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人形狂想曲  作者: オーメル


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第五十一話 難民Ⅱ

 一先ず、俺達の出した結論は様子を見るということだった。

 相手は食品売場に移動し、未だそのエリアより外には出ていない。間違いなく食品売場は腐臭によってとんでもない状態になっているだろうが、それでも欲しい物が彼等にはあるのだろう。

 それを止める理由は俺達には無い。生き残ろうと奮闘する相手を阻害するならば相応の理由が必要で、それが無い俺達は無視をしたとしても何も問題は無いのだ。

 けれど、向こうが勝手に突っかかってくる可能性はある。こんな場所を彷徨う時点で余裕が無いのは事実であり、俺のリュックは今も食料等が入っていた。

 それはリュックの外側からも解るだろう。デウスに襲われた街で補給した頃に比べれば幾分減ってはいるものの、それでもまだあるにはある。

 それを見て文句を言わないとは断言出来ない。余裕の無い人間程形振り構わないのだから、警戒をする必要がある。

 

 相手が難民であれば俺でも勝てる可能性は大いにある。腰に装備した銃を見せるだけでも難民は恐怖するだろうし、更に言葉で脅せば逃げるだろう。

 だがこれが何らかの組織であれば。具体的には難民が武装化し、誰かが統率を取っているのであれば俺の脅しは通じはしない。そこから先は彩達に頼る結果になるだろう。

 五人というのは何とも判別に困る。もっと少数であれば只の難民と断じれたのだが、五人ともなると一つの纏まりとして考える必要も出てきてしまう。

 何とも面倒なとは思うも、今必要なのは愚痴を吐くよりもこの後の動きだ。

 周辺スキャンは常に展開させたままにして、迅速さを求めて最初の通り二人一組になる。ワシズとシミズには誰にも見つからないようにする事を第一とし、もしも発見されるようであれば危害を加えずに手加減して逃げろと半ば命令口調で告げた。

 

「彩も接近してくるようであれば早めに教えてくれ。コースを変更して逃げる」


「解りました。階層移動は避難用の階段を使いましょう」


「ああ。ワシズとシミズは先ず何処に行く?」


「二階。信次様の衣服を探す。破れそうだから」


「あー、確かに。そろそろ何処か破けそうだったよ?」


「マジか。自分じゃ気付かなかったな……」


 元々、俺の着ていた物は普段から使っていたものだ。この旅の為に用意したものではないので最初から耐久限界はそこまで高くは無い。

 何れ破れる物だとは解っていたが、予想よりも遥かに早い。やはり俺の見積もりは甘かったとしか言い様が無かった。頼むと言いつつ、忘れていたと今にも行きそうだった二人を呼び止める。

 疑問符を浮かべる彼女達に、出来れば防寒性能が高い服を探してくれないかと頼んでおく。今はまだ暑さの方が勝っているものの、これから先は寒くなる一方だ。早い内に防寒着を用意出来れば備えを万全に出来る。

 更に備えるならば寝袋があれば良いとは思いつつ、それは無いだろう。

 寝袋自体はデパートにも有りそうなものだが、他の誰かが狙わない筈も無し。五年もあれば裏の在庫ごと全部持っていかれていたとしても不思議ではない。

 だから優先度を落として寝袋も頼んでおいた。彼女達はその頼みに嫌な顔をせずに頷き、直ぐに足音を隠しながら離れていった。恐らくは俺達と同様に階段を使うのだろう。

 

「俺達も行くか。先ずは三階の日用品エリアに向かおう。防犯グッズなんてのは余程専門店でもない限り、一緒くたにされている場合が多い」


「解りました。出来る限り遠回りをする形で行きましょう。対象が動いた場合は即座に報告します」


「解った。出来れば食料を漁るだけ漁って帰ってくれれば良いんだがな」


 小声で進みつつ、俺達はワシズ達と同じルートで上に。

 扉を開ければ直接階段があり、屋外に設置されたそこを通ってワシズ達よりも一つ上の階へと向かう。

 向かいながら周囲を見渡してみるも、俺が見る限りでは誰かが居るようには見えない。これが組織だっての行動であれば輸送用の車かトラックを用意していてもおかしくはないのだが、一応店の前に輸送用車らしき物は無かった。

 となれば相手は自分の手で荷物を持つか、俺のようにリュックに荷物を詰めて背負う事になる。デウスであれば移動そのものに制限は無いだろうが、普通の人間である限り速度の低下は否めない。

 どれだけの量を持っていくつもりなのかは定かではないものの、五人居たとしても決して多くはないだろう。

 

「動きました。現在は食品売場を抜けて私達が居た地点に向かっています」


「速いな。やはり最初からまともな物は無かったか」


 漁り始めてから十分少々といったところか。

 あまりの速さにやはり行かなくて正解だったと思いつつ、相手の行動に疑問を覚える。

 此処に入った時点で何かしらバッグを持っていれば俺が居た地点にまで行く必要は無い。集団による組織的な行動をとる場合、事前にリーダー格が準備をしているパターンもある。

 バッグを持っていればあそこに行く必要は皆無だ。であれば最初からバッグを用意をせずに飛び込んだ。

 つまりは組織的な何かに所属している訳では無い線が強くなる。確定ではないものの、本当にただの難民の線の方が俺には濃厚になった訳である。

 であれば、彼等が次に向かう先は何処だろうか。

 食糧は絶望的だと解った。このままでは飢え死ぬ事は避けられない。

 

 十年も保存出来るような水があれば争奪戦は避けられまい。

 時には仲間同士で殺し合う事だって飢えが挟まれば有り得るだろう。その際に必要となってくるのは――武器だ。

 銃の類は当然ながらデパートには置かれていない。モデルガンならあるだろうが、それで殺すには改造は不可欠。集団の中で密かに改造するというのは難しいだろう。

 考えられるとすれば刃物だ。包丁や果物ナイフであればこのデパートにもきっと置かれているだろう。

 それを使って殺し合いで使えば優位は取れる。勿論全員が同様の思考をしていれば優位を取れるとは限らないが、武器があるのと無いのとでの安心感は段違いだ。

 日用品のあるエリアで物色しつつ、意識は中に居る存在に注ぐ。俺が気にしても彩が警戒しているので問題は無いが、集中し過ぎて無視をしないとも言えない。

 それに俺が日用品エリアに来たのは防犯グッズではあるが、そのグッズの内容はまったく別だ。


「よっし、あったな」


 デパートの内部を検索した時、俺は真っ先に防犯グッズを調べた。

 その中には非常食の分類があり、食料品エリアとは別れていたのだ。恐らくは下手に食料品と一緒にするよりもジャンルを統一させて纏めて買わせようという魂胆だろう。

 防犯グッズそのものは非常に解り易い。形状からして普段使いの物とは違っていて、しかし非常食は解り辛い。

 乾パンなどが良い例だ。それそのものは御菓子にしか見えず、箱の形状も円柱や四角の場合が多い。それだけならば普通の食品として見えるだろう。

 後はご飯物もレトルト商品と見た目が似ている。実際に袋に書かれた内容を読めば違うと解るものの、特に気にしていなければスルーしてしまうのは俺の経験談だ。

 

 ガラスケースの中に非常食の見本があり、今はそれらはバラバラに崩れている。

 横には六段の商品棚の姿。その中に本命の物が決して多くはないけれども存在していた。

 大体が埃を被っているのだが、無事な物が殆どだ。迷わず手に取り、その裏に記載されている賞味期限を確かめる。

 大概の商品は長くて五年。短ければ三年といった物ばかりであり、三年物は即座に廃棄だ。


「済まないが、他の非常食の棚から五年から十年の賞味期限の物を探してくれ」


「解りました。見つけた物は全て?」


「入れられるだけ入れておきたいな。けどまぁ、他に欲しい物もある。……リュックの四割か五割くらいで構わない」


さて、楽しい楽しい物色タイムだ。並ぶ宝石達に、思わず口角が持ち上がった。

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