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侯爵夫人

 広い広い庭園を経て、侯爵邸のエントランスホールへ到着しました。いや本当に広い。迎賓館みたいです。


 トリフォリウムと私がお邪魔させて頂く事はお知らせ済みだった様で、侯爵夫人と執事らしき方がお出迎えくださいました。執事ですよ!執事!

 ヘリアンサスと同じ黄味がかった金髪に金色の瞳をしたとても美しい侯爵夫人が、満面の笑みで私に近付いて言いました。どうやらヘリアンサスはお母さま似の様です。


「あなたがマリカさまね!お会いしたかったわ!いつも素敵なお花をありがとうございます!ああ、なんて可憐でお美しいのかしら!」


 興奮した面持ちで一気に捲し立てます。何だか褒めてくださいましたが、あなたの方がずっとずっとお美しいです。


「母上、落ち着いてください。マリカがびっくりしています」

「ああ、ごめんなさいね。いつもヘリアンサスからお話を聞いていて、お会いできるのをずっと楽しみにしていたものですから・・・」


 頬を染めて少ししゅんとする姿は、まるで少女の様に可憐です。うん。やっぱりあなたの方がずっとずっと可憐です。


「わたくし、ヘリアンサスの母のフリージアと申します。巫女姫のマリカさまにお会いできましたこと光栄に思います。本日は急なお願いにもかかわらずおいでくださいまして、本当にありがとうございます」


 先程までの興奮が嘘の様にゆったりと言いました。なんて優雅!なんて気品!


「こちらこそお会いできまして光栄です、侯爵夫人。椿谷茉莉花と申します。どうぞ茉莉花とお呼びくださいませ」


 念の為、カーテシーをしてご挨拶をします。学校でプロトコールマナーも学びましたが、カーテシーは苦手です。現代日本においては日常的にする機会はありませんし、深くすると若干ふらつきそうになりますが、何とか堪えました。


 侯爵夫人とトリフォリウムは満足そうに微笑んでいましたが、ヘリアンサスは私がその様な挨拶をするとは思っていなかった様で、目を丸くして驚いていました。


「マリカは貴族ではないと言っていたが、どこでそんな所作を覚えたんだ?もしかして没落した元貴族とかなのか?」

「いえ、私のいた国には貴族制度はありません。マナーはまぁ、学校や家で教わりました。」


 私が通っていたのは、小学校から大学までエスカレーター式の古風な女子校でしたので、そんなこともカリキュラムに含まれていたりするのです。また、母がまぁまぁ著名なフラワーデザイナーなこともあり様々な方との交流がありましたので、その辺りに関しては厳しく躾けられてきました


「そうなのか・・・。トリフォリウムは知っていたのか?」


 そう言えば、驚いていたのはヘリアンサスだけですね。


「いや、そんなに詳しくは知らないけど、一緒に暮らしていれば何となく察するというか」

「わたくしは、マリカの立ち居振る舞いが美しいことくらいひとめで見抜きましたわよ?」


 二人にそう言われ、ヘリアンサスは何だか微妙な表情になってしまいました。


「そんなことより、そのお花!わたくしの為に持ってきてくださったの?」


 侯爵夫人が、待ちきれないというお顔をして言います。


「はい。爽やかな香りをお楽しみ頂こうと、ハーブをたくさん入れてみました。お気に召すと良いのですが・・・」

「素敵ねぇ。ここまで香ってくるわ。そうだ!ねぇマリカ、そのお花あなたがいけてくださらない?せっかくいらしてくださったのだもの。良いでしょう?」


 ご挨拶だけのつもりでしたが、花をいけることになりました。

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