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人形狂想曲  作者: オーメル


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第五十四話 会話

 あの時の青年の出会いが無ければ、俺はきっと彼等の言葉を疑問に思うだけだった。

 何かが近くで起こっていてもそれについて推測に推測を重ねたモノで考えるしかなく、結局そんな情報は妄想の産物だと片付けられるのが当然の真理である。

 だが今の俺達には薄くない情報があるのだ。未だ確定情報ではないけれど、それでも俺の推測だけよりかは余程信憑性がある情報が。そこから辿れば、彼等を決して無視してはならないと俺の本能が訴えていた。

 同じ難民同士。こうして争い合うケースは小規模ながらあるものの、内容が極端に大きいモノはニュースでも聞いた事は無い。

 精々が難民の集団が警官数人と乱闘になった程度。警官達には同情するが、それでも規模としては小さい。

 故に今回の一件は最終的な被害も大きくなる。まだ話も聞いていないというのに、俺の中には奇妙な確信があった。

 彩の周辺スキャンにより、最終的に集まってきた人数は二十三人。更に車四台があり、ワシズと別れたシミズが外を覗いた際には車内に武器も発見した。


 つまりはこのまま彼等を処理する。

 盗み聞きした情報は正しかったと脳内は決断を下し、それが彼等にとっての現状唯一の剣だと確信した。

 他の武器があるならば今頃もう使っているだろう。慌てている五人組はそこまでまだ思考は巡っていないが、襲われていない時点で五人組の近くに居る難民は武器を持っていない。

 であれば、その武器を排除すれば俺達には余裕が出来る。実は隠し持っていましたと考える事も出来るが、今この瞬間にそれをする意味は無い。

 あそこはデパートの一階だ。数階にまで登ってしまえば武器と呼べる物はあるものの、一階にあるのは腐った食べ物と無数のバッグの群れ。これで戦うとしたら、精々腐臭を放つ物を投げ付けるくらいなものだ。

 

 五人組を今襲わないのは単純に武器が全員に回るのを待っているからだろう。

 何故今それをしているのかは予測でしかないが、恐らくは五人組の行動はかなり突然に過ぎた。突然逃げたからこそ彼等は緊急で持つ物を持たずに追いかけ、武器等を持った者達は現地合流したと考えれば都合が良い。

 ならば最初に止める事ができ、かつ喉元を一気に締め上げられる方法は武器を満載した車をそのまま爆破する。

 幸いにして俺達の手には手榴弾がある。やろうと思えば出来ると解れば、決断は直ぐだ。

 

「一番近いのはシミズで良いな?」


「はい。時点でワシズですが、今はまだ偵察に集中しておりますので」


「解った。じゃあ一つ頼まれてくれ」


 ワシズ&シミズとは距離が離れている。

 物を渡すにしても彩が警戒していたお蔭で基本的に武器は禁止されていた。このままでは渡す前に相手が武器を配り始めかねない。それは何としても阻止したい俺は、だからこそ唯一残った彩に頼む。

 

「彩、今直ぐ車内の武器を無力化してくれ。手榴弾で車内爆破が一番手っ取り早い。投げるのも得意だろ?」


「人よりは遠くに投げられると思いますよ。……数は二つです。使うのも手榴弾ではなく閃光手榴弾を使います。そちらの方が殺傷率は下がるでしょうから」


「助かる」


「いえ。到着と同時にシミズをそちらに戻します。護衛として使ってください」


 言うが早く、彩は静かに駆け出す。

 日用品売り場の中は彩が居なくなった事で更に静かになり、三階には足音一つしない。

 もしも誰かが潜んでいたとしたら、それは余程の暗殺者だ。俺では絶対に敵わず、見事に殺されているだろう。

 勿論、そうならないのは理解している。彩の周辺スキャンには全幅の信頼を寄せるに足る性能だ。限りなく反則に近い索敵機能は俺も欲しいくらいで、けれどそれが出来るのも彩達デウスだからだろう。

 リュックの脇にある水を一口含み、そのまま端末を操作して先程の通信履歴からワシズ達に繋げる。

 耳にそれを当てれば、彼女達二名はものの数秒で繋がってくれた。


「彩経由で話は聞いてるな?」


『はい。……やるなら、私でもやれる』


「それじゃあ殺人だ。余計な恨みは持たれないに限る」


『目撃者は逃がさなーい、は?』


「それも無しだワシズ。勘が良い奴じゃなくてもこんな場所にお前達みたいな美少女組が居たらデウスだって思うだろうさ。俺はデウスの評判を落とすつもりは無いぞ」


『私達、関係無い』


「残念ながらそれを知っているのは俺達だけだ。だから他の連中には同じに見られるだろうさ」


 双子は確かに生まれ方が他とは違う。だからこそデウス全体の評価とは関係が無いかもしれないが、そもそも彼女達の生まれ方を知っているのは俺達だけ。全体が知らなければ無いも同然で、下手な真似は出来ない。

 この行為そのものが人類に迷惑を掛けているのではないかとツッコまれる可能性はあるが、それを避ける為に恐らく彩は閃光を使う事を選んだ。

 殺すなという俺の意見も飲んだのだろうが、根本の俺の想いを彼女が汲んだ結果だ。

 読まれてしまったものの、そこに不快感は無い。ある意味解り合ったとも言えるし、意志の疎通が取れているというのは緊急時において強みとなる。

 シミズを戻そうとしたのはこの部分だ。あの子達は殺人の何が駄目であるのか解っていない。一応は人類の守護者としての情報は有しているのだろうが、あの子達の根本は誰かに従うことだ。


 生まれが異なれば行動方針にも違いは出る。

 人工の存在だからこその違い。それは俺にとってただ腹立たしいだけだ。

 端末を通してシミズの近くで小さな物音が鳴る。話し始めて数十秒程度だというのに、如何なる技術か彩はもうそちらに到着したのだろう。

 新たに割り込む形で彩の到着しましたという声を聞き、直後にシミズも動き始める。

 

『武器を乗せた車の台数は二つですね。人数は十人。これから配るようです』


「了解。ちなみに何処から見てる?」


『二階の紳士服売場の窓です。閃光を投げ込むと同時に飛び降りれます』


「よし――ワシズ、合図と共に隠れながら撃て。出来るなら相手の目が行きそうな場所を撃ってくれ」


『OK。正面入り口のガラスを割るよ』


「シミズは俺と一緒に五人組の所まで行くぞ。間近まで迫ったら何時でも五人組を狙え撃てる距離に隠れてくれ」


「『OK』」


 返事と同時に、シミズは俺の直ぐ傍にまで寄っていた。

 これで人員移動は完了。急速に乾いた喉を再度水で潤し、片手に持った銃の固さを再度認識する。

 俺達は不必要な殺人行為はしない。するならば襲われた時、もしくは必要だった時。そこに一片の容赦も加えてはならない。

 今回はその全てを禁止し、難易度を限りなく上げたものだ。俺程度では満足に動けもしないだろう。

 助けてくれる彼女達が居るからこそ出来る。そう思うから、決めた時点で弱腰になるなどナンセンスだ。

 指を引き金に当てる。失敗するなと自分に暗示紛いの言葉を内心で吐きながら、三秒を数えた。


「三……二……一……いけッ」


 ピンの外れる音が携帯端末に届く。同時に空気を裂く腕の音も聞こえ、投げ込まれたのだと理解した。

 二階のエスカレーター部分から細かい銃撃音。同時にガラスの割れる音が自身の耳に直接聞こえ、それに合わせて俺達も動き出す。

 俺達がするのは正面からの登場。誰がそれをしたのかを五人組に見せ、避難を誘導する為に俺が自分で向かう。

 シミズは物陰で馬鹿な真似をした場合に銃で牽制してもらう役目だ。姿を隠すようにした為、俺達の最大戦力数を誤魔化す事も出来る。

 彩の行動もワシズの行動も信頼している。早々に武器を使えないようにし、残るは武器の無い難民だけだ。

 勝てる戦だと脳内に響かせながら使わなかった停止中のエスカレーターを降りる。ワシズは一番速く壁を蹴って一階に向かった。

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