実家
「ここは………」
呉爾公君が止まったのは大きな屋敷の前である。
ただ普通の場所ではない。闇の中、ここは鬼達が住む世界。
向こう側と呼ばれる世界である。
「ほう。本当に来るとはな。」
その前で待っていたのは母と共に闇に消えた鬼・闘鬼だ。
「だがこれより先に」
闘鬼が続きを口より出す前に車に変身している呉爾公君の口からビームが放たれた。
「え?」
ドオオンと音がして闘鬼が吹き飛んだ。
「さっ、入るのだ。」
「え?」
困惑する奏をよそにそして門に向かってまた口を開いた。
ドオオン
門が破壊された。
辺りを黒煙と砂埃が覆いつくす。
「ボクはここまでなのだ。もう持たないのだ。」
無茶苦茶な呉爾公君に呆然としていると、呉爾公君の体が薄れていく。
「へ?」
「あとは君達次第。頑張るのだ。」
呉爾公君の体が消えていく。簡単に言えばエネルギー切れだ。
奏の式神ではない呉爾公君は家から出ると、長いこと存在を保つことは出来ない。
そんな状態でビームを二発も撃ったのだからエネルギー切れは仕方ない。
だが問題は
「待って!この状態で置いていかないで!」
呉爾公君の体が消え、黒鉛と砂埃が収まった時、目の前には鬼や魔が立っていた。
「あの闘鬼を倒すだけではなく、本拠地へ攻撃を仕掛けてくるとは、なかなかの度胸だな。」
「誤解です!」
鬼だけではなく、カラス天狗や犬神、大蛇、牛頭に馬頭………この場にいるのはどれも並外れた力を感じる。
「その度胸は認めよう。」
その先頭に立っていたのは鴉だ。
頭は三つ目の鴉、体は人間のようだが背中には黒い翼が生えている。
「我は山本。山本九郎、百鬼を従える魔王なり。」
「つまりここのボスですか?」
すいませんと謝って引っ込みたくなる気持ちを堪えて質問する。
「然り。」
「母を返してください。」
「否、それは違う。」
その返答を奇妙に思う。
無理やダメなら分かるが違うとはどういうことだろう?
「詩音は元より我が娘。こここそがあやつの家だ。」
「でも!」
今はわたしのお母さんで話したいことがたくさんある。
ここで引っ込むわけには
「娘?」
いかないが一点引っかかった。
「詩音は我が娘。すなわち、汝は我が孫なり。」
「え?」
「立ち話もなんだ。我が家に入るが良い。」