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七階 ギントは女蛮人に懇願された!

「ねぇ……」


「ん?」


 俺が知りたくもなかった衝撃の事実に両手と両膝をついて落ち込んでいると、褐色の女性がこちらを見下ろしながら声をかけてきた。


「貴方……私に何をしたの?」


「何を、とは?」


「惚けないで」


 褐色の女性は俺の言葉を一言で切り捨てる。そしてこの時の彼女は何かに怯えながらも希望にすがるような目をしていた。


「私……私はあの時、あそこで確かに死んだはずだった……。でも私はこうして生きている。貴方、さっき自分は特別だと言ったわよね? 私に何をしたの?」


 自分の死んだ時の事を思い出したようで顔色を悪くしている褐色の女性に、俺は「屍人形」のことを説明することにした。彼女は「屍人形」の魔術で復活した存在で、俺の秘密を知ったとしても「黙っていろ」と命令すれば他人に話すことはないだろうし、最悪の場合は魔術を解けばいい。


「そうだ。お前の言う通り、お前は一度死んで俺が復活させた。俺は死者を復活させるため魔術が使えるんだ」


「……!」


 俺が死者を復活させることができると言うと、褐色の女性は息をのみ大きく目を見開いた。そして次の瞬間、彼女は勢いよくその場で土下座の体勢となった。


「わ、私を復活させていただき、ありがとうございます! そ、それで厚かましいとは思いますがお願いがあります! どうか! どうか私達の部族をお助けください!」


「………はい?」


 俺は突然の褐色の女性の行動と、急に敬語になった言葉を理解できず思わず彼女を見た。どうやらかなり切羽詰まっているみたいだけど、助けてほしいってどういうことだ?


「ちょっと落ち着けよ? えーと、その……」


 そこまで言ったところで俺は褐色の女性の名前をまだ聞いていなかったことに気づき、それを察してくれた彼女が名乗る。


「私は人間であり魔物でもある種族『女蛮人アマゾネス』の一人。この山の向こうにある森で暮らす部族の族長の娘ウルと申します」


 アマゾネス? 人間であり魔物でもある? アマゾネスはまだ分かるとして、人間であり魔物でもあるってどういうことだ?


「そうか。俺の名前はギントと言う。とにかくまずは頭を上げてくれ。それで事情を聞く前に人間であり魔物でもあるとはどういう意味だ? できたらアマゾネスという種族……いや、魔物についても含めて話してくれるか?」


 お互いに自己紹介をしてから俺が説明を求めると褐色の女性、ウルは頭を上げて説明をしてくれた。


「は、はい。……魔物というのは胸の中に『魔石』という黒い石を持って『黒魔術』という特別な魔術が使える生き物のことです。人間は普通魔石を持たないのですが、ごくまれに魔石を持った子が産まれたり、逆に魔石を持った子ばかり産まれる種族があります。これらは人間であると同時に魔物でもあるとされています」


「なるほど。それでその、魔石を持った子ばかり産まれる種族がアマゾネスだと?」


 俺が聞くとウルは頷いて答えた。


「そうです。女蛮人アマゾネスにはいくつもの部族があって私達の部族はさっきも言ったようにこの山の向こうにある森で暮らしていました。そこに隣にある人間の国の軍隊がやって来たのです。あいつらは最初、私達と同盟を結びに来たと言っていましたが、それは罠だったのです……!」


 ウルはそこで一度言葉を切ると激しい怒りで表情を歪めた。


「あいつらは! 宴の席で出した酒に毒を混ぜていて、毒で動けなくなった私達に戦いをしかけてきたのです……! 仲間達は次々と殺されていき、私は母である族長に命じられて一人逃げたのですが、結局毒のせいで命を落としてしまったのです。……ですからギント様!」


 再び土下座の体勢となったウルが俺に懇願してくる。


「お願いします! どうか私を復活させてくれた魔術で私達の部族をお助けください!」

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