二十二階 ギント達は戦いに勝利した!
この世界での初めての戦いは思った以上にあっさりと終わった。敵の数が少なかったのもあるが、それでもやはり敵が油断していたのが大きいだろう。
「被害を出さずに勝てたな」
「はい。これもギント様の作戦のお陰です」
移動迷宮の二階でアマゾネス達に怪我人などがいないか確認してから俺が言うと、それを聞いたウルが真面目な表情で答える。彼女だけでなく大勢のアマゾネス達が尊敬した目をこちらへ向けてくるのだが、俺が出した指示はとても作戦と言えるものではなく、そのような目で見られても少し困る。
俺がアマゾネス達に出した指示は、隠れて敵をやり過ごして油断したところを背後から襲えというものだけ。
この移動迷宮には隠れるところがほとんどないが、一階にある五つの区画、外へと繋がる方の入口の上には、数人の人が乗れる出っ張りがある。そこに弓が得意なアマゾネス数人を配置して、囮であるアマゾネスの少女に敵が気をとられたところを攻撃させたのだ。
「お前達もよくやってくれたな」
「はい! ありがとうございます!」
移動迷宮の一階で兵士達を仕留めた弓矢部隊のアマゾネス数人に労いの声をかけると、彼女達は恐縮したように頭を下げて一人のアマゾネスが代表として礼を言う。
「それで俺が作った弓矢はどんな具合だ? ええと……」
「リリと申します。そしてギント様に作っていただいた弓矢ですがとても素晴らしいです。驚くくらい正確で強力な矢が射てました」
俺が聞くと弓矢部隊の代表であるアマゾネス、リリは弓矢で兵士達を射った時のことを思い出したのか、若干興奮した様子で答えてくれた。リリは二十歳くらいの凛とした雰囲気を纏う美人であったが、それがこのように興奮して話す姿はとても可愛らしく見えた。
まあ、それは一先ず置いておくとして、俺の鎖鎌にリリ達の弓矢といった俺が作った武器は、トリアル王国の兵士達の防具をものともしない性能があるようだ。
これは非常に嬉しい結果だ。この調子でまだ武器を持っていないアマゾネス達にも個人にあった武器を与えてやれば、充分すぎる戦力となってくれるだろう。
だがその前にやる事が一つ。
「ガル。例のものを」
「はっ。……おい」
ガルが俺に返事をしてから近くにいたアマゾネスに声をかけると、数人のアマゾネス達が俺の前にあるものを持ってきた。それは後頭部に矢を受けて絶命した一人の兵士、この移動迷宮に侵入してきたトリアル王国の兵士達の隊長の死体であった。
兵士達の隊長であれば何故トリアル王国がガル達アマゾネスの部族を襲ったのか、そしてアマゾネスの部族を滅ぼした騎士団の本隊がこれからどのような動きをするのか、色々知っているはずだ。それを洗いざらい話してもらうため、俺は隊長の死体を屍人形の魔術で復活させることにした。