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相談しましょう

「もう一日開店するのは良いとして、マリカ一人でするのか?」


 食後の紅茶を優雅に飲みながら、ヘリアンサスが言いました。

 閉店間際にお店に来て、その後三人一緒に食事をしに行くのが毎週恒例となっています。もちろん今日もブーケはお渡し済みです。黄色いバラにエリンジウム、ミントやローズマリーといったハーブをふんだんに使った、爽やかな香りのブーケです。


 「トリフォリウムのお休みを二日とも使ってしまっては、体を休めるときが無くなってしまいますから」


 王宮のお仕事は週休二日制。一週間や一カ月、一年といった単位は、大まかには元いた世界と同じです。そして、トリフォリウムは二日のお休みのうち一日を花屋の開店に充てています。


「僕は別に構わないんだけど」

「ダメです。ただでさえ、普段から疲れたお顔をしているのですから。一日くらいしっかり休んでください」


 初対面のときよりも随分と顔色も良くなり、目の下のクマも薄くなってきたとはいえ、痩せて不健康そうな印象は変わりません。家には早く帰ってくるものの、おやすみの挨拶をした後もなんだかんだと夜更かしをしているのはわかっているのです。そんなことを言いながらじっと見ると、バツが悪そうなお顔をして目を逸らされてしまいました。

 治安が悪い訳でもありませんし、一人でお店をするのもそんなに怖いことには思えません。トリフォリウムのお祖母さまだって、お一人でなさっていた訳ですしね?


「まだマリカを召喚した犯人だって捕まっていないのに、一人は危険だろう。絶対に避けるべきだ」


 ヘリアンサスの言葉に、トリフォリウムが眉を顰めます。ああ、私、そんなことすっかり忘れていました。心の持ち方と日々の生活と花のことでいっぱいいっぱいで、誰かが何かの目的の為に私を召喚したのであろうことが、頭からすっかり抜け落ちていたのです。今の私は、口を開けてお間抜けな顔をしていることでしょう。


「まさかとは思うが、忘れていたのか?」


 あきれた様に言うヘリアンサスに、


「忘れている様だからそのままでいさせたかったのに・・・何で言うかな」


 トリフォリウムがヘリアンサスを軽く睨んで言いました。ヘリアンサスは、全く、と溜息を吐きながら言います。


「そのまま気楽に過ごさせてやりかったのはわかるが、ちゃんと自覚していないと警戒もできないだろう。マリカの為にもならない」

「それはそうなんだけど・・・」


 トリフォリウムが嫌そうなお顔をしています。


「でも、私、お買い物とかで一人で出掛けたことありますよ?」

「数える程だけどね。最近は一人で出掛けていない筈だよ。それに、長時間店に一人でいるとなると意味が違ってくる」


 むむむ・・・。そう言われると、何だか一人でお店をするのが怖くなってくるじゃないですか。一緒にいて頂く方が安心安全なのは理解しましたが、一週間休みなく働き詰めるってどうなの?かなりキツイものなのでは?


「マリカの花のおかげで疲れはすぐに取れるし、どうしてもマリカが気になるって言うなら店の奥で少し休むこともできる。今の生活と大して変わらないと思うよ?」


 そうなのですか?・・・あら?何で私の考えてたことがわかったのかしら?びっくりしてトリフォリウムを見ると、


「マリカの考えそうなことくらいわかるよ」


 そう言って、ふんわりと笑って私の頭を撫でました。


 そんな私たちを、ヘリアンサスが信じられないものを見る様なお顔で見ています。


「・・・・・・何?」

「いや別に・・・。お前もそんなことするんだな、と思って」


 そんなこととは、頭ナデナデのことでしょうか?トリフォリウムは私が頭を撫でられると安心するのをきっと知っているので、事あるごとに撫でてくれるのだと思います。私も、隙あらば撫でてほしいと思っています。


「まぁ、それは置いておいて。もう一日店を開けるなら、安全の為にもやはり二人でするべきだ。マリカがどうしてもトリフォリウムを休ませたいなら、営業時間を短くして早く帰るのも良いだろう」

「あ、それ良いですね。半日・・・では短か過ぎるので、それよりもう少し長い時間にして、早めに帰って休めばトリフォリウムの負担も少ないですね」

「うん。大丈夫って言ってるんだけど、まぁそれでも良いよ」


 時短営業ということで落ち着いたのでした。

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