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正装の理由

 馬車の中で、これまでのことを聞きました。

 トリフォリウムは帰宅後、家の中の様子がおかしいこと、私がいないことに気付いて、すぐに私を捜してくれたそうです。私が纏っているトリフォリウムの魔力を辿って、公爵邸にいることを知ったとか。なんと、そんな利用方法もあったのですね。


 でも、筆頭公爵家であることと国王陛下の妹君の嫁ぎ先ということとで、公爵家への捜索の許可を国王陛下が渋ったそうです。誰だって身内と揉めたくはないですものね。しかも、公爵は巫女姫召喚も巫女姫誘拐も否定していたそうですから尚更です。公爵は何も関わっていませんでしたから、当然の反応です。


 それに納得のいかないトリフォリウムとヘリアンサスがキレて、職を辞すると言い出したそうです。王宮筆頭魔法使いと第一近衛騎士団長を失っては堪らないと焦った王太子殿下が国王陛下との正式な謁見の場を急遽用意し、半ば脅しの様な形で公爵家への捜索許可を出させたのだと、王太子殿下が疲れ気味に話してくれました。

 それで二人とも正装だったのですね。


「まったく・・・。お前達はどれだけマリカが大切なんだ。まぁわからんでもないが」


 心底疲れたというお顔で王太子殿下が言いました。


 公爵は身に覚えが無いことだとずっと捜索部隊を非難していましたが、まさかの事実発覚にすっかり萎れてしまったそうです。愛娘がやらかしてしまったのです。ショックも受けますよね。


「マリカは侯爵家にとって恩人も同然なのだから当然だ」


 ヘリアンサスがそう言って、柔らかい表情で私を見ました。恩人だなんて大袈裟ですね。ただ花をいけに行っているだけですのに、過大評価にかえって恐縮してしまいます。


「そうだよ。わかりきったことを聞かないでくれるかな」


トリフォリウムはそう言いながら、隣に座る私を抱き寄せる様にしてずっと髪を梳かしています。私もまだ不安な気持ちが強いせいか、ついトリフォリウムにくっついてしまっていますが、よくよく考えてみましたら王太子殿下の前でこんな状態でいて良いのでしょうか。


 王太子殿下は私達三人を見渡した後、大きな溜息を吐いてそのまま黙ってしまいました。


 すると、突然ヘリアンサスが憐れみを込めた目をして私に言います。


「マリカ、たまにはトリフォリウムに嫌だと言っても良いんだぞ?」

「嫌、ではありませんが・・・。でも、こうして魔力を纏わせてくれているのですよね。今回もトリフォリウムの魔力を纏っていたからこそ見つけて頂けたのだと思うと、たくさん纏っていた方が安心な気がします」

「それはそうだが・・・」


 それきり黙ってしまいました。微妙な沈黙が流れますが、気にしないことにしましょう。


 ところで、この馬車はどこにむかっているのでしょう?暗くてわかりませんが、何となく家ではなさそうな気配がします。


「これから王宮へ行く。明日の朝一番で父上に謁見するから、今夜は王宮でゆっくり休め」


 王太子殿下が言いました。きっと気を利かせてくれたのでしょうが、私は家に帰りたいです。王宮なんて行きたくありません。


「父上にご説明申し上げることが必要なのだ。マリカには迷惑なことだと思うが、頼む」


 うぅ・・・。王太子殿下にそんなことを言われては、いくら嫌でも仕方ありません。でも公爵邸でものすごーく心細かったので一人は嫌だと思ってしまうのですが、それは我儘でしょうか。


「僕も今日は王宮に泊まるから。マリカが眠るまで側にいるから安心して」


 また私の考えていることがバレてしまった様です。でも、トリフォリウムも一緒なのですね。それなら安心です。


「俺も今日は王宮に泊まるからな」


 ヘリアンサスも泊まるのですか。ヘリアンサスとは一緒に暮らしている訳ではありませんので離れていても寂しくはありませんが、見知った人が一人でも多くいてくれるのは心強いです。ありがたいことですね。


「そうなのですね。なら安心です。ありがとうございます」


そう言って、私は心から安心したのでした。

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