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人形狂想曲  作者: オーメル


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第三十七話 第二の街

 一日の間歩き続け、夜中に発見した瓦礫の山々を隠れ蓑にして眠りを取る。

 その後に漸く俺達は街へと到着したのだが、そこは以前の街に比べると遥かに小さい。街と村の中間とも言える程であり、その時点で頭の中には嫌な予感が浮かぶ。

 家屋の損傷具合も他より多い。普通の街であれば表だけでも修復されているものだが、その様子も零だ。

 民衆の恰好も何処か地味目。五年前であればシャツにズボンという恰好は当たり前ではあるも、今の時勢で言えばこの恰好だらけの状況は異様でしかない。

 全て遠目で確認した限りだが、入り口付近でこれだ。内部がどうなっているのかは解らず、故にそれを見た誰もが警鐘を鳴らすのは必然だろう。

 互いに顔を見合わせる。自分の眉が寄っているのを自覚しているだけに、恐らく俺の顔はかなり渋いものだ。

 同時に彩の顔も決して良いものではない。九割が心配で構成された眼差しは、それだけで十分な効果があった。

 そしてワシズとシミズは漠然とした不安を抱えた目だ。此方をちらちらと伺うようにしている姿は、本当にあそこに行くのかと聞いているようでもある。

 

「……これは流石に予想外だった」


「私も同じくです。これは最早街というより……」


 村という範囲に到達しそうな小ささは、当たり前であるが日本にはいくらかある。

 昔であれば世の中から離れた場所に存在していたものだが、今ではそれなりに存在していた。その大部分は昔からその土地に住んでいた者で、愛着が極まった結果として一つの集団にまで膨れ上がったのだろう。

 それはそれで別に構わない。失礼な真似をするつもりは無いし、俺はただ買い物を済ませたいだけだ。

 最悪なのが余所者を受け付けないタイプの集団である。そういった存在は何かしらの要因が混ざらない限り、中々他者を受け入れることは無いだろう。

 その分内部の結束は高まるが、元々の人数が少ない。もしも戦いにでも発展すれば彼等では勝てないのは確定だ。

 そんな中に今から飛び込むのかと思うと、大分緊張する。恐怖まで至らないのは日頃から最悪の存在を知っているからであり、民衆相手であれば話し合いで解決するケースはある筈だ。

 

 それにスーパーの存在は判明している。しかも大手のスーパーだ。

 この時点で他者を受け付けないという線は薄い。致し方無く受け入れた場合が残っているものの、突撃をするだけの価値は今現在でも十分に残っている。

 リュックサックは一週間前に比べて遥かに軽くなってしまった。次の街までに尽きるのは確実であり、此処で補給を済ませておかないと地獄を見ることになる。そうなった時に誰が暴走するのかと考えれば、先ず第一に彩が暴走するだろう。

 彩が俺を大事に思っているのは日頃の心配から解った。

 俺自身は未だそこまでの価値を感じないものの、それを素直に表に出すのは避けてある。


 そうしなければ彩が更に心配するのは容易に解ってしまうことで、下手な真似をすれば此方の言い分全てを封殺されかねない。そんな彩が暴走すればどうなるかは、火を見るよりも明らかだ。

 良くて周囲に存在する野生の獣や草の採取。悪ければ近くに居る人間を襲うだろう。

 守護者がまったく守護者をしていない状態になるのは不味い。しかも見た目と所業の所為で先ず確実に彼女がデウスだと判明してしまうので、デウス全体の評価を落としてしまう。

 デウスに敬意を持っている身としてはそれは絶対にしてはならない。何としても彼女には暴走しないままで居てもらう為に、今回は持っていく予定の無い装備も持っていくとしよう。


「スタンとスモークをくれ。一応だが、もしもが無いとも限らない」


「そもそもあの街に行かなければ良いのでは?スーパーの存在そのものも実際に確認出来ない以上、そのまま進むのは賛成しかねます」


「だが、調達をしたいのもまた事実。それに前の街でも大分危険な目にあった。今更だよ」


 彼女の意見は正しい。俺達はまだスーパーそのものを見た訳では無く、ネットの情報に書いてあるだけだ。

 ネットの情報が全て正しい訳では無いのは俺も理解している。だが、実際に此処に街があった以上は多少なりとて信憑性があるのも事実。

 それに前の街の方が遥かに危険な目に合った。俺にとっては此処で危険な目に合ったとしても今更だ。

 唯一の違いは、やはり絶対の護衛が居ないことか。争い事に発展した場合、解決するのは全て自力だ。自分の腕っ節が決して高くないと自覚しているだけに、その点は非常に注意しなければならないだろう。

 違いと言えばその部分だけだ。だが彩達から見ればその点を重視しているのは解っていた。

 生き残れなければ意味が無い。負傷したとしても身動きが出来ない程に重症になれば、その時点で俺は詰みだ。

 

 だからこそ装備は重要だ。一般人にバレないようにリュックに彩が持っていたスタンとスモークを入れ、HGは常に腰に差しておく。それだけだと一発で見つかるのでシャツとあまり着る機会の無かった薄手の黒の上着を着た。

 前がジッパーになっている構造の為、そのままチャックを上げて風によるバレを防ぐ。後は膨らみぐらいなものだが、最初からある程度サイズのある物を選んでいただけにそこまでの違和感は無い。

 使い方は昔のテレビ番組で見て知っている。構造もまったく変わっていないのでピンを引き抜くだけで発動だ。

 最高なのはそれを一つでも使わないこと。もしも一つでも使ってしまったら、その時点で一般人にも俺の存在が露見される。

 だが俺だけならば狂人の突然の行動だと思われるかもしれない。それならそれで逃げるだけで済む。

 最終的な被害は全て俺にいくようにする。これはデウスを守る上で絶対にすべきことだ。


「本当に行くつもりですか?せめてワシズかシミズを護衛に」


「どっちも美少女だ。この子達でも目立つ。それに、これ以上嫌な視線をこの子達に向けさせたくはない。……これは彩でも一緒だからな」


 美しいというものは良いイメージを受けやすい。

 しかし同時に注目を集めてしまうというデメリットもあり、人間の欲望を直に乗せてしまう視線を集めてしまう。

 ただ単に綺麗だという目もあるだろうが、あわよくばといった下心丸出しの目が大半の筈だ。俺の同僚でもそんな目をテレビに映るデウスに向けていたのだから、欲望は決して無視出来ない。

 この子達と人間を必要以上に接触させるのは必要だ。必要だが、タイミングとしては今ではない。

 その点の匙加減も全て俺がやらねば彼女達は良からぬ勘違いをするだろう。それは俺にとって本意ではない。

 もしも彼女達の容姿が人間の基準内であれば、連れて来てもあまり気にされなかった。そういう意味では、美しさというステータスは俺にとって良いものではなかったのだ。

 

 ひたすら彩の意見を黙らせて、子供達にも心配させないようにと笑みを向ける。

 今こそ頼れる男として結果を残すべきだ。基本的に買い物の内容は俺ばかりなので頼れるも何も関係無いのだが、怪しい場所でも生き残れたという実績は今後役に立つだろう。

 武器の重さを感じながら、隠れていた場所から身を出す。二階が完全崩壊した一戸建ての家は、しかし一階部分はまだ綺麗なままだ。

 この位置で彩達には監視をしてもらう。もしも街の外で何かが起きた場合は連絡を頼むと告げ、そのまま入り口へと真っ直ぐに向かった。

 久方振りの完全な一人は、何故か異常なまでの孤独と緊張を胸に抱かせる。こんなに感じるものなのかと少々ばかりの驚きも感じつつ、されど足だけは止まらせなかった。

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