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ゼロの支配者  作者: 雲黒斎草菜
ケミカルガーデン
13/109

 ウンコ男

  

  

 初めてケミカルガーデンの実態を目の当たりにして、俺は学校の授業に対して強い不信感を抱いた。

 ケミカルガーデンは現在危険地帯ではあるが、未開拓で菌類と動植物が共存した地域で、さも人類に残された最後の開墾地帯であるかのように、授業では説明していた。


 声を出して宣言したい。ウソを吐くな、と。

 防毒マスク無しでうろつけば、変異症発症率100パーセントのどこが人類に残された最後の開墾地だ。毒キノコとカビが蔓延った中に生えた植物や動物は、あり得ない変異を遂げた魔界の生き物となり果て、なんの免疫も持たない人類が営める場所でない。そんな事はここに来れば一目瞭然だ。いったい教育者は何を俺たちに教えたいのだろう。深部に入ってこれる人はごく少数。それは誰の意見なのだろう。それともどこかに救いの道があるのか?


 教師よりも正しい事実を知る麻衣に尋ねる。

「あのさ。キノコとムシに注意すればここって人が住めるのかな? あ、カビ毒が無かったとしての話な」

「せやねぇ……」

 麻衣は少時の間を空けて応える。

「カビ毒が何とかなったとしても、ブラックビーストがおる限り共存はむりやろね。あいつらを手なずけることはできひん」

「ビーストってこんなトコまで遠征して来るのか?」

「なにゆうてんねん。ここがビーストの生まれ故郷やろ」

「あ、そうか。逆なんだ。あいつらはガーデンに適応した哺乳類だった。だから熱帯雨林であろうがガーデンであろうが、自由に行き来できるんだ」

 と言っておいてから気付いた。

「無敵じゃないか!」

「アホ。気付くのが遅いねん、あんた」

 背筋がぞぞっと寒くなった。

 しかもそれだけではないとまだ首を振る麻由。

「適応したのはビーストだけじゃないわ……ほらここ見て」

 麻由は足元に転がる朽ち果てた倒木をブッシュナイフの先で指し、麻衣も同調する。


「ひっくり返してみ」

 指示に従って、足の先で蹴ってみる。


 倒木は腐って中身が抜け落ちていて軽々としていた。そいつは俺のひと蹴りで緑色の堆積物を噴き上げて裏返しになった。


 展開された光景を目の当たりにして呼気が止まった。

「う……蛆虫(ウジムシ)だ」

 と言ってから、俺は自分の喉の奥を曝け出す。

「で、でけぇぇぇぇ」


 お袋に見せたら、たぶんコンマ何秒で失神するだろな。


「粉吹いてるぞ」

「カビに覆われてるんよ。それにようく見て。ハエの幼虫とは違うやろ」

「大きさが全然違う。ビール瓶ほどもある」

「ちがうよ。もっとよく見て」

 今度は麻由に言われて、ゆっくりと観察する。


 確かにハエの蛆虫とは違う。細い(あし)らしきものが胴体の下で蠢いていて、それが余計に薄気味悪かった。


「夜になったら出てくるデ。あそっか、そろそろ出勤の時間やった」

 朽ちた樹木の根元、暗い地面のところどころでゾワゾワ蠢くのは、全部そいつらの背中だ。

「どっしぇぇぇぇーっ!」

 変な声が喉から噴き出して、思わずランちゃんの荷台へ飛び逃げる俺。そこから恐々尋ねる。


「これって何の幼虫?」


琉球大筋銀蜻蜒(リュウキュウオオスジギンヤンマ)の変異体なの。何だと思った?」

 と答えたのは麻由。丸くて黒い瞳が荷台にしがみつく俺を笑っていた。


「トンボ? トンボの幼虫ならヤゴだぞ。でもあれは水中だろ?」

「あんた、ほんまに変異体生物の授業受けとんか? どうなってんのや、このアホは……」


 片眉を歪めて慨嘆する麻衣。俺は強く抗議の眼差しを向けるが、声に出して直接は言えない。だってその前でマジで麻由が嘆くからだ。

「修一ぃ。変異体生物の成績がクラスで最下位ってウワサ……本当なのね」


「いや。俺の下にまだ村上がいるから最下位ではない。うん……幾分かはマシだ」


「アホの村上と競い合って何がマシやねん! そういうのを同じ穴のムジナちゅうんや! 見てみぃ。この地面に同じ連中がぎょうさんおるわ。どれかがあんたで、どれかが村上や」


 地表で蠢くウジ虫と俺や村上が同類だと言うのか。

 はは、そりゃ、きしょいわな。


「ふーん。じゃぁなんでこいつら地面を這うんだろ?」

 虫けらと同類に見られるのは悔しいので、腕を組んで思考を巡らせる。麻衣は口を尖らせてじっと俺の答えを待っていた。

 だが言ってやろう。こっちは変異体生物の単位が風前の(ともしび)なのだ。答えなんか出るわけが無い。


 俺からの返答をあきらめた麻衣は、長い溜め息を吐いてから一気に喋り倒した。

「ケミカルガーデンは気温が高くて、水はお湯みたいになるねん。でも朽ち果てて腐敗した樹木の中は温度が数度低いからって習ったやろ? ジブンちゃんと勉強せぇよ。最下位まで落ちたら! こん中へ顔突っ込ませるでぇ!」


 怖ぇぇぇよ、先生……。


「じゃあ、オスの成虫が持つ危険な習性を言ってみて?」今度は麻由だ。

「えぇぇー。まだ夏期講習が続くんすか? もう。いいじゃん」

 麻由へすがりついて中止を願う。


 潤んだ目が俺へと転じられ、しばし固着。

「もう……しょうがないなー」

 小さな息を可愛らしい唇から吐いて、

「覚えておいてね。光りの波動を見せると、メスの羽ばたきと認識して襲ってくる習性があるのよ」


 すごいな双子。どっちも同じ行動を取りやがった。

 それは憐憫の眼差しだが、それより聞き捨てられない言葉が含まれていた。

「襲うって、相手はトンボだぜ!」

「あのね。片羽だけで1メートルはあるからね。下手すれば、そのままどっか連れて行かれちゃうよ」


 うげぇぇぇ──っ。


「は、はい。覚えました。絶対に忘れません。目の前のこの蛆虫が『リュウキュウオオスジギンヤンマ』の幼虫です。生涯絶対忘れません」

 横倒しにした緑色のビール瓶ほどもあるこの蛆虫が変異した巨大ギンヤンマのヤゴだということは、俺の大脳皮質にくっきりと刻まれたはずだ。





 それから数時間が経ち。

 でもって唐突に思った。俺さまって偉大だぁーって。マジで我が身の環境順応力を自画自賛したいな。

 この狂った世界にすっかり慣れて、あくび連発だもんな。


 腰を伸ばして辺りを窺う。

「まだやってるよ……」

 遠くでキイワラビを探して歩く双子の姿と、従順に後を追うランちゃんの首が茂みの向こうで移動する様子を睡魔に襲われたしょぼくれた目で眺める。


 アーチ形の天井から無数の糸状菌の束が垂れた光景。まるで雨の景色を模写した風景画のようだ。その中で腰を屈めて農作業をいそしむ、みたいな二人のシルエット。一見、叙情的に見えるが、その陰にはマッドサイエンティストが拵えたと言ってもいいほどの薄気味悪い生物で埋め尽くされた怪奇な世界――なのに俺の意識は何も感じず、眠気と疲れからフラフラだった。


「黄色いのは採れんし。眠気はすげえし、5分、いや1分でもいいから寝かせてくれないかなぁ」

 睡魔から逃る手段が無くなった俺は、たぶん眠ったまま歩いていたのだろう。キノコの柱にぶち当たってひっくり返った。


 起き上がるのがめんどくさくって、そのまま仰向けに寝転がって緑の天井を見上げていたら、ひょいと麻衣の可愛らしい顔が覗き込んできた。

「なぁ、麻衣ぃー。もう夜中だぜ。眠くないの?」

「あんたより若いもん。うちら元気いっぱいや」

「どうしたの修一。もう疲れたの?」

 反対側から麻由の顔。どっちらもコピーされたように同一で、二人ともマスクで隠された顔に哀れみの気配を漂わせていた。


 二人から気遣われると、無理して虚勢を張るのが俺の悪い習性で。

「な、なに言ってんだい。俺だって元気一杯だぜ!」


「その割に採取ケースは空っぽやんか」

「一気に疲れが噴き出すその言葉。やめてくれないか」


 疲労感満載で半身を起こす俺へ、麻衣は破顔を見せた。

「しゃあない。眠気覚ましにエエ話しをしてあげよ。元気が出るデ……」

 リュックから手書きぽい絵を取り出して、俺の鼻先に差し出した。

「ほら。これ見て」

「何の絵?」

 出されたのは、誰かが描いたヘタクソな手書きの絵に細かな説明を加えて印刷した物だ。


「これがマンドレイクの絵。まだ写真が無いねん。せやからもし見つけたらまず写真を撮ること。それだけでも相当なお金になるねん。ほんで完全な姿で採取できたら……」

 麻衣は意味ありげに口を閉ざす。麻由がそれを見てニコニコ。


「採取できたら?」


 同じ言葉で尋ね返す俺に、微妙に声を潜めて続ける。

「大金持ちや……」

「うそっ!」

「ウソじゃあ、ないわよ」

 麻由も真剣だった。

「俺んちの住むマンションだけど、もっと階下に引っ越せるかな?」

 海中都市は深部へ行くほど気温が低く家賃が高いのだ。

「地下倉庫まで降りれるワ」

「ネズミじゃねえぜ」

 麻由はニコニコして。

「それだけ貴重だと言うことよ。世界でも目撃例がほとんど無くてね、日本ではまだ発見例がゼロよ。だってガーデンの奥深くに行かないと見つからないの」

 麻衣も、麻由と同じ破顔に戻すと、

「もひとつ元気つけたろ」

 と言うと辺りへ視線を振ってからこう告げた。

「今から数か月前。ウチらこの周辺でその後姿を見たんや」

「ウソ? マジ!?」

「マジよ」

 二人は同期した動きで首肯。

「だけど写真を撮る暇もなかったの。でね、すぐにその後を追ったんだけど見失なっちゃった。それがね……」

 麻由は麻衣と寸刻ほど見つめ合い、

「「このあたりなの……」」

 コーラス隊顔負けの同期した返事をした。


「うぉぉぉ、寝てる場合じゃない。すぐ捜索を開始しなきゃ……あっ?」

 電光石火のスピードで気付いた。

「また、ウソだろ。俺を奮い立たそうと二人で組んで……」

「ちゃうワ」

 意外と二人は真剣な目で俺を見つめた。


「これはホンマの話や。せやからウチらこんなに真剣に探し回ってるんやろ。見つけたら……、たぶんやけど1年分の生活費が稼げる、いやそれだけやない、事務所付きのガーデンハンターズになるかもしれへんねん」


「ほんとかよ……」

「ほんとうよ」

 信憑性の高い話になると、互いに声のトーンを下げるという実体験をした。


「じゃあさ。俺も手伝うけどさ。それって何なんだ。もう少し詳しい説明を頼むよ。絵で見る限り二本足で歩く動物みたいにも見えるけど」

 あまりうまい絵だとは言えないが、頭に房を付けたニンジンに足が二本突き出た、まるでファンタジーな世界から飛び出したようだった。


「大昔は『悪魔の草』とか言われて、伝説にもなってたらしいの」

「マンドラゴラって聞いたことない?」

「子供の頃にある。夜に歩くとか、引き抜くと叫び声を出すとかいう植物だろ?」

 双子の姉妹が静かに首を前後に動かした。俺もコメカミを伝ってきた汗を手の甲で拭う。

「まさか、そんな悪魔みたいな植物がこのあたりをうろつくのか?」


「こんな時代や、伝説や作り話やないんやって……」

「だよなぁ……」

 気温50度超えの大気に包まれたはずなのに、背筋を氷が滑るのと同じぐらいの寒気が走った。


「草が歩くのか……」

「あははは。草は歩かへんよ。たぶんキノコや。ガーデンの中は生物が異常変異した世界でとくにキノコが著しいんや。せやさかい歩くキノコがおってもぉ。いっこもおかしないよ」

 麻由がマスクの横からはみ出た笑顔をさっと落し、わざと声を潜めて言う。

「しかもぉ……。動き回るときは深夜の数時間だけなんだってぇ……」

「なんだかオカルトっぽい話だな。本気で寒くなってきたぞ」


 粟立つ腕を擦りながら眉を微妙に歪めていたら、いきなり麻衣から肩をポンと叩かれた。

「ぎゃっ!」と、飛び上がる俺を見てヤツがニタリと笑う。

「まっ……。とにかく写真でもエエんや、頼むで。ヘタレくん」

 ヘタレではないと言い返せない。今のは真剣に驚いた。


「よし。探し出して有名になる。それで大金持ちになろうじゃないか。俺にまかせろ!」


 勇んで立ち上がった俺は早速悪魔の草の捜索にかかった。さっきまで探していた黄色い草が高価だと言ってもたかが知れている。こっちは1年間分の生活費プラス事務所付きの店舗だ。


「いったいいくらぐらいになるんだろ?」

 頭の中は捕らぬ狸の皮算用状態だ。想像もできない札束が舞う光景を想像してほくそ笑む俺って少しバカだと思った。


 その刹那。

 忽然と地面が消えた。足元も見ずに歩き回っていたとはいえ、普段の生活で床が抜けるなどあり得ないことだが、いま確実に地面が消えた。


「おわぁーっ!」


 あっという間に正体不明の穴へ落下。加えて、


 とぷん。


 なんとも間抜けな音がして顔を上げた。その寸刻先。空気を切る音を上げて何かが勢いよく被さり、周りが一瞬にして暗闇へと変わった。


「た……助けてくれーっ!!」

 胸から下を粘り気のある気味悪い液体に浸かった俺は、両手を上げた状態で叫んだ。

 耐熱スーツはゴム底のぶ厚いブーツと一体型の物なので液体が侵入することは無かったが、とてつもない悪臭が鼻を突き刺してきた。


「おーい。麻衣、麻由。助けてくれぇ! フタがしまったぞ!」

 真っ暗闇の中で必死に叫ぶ。上げた手の先が滑々する膜に触れた。それが意外と固くて下から突き上げたぐらいではびくともしない。

 どうやら俺は、穴に落ちたうえに何かを被せられたようだ。


(修一! 大丈夫?)

 外から麻衣か麻由が声をかけるが、覆い被さった物体がかなり分厚いようで、二人の声が遠くに感じる。俺は焦りを露わにして叫んだ。

「早く助けてくれ! 何か気味が悪い溜池みたいなところに落ちてフタを被された!」

 すると俺の頭上で大きな音がした。

「うぉっ! 何だ?!」

 覆い被さる膜を外から二人が蹴飛ばしているのだろう、ばっこんばっこんと音を出して大きく波打つがまったく開く様子が無い。


(あかん。ナイフでは歯が立たん。ショットガンぶっ放すで!)

(修一! なるべく前に寄ってね)

 派手なことを始める気配が伝わるが、こっちはパニック寸前だ。

「こんな真っ暗で臭い場所で死ぬのは嫌だぁー!」

(すぐに開けてあげるから、とにかくそこから離れて)

 麻由の忠告に従って、ヌルヌルする液体の底を足の先で探りつつ、声とは逆の方向へ進んで頭を抱えて知らせる。

「こっちはいいぞ!」

 少時もして。


 ドンッ! ドンッ!


 大きな音が二発轟き、覆い被さった不気味な分厚い膜が吹っ飛んだ。さーっと射し込む緑色の光の奥に、糸状菌で覆われたアーチの天井が見えた。

「助かった……」

 麻衣が構えた銃の先から薄く煙が上がるのを見て安堵するものの、急激に羞恥の気分に満たされていく。


 無様だ――。

 落とし穴に落ちるなんて、17年の人生で最も恥ずい出来事だった。


 ほんの少しの間が空き。

『ぽぴゅぅ?』

 最初にランちゃんの金属製の頭が覗き込んできた。まるで俺の安否を窺うかのような振る舞いだった。


「やぁ。ランちゃん。あ、あのな。俺はちょっと一休みしてただけなんだ」


 続いてニヤニヤと何か言いたげな麻衣と麻由の子猫みたいな丸い瞳が覗き込んできた。

「どぉ? 湯加減は……?」と訊いてきた麻由に、

「おい。早く助けろ」

「なんや、元気やな。麻由、もっぺんフタしたれ」

「わー、ゴメン。早く出してください。自力ではここから上がれません」


 くそっ。また借りを作ってしまった。



 しばらくしてランちゃんの荷台に括りつけられたロープで、一気に地上へ引き上げられた。

 どばーっと盛大に粘っこい液体を流れ落として、穴から這い出した俺は悔しいので悠然と構えた。


「はあぁ。いい湯だった」

 でも体は正直だ。膝がブルブル震えてしまって、立っていられなくなり、ペたりと尻を落としてからゆるゆると二人を仰ぎ見た。


「なんだよこれー。罠か? 落し穴か?」


「だから地面の下も注意してって言ったのに」

 そんな可愛く口先を尖らせても、こんな落とし穴があるとは思いもよらない。

 よく見たらあちこちに同じモノが散在しており、被せられたぶ厚い膜だと思ったのは茜色をした綺麗な花で、ひとつが2メートルもある毛布みたいな花びらが5枚、星型にふわりと地面の上に広がっていた。


 まるで歩く者を手招くかのように美しく波打った花びら。知らずにその上を歩くと中心の底が抜けて、可愛そうな犠牲者は肥溜めに落下。その前後左右から花が塞がって閉じ込められる。

「じ……地獄だ」

 こんな世界、どこが最後の開拓地域だ。ここは人類に残された場所ではない。


 麻衣は膝頭に手を当て腰を折ると、地面の上で足を投げ出した俺を覗き込み、「どうや?」と窺うので、俺は強気で返す。


「どーって、ことないぜ」


「はぁぁ、くさぁ~」

 麻衣は鼻を摘みながら笑った目を俺にくれ、麻由は気の毒そうな眼差しで説明する。

「これはタイタンアルム、別名はスマトラオオコンニャクの変異体なの。中はスカトールやインドールの臭いで充満していて、温くてヌルヌルして気持ち悪いらしいわ……あなたで二人目。どう? 落ちた感想は?」

 それは俺以外にも犠牲者がいると言っていた。


「上ばっかり見てたら、みんなこれに落ちるのよ。この子も小さいときに落ちたの」

 麻衣が余計なことを言うな、と圧力を帯びた視線を麻由へ向けてから言い訳をかます。

「あの時はまだ子供やから、身長がなかったんでマジやばかってんで」

 心情察しますな――。


 麻由の説明はさらに怖い部分を突く。

「中のトロトロした物って、何だか知ってる?」

「んにゃ?」

「消化液と未消化の動物の屍骸やらその他もろもろなの……。あのまま半時間もしたら、修一も綺麗に消化されて骨だったわね」


「うひぃぃぃ~。恐ろしかぁ……」


「どう? 修一。キノコ狩りだってけっこう緊迫するでしょ?」

「あわゆくこっちがキノコに狩られるところだったぜ……」

  

  

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