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エメラルドのピアス

 何着も試着をして、オフホワイトのドレスと若草色のドレスを購入することに決まりました。私の為に、いきなり誰とわかる色では恥ずかしいだろうと、少しぼかした色にしてくれました。そして、どちらもお昼に着ることを想定した露出の少ないタイプです。夜会へ行く訳ではありませんからね。


「もっと、いかにもレペンスさまのお色!という感じにしたいところですが、仕方ありませんわ。今回はこれで充分でしょう」


 アネモネさまが満足気に頷きました。及第点が頂けました様で何よりです。


 それから、少し改まった感じのワンピースも何着か購入することになりました。いえ、そんなにお洋服ばかり不要ですよ?それに私、そんなお金ありませんし。


「僕がマリカに贈りたいんだから良いんだよ」


 またも顔に出ていたのでしょうか。トリフォリウムがそう言いました。


「でもこんなに高価なものばかり、申し訳ないです。時間はかかると思いますがいつか必ずお返しします」


 だって、明らかに超高級店ですからね?私の花屋のお仕事と家事労働の何年分かかるのか全く見当もつきませんが、いくらトリフォリウムが優しいからと言ってそんなに高価なものを頂く訳にはいきません。


「マリカ、貰ってやれ。どうせこいつは金の使い道なんて無いんだから」


 くすくすと笑いながらヘリアンサスが言いますと、アネモネさまも続きます。


「そうですわよ、マリカさま。殿方のご厚意を無碍にしてはいけません」


 ・・・そういうものなのでしょうか?そうは言いましても、トリフォリウムにはお世話になってばかりで私からは何も返せていませんのに。あまりに申し訳ない気がしてトリフォリウムを見ますと、アネモネさまを援護する様にうんうんと頷いています。


「わかりました。今回はお言葉に甘えさせて頂きます」


 そう言いますと、三人ともが満足そうに大きく頷いたのでした。




 その後、四人で食事をして帰宅した頃にはすっかり遅くなっていました。


 帰宅後、入浴を済ませ、いつものおしゃべりの時間をハーブティーを頂きながら過ごしていますと、トリフォリウムが小さな白い小箱を出して来ました。むむ、これはアクセサリーが入っていそうな小箱です。


「開けてみて」


 開けてみますと、カボションカットの石が載ったシンプルで小さなピアスが入っていました。綺麗なグリーンの石はエメラルドでしょうか。まぁるいカットが可愛いです。


「これをいつも付けていて欲しいんだ」


 珍しく、笑顔でなく真剣な表情で言われました。


「いえ、あの、こんな高価なもの頂けません。今日はドレスもワンピースも沢山買って頂きましたし・・・」


 そう。今日はもう充分買って頂いているのです。これ以上はあまりに申し訳がありません。


「実は随分前に買っていたのだけど、なかなか渡せなくてね」


 少し言いにくそうに、ぽつりぽつりと話します。こんなトリフォリウム、珍しいですね?


「このピアスを付けていれば、マリカに何かあればわかる様になっている。もしものときの為にも付けていて欲しいんだ」


 ナルホド。そういう用途でしたか。トリフォリウムの魔法がかけられているのですね。色合いと言い、何か別の意味があるのかと思ってちょっとドキッとしてしまったではないですか。今日は「色を纏う」ということについて色々ありましたので、つい意識してしまいました。自意識過剰でしたね。失礼しました。


「いえ、あの、でも、」

「また今回の様なことがあった場合すぐに駆けつけられる様にする為にも、付けてくれるよね?」


 あら?先程までの遠慮がちな態度は何だったのでしょう?いつも以上に有無を言わせぬ感じで被せてきますよ?


「・・・はい。ありがとうございます」

「良かった」


 負けました。

 にっこりと笑って私の頭を撫でるトリフォリウムを見ていますと、「まぁいっか」という気持ちになってしまいます。私の安全の為に必要なものの様ですし深い意味も無さそうです。でも何故でしょうね?少しだけ、どこかがっかりしている私がいました。

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