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ハーブティーと涙と溺愛キャンディー  作者: 炭酸水『しっぽのきもち』
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「それなら、このポーションをあげる」


 ここは町の一角の魔女の家。リーレンが私に小瓶を渡す。『惚れ薬』って書いてある。


「要らないわ! 」

「貴女の育てた薬草から抽出された成分も入っているし、依頼された余り物だから薬草の代金として受け取りなよ」


「代金を貰おうとして持って来たことなんかないわ」

「趣味で育ててるからって、貰うものは貰わなきゃ」


 笑いながらリーレンが私の買い物かごに放り入れた。


「ハーブティーに三滴ずつ。何日かすればレイフ様がなびくよ」

「私は、そういうつもりは一切ないから! 」


 片思いの話はしているけれど、ここが屋敷の外で口の堅いリーレンにだから話しているだけで、レイフ様をどうこうしようって相談をしているわけではない。


「まあ、持っていってよ。何か役に立つかもしれない」

「そんなことないから! 」


 買い物かごから出して突き返そうとしたときに、魔女の家のドアが開いた。


「リーレン、頼まれたものを届けに来た。俺の頼んでいたもの出来た? 」


 ドアを開けてスタスタと入ってくるのは、私と同じ猫族のハンス。家具屋職人の家に育って、黒い耳としっぽが立派な青年。ハンスに見られたらまずいと、『惚れ薬』をリーレンに返すタイミングを失った。


「ティア、用事が済んでいるのならいっしょに帰らないか? 途中まで送っていくよ」

「うん」


 用事が済んだ私とハンスは魔女の家を出ると、町の中を歩いて領主の屋敷に向かう道を途中までいっしょに歩いた。


「少し休んで話さないか? 」

「なあに? 」


 緑色の目をキラキラさせて、ハンスが私を町外れの大きな木の下まで連れていくと、その太い根の上に私を座らせた。ハンスも私の横に座ると、『大事な話なんだけど』と話を始めた。


「ティア、俺が家具職人として一人前になったらお嫁さんになってほしい」


 私は目を丸くした。


「えっ? 」

「驚くかもしれないけど、一目見てからずっとティアが好きだよ。」


 真剣な目でジッと見られて、私はびっくりしたまま動けなくなった。目をぱちくりしていると、ハンスは話を続けた。


「ティアのために薬草の温室ぐらい、俺、作ってやれるよ? 」


 何度かマリア様の屋敷に薬草を取りに行くに付き合ってくれたハンスは、私のことをよく知ってくれていた。


 私はレイフ様を思い出してうつむくと、ハンスは苦笑いをして私の頭を撫でて言った。


「急に一人前にならないからゆっくり考えて。でも、今度の技能試験で合格したら、またプロポーズさせて」


 私の手を取って木の根から地面に私を降ろすと、町の外、ブラフォード家に向けて手を引いてくれた。


 ハンスと別れの挨拶を交わそうとすると、ハンスの後ろからレイフ様が見えた。


「ティア、帰り道? いっしょに帰ろう」


 レイフ様も町での用事があったのか、帰り際だった様子。


「これは、レイフ様」

「やあ、ハンス。ティアの見送りをしてくれたのか」


 レイフ様のすぐ後ろに屋敷の馬車が付いてきていて、私を乗せてくれた。


「ハンスと何を話していた? 」


 馬車の中でレイフ様は確認とばかりに質問をしてきた。嘘がつけない代わりに押し黙る癖のある私に、レイフ様は困った様子。


「何でもありません」

「ハンスはずいぶん大事そうな話をしていたみたいだけど……」


「‥‥‥すみません」

「踏み込んだ質問だったみたいだね。悪かった」


 私とレイフ様を乗せた馬車はすぐにお屋敷について、私は仕事に戻った。

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