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巫女姫は花をいけたい  作者: 鈴蘭
後日談
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アネモネの女子会 その2

アネモネ視点です。

 「あー・・・えっと、私、人前とか苦手で。ほら、花の仕事って基本的に裏方ですし」


 困った様に微笑みながらおっしゃいますが、だからと言って結婚式をしなくても良いだなんて・・・。これは由々しき事態です。


「レペンスさまは何とおっしゃっていますの?」

「そうですわ!共に愛を誓い合いたい筈ですわ!!」

「私の好きにして良い、と」


 あのお方は貴族ではないので柵もありませんから、何が何でも結婚式を、とはならないでしょうし、何よりマリカさまのご意思を優先なさっても不思議はありません。でも。


「マリカさまの花嫁姿をご覧になりたい、とはおっしゃいませんでしたの?」

「あ、いえ、あの、それはその・・・」


 もごもごしながら見る見るうちにお顔が真っ赤になっていきます。ああ、これは、アレですわね。


「マリカさまの花嫁姿は誰にも見せたくない、とかそういう、」

「きゃああああああああ!」


 意外なことに、私の言葉を遮ったのはプレティアさまでした。


「えええっ?そうなのですか?レペンスさま、そんなことおっしゃいますの?あの無表情の堅物っぽいお方が?まぁ、何てこと・・・!」


 何故かお顔を真っ赤にさせて悶えていらっしゃいます。つい先程まで照れていらしたマリカさまも、悶絶されるプレティアさまのご様子を呆然と見守っておいでです。

 いえ、まぁ、わかりますよ?普段あんなに表情のないお方がマリカさまにだけ甘いお顔をなさってさりげなく甘いお言葉をおっしゃるのですもの。意外過ぎてびっくりなさるのは充分わかります。ですが、悶え過ぎではなくって?


「プレティアさま、落ち着いて」

「あ、ああ、嫌だわ、私ったら。つい興奮してしまいましたわ」


 ふう、とぱたぱたと赤くなったお顔を両手で扇いでひと息吐かれると、プレティアさまはカップに手を伸ばしてお茶をお召し上がりになりました。私もマリカさまもひと息入れます。

 今日の紅茶は初摘みです。雑味がないふくよかなお味を味わっていますと、だんだん気持ちも落ち着いてきました。気が付くと話題は紅茶へ、そしてお菓子へと、どんどん移り変わっていきました。




 さんざんおしゃべりをして少し落ち着いた頃、扉をノックする音が聞こえ返事をしますと、メイドが告げました。


「レペンスさまが、マリカさまのお迎えにといらっしゃいました」


 まぁ!わざわざお迎えにいらっしゃいましたのね。


「ごきげんよう。アニュアス夫人、マグノリア夫人」


 レペンスさまが、私とプレティアさまにおっしゃいました。私達も立ち上がってご挨拶をしますと、レペンスさまはマリカさまのお側へいらっしゃっていつもの様に頬を撫で、耳のピアスに触れながら言います。


「楽しかった?」

「はい。とっても」


 にっこりと幸せそうに笑うマリカさまをご覧になって、レペンスさまはうっとりとしたお顔をなさいました。そして、ピアスに触れていた手が髪に移ってマリカさまの艶やかな黒髪を一房すくい、愛おしそうに口付けます。

 それをご覧になったプレティアさまは、お顔を赤くして今にも叫び出しそうにぷるぷると震えていらっしゃいます。


「今日はもう失礼するよ。二人ともありがとう」

「あ、ありがとうございました。アネモネさま、プレティアさま、またお誘いくださいませね」

「はい。もちろんです」

「またお店にもお伺いしますわね」


 挨拶を交わすと、レペンスさまはすぐにでも連れて帰りたいという様にお顔を赤くしたマリカさまの腰を抱いてさっさと出て行ってしまわれました。


「まさかとは思いますけれど、あれがいつも通り、なのですか?」

「ええ。お二人はいつもあんな感じですわ」


 甘々、という訳ではないのですが、甘い面等一切お見せになることのなかったレペンスさまのあまりに甘いご様子に充てられて、何だかどっと疲れた私達なのでした

これにて完結です。

お付き合いくださいましてありがとうございました。

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