祖父と孫 初めての対面
「奏!」
奏の祖父だという魔王・山本九郎に案内された部屋にいたのは、奏の母・詩音である。
「お母さん!無事だったんですね!」
「ええ、まあ。」
「これで少しは話に応じる気になったか?」
そう聞いた魔王を詩音は睨み返した。
「娘を傷つけなかったことには感謝してる。だけど、それとこれは別の話よ。」
「ふう。」
魔王が深いため息を吐く。
「何度も言うが、我はあのような男との結婚には反対だ。家に戻って来い。」
「嫌!」
「えっと、これってどういう話なんですか?」
魔王と詩音、二人の話について行けない奏。
「うむ。詩音は我が許可を得ずに人間と結婚した。」
「そもそも結婚に親の許可って言ってるのが古いのよ。」
「我はあのような輩を認めはせん。」
「だからどんな輩かなんて会ってみないとわからないでしょ?一度会って話をしようって言ってるんじゃない!」
「話さずとてわかることもある。ケモナーなどというヘンタイに娘を預けようという親がどこにいる。」
「娘を預けるって、私は自分の意思でいるところぐらい決める!」
話をまとめると、祖父・魔王は母・詩音の結婚に反対で、母は取りあえず父と会ってみようと言っているが、祖父はそれを了承しない。
「だからもう関わらないって出ていったんでしょ!」
「話は終わっていない。」
「進んでいないんでしょうが!」
バチバチと火花を散らせる祖父と母。
比喩ではなく、祖父と母はそれぞれに手や目からバチバチと火花を出している。
「しかし、このままでは平行線なのは間違いない。」
先に折れたのは魔王・祖父。
「そこで古のしきたりで決着を付けよう。」
「古のしきたり?」
母は怪訝な顔をする。
「詩音の子、奏よ。」
「はい!」
急に名前を呼ばれて声がひっくり返った。
「我と戦え。」
「え?」
「な………」
疑問符を浮かべた奏に絶句する詩音。
今ここに祖父VS孫のマッチが組まれた。