第二の試練~無限疾走~
伝説の式神、令和三年に蘇った伝説の式神・呉爾公君を見つける試練をクリアした奏。
道中、呉爾公君にこの修行は三つの試練を突破すること等の説明を受けながら開いた扉の向こうへと進んだ。
そこには靴箱があり、自分に見合ったサイズのピンク色の術が組み込まれた靴・超飛足に履き替えてから、更に進むとそこには
「崖?」
井戸の中にあるとは思えないほど巨大な空間があり、そこには大きな穴が開いている。
そして穴の中心に丸い陸地が見えており、逆ドーナッとなっており、その陸地とは橋で繋がっている。
穴を軽くのぞき込んでみるが、下がまるで見えない。落ちたら命はないだろう。
次の試練へと続くのであろう扉は来た扉のすぐ横にあるが、ここの試練を突破するまでは開かなさそうだ。
「この空間も術の一つなのだ。」
「へえ、こんな術もあるんですね。」
結界と呼ばれる術の中には異界を作り出す術もある。その一種だろうか?
「第二の試練は橋を渡り、中央の狐島あるスイッチを押して戻ってくるのだ。」
「それだけですか?」
第一の試練も簡単だったが、第二の試練も随分と楽なようだ。
「そう思うならやってみると良いのだ。」
何故か少しどや顔の呉爾公君を不審に思いながらも橋に足を着ける。
そして歩き出すと、橋けたが後ろへと流れだす。
「これは………」
試しにタッタッタと走ると、走るペースに合わせて橋も後ろに流れる。
まるでジムにあるランニングマシンのようだ。
「ふふふ、この橋を進むためには、その超飛足を使うのだ。」
「この靴ですよね?」
先ほど履き替えたピンク色の靴。術が組み込まれていると聞いているが、どんな術なのかは奏は知らない。
「そう、超飛足に願力を集中させることで走力をあげることが出来るのだ。」
願力、ざっくり言えば集中である。術は術を組み込んだ物に意識を集中させることで発動させることが出来るのだ。
足に意識を集中させながら走り出すと確かに体が軽く、先ほどよりも速く走れているようである。
だが、それでも前に進むには速度が足りない。
更に願力を込めてみると、やはり速度は上がるのだが橋もそれに合わせて橋けたが逆流するので、先には進めない。
「もっと願力を込めるのだ。さあ、走るのだ!」
「なるほど、ようは超飛足を履いて孤島のスイッチを押して、戻ってくればいいんですよね?」
「その通りなのだ!さあ今回はズルは出来ないのだ。」
まるで第一の試練でズルをしたかの言われように心外さを覚えながらも奏は願力を込める。
「雪丸!向こうのスイッチを押してきて!」
「え?」
「チチチチチチ!」
靴ではなく、ポケットから取り出したカードに。
カードからスズメほどの大きさの白い塊、小さな翼と嘴を持った立派な鳥型の式神。奏が所持する最強の式神・雪丸である。
飛んでいる雪丸はランニングブリッジの影響を受けない。
そして向こう岸に辿り着くと、スイッチをポチッと。
バコオオオオオン!
「うわあ!」
急に橋が崩れ落ち始めたので、慌てて元の陸地へと飛び戻る。
橋が落ちて、そこにはただ孤島と崖があるだけだ。
だが橋がなくとも飛んでいる雪丸には影響がない。戻ってきた雪丸を肩に乗せて労いの言葉をかけた。
これは向こうまで超飛足で行っていたらどうなっていたことやら………
ちなみに雪丸は先日の鬼戦でダメージを受けたが、一晩ですっかり全快。一緒に修行しようと連れてきたのである。
「えっと、君この試練の目的を理解しているのだ?」
「この靴を履いて孤島のスイッチを押して、戻ってくるんですよね?」
奏は靴を履いた状態で、雪丸を召喚してスイッチが押された後、無事に戻ってきた。
完璧に試練を達成しているはずだ。
「そうだけどそうじゃないのだ!行きは願力の強さと持久力を、戻りで瞬間的な願力を鍛える試練なのだ!」
「そんなこと後から言われても!」
「こんな方法で達成しても扉は開かないのだ!」
「ズルい!」
ギギーと音がして次の試練へと向かう扉が開いた。
「なんでなのだ!」
呉爾公君の抗議を背に奏は最後の試練へと向かった。