十七階 トリアル王国の兵士達が現れた!
時間があまりなかったので、とりあえず二十人分くらいの武器を作った所で武器作りを断念した俺は、トリアル王国の兵士達を待ち構える為に移動迷宮の奥……ではなく移動迷宮の外へ出ていた。
「主人様! 危険すぎます! 中へお戻りください!」
移動迷宮の外に出た俺にガルが必死な表情で移動迷宮に戻るように言い、見れば他のアマゾネス達も彼女と似たような表情をしていた。
「もうすぐ敵はここへとやって来ます! その前に移動迷宮の中で迎え討つ準備を……」
「あー、その事なんだが……」
ガルの言葉を遮って俺は彼女を始めとするアマゾネス達に声をかける。
「俺はこの移動迷宮の中で戦うつもりはない」
前世で忍者の家系であった俺は一応敵と戦う術を学んでいるが、それは物陰に隠れて背後から襲いかかるなどの奇襲を前提としたものがほとんどだ。そして移動迷宮の一階と二階には隠れる場所が全くなく、俺が戦うには不向きだ。
だからこそ俺は移動迷宮の外に出る事を選び、そしてこれからどうするかを部下のアマゾネス達へと説明した。
「俺は数人のアマゾネス達と一緒に移動迷宮の影に隠れて、敵が移動迷宮の中に入るまでやり過ごすつもりだ。そして敵が中に入った後で背後から攻める」
「挟み討ち、ですか……」
それまで無言で話を聞いていたウルが呟くと、俺は彼女に向けて頷いてからガルの方を見た。
「そうだ。それでガル。お前には俺の代わりに移動迷宮の支配者のフリをしてほしい」
「私が主人様の代わりですか?」
「移動迷宮の中を守っているのは全員アマゾネス。だったら族長のガルが支配者のフリをしたら、何も知らない敵はそれを疑いもしないだろう」
移動迷宮の支配者のフリ、つまり俺はガルに侵入者の目を引きつける囮になってほしいと言っているのだ。
こんな事は言いたくはないのだが、ガル達アマゾネスが死んでも俺の屍人形の魔術で復活させる事ができる。もし彼女達が侵入者に倒されても、その事に油断した背後を襲って倒した後でガル達を復活させれば被害をゼロにする事ができる。
「危険な役割を押し付けているし、正々堂々とはかけ離れたやり方だがやってもらえるか?」
俺はガル達に確認を取る。
屍人形の魔術で復活したアマゾネス達は術者である俺の命令には逆らえないのだが、本人達の意思を無理に捻じ曲げて無理矢理戦わせると士気が下がり、勝てたとしても今後の行動の支障が出るだろう。上司が部下からの人望がない上に恨まれている組織なんて脆いものだしな。
そう思って聞いたのだがガルは真面目な表情となって首を振る。
「いいえ。主人様のご命令ならば私達はどのような命令でもやってみせます。それに囮が引きつける間に背後から討つのは、狩りでも戦いでも当たり前です」
「そうか、助かる。それじゃあ……」
どうやら無用な心配だったようで俺の戦い方を難色を示すアマゾネスは一人もおらず、俺は一言礼を言うと早速これからの行動を説明して実行する事にした。そして……。
それから十分くらいしてついに侵入者、トリアル王国の兵士達がやって来たのであった。