二十三階 隊長は復活した!
俺が屍人形の魔術を使用すると、隊長の死体の後頭部に刺さっていた矢がひとりでに抜けて、次の瞬間には後頭部の傷が消えて無くなり、先程まで死んでいた隊長はまるで深い眠りから目覚めたように復活した。
「うう……? ここ……はっ!?」
復活した隊長は、自分がアマゾネス達に囲まれている状況にあると気づき慌てて起き上がろうとするが、それより先に俺は口を開いた。
「『動くな』」
「………!?」
俺の命令によって起き上がろうとしていた隊長は急に体が動かなくなり、再びに倒れてしまう。
「な、何だこれは!? 一体何……」
「『自分から喋るな』」
「……………!?」
体の自由に続いて今度は言葉の自由も封じられて、隊長は驚愕の表情で必死に口を動かすが声は出てこず、その様子はどこか滑稽であった。
隊長がこのような状態になったのは当然俺の仕業だ。屍人形の魔術で復活した者は復活させた術者の命令に逆らうことができない。隊長と同じく死体から復活させたアマゾネス達には、指示を出したことはあっても命令をしたことはなかったから、いい実験になった。
「それじゃあ『質問に答えろ』。まずはお前の名前と職業は?」
「儂はアラン・クリシー。トリアル王国騎士団の十人隊長をしている。………!?」
隊長、アランは俺の命令に従って答えながら、口が自分の意思とは関係なく喋るという事実に顔を青くする。だが俺はそんなことは関係なく質問を続ける。
「次の質問だ。お前達はどうしてここへやって来た?」
「二日か三日くらい前から巨大な足音が聞こえてきたり、巨大な影が見えたなどの報告があって、その調査にやって来てこの移動迷宮を発見した」
巨大な足音や影というのは間違いなくこの移動迷宮のことだろう。やはり移動迷宮で行動するのは人目につきすぎるようだ。次からはもっと慎重に移動迷宮を動かさないとな。
「それで調査にきた部隊は他にもいるのか?」
「いない。調査に来たのは儂らの部隊だけだ」
よし。調査に来たのがアランの部隊だけだったらいくらでも誤魔化せる。
「ガル。兵士達の死体を全て集めておいてくれ」
「分かりました。主人様。……お前達」
アランの部下である兵士達の死体を利用してこの移動迷宮のことを誤魔化す方法を考えた俺はガルに指示を出し、彼女はそれに頷くと数人のアマゾネス達を兵士達の死体の回収に行かせた。俺は数人のアマゾネス達が兵士達の死体の回収に行くのを見送ると、再びアランの方を見た。
「最後の質問だ。……何故お前達、トリアル王国の騎士団はガル達の部族を襲った?」
『『………!』』
最後の質問はガル達にとっても聞き逃せないもので、この場にいる全員の視線がアランに向けられた。