8話
――――戦種・戦者クラス
「はー…… 戦者の選定を受けれたは良いけど、イマイチ合う武器がしっくり来ないな」
「分かる、俺も。」
「私はやっと決まった! 弓を使うよ」
専門授業が始まり、早3日。
戦者は、全ての武器の扱いを覚えつつ、その中で自分に合った物を見つける為の授業を最初は重点的に行うらしい。
初日から3日経った今、もうグループの半数は見つけて次の段階に入っている。
「陸人めちゃくちゃ体格良いし、剣の扱いスムーズだったから剣が向いてるんじゃね?俺はメイスにしようかな~」
「確かに今までの武器の中じゃ一番しっくり来たんだけど、なんかちょっと違う……」
様々な武器を試したが、妙にどれもしっくり来ない。
比較的扱いやすかった剣も、妙に大振りになってしまう感覚がある。
「陸人。お前もう一度剣で素振りしてみ」
先生に言われ、剣を手に取り素振りをする。
「な~んか、空振りというか大振りというか……。しっくり来ないんすよね」
「先生にはもっとちゃんとした敬語を使えよな。ふむ……。
そうだな、あまり最初に扱う生徒は少ないんだが、大剣試してみるか?」
「大剣ですか?」
「今授業で扱っている剣は片手剣だ。両手で持つ大剣は、ちゃんと扱うにはかなりの筋力が必要となる。
現段階で生徒らが扱うのはちと早いからここに置いてないんだが、持って来るか?」
「お願いします!」
大剣か~。
確かに、大剣ならこのスカスカした感じが減るかもしれない。
どんなんだろうな、わくわくするな!
「ほら、これだ」
「…………」
――――デカッッッ!!!!
剣先から柄の部分まで含めると、180cm程背丈のある俺の肩位程の長さがある。
大剣を使う戦者の話はよく聞くが、実物は初めて見たな。
こんなデカいのをブンブン振り回してるのか……スゲえな!!
「先生、これどうやって扱うんですか!」
「そうだな……まず両手で持って前に構えてみろ」
「重…………」
「ははは! そりゃ重いだろう。でもグループの他の奴らなら現時点じゃ構える事すら無理だろうよ。
そのまま振りかぶる事は出来るか?」
「うぐぐ……う、うおおおおおおおおお」
ブォンッ
「う、腕がもげるうううう」
「ははははは! 凄いじゃないか陸人。入学1週間で大剣を振りかぶれるなんて中々居ないぞ」
持ち上げてからの振り下ろしでそのまま脱臼するかと思った。
これがまともに扱える戦者凄すぎる……。
「どうだ。普通の剣の時の違和感は感じないか?」
「あ……」
確かに、まともに扱えないとかは置いといて、片手剣よりしっくりくる感じがある。
ずっしり来る感じが逆に気持ちよくもある。
腕がもげそうにならなきゃ何より良いのに……。
「先生決めました。俺、大剣を使っていきたいです」
――――――――――――――――――――
「ふぅ……やっぱり、思っていた以上にキツいな」
天束先生と話し合った結果、先生との鍛錬の後の時間なら俺の案を受け入れる事で話が付いた。
先生は「マジかお前」みたいな顔をしていたが。
体力と筋力付けるには丁度いい特訓だと思うんだけどな―――……。
「あ! 優! ……って、お前何してんだ?」
「お、陸人。何って、特訓だけど?」
――――――特訓その1・小屋造り。
アホとか言うなよ。
立派な基礎作りの一つだ。
幸い、戦種の校舎の裏の利用許可が貰えた。
木を伐採する所から、建築するまで1人で行う。
全身を使う為、バランス良く筋肉が付く。
オレの時の、最初の修行である「1週間で家を1軒建てろ」という無茶振りを軽くした特訓。
あの時も死に物狂いで休み無く建築したな~。
当時の体力と筋力に戻りたい……。
とか考えつつふと陸人に目線を戻したら、「マジかお前」みたいな顔して見てきている。
俺の中で陸人は何事も動じず受け入れる印象になりつつあるんだが、そんな表情されるとは心外だ……。
「陸人の表情も分かるが考えてみろ。木を伐採し、家を建てる。
めちゃくちゃ筋力と体力が必要になるだろ?」
「…………確かに!!!」
良かった、俺のイメージは間違いじゃないな。
「それより陸人、なんか嬉しそうだけどどうした?」
なんか会った瞬間すっごいニコニコしてたな。
「分かる? へへへ、俺、大剣が扱えたんだ!
まだまだ重くて上手くはないんだけどさ……。 自分に合う武器が見付かって今ちょー嬉しい」
「おー、良かったじゃん、凄いな陸人。大剣って超重いじゃんか。
体格良いし、今既に扱えるって事は良い大剣使いになりそうだな」
「へへ、ありがとよ。んで、お前はここに小屋を建てて何に使うんだ?」
「へ……?」
鍛える事を目的にしすぎて、建てた小屋の使い道なんて考えてなかった。
そもそも校舎の裏に小屋なんか建てて使い道が出来るものなのか?
出来て、超大きい掃除用具入れ位じゃないか?
凄いワクワクして聞いて来ないでくれ、理由考えなきゃえーと、えーと……
「建てた小屋で、陸人やレムリア、他の同級生と放課後集うとか……?」
…………我ながら適当すぎる。
「……良いじゃねーか! 楽しみにしてるからな!」
陸人のにかーっと笑った表情に心がホッとした。
適当に考えた理由だが専門授業では同じクラスの人も無く同級生と関わりがない分、放課後に関わる機会を作るのは中々に良く思えてきた。