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10話

―――……お前はどうしたい?


 強くなりたい。


そうか、分かった。ならばオレに付いてこい。鍛えてやる。オレの名前は――――――











――――――――………………


「おい優! 休憩してから30分経ったぞ」

「………はっ あ? あ、さんきゅ」

 そうだ、「小屋造りの特訓で疲れたから30分寝る、時間が来たら起こしてくれ」と陸人に頼んでいたんだった。

…………何だか懐かしい夢を見た気がする……。

 


 結局、陸人が凄いワクワクとした表情で見てくるという点と、1週間で1人で作るのはこの体じゃ不可能だろうという点を考慮し陸人と2人で小屋造りを行う事となった。

 ギリギリ1週間で造り終えれるかといった所だが、特訓の内容を少し変更する必要が出てきたな……。

「小屋造りにレムリアも誘いたかったんだけどさ~……。忙しいって断られたわ」

「小屋造りに参加したいなんて考えるのは陸人くらいだろ」

 まずレムリアが参加したいと言う姿が想像できないし、参加されたら本来の肉体強化の効果が減るので断ってくれて良かった。

 そういえば、放課後にレムリアを見かけた事ない気がする。

 クラスは違えど授業の終了時間は大体皆一緒なはずなのにな。



「ふう…… 7割がた完成したってとこか」

「楽しいけど流石に授業の後にこれはキツいな……。優、体力無いのによく出来るな」

「授業で回復薬を貰ってるからな。戦者のクラスは貰えないのか?」

 戦者はどのクラスの中でも1番と言って良いレベルで、体力の消耗が激しいだろうからな。

 俺が貰えているんだから戦者クラスでも配っていると思うんだが……。


「貰えねーよ! なんでも、回復薬に頼ると自身の自然治癒力が落ちるとかなんとか……で、最悪な場合以外回復薬禁止。

 先生がそんな考えだから授業も大変でへとへとなんだよ……」

 自然治癒力が落ちるなんて話は出鱈目だ。

 一度の回復上限がある以上その様なデメリットは存在しない。

……さては、戦者クラスの教師は限界ギリギリまで鍛錬を積ませる脳筋タイプか。

 そういう考えの人間は真人にとても多い。

 なんせ、()()の師匠も全く同じタイプだった。


「俺も少し休むかなー! 10分経ったら起こしてくれ!」

「いや…… もういい時間だし、今日はそろそろ切り上げるか。

多分このペースなら丁度一週間になる明後日には仕上がるだろうし」

「マジか! ワクワクすんな~。よし、寮に戻って飯でも食うか!」


 へとへとの体を動かし、陸人と共に寮へと戻る。

 寮の玄関に差し掛かった時、見覚えのある後ろ姿が目に入った。

「お、レムリアじゃん。靴を履き替えてるって事はお前も今帰ってきたのか! 何してたんだ?」

「優に陸人。……授業をしていたわ」

「こんな時間まで授業って、お前の先生厳しすぎないか!? 何のクラスだよ」

 俺達が小屋造りを辞めたのが17時30分程。

 校舎から寮までの時間を考えると、レムリアが授業を終えた時間もそれ位になる。

 普通、授業が終わるのはどのクラスも14時だ。

 陸人が驚く通り、その時間に終わるのは少し異常だ。


「クラスは秘密。陸人にも、優にも。この時間に終えたのは私の所望。だから、問題ない」

「選定先は秘密としても、だ。流石に授業が長すぎないか。

 体力を考慮されていないのに加え、レムリアの自由時間も少ないじゃないか」

「優の言う通りだぞ!」

 見た所は、特に疲れた様子はない。

 ポーカーフェイスの魔人と言えど、疲れた時はそれが表情に現れるものだ。

 とはいえクラスは分からないがレムリアも戦種なんだ、戦種はどのクラスもそれなりに疲労が溜まる授業内容となる。

 今疲れていない方がおかしい。


「心配してくれているのね。でも、本当に大丈夫。私は自由な時間より、力を身に着ける事を優先したい」

 いつも思うが、レムリアは本当に嘘を付かないな。

 それは人種が多少関係していると思うが(嘘を付く魔人も普通にいる)、嘘を付いた方が良い場面でも正直に答える。

 今の状況でも、適当に授業が終わった後は本を読んでるという事にすればいい。

 正直に言えば、俺達との衝突が起こるなんて事すぐに分かるはずだから。

 でも、嘘は付かない。


 

…………ふ、と昔の仲間を思い出した。

 嘘を付けない。付かないんじゃなくて付けない。

 馬鹿正直な上、魔人なのにとても感情が豊かで笑顔が多かった彼女の事を。

 常に無表情で淡々としているレムリアとは正反対だ。

 しかし、どこか雰囲気が似ている。

 たまに俺らに向けてくる視線は、笑っていないのに優しく感じ、じっと見られているのに不快じゃないから。

 

「……俺達で建ててる小屋が、もうそろそろ完成するんだ。多分明後日くらい。

 戦種の校舎の裏。完成したら、レムリアに来て欲しい」

「……分かったわ。」

 きっと、レムリアにはレムリアの事情があるのだろう。 

 けれども、このままの生活を続ければいつか倒れるのが目に見えている。


 小屋に向かう様にさせれば、来た日はそれだけ授業も短く済む。

 本人は知られたくないようだが、レムリアの行動も気になる。

 ともかく、あまり彼女を1人にはさせるべきではないな。

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