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第三十五話:守護精霊。だれの?

 尻尾を掴む事の出来ない、ある意味優秀な連中は、始末が悪い。

 ・・・五王国の王たちの心境はそんなところだった。

 表だって騒いだ奴を粛正するのは、実に容易い。掴む尻尾を目の前で振っているようなものなので。だが、水面下に潜み、他者を意のままに操り自己の最大の利益を求める者は、ある意味厄介だった。地位や権力に関心はあるが、届かないと思った時は潔く引きさえする。その時流の見極めは、かのセイラン王をも感心させた。


 「まあ、あの女の背後に根の国のエルレアがいたんだ。あとどんな奴がいてもおかしくないが・・・公爵家だろうな。女、操って没落した旧公爵家の財産取り込もうとしていたらしいが、国営財産に認定したからな・・・」

 「風の国は、アレクシスの従兄弟殿を有する、公爵家だろうね。水の国はリシャール殿の愚弟殿の母の生家である公爵家あたりかな?これは、王位を狙っているのだろうな。・・・ああ、木の国は、大丈夫だよ。甘い言葉に惑わされる者がいなくて、喜ばしいね」

 「・・・それって、単に兄上に喧嘩売る度胸がないんでしょう・・・」

 疲れたようにオウランが言った。

 「さて、僕のところですが、まあ、黒い奴は沢山いるけど、面と向かって喧嘩売ってくる奴はいませんね。大抵は王位を授かった時に返り討ちにしましたから。諦めが悪いのは・・・侯爵家くらいかな?」

 顔を合わせた五人はそんな話で盛り上がっていた。

 「攻めるなら、どこがいい?」

 「根の国戴冠式の日程に合わせて、動くのだろうな・・・」

 「ふふ、だから奴らは馬鹿なのさ。国王不在で対策しない訳がないのに」

 「・・・指を咥えて奪われるのを見ているわけがないのに。なぜ自分の見たい夢を現実だと思い込めるのだろう?・・・理解に苦しむね」

 「こうなるはず。こうなるべき。・・・いっそ哀れになる・・・」

 くすくすと笑う。

 「ん・・・姫がこちらに向かっているようだな。風が騒いでいる・・・」

 アレクシスの言葉が終わり、過たずしてノックの音が響いた。

 扉がイザハヤの手で開けられ、チヒロがイザハヤに連れられ入ってきた。

 華奢な身体を大きな椅子に沈めると、月色の瞳で彼らを見た。

 「なんだか、もう誰が敵か判っているのですか?」

 「大体は、そうだろうと思う人物を、思い描いているよ」

 「あとは、チヒロの精霊が、決定打を打ってくれるのを待っているのさ」

 そう言って彼らは笑った。

 「・・・そう、想像した人物は必ず一枚噛んでいる。後は、範疇外の人物がどれだけいるか、だ」





 リイノおじさん特製のオレンジショコラミルクを、ちびり、と飲む。

 笑いさざめく貴公子たちを見遣って、私は何となく、はああっと小さくため息をついた。

 素人でもわかる。 この人たちは敵に回しちゃいけない人だ・・・。にっこり笑いながら他人を追い落とす算段をつけている彼らを見て、私は彼らを敵に回した人たちの冥福を祈った。きっと、ただではすまない。再起する気など失せるくらいの報復を行うのだろうなあ・・・。

 おかあさん、マオウハココニイタヨ。

 

 なんて現実逃避をしていたら、精霊の気がぐんっと膨れ上がった。

 「・・・あ」

 いつの間にか、足元に灰色狼が佇んでいた。

 「みどりちゃん、おかえりー!」

 椅子からするりと下りて、速攻で抱きしめ、頭をわしわしと撫でて、ほっぺをぐりぐり押し付けあって、仕上げに大きな舌でべろんと顔を舐められて。ぬいぐるみを抱き込むようにみどりちゃん(灰色狼)を抱きかかえていたら、セイラン様に無言で引き剥がされた・・・。

 それでも、もふもふの毛皮を堪能せんとわきわき腕を動かしていたら、イザハヤが目を合わせないようにしながら、そっと腕を押さえつけた・・・。

 「みどりちゃあん」

 「・・・みどりちゃんはないだろう、姫・・・。どう見てもオスだぞ」

 シャラ様の呟きは私以外の全ての人の心の声だった。


 ・・・だいちゃんの帰還の時はもっと大騒ぎになった。

 だいちゃんは土の精霊で、お願いに応じて黒蛇になってくれた子だった。これが、お茶目な子で、帰還するとき、私の身体の一部に絡みついてから姿を見せるので驚きもひとしおなのだ。

 「姫はあれをお茶目というのか・・・」

 イザハヤがどこか遠い目で彼方を見た。

 ・・・う。確かに今回の出現は足首で。しかも地面に下りるのではなく、這い上がってきて(・・・服の、中を)首筋で巻きついて、彼らが憤慨するのを見届けて、消えた。・・・うん。いい性格なのはオウランと張るなあ・・・。


 キュウちゃんは火の精霊でひときわ輝く鳳凰。火の粉を主に王様達に振りかけて遊んでから消えた。

 

 りゅうちゃんはその名の通り、竜体で現れ、私の身体を包むように下から上へ螺旋を描き、頭上で王様達を威嚇してから・・・消えたんだっけ・・・。


 なんか、みーんな王様威嚇してたっけなあ。

 仮にも自分が守護する国の王様なのにさ。


 「出現方法は考えろと精霊たちには是非伝えてください。姫」

 そういうアレクシス様は心底疲れた顔をしてた。帰還したふうちゃんに懐かれて、髪なんかすごいことになってる。

 ・・・そして、小さい竜巻が収まった頃、ようやくの作戦会議となったのだ。



 でも、いろいろ調べに行ってくれた精霊くんたち、ありがとう!

 



 

 

 




 

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