第二十四話:黄金の水 2
シャザクスの温泉保養施設は、この世界初ってことで大当たりだった。
お風呂に入って身体を清潔に保つってのは、ここらではなかったみたいで、最初こそ戸惑われたけど、いったん受け入れられたら、はやるの早かったです。
何といっても、この世界で名の通った、ハクオウ国のセイラン王自らが、温泉成分調べてくれて、飲用OKのお墨付きをくれたのが大きかった。セイラン様って、名の通ったお医者様だったのね・・・。そりゃ、確かに名の通ったお医者さんに成分分析を依頼してと言ったけどさ、まさか、それがセイラン様だなんて思わなかったし。まさか、それを口実にセイラン様がシャザクスにくるなんて思わなかった。
しーかーもー・・・。
「馬鹿が。あれほど「気をつけろ」といったのに、何故お前は、早速喰われてるんだ」
こんな怖い顔で、怖い事を延々といい続ける奴がくっ付いてくるなんて、考えてもいなかったよう・・・。
「聞いているのか、チヒロ!」
うあ。
ビヨンと背中が跳ねた。恐る恐る、声を出す。
「・・・喰われたくて、喰われたわけでは・・・無いのデスガ・・・。」
ダレカタスケテー!正義の味方ぷりーず!
ギロリ睨まれて口をつぐんだ。
「やれやれ、オウラン、心配していたんだと、素直に口にすればいいだろう。」
「セイランさま。」
この鬼をどうにかしてください。なんかもう、あっちこっち滅多切りです。傷だらけです。
「まあ、最後まで喰われていないようなので、勘弁してあげなさい。・・・ですが、チヒロ、次はありませんよ?私も、オウランも嫉妬に狂って、チヒロに無体をしないとは限りませんからね・・・。」
おっとり微笑んで、最後通告してきました・・・。
やはり、黄昏ていいんだと思いました・・・。
火の精霊が、遊んでいる中を、悠然とシャラ様が歩く。
火の精霊は、力強くて優しいシャラ様が大好きだ。
鳳凰の姿を取れるのも、溢れるシャラ様の英気のせいなんだって。
私の掌の上で、火の精霊が踊る。小さな鳳凰の姿を模して。遊ぼう、と誘ってくる。
私は、オウランの小言に耐えられなくなって、席を立った。
「どこへいく。」
「お風呂。女湯だから、一人で行くの!」
「まて、まだ・・・」
「もう、オウランまで、お風呂はだめだっていうの?キュウちゃんが一緒だから平気だよ!」
「・・・・・待て、なんていうか、もろもろ言いたいが、キュウちゃんは、火の精霊だな?」
「そうだよ!だから一人じゃないでしょう?」
うん、まあ、とか何とか言っていたけど、気を取り直したのか、頷いた。
「精霊とは、常に接触を保つんだぞ。何かあったら、すぐに助けを呼ぶ事。」
どこのお母さんだ。