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1-1-2 逆行少女と無痛少女


 サーナと一緒に峡谷に向かう途中、サンドイッチを食べながら森の中を歩く。


「おっ、クスリじゃん」


 するとサーナがクスリの原料になる植物に目をつける。

 どれが原料とか私はよく分からないけど、サーナはすぐ見分けがつくらしい。


「採ってく?こういう自生してるのでもいいの?」

「どっかなー、前に試した感じ買ったのが気持ちよかったよ」

「試してたんだ」

「散歩してるとつい採っちゃうんよねー」


 そういう物なのかな?

 あそこにリンゴが成ってるみたいな感覚が割と近そうだね。


「採ってってもいいよ、お金浮くし」

「じゃっ、採ってっかー」


 私はサーナが差し出してきたサーナの分のサンドイッチを持ってあげる。

 サーナが腰に携えているナイフを取り出して根本から全部切り取り、それを何回か繰り返して付近のクスリの植物を刈り尽くす。


「全部取っちゃっていいの?」

「鳥さんが運んでくるんよー」

「そんな子供みたいな」

「比喩じゃないかんね、実を鳥が食べて糞になって落ちて広がるんよ。繁殖力も強いから大丈夫ってのもあるかなー」


 刈り終えた植物をサーナが自分のアイテムボックスの中に詰めていく。


「ひゃー、こりゃたまんないねー」


 そのセリフはサーナのダウナーな口調には合ってないけど、それでも心の奥では楽しそうなのが声色に乗っている。


「それを乾燥させたら、サーナの部屋に置いてある瓶の中のシワシワのになるの?」

「この葉っぱを切ってーって色々して、乾燥させたらああなるんよ」

「へぇー」


 へぇーだね。

 街によっては規制されてたり、あまり常用する物ではないみたいになってるけど、作り方自体は簡単そう。

 でも逆に街によっては推奨されてたりと、不思議な植物だね。


 サーナは休みの日とかセックスする前に吸ってるけど、吸う人はもっと吸ってるのかな?

 私達が住んでるハスネールでは、規制はされずとも表には流通してないし、私みたいに吸ってないのが当たり前だから吸う人自体は少ないんだろうけど、吸う人達がどのくらい吸うか気になるね。

 それでサーナが吸いすぎかどうか分かるだろうし。


「サーナって吸ってる方?」

「どうだろ。村にいた時よりかは全然吸ってないのは間違いないねー」

「どういう時に吸いたくなるの?」

「前までは吸ってないとダメーって感じでさぁ、でも今は感情がアガったり、マーちゃんとえっちしたいなーって時?」


 セックスのは完全にそうだよね、セックスする前に吸ってよくキマってるし。

 あれ、あんなに気持ちよさそうなの不思議だよね。


「今日のはどっち?」

「あれはアガっちゃってねー。それで吸って切ってた感じ」

「なんだ、セックスしたい訳じゃないんだね」

「えー、シたいの?シたいんか?マーちゃんがどうしもってんなら、シてあげてもいいよ?」


 サーナのダウナー系の煽り口調というのは、本当に心に響くものがある。


「じゃあ今日、帰ったらする?」

「いいねー、どうする?遅い時間に帰るだろーし、お風呂とかでシちゃう?」

「それって吸う時間あるの?」

「まぁー、大丈夫っしょ。ていうか夜通しエッチしよ?」

「いいの?多分辛いのサーナだよ?」


 ネコはサーナだし、まだ11歳で体力面的にもね。


「今日はウチがタチするからねー」

「ふーん、そうなの?」

「覚悟しとけー?」


 サーナが悪戯っぽい笑顔を見せてくる。

 かわいい、めちゃめちゃしてあげたい。

 絶対タチしてあげるからね、楽しみにしててね。


「ほら、サーナの」

「さんきゅー」


 サーナにサンドイッチを渡して、アイテムボックスから水筒を取り出してそれに口をつける。


「ウチにもあとでちょーだいね」


 私は頷いてサーナに水筒を差し出すと、サーナがサイドイッチも持ってる手とは逆の手で受け取る。


「そんなことよりもどうやって倒す?」

「あー、どうしよっか。ワームより大きいってカミラっち言ってたけど、まっ、ワームはワームでもギガントワームだよねー」

「多分ね」


 数センチとか数10センチのワームなんてそんなかわいい魔物ではなく、最低でも5メートル以上のギガントワームのはず。

 そしてカミラの話だと、そのギガントワームとは比較にならないほど巨大と…


「何10メートルあると思う?」

「やっぱ、30とかかな?」

「だよね、そのぐらいあると思うよね…」


 それに地震まで起こせちゃうみたいだし。


「銃で倒せるかな?」

「倒すしかないっしょ。ウチらの武器って銃しかないしー、それかマーちゃんの魔法で倒すのもアリだね」

「えぇ、30メートルもある怪異に魔法なんて通じるかな?」

「銃も魔法もダメってなったらー、時間戻して小さくする?その間、ウチが惹きつけてあげっから」


 サーナが軽く反復横跳びする。

 それで避けれるかな…?


「そうは言っても小さくするのに時間はかかるし、もしかしたらサーナ潰されちゃうかもよ?」

「いいっていいってー、痛くないから。死んでもマーちゃんが生き返らせてくれるし」

「そういう問題じゃないんだけどね」


 恋人が死ぬって、そこそこ心にダメージ負うからね。

 私が時間を戻してサーナを元通りに出来たとしても、死んだサーナの虚な表情と地面に広がる血溜まりを見るのは正気ではいられない。

 サーナが生き返る頃には平静を取り繕えても、その前の私は気が気じゃないんだよ。


「ワームの巨大版だから、銃で仕留めるならどこ狙う?」

「やっぱ頭じゃね?脳破壊が1番っしょー」

「頭ね、私はずっと頭に撃ち込むけど、サーナはどうする?」

「そだねー、目かな?ピーナナちゃんだと奥までめり込む火力ないからね」

「それじゃあ私が頑張って脳に当て続けないとね」

「頑張れー、応援してるぞー」


 サンドイッチを食べ終えたサーナが、空いた手で水筒を持っている手の手首を拍手のように叩く。


 サーナからしてみれば、ただ囮引き受けるだけで後はマーちゃんが倒してくれるって気が楽かもしれないけど、私は早く倒さないとサーナが死ぬかもしれないってプレッシャーが。

 人を生き返らせれる以上、もう少しサーナの命を軽く見れたらいいのかもしれない。

 でも恋人が死ぬのを許容できるほど、そんなに私は薄情でいられる程の性格ではないから、少し損かもね。


「よし、さっさと倒してえっちするぞー」

「セックスのためなのね。頑張ってくれるならなんでもいいけど」

「そそ、とにかく頑張るぞー」


 早歩きのサーナの後を追いかける。

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