第十六話:並び立つものたち
それは、突然もたらされた情報だった。
風の神殿に送り込ませていた者からの、本当かどうかわからない、眉唾もいいところの。
曰く。風の神殿に治められていた、黒い太陽の巫女が崩御する間際の言葉。
・・・これより三年のち、新たな巫女が光臨する・・・。
一笑の元に退けられたその言葉。
ありえない。あるはずがない。なぜなら、黒い太陽の巫女はその時代時代に、ただひとり。
この代の巫女が崩御した後、100年は不在の時を数える、はずだった。
だから、それはほんの気まぐれ。
その時から三年のときを経た今、ここにいることは、ほんの気まぐれ、だったんだ・・・。
「なんなんでしょうね、皆さんお揃いで。風の神殿の祭はまださきのはずですよ?」
風の国シェンランの王、アレクシスが表面上穏やかに言った。
優雅に茶器を扱いながら、各国の貴人を見渡す。
「五王国の王が揃うのも稀なことだからね。」
水の国のリシャールが呟いた。
「別に、いいだろう。遊びに来るくらい。」
火の国のシャラが、茶器を乱雑に置いた。
「・・・まあ、俺はどちらかというと、こいつのお供かな。」
木の国の王のセイランが笑った。
「僕はべつに・・・」
お茶を口に運びつつ、そっけない態度をとる。それぞれの国の牽制する姿勢がくだらないとすら思えた。つまらない。ここで皆の顔を見ているのさえ、煩わしかった。そして、自問する。・・・なぜ、今、風の国なのか、と。信じているはずがないのだ。彼らも、そして、何より自分は。
そして、なんとなく連れ立って、風の神殿へ行く。
今日もそれは何事もなく行われ、終わるはずだった。