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第10話;ケダモノ注意!

・・・風の精霊はりっぱに仇をとってくれました。

・・・それなりに痛い目を見た相手なら、普通は顔色変えて逃げ出すもんじゃないのかな?

・・・ええと、この状況はいったいどういう状況なんでしょう・・・。


「ああ、兄上。御気にせず続きをどうぞ。それで、カーシャ殿はどこの国が適任だと思われます?やはりここは、この500年ほど巫女姫を召還できていないわが国だと思うのですが、いかが?」

「・・・・・そもそも、コクロウ国は、姫の持つ精霊の適正から外れておりましょう。ただいまも見事に風を纏われた姫です。あきらかに風の恩恵を受けておられます。やはりここは、このシェンランで、力のコントロールを覚えられたほうがよろしいですわ。」


 すり・と膝で頭が動く。なつくな。


「そうかな?今までの黒い太陽の巫女なら、せいぜい従わせてもひとつの精霊だけだったから、その言い分は通るけど、今回は、違うね。ねえ、チヒロ。君、風だけじゃないだろ?たしか火も扱えたんだよね?」

「なんで、わかるの?」

「チヒロさま!」

カーシャが叫んだけど、不思議だったから聞いてみた。ソファに腰掛けた私の膝に頭を乗せた、いわゆる「膝枕」の体勢でゴロゴロ懐くオウランがにいっと笑う。・・・たいした怪我もないのに、ここが痛い、そこが痛いとわがまま言ったオウランは,椅子に座るのも辛いといった後、原因が責任取れと言い・・・今に至る。

 くそう、膝枕。

 皆さんの視線が痛いと感じるのは私だけなのか?

 それともオウランが図太いのか・・・図太いんだな。

 かなり上機嫌だもん。

 でも強く出れない。確かに風の固まりはやり過ぎ・・・たのか?

 ちなみにあのキスはカウントしないことにした。あれは、事故。口と口がちょっとくっついた、不幸な事故・・・。

 

・・・火の精霊のことは、くすくす笑いながら、オウランがあっさり、侍女から聞いた。と教えてくれた。さっきのろうそくの火、結構みんな、驚いていたもんね。

 でも、それなら。と、名乗りを上げた国があった。

「火の精霊の恩恵を授かれるのなら、俺の国へ来いよ。火の制御は結構難しいから、その、俺がオシエテヤル。」

「シャラ殿は精霊のコントロール以外のことまで教えちゃいそうなので、却下」

真っ赤な髪の美丈夫はオウランに斬って落とされて、くちをぱくぱくさせた。ぎりぎりと歯軋りしつつ、オウランを睨みつけ、

「・・・貴様に言われたくないわ!」

・・・と叫んだ。周りにいた人たちに混ざって、私もうんうんと頷く。

 確かにあんたに言われたくない。

 オウランは、ちっと舌打ちしてから、しばし考えていた。

 そして、いかにも嫌そうに、いった。

「・・・まあ、最初は貴国に譲ってもいいよ。確かに火の精霊の制御はむずかしいし、何より・・・、チヒロ,今幾つだい?」

「16」

「誕生日は?」

「8月の15日。」

 終戦記念日が私の生まれた日。

「ハチガツね。ふーん、後二十日くらいで17か。ああ、心配しないでも、前の巫女が暦を教えてくれたからここでもちゃんと誕生日がわかるよ。後でここの暦も教えてあげる。・・・まあ、つまり、あと一年と二十日間ほど、君を本当の意味で味わえないって事だから、・・・最初に住む国が終の棲家になることもないし、ましてや、シャラ殿にチヒロが靡くとも思えない」

・・・いったい何の話だ?と訝しげなわたしを尻目に、まわりのきらきら達は、私を見た。

「あと、一年ほどで、姫巫女殿は成人するのか」

・・・セイラン様が言った。

「では、初めはシャザクスで火の制御、次いで私の国はいかがでしょう。風と火を操れるならば、水も制御できるやもしれません」

・・・リシャール様が言った。

「風と火なら、木だってわからんぞ。俺のところはどうだ」

「兄上、何を教え込む気ですか。そもそも、兄上なら声だけで落とせそうなんで却下です。リシャール殿も憂いを秘めた瞳に物を言わせそうなんで却下。だいたい、年を考えてくださいな、チヒロはもうすぐ17。兄上は30歳!リシャール殿は28歳!アレクシス殿も28歳!対するチヒロは、若干17歳・・・」

 マダ16デスガ、モシモシ?

 しかもなんか、王様達が滅多切りにされてる感じが漂ってます。

「まあ、シャラ殿だって25歳、僕が一番チヒロに似合いの年頃なんだよ」

そういって、オウランは笑った。なんか、黒いものがただ漏れの笑みだった。怖さのあまり息を呑むと、聡いオウランは私を膝から見上げて右の眉を動かして。

「慣れろ。チヒロ。俺はお前を諦めないことにしたんだ。お前は、面白いからな。いろいろと、オシエテヤル」

 そう言って奴は。

 私の後頭部を鷲掴むと、無理に頭を下ろさせて、口付けた。深い、深い、舌の先まで絡めるような口付け。絡め取られる唾液がオウランの口腔に消え、ごくりと嚥下する音がするまで。

「一年経ったら、この先も、全部。俺がこの手でオシエテヤル。」


 

 

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