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二十四階 ギントは新たな情報を手に入れた!

「……! それ、は……!」


 トリアル王国がアマゾネス達を襲った理由を聞くと、アランはここで初めて抵抗するそぶりを見せたが、俺の命令に逆らうことができず質問に答え始めた。


「この辺りをトリアル王国の領土にするためと、女蛮人アマゾネス達の魔石を手に入れるためだ」


「魔石? 確か魔物とかの体内にある石だったよな? そんなものをどうするんだ?」


「魔石を飲みこみ体内に入れると、数回だけその魔石に宿る黒魔術が使えるのです」


 俺の口から出た疑問に答えてくれたのはアランではなくウルであった。


「そして私達女蛮人アマゾネスは『鋼の肉体』という体の強度を上げる黒魔術が使えます。この黒魔術を使ってから身体能力強化の魔術を使うと、更に体の強度が上がって簡単な攻撃では傷がつかなくなります」


 ウルの説明に納得した俺は一つ頷いてからアランの方に視線を向ける。


「なるほどな。確かにそれは戦いになれば便利な代物だ。……トリアル王国では近いうちに戦争でも始まるのか?」


「いいや。今のところは他国も大人しく戦争の予定ではない。だが女蛮人アマゾネスの魔石は貴重で、いつ戦争が起こるか分からないから、それに備えて回収するという命令が出された」


 アランの話し方からするとアマゾネス達の魔石の回収は、彼女達の部族を滅ぼしてこの地をトリアル王国の領土にする「ついで」といった感じだった。


 ここまで話を聞いて脳裏に、ここに来たばかりの時に見た、アマゾネス達の死体で作られた山が浮かび上がった。あの時の彼女達の死体は全て、胸を刃物で切り裂かれた痕があったが、今思い返せばあれは魔石を取り出した痕だったのだろう。


 ……このアランを初めとするトリアル王国の兵士達は「ついで」であんな惨いことをやったというのか?


「あー……アラン『くん』。さっきはあれで最後の質問だと言ったが、あと一つ答えてくれないか? お前は彼女達アマゾネスを滅ぼした時どう思った? 罪悪感とか抱かなかったか? 『正直に、自分の気持ちを答えろ』」


女蛮人アマゾネス達は外見は人間に見えるが中身は所詮魔物で、儂ら人間とは違う。何人殺したところで罪悪感など抱くはずがない」


 俺の命令で質問に淡々と答えるアランであったが、その表情は青ざめていた。何しろ自分の意思とは関係なく本心を喋らされて、それによって俺やアマゾネス達の視線が冷たくなり殺気を帯びていくのだから仕方がないだろう。


 だが俺はアランに決して同情などしないし、関心すらなくなっていた。


「もういい。ガル、そいつはお前達の『好きにしていい』」


「はっ!」


 俺がアランに背を向けてガルにそう命じると、すぐに背後から肉を叩いたり刃物で切ったりする音が何度も何度も聞こえてきた。それと同時に俺の体から魔力が抜け出ていく感じがしてきた。


 恐らくガルとウルを初めとするアマゾネス達が俺の命令通りアランを「好きにして」扱い、それによってアランが死ぬ度に屍人形の魔術が自動で発動してアランを復活させているのだろう。



【移動迷宮???での侵入者撃破数が十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】



 背後で肉を叩いたり切ったりする音を聞いていると、不意に移動迷宮からの情報が頭に流れ込んできた。


 なるほど。移動迷宮の中で侵入者を一定の数倒すと、移動迷宮と支配者のレベルが上がるのか。そして俺の屍人形の魔術はこのレベルアップの仕組みに上手く利用できそうだが……まあ、いいか。



【移動迷宮???での侵入者撃破数が二十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が三十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が四十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が五十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が六十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が七十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が八十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が九十を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】【移動迷宮???での侵入者撃破数が百を越えた!】【移動迷宮???と支配者ギントの力量が上がった!】



 頭の中に次々と移動迷宮と俺のレベルが上がる情報が流れ込んでくるのだが、今の俺は前世で同じ種族であった人間の醜悪な行動に強い嫌悪感を感じており、そのせいかレベルが上がって自分の能力がレベルアップに有効活用できると分かっても喜びを感じず、ただ冷めた気持ちでアマゾネス達がアランを痛めつける音を聞いていたのだった。

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