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脱出するべきか否か

 リコリスさまは、泣きながら私にもたれて寝てしまいました。泣き疲れてしまった様ですが、どうしたものでしょう。

 できることならここから脱出したいのですが・・・。目覚めたときに思った様に、ガラスを割ってカーテンを繋いで階下に降りるまでならできそうなのですが、その後がどうにもなりそうにありません。外は真っ暗ですしここがどこだかわかりませんので、家まで帰れる気がしないのですよね。


 私の肩にこてんと頭を載せたリコリスさまは、すやすやと気持ち良さそうに寝息をたてています。

 こうして見ると少し幼くも見えるリコリスさまが、禁を犯してまで私を召喚して、更にはこんな風に攫ってしまうなんて。恋のチカラとは恐ろしいものです。


 ピオニーちゃんと侍女の方はどうしているのでしょう。何事もないと良いのですが。おそらく侍女の方はピオニーちゃんのことで何かしら脅されて、あの様なことをしたのでしょう。最後に見えたお顔はひどく泣いていましたからね。

 それもリコリスさまの指示なのでしょうか。それともあの騎士の独断?どちらにしましても、ピオニーちゃんが怖い思いをしていないと良いな。


 そこまで考えて、急に寂しくなってきました。なんとなく右手で頭を触って、そのまま髪を梳かします。髪を一房取って鼻にあてて匂いを嗅いでみました。

 ・・・うん。先程髪を洗って頂いたときの洗髪料の香りしかしません。トリフォリウムはいつも髪に触れて私に魔力を纏わせていると言っていましたが、嗅いでわかるものでもない様です。私は今もトリフォリウムの魔力を纏っているのかしら?


 ああ、意識したらもっと寂しくなってきました。思えば、この世界に来てトリフォリウムと一緒じゃない夜なんて初めてのことですから、不安にならない訳がありません。


 私にもたれているリコリスさまの身体をそっとずらし、そのままソファに寝かせました。冷やしてはいけませんので、ベッドからお布団を持ってきて掛けます。


 さて、身軽になりましたところで、改めてお部屋を見て回ります。二つあるドアは、やっぱり鍵がかかっていますし、バルコニーへと続く窓も同様です。リコリスさまがお部屋にいることですし、呼べば誰か来るのではないかしら。その隙にドアから逃げる?

 いえ、でも脱出したところで外は真っ暗で、文字通り右も左もわからないところです。明るくなるまで待つのが最も確実でしょう。となりますと、動くのは明け方が良いかしら。

 とは言え、窓ガラスを割るには椅子を思いっきりぶつけるしかなさそうですので、絶対に音で気付かれますよね。むう、どうしたら良いのかしら・・・。


 明日になれば王宮へ連れて行かれます。連れて行かれたところで、国王陛下がリコリスさまのあんなバカげた要望を聞き入れるとは思えません。きっとハイアンシス王太子殿下も同様の筈です。それなら、明日になれば家にも帰れるのではないかしら?


 ああでも王宮に行くなんて、何か厄介ごとが増える気がしてなりません。できれば行きたくない。

 うーん、どうしたら良いのか全くわかりません・・・。


 ああでもないこうでもないと思案していますと、ガチャリとドアが開きました。

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