第三話:風の加護
朝日を拝んで、和んでいると、ノックの音。
きっときのうの金髪美人なカーシャだと思って扉を開けた。
・・・・夕べ着せられた夜着のまんま。
「おはようございます。・・・失礼しましたー」
速攻で扉を閉める。心臓ばくばくです。
どんな罰ゲームなんですか。昨日界落ちしただけの一庶民にあれはない!
ここは異世界だって知ってるよ!けど、地味にしぶとく生きて行きたいだけなのに。
どこの世界に朝からきらきら笑顔振りまきながら佇む貴公子がいるんだよ・・・。
しかも、五人も。
その後ろになんかたくさん護衛の剣士がいるし。
なんか口上述べそうな雰囲気だったので速攻で扉閉めたけど、どうすりゃいいの。このまま?このままなの?
ダレカタスケテー。
まあ、心の叫びは叶えられましたとも。
侍女さん引き連れたカーシャが現れて、オッパラッテクレマシタ。
その際なんか叫んでいたね、カーシャ。
「界渡りをなさったばかりの巫女様のへやの御前で何事ですか!それが五王国の公子のなさる行いか!しかも淑女が身だしなみを整える前のお越しとは。いったいどういうおつもりでしょうか!」
カーシャ、強い。
でも敵も強かった。かつんと足音がして誰かが進み出たようだ。
「どういうつもりもなにも、一刻も早く巫女姫殿にお会いしたかったからですよ、風の長。あなたの思うとおりに運ばせるわけにはいきませんからね。
・・・以前の巫女姫はシェンランのものとなった。しかも今回もどうやら同じ郷の巫女姫らしい。
以前とて、長く隔てられた年月の間、黒髪はおろか、月色の髪や、瞳の者も現われぬ。此度を逃せばまた、何百年も待たねばならぬ。
我が祖国に今度こそ精霊巫女姫の光臨を賜わねば、我が祖国は衰退してしまうでしょう。それはここに集う、公子方もみな同じ。精霊巫女姫の夫に名乗りを上げたいのですよ。見ればまだ若い娘であるが、婚姻は十分に結べそうです。年も我が一番近いような・・・」
「ちょっと待て。お前の抜け駆けを夜通し防いでいた俺の苦労はどうなる」
・・・夜通し。夜通しってそれって私結構危ないところで寝てたってこと・・・?
「そんな不埒、私が許すはずがないでしょうに。風の加護はきっちりかかっていたでしょう?まあ、風の長の守りでは心もとなかったので、私がいるのですが。・・・おや、かわいらしい巫女姫様はこちらの会話を聞き取るのに必死のようですね。さあ、みな、引き上げなさい。巫女姫様が羞恥のあまり出てこれなくなっては、本末転倒」
・・・なんか背中をすうっとなで上げられるような美声。
「ええ、引き上げんのかよ。おもしろくなりそうなのに」
・・・駄々っ子みたいな声。
「まあ、現実問題、あまりいい印象持ってもらえなくなりますよ?現に扉開けてさえくれないでしょう」
・・・開けられるか!
「声だけでは心もとないな。後ほど紹介させていただく。それでは」
・・・声?
「ええ。チヒロさま。心静めてくださらないと、お考えのことが聞こえています」
・・・聞こえる?
「ええ。さっきからずっと。大声で扉をはさんで会話しているようですわ。・・・すばらしいお力です。もう風の加護を受けつつありますね」
・・・・・は。
はずかしいいいいいいい!!!!!
「く」
「ふふ」
「はっ」
「ふふ」
「落ち着け。風に命じればいい。声を通すなと」
・・・誰かが言ってくれたので、命じてみる。
メイジル?
浮かんだのは、某ピンクのウサギのぬいぐるみアニメ。
「えと。お願い?(ハート)」
「おお」と声がした。
「すばらしい」