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第十二話:地道な活動

 ・・・・私の夢は、チョコレートの香りのあまあい、あまあい・・・。

 「・・・食えなかった・・・。」

 ポツリと呟くと、耳聡い侍女さんたちが部屋に入ってきた。

 そんでもって、着せ替えタイムのはじまり。はじまり。

 ・・・勘弁してください・・・。



「おはよう、チヒロ。よく眠れましたか?」

 仕度が終わると、侍女様がいなくなり変わりに王様・・・アレクシス様が入ってくる。一通り挨拶して朝食会場まで、アレクシス様がエスコートしてくれます。朝食会場、一回いったから場所わかるし、結構ですって言ったら、なんか、毎回部屋が変わるんだって。

・・・王様の気分で。・・・元凶はこいつ。

 右手を取られて、歩く。豪華な扉の前で、アレクシス様がわたしに優しく微笑んだ。

 扉を開ける侍従さん。

 その部屋に鎮座しておりますのは、無駄にきらきらした方たちが、4人。

 ・・・・・そう、誰一人として、自国に帰った人はいなかったんだ。

 あの、オウランですら、黒い笑みを隠しもせず座ってる。

 椅子を引かれ、腰を落とす。その様も、まるで夢の中の王子様仕様。完璧ですね、アレクシス様。でも、周りを牽制しないでください。怖いものがただ漏れです。優しげなお顔の反対側が、錯覚でなければ、夜叉になってます。

 ああ、ほらあ!!!

 怖いよー、怖すぎるよー。早く、カーシャこないかなあ・・・。

 びくびくもので、和みの人を待つ。

 錯覚であるはずが無いんだ。ものすごい勢いで、目線の叩き合いが行われている。

 「目は口ほどにものを言う」んだよ、みなのしゅう。


「まだいたのか」とアレクシス様。

「あたりまえだ」とセイラン様。

「みせつけやがって」とシャラ様。

「まけませんよ」とリシャール様。

「あきらめないっていったでしょ」とオウラン。

 

 ただ漏れです。精霊の加護が無くてもこの雰囲気。わからん奴はいないとおもう・・・。

 いたい、いたいよ。この面子での食事。

 針のむしろってこんな感じだったのね。今までのは、ふかふか絨毯に感じられます。

 しかも、食事ってのが、「あれ」だもんなー。へこむよ。

 ああ、でも、でも、今日こそは!

 ・・・カーシャと日々意思の疎通を図ったところ、劇薬並みの辛さをほんのすこーし削ることには成功したの。カーシャには止められたけど、お城のコックさんと、お話もしたし、食材も見せてもらい、さらに!調味料の話をしたんだ。

 食の改善は、わたしがこの世界で生きていく為には、絶対必要なことだって言い切ったから、しぶしぶ会わせてくれたんだけどね。

 

 ・・・驚いたことに、やはり砂糖の類が無い世界だった。

 塩や胡椒みたいなのはあるけど、スパイスも無いのね。まあ食材みな、スパイシーだから必要ないのかもしれないけど・・・。

 でも、蜂もどきはいたんだ。中庭のお花の蜜を吸ってたの。巣も見つけた。

 ここの世界の人にはなじみ無いかもしれないが、蜂蜜は取れるかもしれないと思って、カーシャに頼んでみた。もちろん、さされることを想定して、頭から、足首まで、裾の詰められる厚手の生地の服を用意してもらって、鍔広の帽子の上から、目の細かい網をかぶり、ごつい手袋をつけて。

 煙で蜂を弱らせて、自力で蜂の巣を取ったわ。遠巻きにきらきらたちがみてたけど、構うもんか!幻滅してくれたらめっけもんよ!なんか、オウランが腹抱えて笑ってたようだけど、知るかい!

 そうしたら、取れたの!とろける黄金色の紛れも無い蜂蜜が!

 お城のコックさんも始めての味で悶絶してたわ。

 そして今日、蜂蜜がテーブルにのるのよ。昨日、みっちりコックさんと打ち合わせもしたし、味見もした。

 食べられる・・・!今日は、まともな食事にありつけるはず・・・!

 わくわく。

 そわそわ。

 まだかな、まだかな、している私を、興味しんしんで見つめる視線があったけど、気にするな私。


 からからとワゴンに乗せられた皿が運び込まれた。

 「これは?見たことの無い料理だが。」

 セイラン様が尋ねた。

 「ホットケーキって言うんです。昨日作り方をコックさんに教えてあげたんです。焼き立てに、バターをぬって、蜂蜜かけて食べるんです。」

 「ハチミツってこの間の?」

 「はい。バターらしきものが無いんで、今日ははちみつのみですけど。」

 どうも久しぶりに食べるのでテンションが上っていたらしい。きゅきゅっとカットした切れ端にたっぷり蜜を絡ませて口に入れた。

 「んん、おいしい・・・!」

 身体がしびれる。本当に久しぶりの甘味!

 「ふふ、本当に美味しそうに食べるな、姫は。」

 そんなセイランさまの言葉に、私は何も考えてなかった。そう、考えるべきだったんだけど、考えてなかったんだ。美味しいものは、みんなで食べる。そうすれば、もっともっと美味しく感じるから。

 だから。

 昔っからのくせでやらかした。

 「セイランさま、はい、あ〜ん。」

 きゅきゅっとカットした切れ端に、蜜を絡めて差し出した。

 しかし、王様は動じなかった。

 ぱくん。もぐもぐ。ごくん。

 「・・・ほお、これは・・・。」

 「ね?ね?おいしいでしょう?」

 「・・・今まで食べたことの無い味だ。だが、たしかに、美味い。」

 純粋に好意で行った行為は、後にあだで返されるんだけど、そんなの今は、わかんなかった。




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