表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/103

第一話:皆既日食で私も消えた

・・・巷では、四十六年ぶりだという皆既日食で、フィーバー(古)していた今日の日本。

・・・私は、この日、この地から放り出された。


「うっそー!世紀の大パノラマ見逃した!」

次は26年後なんだよ。どうしよう。ダイヤモンドリングに黒い太陽。滲むコロナ、太陽と月の輝き。レンズも準備したし、照る照る坊主に願だってかけた。なのに、なのに・・・。

 滑って、転んで、頭蓋を強打(なんとなく覚えてる)。気絶してる間に・・・いま、夜!

 なぜ!なぜ誰も起こしてくれないの!ここにいる人たちは、天体観測という崇高な趣味の元に集まった、いわゆる天文オタクでしょう!これを逃すと26年後!私、四十二歳になっちゃうのに!

「ひどい!何で起こしてくれなかったの!・・・・・」


 ざわり、と周りで人の気配がする。

 ざわり、ざわり、と。

 波が寄せて帰すかのごとく。

 事、ここに至り、ようやく私は気がついた。

 天体観測よりよほど好奇心が刺激されるこの現象。

 (だって、日本のさらに小さなあの島には、顔なじみの天文オタクの方々がいたんだ)

 断じて。

 断じて、鮮やかな髪色の、どこの中世ヨーロッパな服装の、キラキラしい殿方たちはあの島にはいなかった・・・!




 目が。痛い。

 (ひい〜きらきらしてる!無駄にキラキラしてるよう!)

 現在進行形で、あわあわとパニックしてると、人垣が分かたれて一人、進み出た。

 ふわふわの淡い金髪。白皙ってこういう子のことを言うんだろうな、色、白い。瞳は金色。唇はチェリーピンク。つやつやぷるん。その子がまっすぐこちらを見て、言った。

「lllkjp?」

・・・・・何語ですか?


 英語?中国語?ドイツ語?

 いえ、そもそも、ここはどこですか?そもそも、地球ですか?

 私、もしかして巷でよく読まれてる、異世界召還の犠牲者ですか?

 腕力も、知性も、魔力も無い、タダの天体オタですよ?

 えと、

 気絶していいですか・・・?

 あ、現実逃避はだめですか・・・。



 らちが明かないと思ったのか、うずくまっている私の元に、金髪ふわふわ美女が静々と近寄ってきて、繊細な両手で私の両頬をおさえた。そのまま軽く顎を上げられて、おでこにキス。

 次いで右の耳、さらに左の耳へ。

 あは、なんか儀式みたいね。これで言葉が通じたら世話無いよ。



「わかりますか?」

「なぜ!」


 何で通じるのさー!






・・・・・

・・・・・

・・・え。

・・・ええと。

改めまして。こんにちは。

ワタクシ、地球の日本という国の生まれで、姓は大月、名は千尋と申します。

年は16、学生です。

花も恥らう乙女でありますが天体オタを自負する、一般人です。

マオウナンカタオセマセンヨ。



 棒読みで一気に自己紹介。

 なんせ私の格好は、天体観測用にそろえた山登るの?な服装で。

 持ち物は、でかいリュックひとつ。(天体観測グッズといざというときの非常食セット入り)

 足にはゴツイ山登り用シューズ。手には太陽レンズ。

 え・ええ・と。

 どうしろと?



「私は、この国シェンランの巫女、カーシャ・イル・セランと申します。突然の召還で驚かれたことでしょう、オオツキ・チヒロさま?あなたを迎えて、この地の精霊たちが喜んでおります。太陽と月の巫女が現れたと」


「たいようとつきのみこ」


 その言葉をつぶやいた私の耳に、先ほどの波のうねりのようなざわめきが、いっそう激しくなり・・・押しつぶされそうな空気に体を震わせた。






 








 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ