第一の試練~令和に蘇る神話の獣~
飛び込んだ井戸の中は真っ暗だった。
「よくぞ来たのだ。若き野守の術者よ。」
暗闇の中呼びかけられる。声はするが、姿は見えない。
「誰!」
「すでに第一の試練は始まっている。」
「誰かって聞いてるの!」
「第一の試練は闇の中より我が姿を捉えること」
「そんなことよりあなたは誰なの!?」
「それを見極める試練なのだ!」
「でも、知らない人の言うこと聞いちゃダメって先生が」
「キミは何しに来たのだ!」
そう言えば父が井戸の中には、修行場の案内をする式神がいると言っていた。
ひょっとして、この声の主がそうなのだろうか?
だとしたら、彼は知らない人ではない。知らない式神だ。
「わかりました。あなたを見つければ良いんですね?」
「そうなのだ。光のない暗闇の中、いかな術を使っても良いので、我を見つける。それが第一の試練」
「ポチッと。」
声のする方へスマホを向けて、ライトのスイッチを入れる。
「へ?」
照らされた相手は急な光に目を閉ざす。
「なにこれ?ハムスター?」
照らした方はその見た目に思わず目を丸くする。
ライトの先にいたのは小さな動物だ。
トカゲのような怪獣の着ぐるみを着ている小さなネズミ。いやネズミと言うよりもハムスターだろう。
ライトの先にいたのは怪獣ハムスターである。
「えっと、みーつけた。」
取りあえず発見を宣言する。
「……それなんなのだ?」
見つけられた方は動揺した様子でスマホを指差す。
「これ?スマホです。」
スマホ、スマートフォンと呼ばれるこの機器には、遠くの人と話をする電話、更に電子の文章をやり取りするメール、それ以外にも様々な機能が付いている。
そして周りを明るくしたのは、そのスマホの機能の一つ、輝きの道を映し出す機能、ライト機能である。
この機能のおかげで人類は物を探す時に懐中電灯を探すという業から逃れることに成功した。
別名、電車で座っていると立っているおっさんのライトついててめっちゃ眩しいんやけど機能。
「えっと、それはキミの式神なのだ?」
「え?違いますけど?」
スマホは単なる科学技術の結晶。奏の式神とは言えない。
「じゃあ術なのだ?」
「違います。単なる道具です。」
「じゃあダメなのだ!それはズルなのだ!」
「そんな!道具を使うなとは言ってなかったじゃないですか!」
「術を使って探せと言ったのだ!これでは試練場とて達成を認めは」
ギィと音を立てて扉が開いて光が入り込んできて部屋を照らす。
どうやらこの部屋は結構広い部屋だったらしい。
「何故なのだ!」
怪獣ハムスターが抗議の声を上げる。
「扉を開いたということは、試練場が達成を認めたということ………なのだ。」
どうやら扉が開いたのは試練達成の証らしい。
「やったあ!」
「試練場が認めた以上はどうしようもないのだ。第一の試練突破なのだ。」
怪獣ハムスターが第一の試練の突破を認める。
「納得はいかないのだ。」
まだ怪獣ハムスターがごにょごにょ言いながら、体を小さくしている。
「元気出してください。そして諦めて下さい。」
「腹立つのだ!」
文句を言いながらもちょっと元気になったようである。
「はあ、そういえば名前を聞いていなかったのだ。」
「わたしの名前は野守奏です。」
「ボクは元祖野守より仕えし式神・呉爾公君なのだ。今はこの修行場の案内を務めているのだ。」
呉爾公君、なんていうか、あのなんというか。
「えっと、なんか大丈夫ですか?その名前。」
なんというのか、名前と喋り方。その二つになんだか覚えがある。いや、覚えがあるようなないような………
「呉爾公君のどこに問題があるというのだ?」
「いやまあ、ほら公君って立てに並べるとさ。それにハムスターな上に喋り方も……ほぼハム君やん?」
「ハムじゃないのだ!公なのだ!」
公君なのでまだマシだが、公太郎なら完全にアイツである。
しかし、彼は怪獣の着ぐるみを着ている。しかも、その見た目は日本を代表する怪獣に似ている。
日本を代表する、人間が抱く純粋な恐れの象徴、そして愚かな人間が生み出してしまった恐ろしきKING OF THE MONSTER。
「しかも呉爾って、もう羅をつけたらアイツやん。完全に1954やん、大戸島に伝わるアイツやん。」
その二つが合わさった存在。
「やめろ!我が名はこの修行場の案内役にして最強の式神・呉爾公君!なにも危ないところは……ない!」