとき凄まじい刺激。

 呻きつつ推定ミルクを手に取った。匂い良ーし、ぐびりと一口。

 香りはミルク。その実、味はタバスコ(すっぱからい!!)

 意表を衝かれ、目が限界まで見開かれるが、何とかこらえた。

 ・・・ごくり。飲み込む。ものすごい意志の力を要する食事だった。親に叩き込まれた「もったいない精神」にもさすがにひびが入った。

 次にスープ。匂い良ーし、ちびりとスプーンの先にすくってなめてみる。

「む・・・り」

 諦められずにソーセージ。ナイフで少し削って口に入れる。

「うあ・獣味・・・臭みを消そうとか思いもしないんだろうな・・・。しかもスパイスの類の香り・味もない・・・」

 むしろ怖いモノ見たさでパンに手を伸ばす。

 がっしりとしたそれは、果物なんだそうな・・・。給仕の男性が小ぶりの斧で叩き割ってくれた。中身は焼いてとけた茄子の味の物体X。デザートって聞こえる単語が許せない。

 総じてまずかった。

 あまりにひどい。

 私の味覚では、逆立ちしても無理だ。

 辛い。刺激的を通り越して暴力的でもある。

 そして、味。調味料やスパイスを使って味を調えるということがないのか、ただ、素材の暴力的な味の主張があるのみ。


 ・・・大体香りがこれほどいいのに、この味はないよ。

 ミルクかと思いきやタバスコジュースって・・・どんなどっきりですか。

 

・・・このままだと餓死する。前の巫女さま食事があわなくて亡くなったんだよ、きっと。すると、明日はわが身じゃないか。

 辛味は仕方ない。少量ずつ慣れていこう。でも、味は絶えられない。調味料をどうするか・・・。

「ああ!私のリュック!部屋ですよね?」

 思わず立ち上がり叫んだ。

「はい。おもちします。」

 カーシャがすぐに対応してくれてリュックがすぐに届いた。


 中をごそごそ。

 出て繰る出てくる。

 塩のビン。胡椒。さとう。マヨネーズ、ソース。ケチャップ。そして極めつけの、しょうゆ!

 今回の天体観測、場所が場所なだけにまんまキャンプ状態だったのが幸いして、大きなリュックの中は一に食料、二に食料。三・四・五は調味料セットだったんだー。しかも大瓶!

 

 早速、ソーセージ(獣味)に胡椒をてんこ盛りにしてしょうゆをかけて、おそるおそる、

・・・ぱくり。

んぐ。まだ獣くさいけど、な・なんとか・・・ごくん。

味なしスープには、塩と胡椒を少々。

 ・・・良し。まだがんばれる。

 食後の一杯は、香りはオレンジジュース。しかしてその正体は、しょっぱいチョコレートドリンク。のどの通りが異様に悪かった・・・。

 







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