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十八階 兵士達は移動迷宮の中へ入った!

「これは……移動迷宮なのか?」


 全身を鎧で武装した十人程の集団のうち一人が自分達の目の前にある巨大な影、移動迷宮を見て呟く。


 鎧で武装したこの集団はトリアル王国という人間の国家の騎士団に所属している兵士だった。騎士団は数日前から「ある任務」の為にこの周辺の地に来ており、その任務も終わって国に帰還しようとした矢先に「夜中に地響きのような何かの足音が聞こえる」、「突然遠くに巨大な影が現れた」などの報告が上がって、それの調査の為にやって来たのが彼らである。


「この間はこんなものなかったはずなのに……」


 今、トリアル王国の兵士達がいる場所は、ほんの数日前までこの辺りを縄張りとしていた女蛮人アマゾネス達の集落があった場所だった。


 しかしもうここには女蛮人アマゾネス達の姿はない。トリアル王国の騎士団が一人残らず滅ぼしたからだ。


 人間であり魔物でもある女蛮人アマゾネスは非常に高い戦闘能力を持っており、正面から戦えば大きな被害を生む。そう判断したトリアル王国の騎士団は友好を結びに来たと偽り、宴の席で毒入りの酒を飲ませて動けなくなったところを一気に攻めて、女蛮人アマゾネス達を皆殺しにしたのだ。


 本来ならここには女蛮人アマゾネス達の死体を積み上げて作った山とその頂点に突き刺したトリアル王国の旗があるはずなのだが、どこを見ても見当たらない。代わりにあるのは八本の昆虫のような脚がついた巨大な球体、移動迷宮だけであった。


「この移動迷宮、俺達がここを離れている間にやって来たのでしょうか?」


「恐らくな。すると夜中に聞こえた地響きのような足音とはこいつのものだろう」


 十人程のトリアル王国の兵士達をまとめる隊長が、部下の言葉に頷くと自分の考えを口にする。


「それにしても……生きている移動迷宮なんて初めて見ましたよ」


「だろうな。儂も以前一度見ただけだよ」


 兵士達の中で最も歳が若い兵士の言葉に隊長が答える。


 移動迷宮は最初に足を踏み入れた者を自分の支配者として、移動迷宮の支配者となった者は移動迷宮を守る為に部下を集めて己の勢力を広めようとする。そして移動迷宮の支配者となるのはどういうわけかほとんど魔物で、人間達は被害が出る前に移動迷宮を攻略することを急務としており、移動迷宮を攻略した者達には多額の報奨金を支払われている。


 それに加えて移動迷宮の核は非常に貴重な財宝であることから、国の騎士団だけでなく魔物を倒すことで生計を立てている魔物狩りハンターも移動迷宮を見つけたら我先にと攻略を行い、それにより攻略されずに生きている移動迷宮を見たことがないという者は意外と多いのだった。


「どうしますか?」


「……とりあえず一度中を確認する必要がある。三人程入り口を見張って、残りは儂と中を調査するぞ」


 兵士の言葉に隊長はしばらく考えると、三人の兵士を入り口に残して移動迷宮の中へと入っていった。


 そしてその様子を近くの茂みから一匹の毛皮が銀色の猪豚鬼オークが見ていた。




「ほう……。入り口に部下を残したか……これじゃあ、背後から奇襲するのは少し難しいか?」

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